プロダクト2023.04.19

バズったあの100均の靴下も?業界No.1メーカーの子会社、少数精鋭ならではの秘密

大阪
株式会社NEXT 代表取締役社長
Masataka Hirakuni
平國 督崇

各種靴下を中心としたレッグウェアを製造販売する株式会社NEXT。業界No.1(2022年8月、繊研新聞調べ)の靴下専業メーカーである岡本株式会社の子会社として、ビジネスデータや優秀な人材を引き継ぐ形で設立されました。しかし親会社と違うのは、低価格路線に向けたローコストビジネスモデルを実現する会社であるということ。商品のほとんどは大手100円ショップやディスカウントセンター、ホームセンターなどで取り扱われています。会社立ち上げのきっかけから、コスト競争力を持ちながら高い市場シェア率を誇る秘訣、そして今後のビジョンなどについてたっぷりとお伺いしました。

業界No.1の靴下専業メーカーからローコストビジネスモデルの子会社が誕生

まずは、株式会社NEXTの事業内容を教えてください。

各種靴下(紳士・婦人・子ども用)や、タイツやストッキングといったレッグウェアを中心とした製造販売を行っています。
そのほかにも、靴下の編み技術を利用したアームカバーやネックウォーマー、リストバンドなどの関連商品も取り扱っています。

2009年に会社設立されていますが、そのきっかけは?

当社は靴下専業メーカーである岡本株式会社100%出資の子会社です。当時、岡本株式会社は靴下の製造卸販売が業界でNo.1(2022年8月、繊研新聞調べ)でしたが、取引の主力は全国に展開する総合チェーンストアへの依存となっていました。
しかし小売業界には、新たなカテゴリーキラーとなる低価格路線小売業の台頭があり、危機感から“低価格路線に向けたローコストビジネスモデル”の別会社である株式会社NEXTの設立に至りました。

親会社のベテラン4人で「一気に新規開拓」!22年に代表就任

※親会社、岡本株式会社の商品

設立当初、わずか4人の従業員でスタートされたそうですね。

はい。岡本株式会社の中から経験豊富な人材が集められ、選ばれた少数精鋭によるプロ集団の会社としてスタートを切りました。

立ち上げ当初はご苦労もあったのではないでしょうか?

当時の副社長が立ち上げたのですが、岡本株式会社の子会社として設立しているので、ある程度は勝算がある上での決断だったと思います。ただ、そこから新規開拓となるとやはり時間と労力がかかりますし、そう簡単にはできません。
我々が製造している商品は販売にいたるのが半年から1年先になりますので、今話が決まっても店頭に並ぶのは1年後になるんですよね。さらに新規となると、最初の話がまとまるまでに1年、2年とかかることになりますので、そういった点では苦労もあったのではないかなと思います。
その反面、岡本株式会社から新規開拓の得意な人材を集めて、一気に行ってきたという実績から今があります。

平國さんご自身のキャリアを教えていただけますか?

岡本株式会社へ入社後、営業部門を一筋に25年の経験を積んできました。地方の小さな小売店から大手総合チェーン店まで、また百貨店や衣料専門店などの営業を行い、その活動を通じてPB(プライベートブランド)商品の開発やOEM(受注生産)など、製造や企画といったことも同時に学んできました。
そういった経験もあってか、22年に代表取締役に就任となりました。

良質で低価格の商品が多数!大手100円ショップでの製造販売トップシェアを誇る

実際に取り扱われる商品について詳しくお聞きしていきたいのですが、まず現在はどういったところで製造販売されているのでしょうか?

製造販売する先は、ディスカウントストアや100円ショップ、ホームセンターなどで、ほとんどがPB商品です。

100円ショップでの製造販売は業界トップシェアだとお聞きしました。私も100円ショップに行った際、「100円でこんな良質な靴下が買えるなんて!」と最初は驚きました。

私も驚いています(笑)。履き心地も良いですし、100円とは思えないほどしっかりとした商品ですので。
こういった、岡本株式会社では対応できない低価格商品を得意としています。PBブランドをたくさん扱っていますので、「株式会社NEXT」という名前は表には出していません。ホームページも持っていませんし、あくまで岡本株式会社の価格対応の部門というポジションでやっています。

市場調査、企画デザインから商品が完成するまでの道のり

商品企画から製造販売まですべて社内で行われていますよね。まず市場調査はどのようにされているのでしょうか?

我々の一番の強みは、業界No.1の岡本株式会社の、モノづくりのノウハウと販売データを持っているという点です。「ある小売さんではこういうものが売れている」「シーズンごとには何がよく売れているか」といった情報を収集して分析しています。
ほかにも得意先以外の商品を調査することや、トレンド情報の収集の際は、靴下やタイツなどだけではなく、靴にも注目して見ますね。スニーカーが流行っているのか、ブーツはロングなのかショートなのか、あるいはパンプスなのか。それによって靴下のトレンドが変わってきますので、細かく調査します。あるいは気になるサンプルや変わったサンプルなどを購入をして、次に流行るものは何か社内で話し合います。

岡本株式会社の子会社であるというのは、他社にはない最大の強みですよね。

そうですね。そこを最大限に生かしつつ、いかに情報収集するかにかかっています。ローコストで作られている商品から百貨店で取り扱われている商品まで、すみずみまでチェックしています。

新デザインの商品を出される頻度はどのくらいですか?

