ミッション15「勝つポスターを示せ!」

ミッション15
電通第5CRプランニング局 クリエーティヴ・ディレクター / コピーライター
Akira Kadota
門田 陽

僕の本業は広告を作ること。特にディレクションとコピーライティングを日々行っています。昨今はダイレクトマーケティングとブランディングの役目を分けて理解してくれるクライアントさんも増えてはいますが、本音では広告ってどれくらい効くの?と訝しげに思っているはず。テレビCMの場合は流す番組の視聴率や好感度調査等おぼろげながら効果を図るものもありますが、グラフィック特にポスターがどれくらい効くかのデータは見当たりません。しかし唯一残酷なまでにその効果がわかるのが選挙ポスターです。そこで今年の4月21日に行われた東京都区議会議員選挙(足立区、葛飾区、台東区を除く20区で実施)を調べることで「勝つポスター」をズバリ示そうと思います。この選挙を選んだ理由は国政選挙ほど知名度が影響しないのと(有名な人はあまりいません)、立候補者が多い(1078人)のでサンプリングデータの信用度が高いと考えたからです。付け加えて今回はポスターの位置取りは無視しました。確かに目線上にあるものの方が有利な気もしますが、ポスターの位置はくじ引きですし、区によっては掲示板の場所でナンバリングを変えて平等を強調しているところもありますので単純にポスターのデザインだけの調査に絞りました。

第1章 サンプル収集

ほんとはこの第1章については沢山話したいのですが、紙面のキリがなくなるのでひとことだけ。あ~~~タイヘンでした。ついこの前のことですが4月はまだ時代は平成だったのですね。すでに懐かしいあの平成の頃にとにかく足で稼ぎました。ヘトヘトになりました。20区全部の掲示板はこんな感じです。ご覧ください!

写真①荒川区

写真②板橋区

写真③江戸川区

写真④大田区

写真⑤北区

写真⑥江東区

写真⑦品川区

写真⑧渋谷区

写真⑨新宿区

写真⑩杉並区

写真⑪墨田区

写真⑫世田谷区

写真⑬中央区

写真⑭千代田区

写真⑮豊島区

写真⑯中野区

写真⑰練馬区

写真⑱文京区

写真⑲港区

写真⑳目黒区

第2章 サンプル分類

1週間、毎日2万歩以上かけて撮り集めた1068点のポスターの写真。半分くらい撮ったところで何パターンかに分類できることに気が付きました。よく見ると類似どころか全く同じデザインのものもあります。それも多数あります。基本知識として、ポスターのサイズはA3以内で縦横どちら使いでも構いません(国政選挙のポスターはもう少し大きいです)。その中にほぼ全ての候補者がこの4つの要素を入れています。

①本人の名前
②本人の写真(95%の人がバストアップ)
③キャッチフレーズ
④政党名

この①~④の組み合わせの大小でいかに印象的なポスターにするか。それで当落が決まります。1000点以上も見てしまうと、「あ、これは落選だな」と瞬間的にわかるポスターも複数ありましたし、「この人はこのポスターだけでOK!」というものもありました。まずは、全部のポスターを12タイプ(※第3章のA~L型の図を参照)に分けました。

第3章 サンプル全12タイプ

ここでひとつお断り書き。立候補者は全部で1078人ですが掲示板で僕がポスターを確認できたのは1068人でした。貼られてない人は気になったのでギリギリ投票2日前まで粘って再確認しました。もしかするとその後貼られたかもですが、きっと何か事情があったのでしょう。当然受かるはずはなくポスターが確認できなかった10人は全員落選でした。しかしその10人も立候補者なので全体の母数は1078人で検証します。

A型(縦サイズ、写真左・名前右)
107人(1078人中。以後省略)がこのタイプのポスターで挑み74人が当選。
74勝33敗、勝率69%

B型(縦サイズ、写真全面・名前右)
140人がこのタイプのポスターで挑み114人が当選。
114勝26敗、勝率81%

C型(縦サイズ、写真右・名前左) 145人がこのタイプのポスターで挑み115人が当選。 115勝30敗、勝率79%

D型(縦サイズ、写真全面・名前左) 今回最も多い162人がこのタイプのポスターで挑み115人が当選。 115勝47敗、勝率71%

E型(縦サイズ、写真下・名前上) 33人がこのタイプのポスターで挑み28人が当選。 28勝5敗、勝率85%

F型(縦サイズ、写真上・名前下) 125人がこのタイプのポスターで挑み92人が当選。 92勝33敗、勝率74%

G型(縦サイズ、写真2人・名前左) 89人がこのタイプのポスターで挑み58人が当選。 58勝31敗、勝率65%

H型(縦サイズ、完全オリジナル) 38人がこのタイプのポスターで挑み16人が当選。 16勝22敗、勝率42%

I型(横サイズ、写真右・名前左) 89人がこのタイプのポスターで挑み72人が当選。 72勝17敗、勝率81%

J型(横サイズ、写真左・名前右) 64人がこのタイプのポスターで挑み50人が当選。 50勝14敗、勝率78%

K型(横サイズ、写真2人・名前右) 50人がこのタイプのポスターで挑み39人が当選。 39勝11敗、勝率78%

L型(横サイズ、完全オリジナル) 26人がこのタイプのポスターで挑み12人が当選。 12勝14敗、勝率46%

M型

 

