職種その他2019.11.06

外壁リノベーションを日本の文化として確立したい

仙台
株式会社 櫻一style 代表取締役
Shinichi Sakuramoto
櫻本 真一

塗装店を営む両親のもとで育ち、12歳から現場経験を積んだ櫻本真一さん。その後、自らの目標、スタイルを実現するために独立して株式会社櫻一styleを設立しました。海外で見た建物に触発され、一般塗装の範疇を越え、デザインコンクリート(理想の壁ゼロから作り上げて行く工法)やエイジングペイント(塗装技術によってアンティーク品のような経年劣化による独特の味わいを演出する)などの特殊塗装による個性的な空間をプロデュース。「外壁リノベ専門店」を立ち上げて全国展開するなど、外壁リノベーションを日本の文化にしたいという志を持っています。塗装業界をリードする櫻本社長のお話から見えてきた、オリジナルな着眼点、発想力、行動力をご紹介します。

塗装環境で成長し芽生えた「自分にしかできない仕事」への意欲

ご実家が塗装店を営む環境で、塗装を仕事にするのは自然な流れでしたか。

実家の櫻本塗装店は家具の塗装がメインの小さな会社です。幼い頃から手伝っていて、小学校が終わると、会社に連れて行かれて、両親が仕事をする様子を見て、自然と手伝うようになりました。中学1年の時に現場デビューして、親父に怒られながら塗っていた記憶があります。

子どもの頃になりたかった職業は大工で、親が営む塗装店を継ぐ気は全くありませんでした。家業を継ぐことが嫌ではありませんでしたが、どれだけ一生懸命に取り組んでも、親の会社にいる限りは二代目でしかないことに悔しい気持ちがありました。

親父には、自分が作った会社を最後まで自分で全うしてもらいたいし、いつか振り返ったときに「親父は年をとっても現場で頑張っていてすごかった」と誇りに思いたい気持ちもありました。ケンカ別れのような形にはしたくなかったので、一年くらいかけて資金面、経営面、方向性などを話し合って独立しました。

どんな目標があって会社を立ち上げたのでしょうか。

今の仕事に出会えたのは、もちろん家業が塗装店だったおかげで、“塗る”ことは共通です。ただ、親父が櫻本塗装店を創業してからの35年と、これからの35年では集客の仕方もビジネスの仕方も全然違うし、一番の違いは目標でした。折り合えないなら、2つに分けた方がいいと思いました。

僕は、自分にしかできない仕事がしたい、自分がいいと思うことを表現できる場所がほしくて、2007年頃から、自分の名前からとった「櫻一style」という名称を名乗り、名刺を作り、自分のやり方で仕事をはじめました。それがいつのまにか長く続いて「じゃあ、会社にしようか」と2018年に株式会社にしました。独立することに親父からは納得してもらえませんでしたが、今も仕事を紹介するなど、お互いにサポートしています。

独学と体当たり営業で自分のビジネススタイルを確立

櫻一style様の主な事業を教えてください。宮城県では珍しい特殊塗装などは、いつどこで学んだのですか。

新築住宅やマンション、店舗、家具の一般塗装のほか、古い住宅や建物を塗ることで付加価値をつけて建物を再生させる「ペイントによるリノベーション」の企画・施工をしています。外壁のリノベーションは、外壁の上から塗装をしたり、塗り壁にしたり、レンガや石積み風にデザインする「デザインコンクリート」などの特殊塗装があります。内装は、お施主様のイメージに応じて、ペイントなどでオリジナルな空間を作ります。

特殊塗装を始めたきっかけは海外旅行です。ラスベガスに行った時に大理石調に塗装されたホテルの壁を見て衝撃を受けて、やってみたいと思いました。当時の仙台は、特殊塗装を施工する職人を東京からわざわざ呼んでいたので、地元で完結できればと思っていました。

そのような状況で、特殊塗装を学ぶ場所や資格はなく、独学でした。洋書や写真、石の見本帳を見ながら練習しました。2LDKの住まいのうち1部屋は練習部屋にして、長いテーブルに厚紙を並べて、何度も何度も試し塗りをして、感じ取ったものを採用して見本を作りました。

特殊塗装のクライアントはどうやって見つけましたか。

今は慣れましたが、もともとは人前で話すことが苦手で、営業経験もなく、何もわからないまま名刺だけを持って「特殊な塗装をやっていますが、仕事はありませんか」と聞きながら設計事務所を一軒一軒訪ねました。価格も決めず、カタログも持たずに飛び込みで営業していたので、一件も仕事がとれなくて心が折れました。

いくら技術を磨いても、生かす場所がなければ意味がありません。ですから、仕事ができる環境を作らなければと、試行錯誤しました。知名度を上げて逆オファーがくるように仕掛けるしかないと思い、リフォームフェアなどのイベントに出店しました。

