アニメ2021.01.29

ゆうきまさみ展でみた画業40年の凄み。鉄腕バーディー、パトレイバー、あーる、新九郎まで作品まとめ

東京
編集者
クリエイターズステーション編集部K
クリエイターズステーション編集部K

2020年にデビュー40周年を迎えた“異色の”漫画家・ゆうきまさみ氏。今回「画業40周年記念企画 ゆうきまさみ展」に行ってきた編集部Kのレポートを、ゆうき氏の年代記的にお届けする。

ゆうき氏の大ヒット作といえば、「鉄腕バーディー」「機動警察パトレイバー」「究極超人あ~る」(共に小学館)など、枚挙に暇(いとま)がない。1980年代から90年代を経て、彼の作品を読み続けた私はこの展示が楽しみかつ、感慨深かった。

というか、聞けば氏は60歳を超えているという。自分も同様に年を重ねていることは棚に上げて「えっ…」と今さらながら驚いた。

コミックエッセイ「ゆうきまさみのはてしない物語」は「月刊NewType」(KADOKAWA)で1985年創刊号から続いているし、最新作「新九郎、奔る!」を「週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)」で連載中だ。完全に現役のクラッキ、マエストロ、名人なのである。「老(お)いては益々(ますます)壮(さか)んなるべし」である。

異色の漫画家・ゆうきまさみ

なお最初に“異色の”と書いたのは、ゆうき氏が「漫画雑誌に持ち込んで賞を獲りデビューする……」という道を通っていないからだ。ほとんどの人気作家は、この流れで連載を始め、ブレイクしていく(※)。

だが彼は違う。「月刊OUT」(当時みのり書房・廃刊)というアニメーション専門誌で「機動戦士ガンダム」のパロディコミック「ざ・ライバル」(80年)でデビュー。その「OUT」を出版するみのり書房などでオリジナル作品を発表するようになった。その時にガンダムのキャラクターデザインを担当した安彦良和氏が「オリジナルを描きなさい」と口添えしたことは、ファンにはよく知られていることだ。

展示されていた貴重なデビュー作「ざ・ライバル」原稿

その後、小学館の編集者と知り合い、短編を発表、そして「鉄腕バーディー」(85年~)の
連載を開始することになるが同年、出世作といっていい「究極超人あ~る」の連載がはじまり一時中断した。

こうしてゆうき氏は約35年にわたり、主に小学館の雑誌で作品を描いていくことになる。

※ちなみに今はSNSからのスカウトデビューも多くなっているようである

 

ゆうきまさみ展レポート

では展示のレポートをしていく。まずは「画業40周年記念企画 ゆうきまさみ展」に入るとこのようなコメントが張ってある。

自分は果たして「ちゃんと漫画家になったのであろうか?」という疑問を抱きながら、明日も明後日も原稿を描き続けます 「画業40周年記念企画 ゆうきまさみ展」本人コメントより引用

40年描いていてこの謙虚さは、前述の通り一般的な漫画家デビューをしていないからだろうか。

「究極超人あ~る」で獲った、優秀なSF作品およびSF活動に贈られる星雲賞※

 

作品の大きなパネルが並んでいる。

それではゆうき氏の代表的な5作品(全て小学館発行)を、展示の写真と共にまとめて紹介する(写真の映り込みはご容赦願いたい)。

星雲賞について

前暦年に発表もしくは完結した、優秀なSF作品およびSF活動に贈られる賞。毎年行われる日本SF大会参加登録者の投票(ファン投票)により選ばれる。Wikipediaより引用

 

足掛け27年で完結!「鉄腕バーディー」(1985~2012)


宇宙から地球にやって来たアルタ人女性警察官・バーディー・シフォン・アルティラ。彼女の失敗により致命傷を負った地球人の少年・千川つとむが、バーディーの体に意識を移され、2人が体を変化させつつ戦うことに…。結構ハードめなSF作品であった。

初期の今と異なる絵柄は懐かしい!

