WEB・モバイル2022.06.22

誰もがインフルエンサーになれる時代が来る!多様化した社会に出現した新しい職業でつくる、次の世界

東京
C Channel株式会社 代表取締役社長
Akira Morikawa
森川 亮
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リモートワーク推奨中の社内は静かな印象。社員の皆さんは仲が良く、和気あいあいとした雰囲気です。

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社内には撮影スペースも完備。オフィスのいたるところで、日々撮影が行われています。 フリーアドレスのワークスペースもあります。

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社内には「C CHANNEL」をモチーフにしたオシャレなアイテムがたくさんあります。 ロゴの入った自動販売機では、C CHANNELの動画が流れていました。

C Channel株式会社の森川亮(もりかわ あきら)社長は、メッセンジャーアプリ「LINE」を立ち上げ、LINE株式会社の代表取締役社長を務めるなど、長くインターネット業界の第一線で活躍し続けている経営者です。その森川氏が、2015年に立ち上げたのがC Channel株式会社。森川氏は、多様化した現代社会では、より好奇心と専門性を持った新しい「インフルエンサー」が求められ、誰もが新しい「インフルエンサー」になれる可能性があると語ります。時代に確かな先見の明を持つ森川氏が、C Channel株式会社を通して、移り行くインターネット社会をどう見ているのかを伺いました。

インターネットの新規事業開発に一貫して取り組んできたキャリア

まずは、森川社長のこれまでのキャリアを教えてください。

もともとは12年ほど日本テレビ放送網株式会社にいました。そのうち最初の6年は、エンジニアとして選挙の予測システムや、視聴率の分析システムなどの開発に従事しました。その後は新規事業の部門に異動し、インターネット事業や、衛星放送事業、海外事業などを担当しました。
それからソニー株式会社に移って、やはり新規事業としてブロードバンドのコンテンツ配信に携わり、まだYouTubeもなかった頃に動画配信の会社を設立しました。
そのあと3年ほどしてからハンゲームジャパン株式会社(後のLINE株式会社)に転職しました。当初はオンラインゲーム事業に取り組み、社長になってからは「NAVER」という韓国の検索サービスを日本に持ってきて、立ち上げをしました。その後株式会社ライブドアをグループに加えて、「LINE」を生み出し、社長を8年ほど務めました。その後、現在の「C Channel株式会社」を7年前に創業しました。

「ポジティブ」な情報発信をするメディアを作りたかった

現在社長を務められているC Channel株式会社の事業内容をお教えいただけますか。

メディア事業ではライフスタイル提案メディアとして、社名と同じ「C CHANNEL」と、子育て世代を応援する「mamatas」、キャリア女性向けメディア「newme」を展開しています。また、インフルエンサー・マーケティング事業「Lemon Square」では企業とインフルエンサーのマッチングプラットフォームサービスがあります。また、eコマースでは自社のアパレルEC事業と、一部化粧品の販売等もしています。現在、日本以外の海外でも法人を設立し中国、インドネシアでも展開しています。

多岐にわたる事業の中で、まずはメディアに注目して話を伺えたらと思います。森川社長は、なぜ“女性向けメディア”を選ばれたのでしょうか?

LINE時代にいろいろな国の方と仕事をする中で、世界に比べ日本は自信のない若者が多いと思いました。メディアが発信する情報が、批判など「ネガティブ」な情報が多いことも原因の一つにあると考えました。そこで、もっと「ポジティブ」な情報を発信するメディアを作りたいと考えました。
しかし日本は高齢化が進んでいることもあり、新しいメディアに対して消極的な傾向があります。当初は、まだ動画メディアが少なかったので、どちらかというと若い女性向け、新しいものを受け入れてくれる層に向けて発信しようと決めました。また、広告事業の消費の大半を女性が担っていることもあり、女性向けメディアが最も事業性が高いとも考えました。

女性がいかに自信を持てるかという課題に、日々考えを巡らせている

C CHANNELを始められたときは「縦型動画」がすごく新しいものだったと思うのですが、いまは当たり前に浸透しましたね。そういったブームを先取る先見の明は、どのように養われるのでしょうか。

やはり日々自分で使っていると、より見えてくるところがあると思います。直近だと、私もYouTubeチャンネルやTikTok動画を作ってみています。それに私自身はいろいろな企業間の相談や提案を受けて、情報を集めやすい状況にいます。本当に長く仕事をしているので、業界の流れみたいなものも見えてくるかなと思いますね。

自信のない若者に触れてもらいたい「ポジティブ」な情報とは、例えばどんなものでしょうか?

