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ミッション8 狸が化けるのはなぜ

ミッション8
電通第5CRプランニング局 クリエーティヴ・ディレクター / コピーライター 門田 陽

こんにちポン。今回の指令、何なんでしょうか?マジなのかそれともなぞなぞとかなのか。もしかすると、深い意味があるのかもしれません。僕が大好きな落語にも「狸の札」「狸の釜」「狸の鯉」「権兵衛狸」等々、狸が化ける噺が沢山ありますが、リアルに化けるところを僕はまだ見たことはありません。

机上で悩んでもまるで解決しないので、そうだ、あそこに、行こう!と思い立ったが吉日。證誠寺(しょうじょうじ)に行ってみました。「しょ、しょ、證誠寺、證誠寺の庭は~♫」の證誠寺です。タヌキといえばこの唄か、または「タンタンタヌキの~」で始まるこのご時世だとややセクハラな唄のどちらかだと思いますが後者は讃美歌の替え歌で何と作者不詳なんですね。それはそれですごいぞ!その歌詞考えた野郎(女だったら失礼)ですが今回は前者。知らない人がいない唄です。

タイトルは「しょうじょうじのたぬきばやし」です。歌詞は次の通り(著作権失効)。

しょ しょ 證誠寺
證誠寺の庭は
ツ ツ 月夜だ
みんな出て 来い 来い 来い
おいらの友達ァ
ぽんぽこ ぽんの ぽん

負けるな 負けるな
和尚さんに 負けるな
来い 来い 来い
来い 来い 来い
みんな出て 来い 来い 来い

作詞は「赤い靴」や「シャボン玉」や「七つの子」などの唄も作った野口雨情。雨情って名前はカッコよくてシビレます。

東京駅から千葉で内房線に乗り換えてトータル1時間18分で木更津駅到着。駅前は予想以上に狸推しです。まずは駅舎の時計(※写真①)、そして案内板(※写真②)、トイレや自販機にも狸がいます(※写真③④)。さらに駅の対面に目立つ狸のオブジェ(※写真⑤)。おや?このオブジェの狸だけ他の狸と名前が違います。木更津市の公式マスコットは「きさぽん」でこの子の名前は「きぬ太」。狸(たぬき)が逆立ちしてきぬ太なんだそうです。少しモヤモヤしながらも、歩道のマンホール(※写真⑥)や案内表示(※写真⑦)や店の壁の絵(※写真⑧)などに導かれて約10分で證誠寺に到着(※写真⑨)。正面の門から入るとすぐ横に狸ばやしと境内にある狸塚の説明看板がありました(※写真⑩)。その奥には佇まいの良い鐘(※写真⑪)があり、狸と和尚さんがポンポコやった庭には塚が置かれ(※写真⑫)、また童謡を讃えた石碑(※写真⑬)や小さな狸の像(※写真⑭)も可愛くてほっこり気分の中、お参りを済ませてお寺を出ました。

なかなか面白かったとはいえ、想像以上の収穫はないまま、證誠寺から一番近いお店(※写真⑮)に入ってワンタン麺を食べながら(ほんとは狸そばが食べたかったけど、ありませんでした)、ふと気が付きました。アレ?證誠寺の和尚さんが一緒に踊ったのは普通の狸です。この物語の狸は化けません。狸が出てくる民話や昔話のほとんどが化けるのでつい證誠寺の狸もそんな気がしていたのですがカン違いです。
ワチャー、そうだ、行かなきゃいけないのは、ここではなくてあそこです!方向転換。木更津を後に一路栃木の茂林寺(もりんじ)です。

JR木更津駅から馬喰町で降りて都営浅草線経由、浅草駅から東武鉄道特急りょうもう号で館林で乗り換えて(浅草から館林までは1時間しかかかりませんでした)茂林寺駅に着きました。茂林寺は、そうです分福茶釜の舞台です。化けるといえば分福茶釜。茂林寺は駅員さんが一人だけの小さな駅でしたが、狸がしっかり迎えてくれました(※写真⑯)。そしてそこから茂林寺まで約10分の道のりを「分福茶釜」の物語が小出しに絵本の要領(※写真⑰)で数十メートルおきに続くので飽きません。かなり地道な町おこしです(※写真⑱)。道路脇の標識(※写真⑲)には疑問を抱きながら、ここでお腹が減ったのでお寺の前のうどん屋さんで腹ごしらえ。今度はもちろん狸うどんです(※写真⑳ ㉑)。

お店を出て2分で茂林寺に到着。観光客もそれなりにいます。門の前の石段を上がると20体ほどの狸像が左右に並び(※写真㉒)その奥にはひときわ大きな狸像がそびえ立っています(※写真㉓)。この後ろにはそれなりに大きな仏像(※写真㉔)があるのですが、狸に圧倒されて隠れています。それにしてもここの狸像の大多数は酒好きで酔っ払いです(※写真㉕)。本堂にお参りをして拝観料(300円)を払って寺に伝わる宝物(分福茶釜)を目にしました。いつだったか山口県で卑弥呼の墓を見たときと似た感慨を覚えましたがよしとしましょう。おみくじは小吉でした。帰り道のお土産屋さんはどこも半端ない数の狸の置物や小物や食べ物でいっぱいでした(※写真㉖)。

駅に帰って、行きと同じく東武特急りょうもう号で浅草へ戻りながら狸のことを考えましたがまだ答は見つかりません。ただ木更津から帰るときよりは視界が開けている心持ちがしました。狸の噺が十八番の人間国宝五代目柳家小さんは生前、狸の噺を演るときは狸の了見にならないといけない。と言われたそうですが、朝から狸にまみれて若干は気持ちがわかりつつあるのかもしれません。夕方、浅草に着きました。そういえば、この街にも狸にまつわる所があったなと思い出したので疲れを引きずりながらその場所へ。浅草たぬき通り(※写真㉗)。ふだんは何気なく通っていたのですね。この通りに12体の(一組が夫婦なので設置は11ヵ所。この日は工事の囲いで一ヵ所見られませんでした)狸の像が置かれていたのには驚きました(※写真㉘)。寄席に通うときなど、ちょくちょくこの道は歩いていたはずなのに見逃しています。自分の観察眼のなさに落ち込みました。その気持ちを慰めにたぬき通りを抜けて国際通りを渡って「炉端焼きたぬき」でひと休み(※写真㉙)。狸の徳利(※写真㉚)を何本かおかわりをして、ホロ酔いで帰宅しました。

<ミッションの行方>
家に帰って、茂林寺前の売店で買った狸饅頭(※写真㉛)を食べながら狸がなぜ化けるのかを考え直しました。ビールとお酒で狸のようになった自分の腹を眺めながら、もしかすると化けるのは狸ではなく人間でその比喩を狸が担ってくれているのかもと思いました。そして、クリエイティブという獣道を歩く身としては、まだ老け込まずにもう一化け二化けしなきゃいかんな、としみじみ感じた満月の晩でした、とさ。

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