イベントへの参加を継続していくうちに、ここ5年位になって、ようやく需要が増えて、イベントに出店している工務店や一般のお客様に声をかけてもらえるようになりました。

お客様の理想を形にして信頼される会社として成長

櫻一style様の他社と違う強みとは何ですか。

お客様のイメージは、あのお店のような内装にしたい、東京ディズニーランドの壁のように、コンクリートのような無機質な感じに、と様々です。そんなお客様の理想のスタイル、漠然としたイメージを引き出して答えを見つけ、明確なコンセプトを作り、提案し、形にすること。外壁リノベーションだけでなく、間取り変更も含めてフルリノベーションを一から提案してデザイン、施工までを完結できることです。

全国展開している外壁リノベ専門店で取り組んでいること、始めた目的を教えてください。

リノベーションは内装がメインで外壁にあまり手をかけない会社が多いと思います。けれども、外壁で実はガラッと雰囲気が変わります。そこで、外壁リノベ専門店という名前を掲げてWebサイトでPRすれば、希望する方の目にとまるのではないかと思いました。

そして特殊塗料の仕入先の石川県金沢市にある建材屋さんに相談すると、「全国に広めましょう」と協力してくれることになり、サイトで情報を発信すると1年で29社の登録がありました。それ以降は数を増やすより、クオリティをあげる必要があると考えていったん募集を停止しました。

今は年に4回講習会を行っていますが、登録店が技術を学んでプランや提案をスムーズにするために、自分が訪れたことがある国にあわせて、NY、LA、UK、FRENCHという4つのスタイルにカテゴリー化しました。自社の新しい武器にと希望する方、ホームページを持たない塗装屋、新しいことに挑戦したくても方法がわからない方も、外壁リノベ専門店のホームページを利用してもらい、一緒に盛り上げていこうと進めています。いずれは、外壁リノベ専門店の中でできることを出し合い、行き来できる関係性にもっていければと思います。

仕事をしていて良かったと思うのはどんな時ですか。

長い時間をかけてじっくり打ち合わせをする方もいれば、「あとはまかせます」という方もいます。完成形が見えないのに、人と人のコミュニケーション、信頼があって仕事を頼んでくれるのです。ある時、僕が手掛けた美容室を見た人から、デザインを含めて新築の建築まで全部依頼したいと言われました。資格も経験もないので出来ないと断りましたが、何かできる方法はないかと再度頼まれて、各作業をコーディネートして実現し、満足していただきました。

やりがいを問われると、槇原敬之さんの「僕が一番欲しかったもの」という歌を思い浮かべます。素敵なものを拾ったけど、欲しい人がいるからあげて何も残らなかったけど、それで人がとても喜んでくれた、それが自分の一番欲しいものだった、というような詞です。出来上がったものを渡すのがもったいないと思うこともありますが、お客様が喜んでくれることが一番。「櫻本さんに頼んで本当に良かった」と言われる時が一番の喜びです。

究極で目指すのは、僕が知り合った人、関わった人をみんなHAPPYにすること。お客様も従業員もそうです。従業員に対しては、僕はやりたいことをやるけれど、ついてきてくれるなら家族も含めて絶対守るから、一緒に頑張ろうと思います。

これから、櫻一style、外壁リノベ専門店をどうしていきたいですか。

僕自身が取り組むことは今後も変わりません。クライアントの様々な要望に応えるために努力していくことに尽きます。会社の規模を大きくしたいとは思いません。“櫻一style”を続けるためにも、自分の目が届く範囲で仕事をしていきたいです。そして、一人一人のクオリティや意識を高め、引き出しを増やして一緒に成長していきたいと思います。

外壁リフォーム業界は、これまで塗り替えや張り替えしか方法がありませんでしたが、これから外壁リノベを日本の文化の一つにしたいという夢があります。「外壁リノベ専門店に頼むと、今までと違うことができるね」という期待や可能性が広まればと思います。外壁リノベ専門店には、採算性を優先する人ではなく、同じ志を持つ人が続けてくれればと思っています。

このサイトを見ているクリエイターへのメッセージをお願いいたします。

何か目的や目標があるなら、継続は力なりだと思います。今、僕がここにいて、かかえている現場があることは今までの積み重ねの結果だと思いますし、5年後も、新たな仕事の要望があるかどうかも積み重ね次第だと思います。ひとことで言えば“努力”という言葉になるかもしれませんが、目標や夢をもって積み重ねていってほしいと思います。

取材日:2019年9月13日 ライター:佐藤 由紀子

株式会社 櫻一style

  • 代表者名:櫻本 真一
  • 設立年月:2018年8月
  • 事業内容:新築、住宅、店舗、家具の塗装/リノベーション/デザインコンクリート/各種エイジングペイント
  • 所在地:〒984-0035 宮城県仙台市若林区霞目2丁目18-5
  • URL:https://www.sakura-1-style.com/
  • お問い合わせ先:022-352-1881

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