WEB・モバイル2020.02.10

変わらぬ想い。万葉集の恋の歌。

東京
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日本文化×デザインあれこれ
いのうえ

2月のイベントと言えばバレンタインデーが控えています。 遥か遠い時代に生きていた人々はどのような恋愛をしていたのでしょうか。 今日は、万葉集の恋の歌を紹介したいと思います。

伊勢の海の磯もとどろに寄する浪 恐(かしこ)き人に恋ひ渡るかも 笠女郎 現代語訳: 伊勢の海に打ち寄せる怒涛のように、諦めようとしては再び思いを寄せ続けています。

恋心を波に例えるのは現代でも共通ですね。諦めきれない想いを見事に表現しています。

うたたねに恋しき人をみてしより 夢てふものは頼みそめてき 小野小町 現代語訳: うたた寝で恋しい方の夢を見てからというもの、夢を当てにするようになりました。

せめて夢で逢えたら・・・というのも現代人にも共通する思いなのではないでしょうか。 小野小町さんは更にこんな歌も詠んでいます。

いとせめて恋しき時はむば玉の 夜の衣をかへしてぞきる 現代語訳: 恋しくてたまらない時は夜着を裏返して寝ると夢で会えるというおまじないをして、あなたの夢を見ようとします。

好きな人と夢で逢えるおまじない!なんて可愛らしい歌でしょう。 小中学生の頃、両想いになれるおまじないが流行った気がします。具体的には忘れちゃいましたけど。 万葉集に集録されている歌はいくつかのジャンルに分けられています。 恋の歌は「相聞歌」に分類されているのですが、次に紹介するのは、雑歌(ぞうか)に分類されている歌です。

あかねさす紫草野(むらさきの)行き標野(しめの)行き 野守は見ずや君が袖振る 額田王(ぬかたのおおきみ) 現代語訳: (あかねさす)紫草の咲く野原行き、立ち入りできないご料地の野原を行って、野守が見ているではないかしら。あなたが袖をお振りになるのを。

これは万葉集の中でも有名な歌です。この歌を詠んだ額田王は女性です。君が「袖を振る」というのが当時、明らかな恋愛表現だったようです。「野守が見ているのではないかしら」とハラハラドキドキしているわけですね。そんな大胆に袖を振っていたら野守が見ているかもしれないわ、と。 なぜハラハラしているかと言うと、君=額田王の旦那さん(天智天皇)の弟(大海人皇子)だからです。 額田王は、元々大海人皇子と結婚していたのですが、別れてお兄さんと結婚しているのです。 しかもこれは額田王と天智天皇が遊猟に出かけた時に詠まれた歌と言われています。そこに弟であり元夫の大海人皇子も同行していたようで。 そこで、「野守が見ているかもしれない」と歌っているのです。 野守はそのままの意味かもしれませんし、現夫の天智天皇を指しているのかもしれません。 そしてこの歌に対する大海人皇子、つまり弟さんの返歌がこちら。

紫草(むらさき)の にほえる妹を 憎くあらば 人妻ゆゑに 我(あ)れ恋ひめやも 現代語訳: 紫色の様につややかに美しい貴方が憎いなら、人妻であるのにどうして恋などするだろうか。

とてもストレートな恋心を詠んでいますね。 実はこの2つの歌は宴席でのネタとして披露されたと言われています。雑歌に分類されているのもその為かもしれません。 場を盛り上げるために歌ったとしてもお兄さんはどんな気持ちで聞いていたのでしょうね。。。 現代の音楽シーンでも恋愛を歌った歌は数多くあります。いつの時代も恋にときめき、恋に悩む感覚は同じなのかもしれません。 皆様素敵なバレンタインをお過ごしください!

プロフィール
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いのうえ
WEBクリエイター(デザイン/コーディング) サイトリニューアル、デザインの他、企業系大規模サイト制作・運営などに携わる。fellowsでのセミナー講師経験もあり。 ここでは個人的に情報収集・発信している日本文化とデザインについて紹介していきます。

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