「どんなことでもおもしろく」デジタル技術を活用したエンターテインメントを考え続けて

名古屋
株式会社スピード 代表取締役
Iwaki Yuichiro
岩木 勇一郎

東京、名古屋、瀬戸の3拠点にスタジオを構え、CGをはじめとするデジタル技術を駆使して、多彩なエンターテインメントや教育・ビジネスのコンテンツを世に送り出している株式会社スピード。さまざまな講演活動を行いながら、映画監督、スタートアップイベントのメンターまでを務める代表の岩木 勇一郎(いわき ゆういちろう)さんに起業のいきさつやエンターテインメントコンテンツへの想い、今後のビジョンなどを伺いました。

人には、まわりから求められる“星の元”がある

子供時代の夢を教えてください。

私は運動が苦手で泳げませんでした。しかし、小学校の部活動で吹いていたトランペットが得意で漫画を描くのも好きだったので、そういう(文化系)方向に進むのかなと感じていました。
中学に入るとバンド活動も始め、プロを目指した時期もありました。けっきょく「自分には華がない」と感じて辞めました(笑)
音楽や漫画の道に憧れる一方で、まわりにいる大人たちのように好きなことは週末に楽しむような未来が待っているのかなと思っていました。

CGやエンターテインメントの業界に入られたいきさつは?

25歳頃までは建築・土木業界で働いていました。ふとした時に「思い描いていたような大人になっていない」と感じ、それを機に「平日も好きなことがしたい!」「好きなことを仕事にしたい!」と考えるようになり、一念発起して当時100万円くらいしたMacを購入しました。それから1年ぐらい独学でCGを学び、CGの専門学校に入りました。
20代半ばになってから専門学校に入るなんて、崖っぷちの状況です。お金も借りて入学したので在学中から映像制作のアルバイトを始め、そのまま業界にもぐりこんでいった感じです。専門学校に在学中から「将来は世の中のもの全てがデジタル化されて、パソコンなどのデジタルデバイスで処理するようになるんだろうな」という予感はありました。

株式会社スピード設立までのキャリアを教えてください。

CGの作り手として何度かの転職を経て、都内で開かれていた愛知県のデジタルコンテンツを普及・発展させる会議に誘われたのが直接のきっかけとなって、株式会社スピードを立ち上げることになりました。設立は2012年、私が38歳の時でした。
愛知県は世界に誇るものづくりの街であることを考えると、ソフトウェアやデジタルコンテンツを手掛ける会社は当時少なく、一方で大学や専門学校など学びの場はたくさんあったので、「受け皿となる会社があればいいんじゃないか?」と考えて設立を決めました。

元々「起業家になりたい!」という想いはあったのでしょうか?

起業したら?という声が周りに多かったこともあり、それぞれの人間には自分がやりたいこととは別に、まわりから求められる“星の元”があると感じていました。
起業前からビジネスの現場での交渉ごとは必ずといっていいほど私にまわってきましたし、今回も“星の元”によりそんな流れになったという感覚です。

デジタルコンテンツ・ソフトウェアの発展に貢献

現在手掛けている事業について教えてください。

CGをはじめとしたデジタル技術を活用してエンターテインメントを生み出すことが私たちの仕事です。東京、名古屋、瀬戸の3拠点にスタジオを構え、エンターテインメント、教育、ビジネスの3つのフィールドでデジタルコンテンツ・ソフトウェアの発展に貢献できればと考えて活動しています。

「デジタルアニメーションフェスティバル NAGOYA」の事務局やICT教育講座「Seto CG Kid’s Program」も手掛けておられますね。

「デジタルアニメーションフェスティバル」は、中部地方の産業振興のために立ち上げた団体「Digital Animation Tube!」のフラッグシップイベントとして2019年より毎年開催しています。
「Seto CG Kid’s Program」は瀬戸市が主催する取り組みで、小学生を中心にプログラミングやモデリング、アニメーション制作、モーションキャプチャー、ドローンなどの最新技術に楽しみながら触れられる機会を設けています。オンラインで参加を募ったメタバース、アバター制作の回では、200人近い瀬戸の小、中学生が参加しました。
瀬戸焼の産地として知られる瀬戸市の子どもたちは造形への勘所が良く、考える力を養えばプロとして活躍できる人材が育つと感じています。ものづくりの土壌もある場所なので、デジタル化への理解も高いように感じます。