年2回、春夏と秋冬のタイミングで出すことがほとんどです。展開する商品の約7割から8割が新規デザインの商品になります。

どのようにデザイン案を出して企画しているのでしょうか?

デザイナーそれぞれの案や過去に貯めたストックもありますし、岡本株式会社が持っているデザインストック、サンプルストックを活用することもあります。それらに市場調査で得た“今”のデータやトレンドを加えて、新デザインを考案しています。

得意先に合わせたオンリーワンの商品企画で愛される靴下を

どのように他社と差別化されていますか?

これも当社の強みなのですが、得意先ごとにデザイナーと営業担当を配置しているんです。
たとえば100円ショップでも、企業毎にそれぞれ商品の雰囲気や世界観が違いますよね。その違いを表現するには専属の担当にて専用の企画をしないといけなくなります。うちは専属のデザイナーと営業がそれぞれのブランドに合った商品を企画して提案しています。

取引先のことをしっかりと理解した上で、オリジナルな商品をご提案されているんですね。

そういった丁寧な営業やデザイン提案に対してスピーディに対応できているのは、専属で担当しているからこそだと思っています。
うちが企画した靴下がSNSでバズったこともあるんですよ!「ドラマで役者さんが履いていた」とSNSにアップされたことがきっかけで話題になりました。若年層向けの商品企画は、SNSでの動向も常にチェックして行っていますね。

コスト競争力を持ちながら、愛され続ける商品作りをされている秘訣を教えてください。

岡本グループ企業として歴史や学びを生かし、またメーカーとしてのプライドを持って、相手の期待を超える価値を提供し続けてきたことだと思います。
これからもグループの先頭に立って、事業を進めていきたいと思っています。

良い靴下を世に送り出すために集まった“靴下好き集団”

現在の社内体制について教えてください。

営業6人、デザイナー6人。営業事務とデリバリーがそれぞれ3人いて、管理職が2人です。
得意先は10社以上ありまして、先程お話したようにデザイナーと営業が得意先ごとに振り分けています。たとえば婦人ものやキッズなど、各デザイナーの得意分野が生かせる得意先に振り分けることもありますし、逆に扱ったことのない分野に挑戦することもできます。
こうした社内配属をはじめ、得意先の希望や要望などにもスピーディかつ臨機応変に対応ができるのは、岡本株式会社ではできない少人数の会社だからこそできる強みです。

社員さん達はどのようなタイプの方が多くいらっしゃいますか?

みんな真面目で、他能工だからこその教えたがりで面倒見が良い人が多いのも特徴です。特にデザイナーや営業は経験の差こそあれ、みんな靴下が大好きなプロ集団であり、マニアですね。
どうしたらお客さんに喜んでもらえる商品ができるか、もっと良い商品をもっと安く作れる方法はないか、など生き生きと話しながら、楽しんで仕事をしています。逆に、デザインに没頭している時や営業活動の資料を作成している時などはシーンと静まり返っていたりと、かなり極端な一面もあります。
長く活躍し続けてくれる社員たちに共通しているのは、みんな入社してから靴下のことを好きになった人たちばかりだということです。

“靴下の沼”にハマれる人材、大募集中!

現在デザイナーを募集されていますが、一緒に働くクリエイターに対してどのようなことを求めますか?

まずは、モノ作りが好きであること。靴下ってすごく奥が深くて面白くて、関われば関わるほど“靴下の沼”にハマっていくんですよ!入社してから靴下をどんどん好きなってくれる方であれば、はじめから靴下に詳しくなくても問題ありません。
それから世の中へのアンテナを張り巡らせていること。そして、“アーティストではない”ということを理解していることです。産業デザイナーである以上、スキルの高い社員とともにスピード感のある仕事をこなすことが求められます。あまり没頭しすぎずに、まず手が動く人が理想的ですね。
必ずしも同業界でなくてもかまいませんが、なるべく近い業界の経験があると生かされて良いのではないかなと思います。

市場の流れを先読みし、新たなビジネスチャンスを掴む

最後に、会社としての将来のビジョンを教えてください。

小売業界はとても変化の多い業界です。販売先や販売方法などが変わりゆく市場の変化において、新たなカテゴリーキラーと呼ばれる企業とタッグを組んでビジネスチャンスを掴んでいこうとしています。
当社にしかできない新たなビジネスを拡大していくことにより、今後も岡本グループへ貢献していきたいと考えています。

取材日:2023年2月27日 ライター:大野 由加里

株式会社NEXT

  • 代表者名:平國 督崇
  • 設立年月:2009年6月11日
  • 資本金:3,000万円
  • 事業内容:各種靴下製造販売(紳士・婦人・子供靴下、パンティストッキング、タイツ、編み技術を利用した関連商品)、靴下及び繊維製品の輸出入
  • 所在地:〒635-0834 奈良県北葛城郡広陵町大塚300番地1(本店)、〒550-0133 大阪市西区西本町1丁目11番9号(営業所)
  • URL:なし(親会社/https://www.okamotogroup.com/
  • お問い合わせ先:TEL/06-6539-0133

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