スペース2022.02.22

CGやアニメーションを駆使した「体感」プレゼンで、クライアントの先のお客さまが感動する空間を提案

東京
株式会社T&C JAPAN 代表取締役 デザイナー
Tatsuo Akiba
秋葉 達雄

商業施設や店舗デザイン・設計事業を行う株式会社T&C JAPAN。その代表取締役兼CGデザイナーの秋葉達雄(あきば たつお)さんは、接客業で得た「人の気持ちを読み取る力」でクライアントが本当に求めている空間をデザインしてきました。手がけた物件は、ラグジュアリーな飲食店から有名人の自宅までさまざま。どの物件にも共通しているのは、「ドアを開けた瞬間に訪れた人にどう思ってもらいたいのか」というクライアントの要望を的確に把握し、デザインすること。完成図は必ずCGやアニメーション使ってプレゼンし、提案する空間に対し高い納得性を得てから建築します。秋葉さんが、空間デザイナーとして、大切にしていること、これからの展望についてお聞きしました。

完成図をCGとアニメーションでプレゼン。空間がもたらす感動を最大限に引き出す

T&C JAPANの事業内容を教えてください。

T&C JAPANは、飲食店をはじめとする商業施設やオフィス、レジデンスなどの内装設計やインテリアデザインを中心に、物件探しから施工管理やインフラ整備、資金調達・店舗経営のサポート、ロゴマークやショップカードなどのブランドデザインまでトータルに行う「空間デザイン」会社です。私たちの企業理念は「感動創造」。ただ、図面に書かれていることを忠実に実現するのではなく、その空間が人々にもたらす感動や楽しさ、快適さなどを最大限に引き出すことにこだわり、「まだ誰も見たことのない空間を作る」デザイン集団です。

T&C JAPANの強みは何でしょうか?

私たちの強みはクライアントがその空間になにを求めているのか、ドアを開けた瞬間にクライアントの先のお客さまにどう思ってもらいたいのかという、クライアントの真のニーズを引き出すこと。そしてその空間をCGで再現し、クライアントに体験してもらい、納得してもらってから作ります。空間には目的があります。たとえばおしゃれなバーやラウンジは、人の出会いを演出したり、会食で使ってもらう、ゆっくりと時を過ごすなど、クライアントがその空間に求める価値はさまざまです。クライアントの目的を考えず、その時の流行やファッション感覚でデザインをしてしまうと、クライアントのニーズに合わなくなってしまいます。私たちは、クライアントがお客さまに提供したい価値を理解し、更にその先の利益までを提供できる空間デザインを提供します。

制作フローもユニークだそうですね。

私たちはまず、完成図をCGやアニメーションで制作し、クライアントがそこに没入でき、体感できるところまで作りこみます。それをクライアントに提案し“強い納得”を得たうえで、建築していきます。時間も手間もかかる大変な作業ですが、クライアントが想像する完成イメージを、目に見えるもので確認することで、クライアントもご自身が本当に欲しいものを明確にすることができますし、私たちもクライアントが想像しているイメージをつかむことができます。

これは進行動画と呼んでいるものです。ドローンを使って撮影しています。タイムラプスでカメラを仕込んでいて、この建築風景をプレゼンのときにお客さまにお見せします。

全ての案件に対してCGでプレゼンをされるのですか?

そうですね。最近では、有名な起業家の自宅を改装しました。予算は1億円です。私はまず、内装に1億円をかける人が何を望むのかを考えました。その方は何十万人もの前でライブ配信を行う方で、私はご本人がそこで喋ったら、どんな風になるのかをイメージできるようにCGを使ってプレゼンしました。完成後、ご本人が改装された自宅を動画で嬉しそうに紹介してくださったのですが、僕らはその「嬉しそうに紹介する状況」を発注段階で想定し、デザインに落とし込むイメージです。

CGをプレゼンに取り入れるという案はどうやって生まれたのですか?

私はもともと建築に関する知識はなく、内装デザインはすべて独学です。私自身の部屋の内装がテレビで紹介されたことがきっかけで、接客業をしていた時の知人から飲食店の内装デザインを頼まれるように。最初は居抜き店舗の内装をデザインすることが多かったのですが、初めて「スケルトン」といって、まったく何もない空間から内装を作る案件の依頼をいただきました。ゼロからの空間デザインはやったことがなかったのですごく焦りました。そこで、「3Dマイホームデザイナー」という住宅・建築プレゼンテーションソフトを使うことにしたんです。もちろんゼロから覚えてCGを作りました。建築の知識が乏しいなか、必死で完成させました。そうしたら店舗のオーナーさんに「あなた内装デザインのプロではないですよね?途中からわかったんですけど、情熱がすごいので、見届けたかったんです。お店、最高にかっこいいです。」と手を握ってくれたんです。そのときのことは今でも鮮明に思い出します。

