グラフィック2022.05.18

印刷物の価値をさらに高め、クリエイティブ力に磨きをかけることで、厳しい印刷業界を生き抜いていく。

福岡
祥文社印刷株式会社 代表取締役
Tatsuya Koga
古賀 達也

福岡で70年以上の歴史を持つ祥文社印刷株式会社。地元の中小企業から確かな信頼を得て、オフセットカラー印刷、出版、企画、デザインを行っています。関連会社のパン・パブリシティ株式会社には多くのクリエイターが所属しており、カタログや会社案内、学校案内、記念誌などの編集、Web制作などを幅広く手掛けています。
代表取締役である古賀達也(こが たつや)さんは、インターネットの普及や格安ネット印刷通販の台頭により既存の印刷会社が落ち込みつつある中で、「印刷そのものの価値をさらに高めていきたい」と、企画・編集部門を強化しながら新しいチャレンジを模索しています。

激動の印刷業界で、創業70年以上を誇る印刷会社の4代目に

代表取締役に就任して約1年。変革に取り組む。

1948(昭和23)年、祖父が個人事業として創業したのが始まりです。法人としての設立は1954(昭和29)年、その後祖父の跡を継いで、私の伯父にあたる父の兄、父そして、2021年6月に4代目として私が代表に就任しました。現在本社がある福岡市博多区博多駅南には、1969(昭和44)年に移転しました。オフセット印刷や製版設備などを増設し、当時急激に伸びてきていたカラー印刷や精密印刷のニーズに対応できる施設を整えています。さらに、バブル期の市場成長を受けて、新工場ビルを1991(平成3)年に新設しました。その頃はまさに印刷業界の最盛期とも言えるような時期でした。
当時に比べると今は、業界そのものが非常に厳しい状況です。インターネットの普及に伴って印刷物そのものが激減したことで、どこの印刷会社も大きな変革を迫られており、それは当社も決して例外ではありません。

ネット印刷が揺るがす「印刷の価値」

さらには、ネット印刷通販が台頭したことで、印刷の価値そのものが大きく変わってきています。ネット印刷通販は営業による打ち合わせなどがなく、人件費を省くことで安い価格での印刷が可能です。私たちはこれまで、印刷の質はもちろん、印刷にかかる手間ひまも含めて価格を提示してきたのですが、価格の安さという点でネット印刷通販に勝つことは厳しく、需要を奪われてしまっています。
しかも、印刷の需要そのものも減っています。当社のお客さまのほとんどは、長くお付き合いいただいている地場の中小企業です。今までは営業が直接出向いて、見積りを提案し、受注するというスタイルで十分だったのですが、その受注そのものが減ってしまっているので、これまでのやり方を見直す必要が出てきています。「変化する時代に対応するために」と、2021年に父から代表を受け継ぎましたが、編集や企画、Web制作部門に力を入れつつも、印刷の価値はどこにあるのか、試行錯誤を繰り返しているところです。

制作部門が強みの一つになっていると聞きました。

制作部門を担う「パン・パブリシティ株式会社」は、1988年に有限会社ライトスタッフとして設立された関連会社です。祥文社印刷が創立50周年を迎えた1998年に組織変更し、現在の会社名となりました。ここでは、会社案内、学校案内、記念誌や周年誌などの編集制作、ホームページなどのWeb制作を行っています。印刷会社ならではの、さまざまな印刷ニーズに対応可能な設備と職人による確かな操作技術を生かすと同時に、企画や制作といったソフトの部分を強化することで、他の印刷会社との差別化を図ってきました。

印刷が減る一方で、Web制作のニーズが増えているそうですね。

はい。1年のうちで変動がありますが、例えば春にかけて多くなるのが中学校・高校・大学のホームページ制作です。現在、Webクリエイターは、常に人材を募集しているような状況です。印刷の企画・制作と、Webの企画・制作は一見違うと思われがちですが、実は大事にするべき部分は同じ。お客さまのニーズをしっかりと汲み取って制作していく流れは、どちらであっても変わりません。印刷の企画・制作で培った経験を、Web制作においても、しっかり生かせると感じています。

ネット印刷が当たり前の印刷業界の中で生き残るには?

