職種その他2022.08.24

沖縄の宝「泡盛」を未来へ! 「ちょい飲み」サブスクで酒離れが進む酒造業界を盛り上げる

沖縄
OKTコミュニケーションズ株式会社 代表取締役
Koji Oketa
桶田 幸志

沖縄発祥の蒸留酒「泡盛」の魅力を全国に広めようと、「ちょい飲み」支援定額制サービス「AWA PASS(以下、アワパス)」を展開している「OKTコミュニケーションズ株式会社」。インターネット黎明期から、Webサービス開発に携わってきた代表取締役の桶田幸志(おけた こうじ)さんは、沖縄特有の泡盛文化に魅せられ、沖縄に移住、独立しました。コロナ禍でも、泡盛にまつわる企画を次々と立ち上げる桶田さんに、原動力を伺いました。

国内外で数々のメディアを立ち上げ、代表として実績をあげる

関西ご出身とのことですが、沖縄に移住される前のキャリアをお聞かせください。

学生の頃に「Yahoo! JAPAN」がスタートし、Webポータルサイトは黎明期を迎えていました。ITの発展で広告の形ががらりと変わるだろうと感じ、その先端を行く会社で働きたいと、1997年に伊藤忠商事のグループの一つで、Web広告やメディアの開発を担う会社に就職しました。
在職中は、情報サイトなどを運営する「エキサイト」のCOO(最高執行責任者)として携わったり、美容予約サイトを運営する「ビューティーナビ」をM&A(合併・買収)したりしました。
そのほかにも、台湾のインバウンド向けメディア「Japaholic(ジャパホリック、旧エキサイト台湾)」をつくる、美容系総合ポータルサイト「@cosme(アットコスメ)」を運営している株式会社アイスタイルとジョイントベンチャーをするなど、アジア展開を進めたのちに、子どもを持つ女性向け情報サイト「ウーマンエキサイト」の立ち上げを行い、2億PVものウーマンネットワークを構築しました。

尽力していた情報サイトのTOBを機に移住決意

今でも有名なメディアポータルサイトを仕掛けるなど、ご活躍されていたと感じますが、なぜ沖縄で会社を始めたのですか?

東京に住んでいた頃は、ダイビングのために年に何度も沖縄を訪れるほど沖縄が好きでした。漠然と「老後は沖縄に住みたい」とは思っていたんですが、移住までは考えていなくて。ただ、このままコンクリートジャングルの東京で仕事をしながら生きていくのか?それとも、もっと違う働き方もあるのではないかと考え、東京とは真逆の、海と自然に囲まれた魅力あふれる沖縄で暮らすことを決意しました。
ひとまず会社をつくってから何をしようかじっくり考えようと、沖縄に住み始めてまもなく、「OKTコミュニケーション」を設立しました。

日本で落ち込む泡盛文化 海外では大好評

まず会社からつくられたんですね。それから、どのように事業を考えていったのか教えてください。

もともと泡盛が大好きだったのですが、泡盛の出荷量がものすごくダウントレンドだということを知りました。何とかその状況を打破したいと最初に行った事業が、海外での泡盛販売でした。
台湾とマレーシアのクアラルンプールのデパートで開催された「沖縄フェア」で、県内最古の泡盛酒造メーカー「新里酒造」の泡盛を販売したところ大好評だったんです。やり方次第で、泡盛は売れると感じた瞬間でした。
その後2020年に生み出したのが、知見のあったITの力を使ったアワパスでした。

サブスクで「ちょい飲み」を後押し。若者にも手頃な価格設定がキモ

アワパスについて詳しくお聞かせください。

会員になって毎月660円(税込)を払えば、登録飲食店で毎日2杯のドリンクが飲める「ちょい飲み支援」サービスです。目指すのは、気軽に泡盛が飲める環境を整えること、つまり「ちょい飲み」の推進です。

なぜ「ちょい飲み」が大切なのですか?

泡盛の県内消費量は17年連続で減少しており、若者のお酒離れが著しいんです。週1回以上お酒を飲む人は50、60代で5割以上なのに対し、20代は3割程度。割合だけみると大した差ではないように感じられますが、50、60代に比べ、20代の人口比率は小さいため、お酒を飲む人は非常に少ないのです。お酒を飲む人は少子化で今後さらに減るので、このままでは沖縄の大事な泡盛文化が衰退してしまいます。
そこで、まず泡盛を飲むハードルを下げようと考え、若者でも気軽に払える「月に660円」という金額を設定しました。お酒を一杯注文するとだいたい350円前後。2杯飲んだらアワパスのひと月分の料金なのでお得になるわけです。これなら毎日でもお店へ通えますし、必然的に泡盛に接する機会が増え、消費につながるはずです。

会員にお得な一方、加盟店にはどのようなメリットがあるのでしょう。

多くのグルメサイトは掲載費が必要で、さらに割引などのクーポンを付けなければなりませんが、アワパスへの加盟は無料です。ユーザーへ2杯お酒の提供が必要ですが、掲載費の代わりにアワパスで来店されたお客様へのサービス、と説明するとご理解いただけます。加盟店は無料で掲載することで集客につなげられるうえ、ユーザーは無料でお酒を飲めるという、双方がwin-winなサービスだと思います。
アワパスを利用するために必要な操作を極力シンプルにしたことも、他グルメサイトと比較した場合のメリットといえるでしょう。店舗へヒアリングしたところ、グルメサイトの掲載や更新、クーポンの処理を「とても面倒」に感じていることが判明したので、アワパスでは、それらをボタン一つでできるようにしました。

コロナ禍の逆境をチャンスに。アイデアを駆使して起死回生を図る

加盟店数や会員数の推移はいかがですか?