私たちが立ち上げた当時は「かわいくなりたい」「モテたい」という女性が多くて、そのためにどうしたらいいんだろうかと日々議論しました。ただ「かわいい」とは何なのかを定義する段階でも、千差万別でした。「人から見られてかわいい」のと、「自分にとってかわいい」って違うじゃないですか。これらをいかに形にするのかは、1~2年は議論しましたね。
一方で、男性と女性の違いについても研究して、動物学的に男性と女性では考え方が違って、女性の方が自信を持てない生き物らしいんですよね。これは学術的にも証明されています。人口の約半分が女性であるものの、社会においてはマイノリティになりがちな女性がいかに自信を持てるか、という課題には日々考えを巡らせています。

「自分らしさをいかに表現するか」に時代の軸が変わってきた

第三者目線と、自分目線のかわいいって、やはりバランスを取ってメディアの設計を考えていらっしゃるのでしょうか。

おそらく時代背景的にも、ずいぶん変わってきたと思います。ファッション雑誌が主流だった頃は、「このモデルさんみたいになりたい」など、ある程度理想がパターン化されていたと思うんです。現在は、もう少し自由度が高まった。YouTuberやインフルエンサーのように「自分らしさをいかに表現するか」という軸に変わってきているので、私たちも、いかに背中を押してあげるのかを課題にしています。

自信を持って、自分らしい「かわいい」を表現してもらうことが課題なんですね。ところで、「C CHANNEL」ではスマホアプリのサービスを2020年に終了されていますよね。とても人気なアプリだったと思うのですが、なぜ終了されたのでしょうか?

以前あったようなメディアアプリが生き残っている国って、もう中国とアメリカくらいしかないんですよ。なぜかというと、「多様性」が出てくると、総合的な女性向けの情報は受け入れられなくなるから。そうなると、日本人だけに提供していても採算が合わなくなってしまうんですね。これはちょっと諦めました。
あとは、会社が発信するよりも個人が発信する時代になったので、個人発信に軸足を移した方が時代に即していると考えたんです。あわせて企業のミッションも「誰もが自分らしく輝ける機会を作る」というものに変えて、個人発信のメディアを応援する会社になろうとしています。

主戦場は、個人の影響力が活かせるSNSのプラットフォームへ

大きく舵を切られたんですね。では、現在「C CHANNEL」の情報へは、公式ホームページや、TikTok、YouTubeなど様々なプラットフォームからアクセスできますが、主戦場はどこになるのでしょうか?

プラットフォームに関しては、InstagramやYouTube、TikTok、Twitter、一部Pinterest、LINEなどでも発信しています。SNSという意味ではプラットフォームを選ばず、個人が持っている影響力を生かせる場所を使ってもらう感じでしょうか。
実は一昔前よりも、個人が使うアプリの数ってずいぶん減ってきました。「スーパーアプリ」と呼ばれるようなアプリですべて完結するようになってきているので、我々が1アプリを出しても、使う人って限られてしまうんです。そういう意味でも、プラットフォームに乗っかった方が早いと思います。

各プラットフォームによって、反響のある情報の違いは見られますか?

ご存知の通りInstagramとTikTokでは、ユーザーの年齢層も違います。また、Instagramでは商品レビューを求められることが比較的多いのですが、TikTokの場合はもう少しエンタメ性が高いというか、若い世代に向けられる傾向にありますね。YouTubeは、尺でいうと5~10分ほどの語りが入るような動画が多くて、より深い情報をYouTubeで取得する流れがあります。

求められる存在になるには「専門性」に特化すること。

ではずばり、御社がクリエイターに求める能力はどんなものでしょうか?

今、弊社では「ナノインフルエンサー」というフォロワーが数千人いる方々を応援しています。ナノインフルエンサーには強い専門性が求められていて、例えば一昔前だとそれ一つで完結していた「メイクアップ」という情報が、今は韓国コスメに詳しいとか中国コスメに詳しいとか、その中でもスキンケアに詳しいだとか、だんだんと専門性に特化してきています。

隙間産業みたいなイメージでしょうか。

おそらく多様性が出れば出るほど、自分に合った人から情報を取りたいと考える人が多いんじゃないかと。昔はかわいくておしゃれで、フォロワー数が数十万いる人から 影響を受けるような風潮がありましたけど、今はコンテンツとして面白かったとしても、本当の情報は、もう少し専門性に特化した人から得ているのだと思います。

そもそも御社でいうところのクリエイターとインフルエンサーという職業に、境界線はあるのでしょうか?

