ゲーム2018.11.21

ゲーム作りの現場を変え、クリエイターが安心して仕事ができる環境を作る

札幌
株式会社pixyda 代表取締役 石川 貴也 氏
北海道札幌市に拠点を置く株式会社pixyda。その前身となったのはとある企業のゲーム事業部でした。経営統合や事業譲渡を繰り返したのち、現場を統括していた石川 貴也(いしかわ たかや)氏はゲーム事業部を率いて起業します。その決意に込められた思いをお訊きしました。

社員に落ち着いたゲーム作りの環境を作るために起業

石川さんご自身のキャリアと会社立ち上げまでの経緯を教えてください。

冒頭から言うのもなんですが、実はゲーム業界を目指したことがありません。大学を卒業し、地元のコンピューター系の会社に入り、システム系の開発やディレクションをしていました。10年くらい前でしょうか。ゲームの部署の責任者がいなくなってしまい、自分がゲームの部署を見なくてはならなくなったのです。

まったくゲームのノウハウがない状態だったのでしょうでしょうか。

高校の頃は遊び程度でプログラムを作っていたのですが、ゲーム機専用のゲーム制作の経験はなく、まったくわからない状態でした。

ゲーム業界にありがちなんですけど、実際に現場に入ったところ、ゲームを作る方法は知っているものの時間をかければできるというやり方で進めていて、効率的な作り方をする文化がなかったのです。結局最後は深夜残業しているという流れが見受けられました。そこで自分がシステム開発で培った作り方を導入したらどうだろうと考えたのです。事業譲渡によって東京の企業の子会社になり、東京のゲーム開発の現場を見ることになったのですが、いざ東京に来てみるとこちらも力任せのやり方をしていたので、改良していきました。

そんな折、ふたたび事業譲渡がありまして。事業譲渡を繰り返して会社名が変わり、転職回数ばかりが増えてしまって。ならば私が独立して会社を安定させたらどうだろうと思ったのです。仲間の技術力は高いと思うので、そういう人たちが落ち着いて仕事ができる環境はどうやって作れるのかを考えたら、自分で会社を立ち上げるしかないと思うようになったということです。

地元札幌に本社を置いて感じたこと

pixydaではどのような仕事をしているのでしょうか。札幌と東京合わせて教えてください。

スマートフォン向けのRPGゲーム、シミュレーションゲームを開発・運営しています。企画の段階からQA(品質保証)、CS(顧客満足度)管理も弊社でできます。ゲームを最初から最後まで作れるのが弊社の強みですね。これも強みと言ってもいいのかもしれませんが、弊社はIPもの(知的財産を使ったコンテンツ)の扱いに長けているのです。IPものは版元と揉めることが多いですが、東京の部署の案件については完全に弊社にお任せになっているので、信頼していただいていると思います。

札幌に本拠地を置いた理由について教えてください。ゲーム業界において、地方に拠点を置くことはどんな利点があるのでしょうか。

まず地元で仕事をしたいという思いがありました。東京に来た理由が先ほどお話しした通りで、一時的な話だったんです。起業するなら最初から北海道でと考えていました。会社を立ち上げるにあたり助けていただいた会社も札幌の会社です。

ゲームといえば東京に集中しているイメージがあるので人材の確保に不安があったのではないでしょうか?

そこに不安はありませんでしたね。札幌のゲーム専門学校や大学もありますし。あと札幌は昔からゲーム会社が多いんですよ。私が前に所属していた会社もゲーム部署があったわけですし。自治体としてもクリエイティブ系の人材確保に力を入れています。受託の仕事になると基本は東京の会社からの依頼になるので、私が東京で対応しています。

現在、札幌と東京で事業を展開していますが、開発と運用に分かれているのではなく、タイトルごとに分かれているのですね。

今はきれいに分かれていますね。現状プログラマーやデザイナーを一ヶ所にまとめるということはしていません。今後もしないですね。それぞれの場所でチームをいくつか持って回していくイメージです。札幌にはQAとCSのメンバーがいないので、そこは東京でやっています。

札幌に本社を置くことに不安はなかったとおっしゃっていますが、逆にデメリットに感じたことはありますか?

今のところデメリットはなく、どちらかというとメリットが多いと感じています。先日、北海道胆振東部地震がありましたけど、東京は普通に動いていました。リソースが両方に揃っているので、例えば札幌に人が足りないとなったときに東京で空いている人を何名かアサインすることもできますし、事業の継続性を考えると拠点がいくつかあるほうが回しやすいと思います。

北海道に会社があれば、わざわざ東京に行かなくても地元でゲーム制作者を目指せる。学生さんたちにとってもいいことですね。

そう思います。札幌の景気が一時期悪くなってゲーム会社が撤退することが続いていたので、私どものような新しい会社によって札幌が元気になれば、と思っています。

それと、北海道の人は他の地域の方と比べて地元で働きたいと思う方が多いんです。東京に来てどこかの会社で働いている人たちも、いつかは札幌に戻りたいと思っていることが多いですね。そういう人のために東京で行われるUIターンのイベントで面談したりもしています。

東京と札幌の両方の人材を見ていらっしゃると思うのですが、違いを感じることはありますか?

