お客さまの立場で制作する「新しい」広告表現を追求 仕事なしでもひたすら撮影した日々が今につながった

愛媛
有限会社カプセル 代表取締役
Masahito Kawai
川井 征人

テレビCMやWeb動画の制作、広告写真の撮影など、「広告」を軸とした業務を多岐にわたって展開する「有限会社Capsule(以下、カプセル)」。「新しいこと、面白いことがしたい」と目を輝かせる代表取締役の川井征人(かわい まさひと)さんは、目まぐるしく変化する広告の世界で、表現や発信の方法を日々模索しています。自動車も撮影できるサイズの自社スタジオを持ち、全国で放送されるCMや有名企業の広告なども多く手掛けている川井さんに、これまでの歩みや将来への展望を聞きました。

愛媛の代表的スタジオで修行後に起業 「自分なりの撮影がしたい」

会社設立までの川井さんのキャリアをお聞かせください。

2年ほど製版会社にお世話になった後、福音寺にある「有限会社アセムスタジオ(旧アカマツフォトスタジオ)」に入社することになりました。
撮影の修業を続けるうちに「自分なりの撮影がしたい」という思いが強くなり、1996年の3月に8年間勤めたアセムスタジオを退職しました。写真という切り抜き世界をピッタリ封じ込めるという意味を込めて「カプセル」という屋号で独立しました。

その後、会社を設立されたのですね。

スタジオ建設の準備やプロ機材の資金調達など「融資を円滑に受ける為には、社会的信用が必要だ」と考え、会社を法人化しました。

仕事なしでもひたすら撮影 自然と評判が生まれ「人が人を呼んでくれた」

営業活動は、どのようになされていますか?

会社設立当初から、基本的に営業活動は行っていません。気が付くといつの間にか、人が人を呼んでくださっている感じで、本当にありがたいことです。
車やホイール、人物などの照明を作り込んだイメージ撮影など、テクニカルな仕事でも評価をいただいています

静止画・動画・ドローン・イラストと、幅広く挑戦されているのはなぜですか?

広告を作る上での表現手段ならば、自社でできることなら何でもやってみようというスタンスで展開しています。
また、新しいことに挑戦したいという思いも強くありました。1999年にマイナーチェンジした初代iMacを購入してデジタル納品をいち早く取り入れたり、2000年にCANON D30というキヤノン初の普及期のデジタル一眼レフを発売と同時に購入し、2001年CANON 1Dを導入。フルHDの映像が撮影できるCANONの5Dmark2一眼レフカメラからシネマカメラへ、またドローンを導入して動画を撮影したり、アニメーションの背景画を制作していたスタッフを採用し、Adobe After Effectsを使ってイラストを動かしたり。
楽しくて、カプセルの将来に役立つことは、これから先も挑戦していきたいですね。

自社スタジオ建設が北京五輪で難航 鉄筋価格の高騰が原因

スタジオ建設で、ご苦労された点はありましたか?

個人企業としては愛媛県で最大規模の「アセムスタジオ」から独立するからには、自社スタジオを持ちたいという思いがありました。しかし、北京オリンピックの建設ラッシュとタイミングが重なってしまい、手間取ってしまいました。
大きなスタジオが必要な案件もあり、当初の予定よりもはるかに規模の大きいスタジオを計画していました。鉄筋価格の高騰により倉庫部分を断念して設計したものの、機材収納スペースが足りず、半年も経たずに倉庫部分を増築することに。
余計に予算が掛かってしまいましたが、広く綺麗なスタジオがあるからこそいただけるお仕事も多く、結果オーライですね。

CMを遠隔で演出? コロナ禍で広がる可能性

コンテンツの一つ「オンライン遠隔撮影立ち合い会」とは、どのようなものですか?

2020年から始めた、テレビ会議システム「Zoom」などを通して映像を確認していただくサービスです。手法は、オンライン中継と同様ですね。演出家(広告代理店のクリエイティブディレクター)が遠方に居ながら演出ができるので、良いCMを作れます。
過去には、東京の演出家の方が緊急事態宣言下でロケ現場に急遽来られなくなり、カメラを通した映像と、現場の様子を写したカメラとを切り替えながら、遠隔で演出していただいたこともありました。
画質や遅延などの速度回線の問題をクリアすれば、先方のエリアに関わらず受注でき、広い自社スタジオを活用できる可能性が広がるでしょう。

「理由が答えられる仕事をしたい」 根底にはお客さまへの“おもいやり”

撮影における川井さんのこだわりは、何ですか?

撮影にあたっては、“役割”というものを強く意識するようにしています。 例えば「なぜ、自分が呼ばれたのだろう?」と、経緯や商品・サービス、撮影も含め、その理由を想像するのです。お客さまの望むものが分からないと、正確に表現したものを相手にお出しできない。常に「どうして私はこう表現したのか」という理由が答えられる仕事をしたいと、考えていますね。
その精神は、相手を知ろうとする気持ちや相手の身になって考える、カプセル企業理念の“おもいやり”そのものです。お客さまの望むものや必要なものを見つけ出すには、その姿勢が大切です。
「気が利く人=思いやりのある人」ですよね。自分自身がそういった気の利く人になりたい、カプセルも気が利く企業になりたい。そのこだわりが、仕事のクオリティを自然と高めていくのではないでしょうか。

地方の機材やスタジオ不足、シェア事業で解決

カプセルと地元・愛媛の今後について、考えをお聞かせください。

テレワークも一般化してきており、エリアを問わず働ける条件や雰囲気が整ってきました。しかし、東京と地方の格差はなかなか埋まりません。その理由の一つに、「機材的な地方のデメリット」があります。
大きな都市であれば、レンタル機材やレンタルスタジオも多く、効率よく機材調達できますが、地方はその辺りが少し不便ですよね。レンタルは輸送費が高いし、天気によって日程が安定せずに長期間レンタルしなければならない可能性があるので、カプセルにはプロ用の機材も多くあります。 そのため、撮影プロダクション同士で手持ちの機材やスタジオをシェアできれば、相互にメリットがあると考え、レンタル業務も始めました。
地方にも良い人材は多く居ます。東京に負けないくらいに愛媛の映像業界のクオリティを上げ、地域全体を盛り上げていきたいですよね。

取材日:2022年6月27日 ライター:山口 夏織

有限会社カプセル

  • 代表者名:川井 征人
  • 設立年月:2003年6月
  • 資本金:800万円
  • 事業内容:広告写真撮影、TVCM・Web等ムービー制作、スタジオレンタル業務、及びそれに付随する業務
  • 所在地:〒791-3142 愛媛県伊予郡松前町上高柳315-4
  • URL:https://capsule-art.jp/
  • お問い合わせ先:TEL 089-985-2575

※掲載の社名、商品名、サービス名ほか各種名称は、各社の商標または登録商標です。

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