どんどん境目がなくなっていますね。一昔前は、良い動画には構成力や編集力を求められましたが、動画を作るツールが進化したために、そういった境目がなくなってきているんです。次に何が求められているかというと、「センス」や「情報量」。我々のようなメディアって、おそらく面白いものよりは「役に立つもの」を作るんです。そうなると、やはり圧倒的に情報量を持つ方が重要になってきます。

御社に所属するインフルエンサーになりたいと思ったら、まずは、特化した情報の収集能力、発信力が必要なんですね。

そうですね、エンゲージメント率という数字が出るんですが、フォロワーに対して専門性に特化していないと「いいね」やコメント、保存するなどのアクションが起こらないんですよね。例えば、今日はダイエット情報を出した、明日はグルメ……だと、フォロワーの信頼が揺らいでしまう。ダイエットだったら徹底的にダイエットして、実際に痩せるところを見せて、初めて信頼されるんです。

オンラインだろうと、やはり人と人との結びつきにおいて「信頼」は重要なんですね。御社が今一番欲しいクリエイターの技能って何かありますか。

技能よりもやっぱり専門性が重要で、例えばママじゃないとわからないことってあるじゃないですか。掃除や片付け、あるいは商品レビューで面白い商品を見つけてくるだとか、そういう「着眼点」ですね。どちらかというとジャーナリストに近い領域で、文章力よりも取材力。求めているのは、専門性、好奇心です。

テレビ的な動画の作り方は、ネットに合わない

社内でも動画を制作されている方がいらっしゃると思いますが、動画を制作されている方々はどんな年齢層でしょうか。

立ち上げ当時は、テレビ関係のクリエイターが多かったですね。でも実はテレビ的な作り方がネットに合わないところがあって、今は学生のインターンの方々も含めて動画を作っています。おそらく昔は動画っていえばストーリー性を求められたんですが、今の若い人たちって、ストーリーよりもその中にある目的の情報を切り取って見る傾向があるようなんです。だから若い人の見方に合わせて作る必要があるかもしれないですね。

テレビ業界で培った技術が、インターネット動画には合わないっていうのはなかなか厳しいですね。

よく言うのは、例えば「フレンチレストランの料理を毎日食べたいですか」という話です。動画でもじっくり見たいものと、つまみ感覚で見たいものがあると思うんです。皆さん忙しいので、長くて、のんびりした動画を毎日見たいとは思わないんですよ。パパッと10~30秒でどんどんつまみ食いしていきたいのが今の時代なので、長くしっかり作りましょうっていうのは合わないんですよね。

なるほど。現在は設立から7年が経ってインターネットに合う動画に対するノウハウが生まれてきたと思うのですが、当初は苦労もあったのでしょうか?

当初は「動画のファッション雑誌」というコンセプトでスタートしました。ファッション雑誌というからには、ファッションに特化した動画を撮らなきゃいけない。でもファッション情報って、動画よりも静止画の方が人気だったんですよ。動画だと汚く見えてしまう場合もあって、動画である必要性があまりなかった。すぐにメイクアップやヘアアレンジなどにシフトしました。

多様化した社会に即した、新しい領域の職業を見出したい

では、メディア以外の事業についてもお伺いします。関係会社mysta株式会社で2018年にスタートしたアプリサービス「mysta」は、未来のスターを応援するオーディションアプリですよね。どんな狙いがあるのでしょうか?

mystaはエンターテインメント領域で、芸能事務所に所属しなくても活躍できるようなプラットフォームを作りたいという気持ちでスタートしました。今は主にアイドルや声優、ミスコンに特化して進めています。特に地方にいる方ほど、東京の芸能界に対して不安を感じている。今は、大学で勉強しながらでもアイドルになれたり、社会人生活と並行してモデルをしたりと多様性の時代なので、そんな多様化した活動を楽しめるような、新しい領域の職業を見出したいと思っています。

潜在顧客と繋がる仕組みこそ、幸せなマーケティング

私生活と両立できる芸能生活を提案できるようなプラットフォームなんですね。続いて、2020年に開始された「Lemon Square」のお話も伺えますか?

Lemon Squareは、まさにファンのインフルエンサーとブランドが繋がるプラットフォームだと思っています。今までのマーケティングは、欲しくない人に欲しくさせるものでした。でもこれからは、潜在顧客と繋がる仕組みが重要なんじゃないかと思うんです。これが一番幸せな形で、ロス問題にも対応できると思うんですよね。
私たちがやろうとしているのは、本当にそのアイテムが好きなインフルエンサーたちとブランドを繋げる仕組み作りです。今までは「企業が物を作って、それを紹介して販売する」っていう流れがありますが、これからの時代では「インフルエンサーが欲しいものを企業が作る」という形に変わるんだろうと思っています。そうすると、インフルエンサーはもしかしたらメーカーになり得るかもしれない。またはOEMの会社になるかもしれない。もしくは、インフルエンサーが集まって仕入れて販売したら、流通になるかもしれない。そして今度は、インフルエンサー同士で取引が始まるかもしれません。浸透すれば、新しい経済圏も生まれそうですよね。