なんとなく札幌の方がのんびりした人が多いかなという気がします。東京は会社がたくさんあるのでうちがだめでも他にいける、というドライな部分はあるんじゃないかな。それでも今いる東京のメンバーは辞めずについてきてくれています。自分はあまりうるさく⾔わないですし、働きやすいからだと思います。

そういった働きやすさが面白いゲームに繋がっているのではないでしょうか。

苦労して、苦労して、いいものができました! というのもいいんですけど、楽しく作ってみんなに受け入れられる方がいいと思うのです。楽しんで作っているものはわかりますし。そういう環境にしたいですね。

現在は札幌と東京の2拠点でそれぞれタイトルを運用しているとのことですが、今後別の場所に拠点を作りたいと思いますか。また、プログラマーだけを一か所に集めた開発スタジオみたいなものを作るという構想はあるのでしょうか。

他に拠点を作りたいというのはないですね。会社はもう少し大きくしたいですが。弊社の開発スタイルでいくと、1拠点ですべてのリソースが揃っているというほうがやりやすいので。

それは石川さんがこれまでの経験の中で培ったモノづくりのフローがあり、それが1つの拠点で回っているからでしょうか。

そうですね。その形は崩したくないと思っています。なぜかというと、プログラマーだけの開発スタジオを作ると、能動的に動く人たちはいなくなってしまうからです。完全に外注先の会社みたいな感じで、言われたことしかやらなくなる。できれば各メンバーには能動的に動いて、別の職種の人間とも話し合って良いものを作ってほしいと思っています。各メンバーが自分たちで動き、相乗効果で大きいものを作っていくという方がモノづくりには向いているのではないかと思うんです。

今いらっしゃる社員さんもそういう気持ちの強い方が多いのでしょうか。

放っておいても大丈夫ですね(笑)。自立して動けるようになってきました。最初はなかなかそうはいかなかったです。私があまりゲームを知らないのがいいのかもしれませんね。上の立場の人間があれこれ言うと命令になってしまって、自分にそのつもりがなくても忖度(そんたく)したものしかできなくなってしまうんです。今の世の中、尖ったものでないとゲームが表に出られませんから。なので少しでも面白いものをつくるために、あまり自分は口を出さないようにしています。

働きやすい環境をつくり、楽しい職場から楽しいゲームを配信する

御社のように拠点をいくつか持つ会社は、今後増えていくと思いますか?

増えると思います。私が子供の頃は将来ネットが繋がってどこででも仕事ができるようになると言われていたんです。ただ、実際にそうなっているかというとそうではない会社が多いかなと。そういう意味でも拠点を2つ持ってうまくやれるというところは見せていきたいですね。

今後は自社のIPやパッケージ物をつくりたいという思いはあるのでしょうか?

もちろんあります。やりたいと強く思っているメンバーも現場にはいますので、その夢は叶えてあげたいですね。ですが会社を安定させたうえでやらないと。足枷になって会社が傾く、というのを何度も見てきたので(苦笑)。もうちょっとラインを増やし安定したらやってみようと思っています。

これからのゲーム業界にどのような人材を求めますか。

私はその辺は一貫した意見を持っていて、能動的に動ける人がいいですね。自分でアイデアをどうにかしたいと思ったり、新しい技術があれば調査する人です。それが次の技術に繋がるかと思います。そうやって一歩先にいかないと置いていかれてしまう業界なので。常に新しい技術を追いかけて、他のゲームから応用できる部分を考えられる人たちがいいですね。

今後、pixydaをどのような会社にしたいとお考えですか?

とにかく私には会社を安定させるという使命があるので、まずはそこですね。今は札幌と東京でそれぞれ1タイトルづつやっていますが、タイトル数を増やして、どれか1つが終わっても他でフォローできるような体制にしていかなければと思います。

また、みんなが働きやすい環境にしたいですね。いろんなイベントをやったり。補助を出して部活も作れるようにしたいと思っています。会社の中が楽しいと思ってもらえるような環境を目指しているところです。

取材日:2018年10月16日 ライター:みかめ ゆきよみ

株式会社pixyda(ピクシーダ)

  • 代表者名:代表取締役 石川 貴也
  • 設立年月:2017年8月
  • 資本金 :980万円
  • 事業内容:スマートフォン向けゲーム 企画・開発・運営
         家庭用ゲームソフト 企画・開発
         企画・グラフィック制作・開発・運営
  • 所在地 :札幌本社 〒060-0032 北海道札幌市中央区北2条東4丁目1番地2 サッポロファクトリー3条館 4階
  •      東京オフィス 〒162-0067 東京都新宿区富久町16-5 新宿高砂ビル6F
  • URL:http://www.pixyda.co.jp/
  • お問い合わせ先:サイトとのお問い合わせフォームよりお問い合わせください。
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