映像2022.01.25

物語と撮る現場~縁の下の力持ちの話~

東京
映像何でも屋
秘密のチュートリアル!
野辺五月

本年もよろしくお願いいたします。――と挨拶を各所にするより先に、昨年末から今年の初めにかけてもガッツリ現場におりました。そしてコロナではないが体調崩すということもありましたが、無事回復。
「2022年が始まったな」と動き出しています。改めまして今年もよろしくお願いします。
さて、そんな中初詣にむかったのですが、祈祷後、仕事の電話で即ダッシュ解散となりまして――今年は最早そうやって走り抜けるのかなという予感がしております。

ところで、偶然ではありますが
去年末から今年にかけて、大小(インディーズ含め)映画の現場に関わることがあり、またプロデューサーはじめ「現場を仕切る側」の話を伺う機会が多くありました。今日はそのお話です。
発端の一つとして、昨年、ひょんなことから映画のプロデューサー講座をとり、「システマティックに何度も映画を撮っている大きな現場」と、ミニマムでもちゃんと赤字を切らないように回している映画制作の内訳を知る機会がありました。
同時に、昨年末、ひょんなことから複数制作に関わることがあり、ジャンルの差みたいなものを感じるとることも出来ました。
私自身CM・PV・WEB・ドラマ・映画……同じに見えていた分もあり、違う現場から来ると摩擦が起こる話を聞くものの、何故かなと思っていたのですが……
何か所か並行して動いたところ、分かってきたことがあります。

動画や映像の仕事自体は、日常に目に入る数がここ数年でかなり増えたと思います。特にコロナの影響で、これまでのプロ以外の方や隣接ジャンルから転向して、勉強して成功する例をとても多く見かけられるのも事実です。
需要が、まずソフトを動かすところからはじまって、モーションピクチャー、そして3Dにまで伸びた過程もよくわかりました。クリエイターとして個人で楽しむ方も増えました。
次に、仕事でいうと、クリエイターに外注する形から、所属する企業やグループが増えました。また企業側も内製化して、動画を自分たちで作る動きが出ています。
……が、これは、あくまで新しい動きであって、旧来のCMや映画・ドラマとはまた別のラインです。新しいラインでの作り方ももちろんあって混ざりつつあるのは事実なのですが、その際も軸になる部分は同じだと感じました。
そんな中、今回の話題は物語がある作品作り。特に映画についてのお話。

映像において、物語ありきのものと、そうでないものでどう違うか。一つはシナリオです。
CM現場では代理店が上にいるとき、代理店のコピーライターやディレクターが企画=シナリオ・コンテをきるケースが多くあります。また(代理店を通していたとしても)小さなプロジェクトの場合や、プロダクションが取ってきて直接する仕事の際は、現場のディレクターや制作・編集側がすることになります。
脚本家という仕事はここにありません。
テレビの番組作りでは、放送作家やその集団に投げたり、脚本家に依頼することがあります。映画も同じですが、監督自らが脚本をおこしたり、タッグを組んでいたりする場合もあります。
次にそのシナリオやコンテをどう演出するか?ここは監督やディレクターの仕事ですが、ここで規模が問われます。
規模が大きければ決めるべきこと・手配は膨大になります。そこで、必要なのが助監督・演出部/制作部・美術部という区分けで、映画の場合はざっくりそんな感じで分けられています。
なお、助監督は大抵複数人。大きな工程を整理し、監督のしたいことを実現に向けて動くためにすべきことはたくさん……
もう少し前段をいえば、場所・人・ものの手配、お金にまつわること=何かを作るとき必要な手配をラインプロデューサーが「制作」/「演出」それぞれを仕切る助監督たちと共に決めていく形になります。(勿論最終判断はプロデューサーであり、監督ですが)
現場の規模関わらず、制作がかちっとはまる・スケジュールと予算感をしゃんと出したうえで撮影から編集まで終わるのは、助監のような【縁の下の力持ち】&【調整役】がいてこそです。
極端な例ですが、「下に助監督がいて安定した動きを組めるからこそ成立している」という現場はとても多いと聞きます。助監督や制作部・美術部・演出部が足りない場合は、監督もどれかをかねなければなりませんし、かねないのにうまく進んでいるのならば、本来の役割でない人間がその足りないポジションをうめていることになります。結果、スケジュールが乱れたり、アレコレ間に合わないという事態に陥ります。(このパターン、規模が小さいものにありがちという話も……)
ではインディーズ映画の制作では?というと、こちらも変わりません。いくつかお邪魔したり、それらをお手伝いするプロデューサー(※配給まで持っていくためにPがついている作品もあるのです)と話していて分かったことですが、「助監督」「制作」に、プロを呼んでいる、ないし、出身の関係でそういう作り方をしっているかどうか?――ここが一つ、商業化するときの分かれ目のようでした。
勿論専門にいなくてもうまくいっている、何度も作っているというチームもありますが、その場合は「誰か」が無意識にその役目を担っていると思って間違えないです。聞き取りをしていると、本当にそう思います。
実際問題、予算や時間がなければないほど、システマティックに動く必要があります。スケジュールの組み方一つ、場所の取り方、スタッフィング……こういったことの「回し方」は単純に知っているか知らないかだけでかなり変わります。