岩木さんはさまざまな講演も行っていると伺いました。

わかりにくいことをわかりやすく伝える「デジタル漫談」と自分では呼んでいます(笑)。
デジタル産業の仕事って、CG作成でもプログラミングでもゲーム開発でも、パソコンの前に座って作業する姿は一緒なので頑張っているかどうかが見えにくいんです。納品もデータ送信。住宅のように迫力のある成果物ではないですし、手にとることもできない難しさがあります。金額についても「なぜ高いのか?」「どこにお金がかかるのか?」などがわかりにくいと思います。
それら難しいことを簡単に、おもしろおかしく伝えるのが私の役割です。

肯定されることも、否定もされることもある。それでもつくり続けたい人がプロになる

岩木さんのモットーや企業理念は?

「どんなことでもおもしろく」が個人のモットーでありスピードの企業理念でもあります。「夢中になって見ていたら学びになった」とか、「楽しんでいたらリハビリになった」とか、デジタル技術を活用したエンターテインメントを考え続けています。
たとえばコロナ禍でオンライン会議の頻度が増えたと思います。当社ではオンライン会議にアバター(ゲームやネットの中で登場する自分自身の分身)を導入したり、「アバター運動会」や「バーチャル背景コンテスト」を定期的に開いたりして楽しんでいます。社員総会すらもアバターで開催しています。
お客さまからデジタルを活用した新規事業のアイデアを請われることも多く、アイデアマンとして何が提供できるかを常に考えています。
私たちもいずれは高齢者になりますので、その時に楽しめるコンテンツを今のうちにどんどん増やしておこうと、実践しています。現状では高齢者が楽しめるエンターテインメントコンテンツはまだまだ少なすぎると思っています。

これから、どんな会社にしていきたいですか?

ひとつは、常に最先端を走り続けることです。どんどん進化していく新しい業界ですし、扱う機器やソフトウェアも高額なので業界の最先端を走り続けるには体力も必要です。どんどん新しいアイデアを出して、新たな挑戦を続けていきます。
もうひとつが、コラボレーションの時代なので複数の会社で力を合わせて進んでいきたいです。2020年には名古屋市内に「モーキャプスタジオ55(ゴーゴー)」を株式会社活劇座の古賀代表と協業で開設しました。コラボレーションのしやすさはデジタル産業ならではの大きなメリットだと感じています。
オンライン会議の浸透で世の中が便利になりましたが、オンライン会議は人と直接会うことの代わりになるものではありません。雑談が減りますし、直接会った時に生じる「その靴、とっても素敵ですね!」といった偶発性もオンライン会議では減っていると感じます。そういったコミュニケーションの欠如を埋めるためのアイデアがアバターやバーチャル背景コンテストだったりするわけです。素敵なアイデアをこれからも考えていきたいですね。

最後に、世の中のクリエイターにメッセージをお願いします。

プロとアマチュアの大きな違いは「つくり続けられるかどうか?」です。そして、つくり続けるには「考え続ける力」が必要です。よくセンスがあるとかないとか言われますが、センスは考え続けることで養われます。運動神経や運動に必要な筋力は先天的なものも大きいと思うのですが、考える力はいろいろな失敗も、恥ずかしい思いも、すべての経験が糧となります。
昨今は失敗しないため先に検索したり口コミを参考にしたりしがちですが、山ほど失敗した経験はクリエイターにとって非常に大切です。自分がつくったものを臆せず発表し、肯定されることも、否定もされることもある。それでもつくり続けたい人がプロになるのだと思います。

取材日:2022年4月7日

株式会社スピード

  • 代表者名:岩木 勇一郎
  • 設立年月:2012年7月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:3DCG・VFX・VR・AR・メタバース・アプリケーション・2D・MV・ライブ/イベント演出等の企画制作。
  • 所在地:
    【東京】
    〒151-0073 東京都渋谷区笹塚3-21-5笹塚KNビル203
    TEL:03-4500-7081
    【名古屋】
    〒460-0011 愛知県名古屋市中区大須4丁目14-48 ツバサビル3階
    TEL:052-253-8721 FAX:052-253-8726
    【瀬戸】
    〒489-0044 愛知県瀬戸市栄町26番地 サンシャイン栄ビル301
    TEL/FAX:0561-76-0989
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