Lemon Squareに登録できるインフルエンサーには、何か条件はあるんですか。

自由に登録できるので、ぜひ登録ください。インフルエンサーじゃなくても、ちょっと興味があるぐらいの人に足を踏み入れてほしい場所です。

「誰でもインフルエンサーになれる時代」がくる

では、C Channel株式会社が、これから目指す未来について教えていただけますか。

やはり個人メディアの時代なので、メディアを作ろうというよりは、発信する人を応援するプラットフォームをどんどん見出していきたいですね。それが「mysta」であり「Lemon Square」だと思っています。
それに、これからAIが進化すると、AIを使う人/使われる人にはっきり分かれてしまうのではないでしょうか。その中で人間には、インフルエンサーやWeb接客、ソーシャルバイヤーのようなオンライン上で人間が活躍できる新しい職業がもっともっと生まれると思うんです。おそらく、Web3.0領域やメタバースといった領域まで広がるんだろうなと。
そうすると、例えば外見も関係なくバーチャル空間で活躍できるでしょうし、また二酸化炭素も出なくなるので、バーチャル空間こそ素晴らしいっていう価値観がここ5年~10年で出てくるんじゃないかと考えています。そういった未来も含めた社会環境を作りたいですね。

新しく生まれるだろう職業にフォーカスを向けていらっしゃるんですね。

現在は新型コロナウイルスの影響もあって、サービス業の仕事がどんどん減っています。就労人口でいうとサービス業って一番多い職業ですから、そんな中で新しい職業を作るって、とても重要ですよね。よく100年経つと職業が60~70%なくなるみたいな話がありますけど、今後はその動きがもっと加速するんじゃないかと思います。

今、C CHANNELの中で新しく生まれそうな職業って何かありますか。

それがまさにインフルエンサーなんです。インフルエンサーの定義もずいぶん変わってきました。以前は限られた人ができる特別な仕事でしたが、今、中国では人口の10%がインフルエンサーだと言われているんです。
「誰でもインフルエンサーになれる時代」がきます。
どういうことかというと、現在、中国だとGDPの36%以上がデジタル経済だと言われていて、メーカーさんの売上の70%がECなんですよ。そうなると、店頭接客じゃなくて、オンラインの店頭でアバターを使ったWeb接客が必要になってくるかもしれない。もしくは、インフルエンサーが必要かもしれない。そういう形でどんどん移り変わってくるんじゃないかと考えているんです。

インターネットの世界では、日本は今ある中国の姿に少し遅れた形で追いついていくような状況でしょうか?

そうですね。EC化率は必然的に高まるだろうし。ただ、物を買う行為において、人とコミュニケーションを取ることは非常に重要な要素だと思っています。「試したい」「使い方を知りたい」「評判を知りたい」——そういう対面の接客で伝えてきたものを、オンラインでどう置き換えるのか。いたるところにアイデアがありますね。

何かに勝たなくてもいい時代になった。自分と感覚の合う人たちと繋がり、ファンを幸せにしよう

では最後に、C Channel株式会社で働いてみたいというクリエイターや、これからクリエイターを目指したいと考えている方に向けて、コメントをいただけますか?

今の時代が素晴らしいのは、才能がなくても、クリエイターになれることです。昔は天才じゃないとモノづくりでは食べられなかった時代が、今はいろいろなツールがあって、努力すればクリエイターになれます。 何かに勝たなくてなくてもいい時代になったんだろうなと思っています。昔は1位~10位ぐらいまでしか食べられなかったのが、多様化が進みました。自分の感覚に合う人は世界にたぶん100万人くらいはいるはずなんですよね。それなら、その人たちに向けて深い情報を提供した方が、みんながハッピーになれるのではないでしょうか。今は、感覚の合う人たちと繋がることができる、素晴らしい時代になりました。順位をつけるわけじゃなくて、ファンを幸せにしていきましょう。

ちなみに現状の日本では、インフルエンサーって足りていないのでしょうか。

そうですね。私がアジアで仕事をしていて一番残念なのは、日本人がどんどん自信を失うことによって、「表現しよう」という気持ちが失われていることです。表現しようと思った瞬間に、周りの目を気にしちゃうじゃないですか。私は上海に住んでいるんですけど、中国の方は良い意味で人の気持ちを気にしないところがあります。周りがどう思うかより、自分がどう思うかじゃないですか、人生って。日本の人も空気を読まずに生きたら、もっと楽になれるんじゃないかなと思いますね。

取材日:2022年4月14日 ライター:渡辺 りえ

C Channel株式会社

  • 代表者名:森川 亮
  • 設立年月:2015年4月
  • 資本金:10,000,000円
  • 事業内容:メディア事業、eコマース事業、海外事業
  • 所在地:〒153-0042 東京都目黒区青葉台4-7-7
  • URL:https://corp.cchan.tv/
  • お問い合わせ先:https://corp.cchan.tv/contact/

 

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