そして、本格的な空間デザイナーを目指すことにしたのですね。

はい。38歳からバックパッカーのように世界中のいろいろなところへ行っては、その場所をCGで再現する旅に出ました。そうして腕とデザインセンスを磨いて。そして42歳のときに、妻と出会いました。彼女は空港などを手掛ける大手デザイン会社に所属していたデザイナーです。居抜きの店舗を作って「自分の作品」と呼んでいた私を、おもしろいと思ったんでしょうね。妻が会社を辞めて、2人で起業しました。社名のT&Cは2人の頭文字です。

一番大事なのは、相手が本当に求めているものを引き出すこと

芸能人やインフルエンサーからの依頼が多いと聞きました。

そうですね。話題になった有名人がプロデュースする焼肉店も僕のデザインです。今年は芸能関係の方々からのご依頼を多くいただいています。私たちは彼らが「なぜデザインをするのか」を大事にしているので、相性が良いのだと思います。

デザインイメージをしっかりと持っていらっしゃる方にプレゼンする時のコツはありますか?

相手の求めているものにあてはめて提案すること。これがずれていたら押し売りになってしまいます。相手が求めているものを読み、デザインに落とし込んでご提供することを心がけています。たとえば、カリスマ美容師と普通の美容師の違いは分かりますか?前髪を切りたくない女性がいるとします。美容師から見たら切った方がかわいいのに、切りたくないのは何らかの理由があるのかもしれませんよね。でも「あなたの切りたくない理由は、自分ではとても気になるかもしれないけど、周りから見たらそんなに気にすることではないよ。」とうまく伝えて、初めて会った人の前髪を切っちゃうのがカリスマ美容師。普通の美容師はクレームになるのが怖いから勝手にやらないんです。どちらかというと私は切ってしまうほう。その人が本当に欲しいと思っているものを引き出し、グイグイ引っ張っていくイメージです。

人の気持ちを読む力はどのように培ったのでしょう?

姉が2人いたので他人に対して思慮深く接していた記憶があります。また前職の接客業で磨いた、相手の心を理解するスキルが生きているのかもしれません。

アジアを中心に海外進出を目指す

T&C JAPANが手掛けた船 https://tandc.tokyo/works/party-ship/

今まで印象的だった案件を教えてください。

屋形船のような外観の船を豪華なクルーザーに仕立て直したことですね。テーマは「海上のロールスロイス」。外側は屋形船の名残もありますが、内装は高級外車に使われる素材や生地を取り入れたデザインにしました。あとで知ったのですが、船は上部が軽くないといけないんです。なのに上を重くして屋上に人が乗ることを提案してしまい……(笑)。船大工さんと話し合いながら、オーナーさんがゲストの方たちに、この船でどのような時間を過ごしてもらいたいかを想像しながら作りました。

高級外車に使われる素材で内装を作り上げた

その船の改造でもCG提案をされたそうですね。また、CGは内製されていると聞きました。

はい、CGは最初からずっと内製しています。私もCGを作り続けています。外部のデザイナーさんにお手伝いしてもらうこともありますが、今後も基本的には内製でやるつもりです。これも業界では珍しいようですね。

一緒に働くデザイナーやスタッフに求めることはなんですか?

いろいろな経験をしてきたプロフェッショナルがほしいですね。常に出会いを待っています。技術を覚えてきた人たちは貴重です。うちはデザインファーストの会社。そして、世の中の話題になるような物件を多く手掛けています。デザイナーとして名を売るチャンスがたくさんありますよ。

今後の展望を教えてください。

海外進出を視野に入れています。2020年12月にデザインしたシンガポールの飲食店が、今は予約がとれないお店になっているそうです。隣国のマレーシアへ展開し、アジアを中心に顧客を広げていこうと思います。

最後に今後空間デザイン業界で働きたい方に向けてメッセージをお願いします。

自分が作った店舗が繁盛したら、こんなにうれしいことはありません。作業量が多いので大変ではありますが、情熱さえあればデザインの道はきっと開かれます。真実味がありますよね?実際に私も“40歳から”人生が変わりましたから。

取材日:2021年12月27日 ライター:坂本 彩

YouTubeチャンネル
「秋葉達雄のデザイナー流儀」
https://www.youtube.com/channel/UCNS2zv9_-WREWOGUCyhOfnw

 

株式会社T&C JAPAN

  • 代表者名:秋葉 達雄
  • 設立年月:2015年5月
  • 事業内容:商業施設のデザイン・設計、店舗デザイン、インテリア商材の輸入物販、経営コンサルティング業務、映像製作等各種エンターテインメントプロデュース
  • 所在地:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前1-11-11 グリーンファンタジア503
  • URL:https://tandc.tokyo/

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

風雲会社伝をもっと見る

TOP