第4章 サンプル検証

「数字は嘘をつかない」を信じるとすれば、立候補者が1078人で当選者が785人ですから受かる確率は73%。実際は区によって多少のバラつきはありますが今回は大枠でとらえます。なので、73%よりも高い数字のポスターは効果的つまり「勝つポスター」、低いものは「負けるポスター」とします。結果は興味深いです。たとえばA型とB型でこんなに差が出る理由がわかりません。違いはA型よりもB型の方が写真が大きいのですがこの理屈だとC型よりD型の方がいい数字になるはずなのに逆なのです。B型とC型が「勝つポスター」でA型とD型が「負けるポスター」。フシギです。理ではない何かがあるのでしょうか?  あと横サイズのポスターはどれもいい数字です。縦サイズに比べると全体数が少ないのでそのぶん目立つのかもしれません。特にI型は81%という高い数字の「勝つポスター」です。実は今回の分類は当初もう1タイプM型(※図参照)というのがありました。このタイプのポスターは全部で7人だったのですが何と全員当選。しかし全員が同じ区(豊島区)だったのと、さすがにサンプル数が1桁では少なすぎるのでM型はI型にまとめました。I型の勝率が高いのにはその影響もあります。  もう一つ注目なのはG型の数字が悪いことです。このタイプは応援者の写真が入っているもの。多くは党首の写真。本人よりも党首のほうが有名なので、誰のポスターなのかわかりにくいのが短所です。ただ、この論理だとK型の数字も悪くなるはずなのにこちらはなぜか「勝つポスター」です。これもフシギです。理では語れません。

第5章 結論。これが勝つポスターだ!

ということで、今回の調査で最も高い数値の勝つポスターはE型。何と勝率85%です。 全体数が33人と少ないとはいえブッチギリの勝つポスターです。デザイン的には名前が上にあって窮屈な感じですが、人の目は上から下を見るのが普通でしょうからそこが良いのかもしれません。せっかくなのでそのデザイン理論で勝つポスターの見本を作ってみました(※写真㉑)。人物を誰にするかは相当悩んだのですが、色々差し障るので誰もが傷つかない人気者を利用しました。ごめんなさい。これだとかえって悪いお手本に見えてしまうかも。ほんとにごめんなさい!

写真㉒

第6章 例外

第2章でも少し述べましたが、1000点以上のポスターをサンプリングする中で、第一見で「これはムリ」「どーしちゃったの?」 「何じゃこりゃ!?」というものが1、2点どころか相当数ありました。それらはほぼどれもH型かL型です。なのでこの二つの型は圧倒的に「負けるポスター」になっています。落選者は公人ではないので立候補ポスターとはいえ個別に写真は見せませんが、ほんとになぜ立候補したのかという人もいます。立候補するだけにしても数十万円の供託金が必要です。お金の使い道に困っているのですかね。最たる一人は「彼女募集」を訴えているおじさん。他にも習字の練習みたいに名前だけの人や自分よりもゆるキャラの写真の方が大きい人などはもちろん落選。ただH型L型の中で例外的に当選が多かったものがあります。それは自分の子ども(赤ちゃん)と一緒のポスター。子育て世代や少子化問題についてのわかりやすい主張がある人は勝っています。

第7章 ところが

さてさて、ここまで数字をベースに徹底的に選挙ポスターの調査研究をしてきましたが、実際投票所に行くと違う気持ちが働きました。投票所があまりに殺風景(当たり前と言えば当たり前)なのです。記入するスペース(一欄みたいに仕切られている空間)には候補者の名前と政党名だけで写真やポスターはないのです(※写真㉒)。僕は係の人に断って投票所のすぐ外にある掲示板まで顔と名前の確認に行きましたが、その場で直感で選ぶ人も多そうです。その場合、名前のイメージが最大のポイントかもしれません。そうでなければ前述した「彼女募集のおじさん」が最下位とはいえ75票も入っている理由がわかりません。そこでポスターを見て名前の第一印象が強くて面白いなと僕が勝手に感じた上位10人を記します。本名をひらがなやカタカナで工夫したネーミングセンスが抜群の人もいますね。

写真㉒

並びは五十音順(※敬称略)です。 〇太田太(中央区) 〇おおやね匠(江東区) 〇すだケン(渋谷区) 〇セバタ勇(江戸川区) 〇つじ誠心(練馬区) 〇トマ孝二(渋谷区) 〇なかまえ由紀(港区) 〇ふまミチ(豊島区) 〇堀切ねんじん(渋谷区) 〇マック赤坂(港区)

選挙は基本本名でしか出られません。マック赤坂氏は別名が浸透しているので例外的な措置で認められていますが他のみなさんは持って生まれた名前の活かしかたが見事です。 これは後付けの論理ではなく投票所で率直に感じたので開票前に(当日のお昼12時)こういう証拠写真を撮っておきました(※写真㉓)。10人の中から「太田太」さんを選んだのは僕の選挙区が中央区だからです。因みにこの10人は全員当選しました!おやおや?ということは一番大事なのは名前なのでは(苦笑)。この名前の第一印象で決まる理論で語ると今回の選挙で最も厳しかったと予想されるのはこの人。練馬区の山口達也さん。あの方と同姓同名。あえて理由は言いませんが、予想通り落選されています。ぜひ次回、ほとぼりが冷めたときには健闘を祈ります。

写真㉓

 

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