今は人数の少ない編成や、監督・編集・撮影のポジションに焦点が当たりがちですが、一人でミニマムに済ませることが正解とは限りません。チーム作業でのクリエイティブだからこその強みや連携について学ぶいい機会でした。
大きな現場や、安定的に仕事をしている監督・プロデューサーのもとにはきいてみると【決まった助監督】たちがいます。指名してもうタッグ組んでるんですよね。
そして、制作と助監督は腕のいい人ほどかつての映画の「組」のように、監督やプロデューサーとくんでいるのでなかなか捕まりません。年間取れる本数は限られているので、スケジュールを押さえられています。
編集や映像の仕事が増え、クリエイターは増えましたが、この【縁の下の力持ち役】へは焦点が当たらず、予算が削られがちな為、ますます希少になってきています。一方で、明らかにその役目の人を一人入れさえすれば崩壊しなかったのに……と思う現場を見かけるようにもなりました。(映画とは限らずです)
助監督は監督になるための手前の仕事と思われがちですが、お話しした助監督の中にはそのプロフェッショナルな仕事自体が好きで、監督のオファーを断って続けている方もいらっしゃいます。そして、そのノウハウは分かりにくいけれど、ある程度の物語が撮影する映像では(ジャンル関わらず)非常に活かせるものなのです。

もう一つ悩ましいことに規模感や思想の違う現場では、どちらも能力を発揮しにくいということもあります。
【一人何役も出来る】=予算も落とせる=小回りとコントロールが効く仕事と、チームのメンバーそれぞれの強みを活かしてタッグを組んで完成させる仕事とでは、やり方や大事にするところが違います。どちらがいいではないのです。
別の現場においては、邪魔になる……というケースをいくつか見ました。
良い悪いでなく、向き不向き。更にそもそも知っているか知らないか。
私自身、どこで重宝されるか、2022年何に尽力するべきか……迷いながら観察した年末年始。今年も色々な現場で求められるがままに動くと思いますが、全体図を意識して動ければと考えています。また既に構築されて、システマティックに動いている現場の仕組みもどこかで実践的に学ぶ機会を得たいと考えています。

プロフィール
映像何でも屋
野辺五月
学生時代、研究の片手間、ひょんなことからシナリオライター(ゴースト)へ。 HP告知・雑誌掲載時の対応・外注管理などの制作進行?!も兼ね、ほそぼそと仕事をするうちに、潰れる現場。舞う仕事。消える責任者…… 諸々あって、気づけば、編プロ・広告会社・IT関連などを渡り歩くフリーランス(コピーライター)と化す。 2015年結婚式場の仕事をきっかけに、映像畑へ。プレミア・AE使い。基本はいつでもシナリオ構成!2022年は現場主義へ立ち返り、演出部に立ち戻るつもり……か? 早く趣味の飲み歩きができるようになって欲しいと祈る日々。

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