安価な印刷が可能なネット印刷通販が今や当たり前となる中、印刷だけで利益を得られる時代ではなくなっています。例えば営業がお客さまのもとに出向いて、見積りを出すだけで、すでに見積りはネット印刷よりも高くなってしまっています。だからこそ、私たちはそれ以上に価値のあるものを提供できなければなりません。
私たちの使命は、お客さまが伝えたいことを形にすることです。しかも、ただそれを作るだけでなく、お客さまが求める以上のものを提案しなければなりません。お客さまは、「そうそう、こういうものが欲しかった」というだけでは、実は満足されていないんですね。完成品を見て、「あ!こんなにいいものができたんだ!」と言えるものを、実は欲しがっているのです。お客さまが本当に満足するものを提案できるかが、私たちには求められると感じています。

これからは印刷そのものが、貴重で価値のあるものに変わっていく。

新サービスとの相乗効果で売り上げ拡大を目指す。

新たな取り組みとして、名刺印刷をWeb上で作成し印刷注文できるサービス「名刺印刷コネクト」を2018年にスタートしました。名刺印刷そのものは受注額としては大きくありませんが、名刺をきっかけに、会社案内やWeb制作など、さまざまな注文のきっかけになっています。毎月クリエイティブを要する発注がある企業は多くないので、名刺や封筒の印刷とクリエイティブ制作の二つの柱をしっかりと守っていきたいと思っています。また、テレフォンアポイントによる受注も強化しています。

印刷物一つ一つの価値を高めていきたい。

若い人たちは、電子ブックでも十分な時代です。だからこそ印刷物は、価値の高いものになっていかなければならないと感じています。印刷機械の性能が高くなり、ある程度のものはどこでも誰でも印刷できるようになっていく中で、「この印刷会社でなければ!」というブランド化が必要です。印刷の価値を認めてもらうための取り組みを模索しています。
その一つとして、印刷の美しさなどの価値が高い古本に注目しています。まだ構想段階ですがWeb古本屋をやってみたい。利益を得るためではなく、印刷会社として、印刷が美しいもの、優れているものを取り扱うという姿勢を伝えていくことができればと考えています。
良いものを作る姿勢をしっかりとアピールするために、印刷会社に依頼することの価値を改めて感じてもらうために、これから何ができるのか。まだ答えは出ていませんが、そのための新しい取り組みをさらに続けていきます。

クリエイターに求められるのは、お客さまのニーズをカタチにすること。

採用において、クリエイターに求めるものは何でしょうか?

何と言っても「コミュニケーション力」です。クリエイターは、お客さまと打ち合わせをしたり、取材をしたり、営業と一緒に話し合う機会が少なくありません。お客さまがどういうものを欲しいと思っているのかをヒアリングして、「つまり、こういうことですね」と相手の思いを汲むことができるようになるには、コミュニケーション力が必要です。クリエイターというと自分の感性をカタチにすると思いがちですが、デザイナーはアーティストではありませんし、コピーライターは詩人ではありません。クリエイティブに必要なのは、お客さまの意図を汲み取る能力なのです。
自分が満足できるものができても、「いいね」と言われることもあれば、全て否定されることもあります。一度否定をされてしまうと、どれだけアピールしても、相手を説得することは難しい。そんな時に、うまく切り替えられる能力も必要だと思います。いい意味での素直さ、柔軟性がある人は成長できると思います。

取材日:2022年4月7日 ライター:野村 真由美

祥文社印刷株式会社

  • 代表者名:古賀 達也
  • 設立年月:1954年7月(創業1948年2月)
  • 資本金:7120万円
  • 事業内容:オフセットカラー印刷、出版、企画、デザイン、広告代理店業務、一般事務用印刷物の製造販売
  • 所在地:〒812-0016 福岡市博多区博多駅南4-15-17
  • URL:https://shobunsha.net/
  • お問い合わせ先:092-411-1611

(関連会社)パン・パブリシティ株式会社

  • 代表者名:古賀 達也
  • 設立年月:1988年9月
  • 資本金:1000万円
  • 事業内容:記念誌・自伝・図録等の書籍制作
    カタログ・学校案内・会社案内等の編集物制作
    パンフレット・リーフレット等の販促物制作
    オリジナルロゴ・CI・サイン
    オリジナルデザイン全般
    広報活動の調査、企画、コンサルティング
    Webサイトデザイン
    各種CMS(Modx/MovableType/WordPress/EC-CUBE 等)導入・カスタマイズ
    Webおよびサーバー保守・管理
  • 所在地:〒812-0016 福岡市博多区博多駅南4-15-17
  • URL:https://pan-publicity.co.jp/
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