加盟店は順調に増えており、那覇市だけで700店舗を数えます。サービスを始めてからニュース番組で特集を組んでもらえたり、テレビCM、Web広告などの効果もあり、一気に会員数が伸びました。
しかし、新型コロナウィルスの影響を受け、これまた一気に会員数は減ってしまいました。飲食店が開いていないという状況はどうにもできないので、その間に策を仕込みました。そのおかげで、この3カ月ほどで徐々に回復してきています。

どのような策を仕込んだのか教えてください。

沖縄県内では、まずJリーグチームのFC琉球とコラボレーションして「FC琉球アワパス」を開始しました。通常のサービスに加え、FC琉球が試合に勝った当日とその翌日は3杯無料になり、FC琉球ファンクラブ会員は月額料金が半額の330円になります。さらに、FC琉球のJ1昇格が決まった際には月額料金が1カ月無料になるというファンにはうれしいサービスです。
このプロジェクトは、スポーツ産業成長促進事業 「INNOVATION LEAGUE SPORTS BUSINESS BUILD」(スポーツ庁主催)で、もっとも共感・関心を持ったプロジェクトとして「オーディエンス賞」を受賞しました。サッカーの試合後に観客が飲食店に来てくれるきっかけになると、加盟店からも期待されています。
ほかにも、コロナの影響で客足が落ちている読谷村(よみたんそん)のホテルと、村内の泡盛酒造メーカー「比嘉酒造」と組んで、ホテル宿泊者は無料、村民は半額でアワパス会員になれるキャンペーンを打ち出したり、東京から沖縄への旅行者に1日フリーアワパスを付けたり、いろいろな企業とキャンペーンを実施しています。

「飲みニケーション」を通して「お酒」にまつわるビジネスが生まれる

6月の新聞で、「『琉球ウイスキー』を泡盛メーカーと一緒に開発した」という記事を読みました。会社設立から、次々に新しい事業をされていますが、その原動力を教えてください。

お酒が好きなことに尽きますね。特に沖縄の文化である泡盛が大好きで、それを広めるためのビジネスをつくることが何よりの喜びです。また、私は「飲みニケーション」を大事にするタイプなんです。お酒を飲みながら仲間と一緒にビジネスのディスカッションをしており、それが原動力になっていると感じます。
弊社は、私が立ち上げた別会社が運営するシェアオフィスに入居しており、そこには53社が入っています。その企業の社長やメンバーとともに、お酒を酌み交わしながら話し合うと、新しいアイデアがどんどん生まれます。

若い世代は飲みニケーションを好まないと言われていますが、御社の社員さんはいかがですか?

幸いにも6名の社員全員お酒が好きですが、飲みニケーションを大事にする社風は、泡盛文化が根付き、比較的酒飲みに寛容な沖縄という土地だからこそ育まれたとも感じます。
東京で働いていた頃は、お酒の席で仕事の相談をすることはほとんどありませんでしたが、今ではオフィスが繁華街にあることも手伝って、一人で飲んでいてもどんどん仕事仲間が集まってきます。

そのような環境で生まれてきた、新たな計画はありますか?

泡盛と同じく沖縄の文化である「空手」と泡盛を絡めた企画を進めています。空手発祥の地である沖縄は、空手愛好家に人気の観光地ですし、『コブラ会』という空手ドラマが大人気です。空手ブームが到来しつつあるこのタイミングで実現できれば、泡盛を盛り上げる一役を担えるはずです。

目指すは泡盛フェアを全国で開催 酒造業界の底上げにつなげたい

今後、どのような展望を描いているか教えてください。

まずアワパスの全国展開を考えています。既に大阪と香川ではスタートしており、福岡でも近日中に始まる予定です。大阪では、ビールなど「泡」のお酒が、香川や福岡では地酒が飲めるようにしています。
現地のパートナー企業と組み、OEM(相手先のブランドによる生産)でサービスを提供していますが、「アワパス」というブランド名は残しています。アワパスを全国に広げられた暁には、泡盛フェアを各拠点で開催したいと考えているからです。アワパスネットワークがあればどこでも泡盛プロモーションができますし、各地域の地酒もしかりです。
泡盛はもちろんダウントレンドの酒造業界全体の底上げにつながると信じています。

最後に、どのようなスタッフと一緒に働いてみたいですか?

弊社は小さな会社なので、営業から企画構築、運営まで、あらゆることをやらなければなりません。大変だと思いますが、その分「経営」というものを一から学べると思いますので、将来的に何かビジネスをつくりたい、起業したいという意欲を持った方とぜひ働きたいですね。
私自身、かつては親会社に在籍し、支援を受けながら新しい会社をつくってきました。そのようなチャンスを沖縄の若者にもどんどん与えられる会社でありたいです。
弊社はシェアオフィスに入居していますので、同じフロアには経営者が山ほどいて、会社にいながらビジネスネットワークを構築できます。いつでも相談できる相手がいますし、皆、目標のある意欲的な若者を応援してくれますよ。ビジネスを実践的に学べる刺激的な環境で、ともにおもしろいビジネスを創出しましょう。

取材日:2022年7月13日 ライター:仲濱 淳

OKTコミュニケーションズ株式会社

  • 代表者名:桶田 幸志
  • 設立年月:2018年5月
  • 資本金:500万円
  • 事業内容:ちょい飲み支援サービス「AWA PASS」の提供、Webメディア事業支援コンサルティング、ブランド戦略、プロモーション戦略
  • TEL:098-975-7838
  • 所在地:〒902-0067 沖縄県那覇市安里381-1 ZORKS沖縄
  • URL:https://okt-c.com/
  • お問い合わせ先:

※掲載の社名、商品名、サービス名ほか各種名称は、各社の商標または登録商標です。

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