 

85年に初の連載となったが、連載は一時中断。その後短期シリーズとして発表され、雑誌を変えながら、セルフリメイク版「鉄腕バーディーEVOLUTION」が2012年に完結した。

クラウドファンディングにより再現された部室が話題!「究極超人あ~る」(1985~1987※)

“光画部とそのOBたちのゆる~い日常。SFネタ、特撮ネタ多数な伝説のコメディー作品!!
サンデーうぇぶりゆうきまさみ画業40周年記念企画ページより引用”

「光画部」(こうがぶ)は一般的にいえば写真部。その部員たちと、マッドサイエンティストが作り上げたアンドロイドのR・田中一郎を描いた学園ものだ。ゆうき氏初の長期連載作品。
※1987年の連載終了から25年後の2012年に読み切り短編が描かれ、その後も月刊/週刊ビッグコミックスピリッツで不定期に掲載されている。

「文化系もの、学園ユートピアもの」という表現がしっくりくる。その舞台となった光画部の部室がクラウドファンディングで作られ、再現された。

分かる人には分かる重要な炊飯ジャー

現在も続くメディアミックス企画「機動警察パトレイバー」(1988~1994)

“作業用ロボット「レイバー」を使った犯罪に対抗すべく結成された特車二課第二小隊の活躍を描く‼
サンデーうぇぶりゆうきまさみ画業40周年記念企画ページより引用”

1980年頃にはパトレイバーの原型となる企画をゆうき氏が考え、当時から知り合いだったアニメーション(メカ/キャラクター)デザイナー出渕裕などの仲間にみせていた。その後、オリジナルビデオアニメとしてスタート。ゆうき氏は原案としてアニメ版にかかわりつつも、「原作」としてではなく「漫画版」のパトレイバーを描いた。

立体のパトレイバーも展示されていた。

ラスト近くの原画、ぐっとくる。

 

競走馬を育成するホームドラマ「じゃじゃ馬グルーミン★UP!」(1994年~2000年)

“家出少年・駿平がたどりついた先は、美人4姉妹の住む競走馬の牧場だった!?牧場で働きたくなる作品!
サンデーうぇぶりゆうきまさみ画業40周年記念企画ページより引用”

高校生だった久世 駿平(くぜ しゅんぺい)が北海道旅行をきっかけに渡会牧場に就職し、「ダービー」を獲るために、競走馬育成に奮闘。そのなかで恋、結婚までが描かれるホームドラマ。

ゆうき氏の作品としては、はっきりと恋愛を描いているのも特徴。ゆうき氏の作品には「男女のバディ(相棒)もの」が多いが、作中で恋愛に発展することは少ない。リアルタイムで読んでいた編集部Kには新鮮だった覚えがある。

 

北条早雲を描く歴史もの「新九郎、奔る!」(2018年~2021年現在連載中)

“時の権力者、伊勢守貞親を伯父にもつ、伊勢千代丸は当年十一歳。

千代丸が京で大人の世界をはじめて見た日。その時、時代はあの応仁の乱へのカウントダウンがはじまっていた――――!

「戦国武将のはしり」ともいわれる男・伊勢新九郎を敬愛するゆうきまさみが満を持して挑む、本格歴史コミック!

サンデーうぇぶりゆうきまさみ画業40周年記念企画ページより引用”

「新九郎、奔る!」(しんくろう、はしる)は、後に北条早雲と呼ばれる伊勢新九郎盛時(もりとき)を主人公として、応仁の乱から戦国時代という激動の世界を活写している。

キャラクターの主線にペン入れをしたものをスキャンし、PCで仕上げるのがゆうき流。線の美しさに惚れ惚れする

「みんなで幸せになろうよ」40年間、読者はみんなそうだった。

 

紹介しきれなかったが、トロピカルコメディ「パンゲアの娘 KUNIE」、ボイーズラブ漫画家を目指す少女の物語「でぃす×こみ」、ミステリー作品「白暮のクロニクル」(共に小学館)などの展示。さらに「ゆうきまさみのはてしない物語」(KADOKAWA)のよりぬき展示も行われていた。また出口付近には複製原画の販売やグッズ販売スペースがあり、画業40年で初の画集『ゆうきまさみ画集 to be continued.』 も買うことができた。

 

思わず購入した「究極超人あ~る」のポストカード

 

自分はゆうき氏の画業40年と共に生きてきた。「究極超人あ~る」は自分を漫画好きにした決定的な作品のひとつだ。氏の漫画家デビューから程なくして、ずっと彼の作品を読み続けてきたことは幸せなことだなあ、と思っている。パトレイバーの人気キャラクター・後藤喜一のセリフが頭に浮かんだ。

「みんなで幸せになろうよ」

帰り、一緒にこの展示に行った同世代の編集者がつぶやいた。「手持ちの作品、読み返そう」。

私もまたそう思ったし、願わくば、この記事を読んだあなたも同じ思いにかられたらうれしい。

来場するとランダムでもらえるポストカード

※本展示は2021年1月11日まで開催された
画業40周年記念企画 ゆうきまさみ展[公式サイト]→  https://yuukimasami-ten.com/

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