オデッセイ~ユーモアと科学で火星を生き抜け!~

今回はリドリー・スコット監督作、「オデッセイ」をご紹介したいと思います。あらすじとしましては、火星に一人取り残されてしまった宇宙飛行士のマーク・ワトニーが地球に帰還するためサバイバルするという内容です。
リドリー・スコットという監督は徹底した合理主義者であると言われています。その合理主義者っぷりにグサッと貫かれたのが本作であると言えます。本作の特徴としてはとにかく笑えて明るいという点です。火星に取り残されたマークが放つ自虐的ユーモアの数々。しかし、そのユーモアは完全に合理主義貫かれたものです。絶望的な状況において「状況を笑えるという事」は「状況を客観視できている」ということです。火星で生き抜くためには、置かれた状況を正確に捉える必要があります。そのためにユーモアのセンスを彼は忘れないのです。プラスして植物学者である彼は徹底的に科学的なアプローチで生き残ろうとします。その場にあるものだけで水を作り、作物を栽培する。如何に科学という分野が重要かという点で、世界中の子供に観てほしいですし、「ユーモアと科学があるだけで人間は十分偉大である」というリドリー・スコットらしいメッセージになっていると思います。
逆に言うと、合理的でない要素については徹底して排除されています。例えば、宇宙を舞台とした映画にありがちな、「地球で帰りを待っている愛する人たちとの感動的な心の交流」であったり、「どん底な状況で泣き叫んだり」などという事はほぼ描かれないのです。遠く離れた別の星にいる人にとって、地球にいる人の憶測に基づいた心配など何の役にも立ちませんし、泣き叫んでも酸素が減るだけです。そういった部分をバッサリ切り捨てている点が、この映画の軽快な気持ちよさに繋がっているのではないかと思います。
そして、真に感動的なのは世界中の科学者たちがマーク一人を救うために、国家や政治的な背景を抜きにして科学という共通言語の元に団結するという点です。一見、ユートピア的な理想主義に見えるものの(別にそれでも全く良いとは思いますが)、ここでもマークを救出するために科学者やNASAの上層部が「最善を尽くす」姿が描かれており、全く映画の筋としてブレていない上に感動的であります。是非一度ご覧になってみてください。
画像:amazonより引用
クリステ編集部 渡邊正人