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PEOPLEあの人に会いたい!

いまを生きている人のエネルギーは 100年前も美しかったはずだし きっと100年後にだって美しい

Vol.37
フォトグラファー 亀山ののこ(Nonoko Kameyama)氏
 
image_037_01昨年、『The Springtime of Life』(ポイズン・エディターズ刊)という素敵なフォトエッセイを発表した亀山ののこさん。この10数年、女性の活躍が目立つ写真の世界にまたひとつ新星誕生かも、です。彼女にはもうひとつ、定期的に展示発表を続けている『都市、風、命のダンス』という連作もあり、こちらはダンサーとのコラボレーションが新鮮。撮影風景を見学させてもらい、被写体とフォトグラファーの真剣勝負に感嘆させられた次第です。「自分の中に起こった感情を、美しく人に伝える」ためにシャッターを押し続ける亀山さん。仕事として、生きる証として写真を撮ることを、心底楽しんでいるように見えました。

彼女を撮ることで、自分の存在理由が見つかるような気がした。

『The Springtime of Life』は、ただの写真集ではなくフォトエッセイですね。文章もなかなかうまい。

編集の方に、「当然書くんでしょ?」って感じで書かされて(笑)。

大学が文学部のせいじゃないですか。やればできるんだ。

というより、この作品に関しては、日記をつけていたのが良かったみたい。母がなくなったころから書いているんです。それを見ながら何があったかを思い出しながら、被写体になってもらった舞子(芥川舞子さん)に電話で「この時、どんな気持ちだった」なんて聞きながら書きました。でも文章って、書いてみるとちょっとはまりますね。

どんなところに、はまったの?

文章を書くと、頭の中が整理されるんですね。それが新鮮だった。ものを考えるにあたっての、良い道具になると思いました。作品に文章を添えるのも、とても楽しかった。これからも、機会があったら書きたいですね。

それはそれとして、『The Springtime of Life』はとても良い仕上がりの作品でしたね。被写体(モデル/芥川舞子さん)を5年間撮り続けて、彼女の成長や葛藤や、いろんなことが伝わってくる。

いろいろ考える前に、感覚的に撮り始めていた作品なんです。振り返ってみれば、彼女を撮ることで、自分の存在理由が見つかるような気がしていた。彼女はすごく綺麗だったし、どんどん過ぎていってしまう危うさのようなものもあった。

彼女が出産するところで終わっているのなんて、当然計画してない結末ですよね。

そうそう、本当は「ヨガのインストラクターになって精神的にも強くなった」というところで終わるはずだったんだけど、出版が決まってから赤ちゃんができたのでエンディングは変更しました。2人で「最高のシナリオだね」って、笑いました。

一番大切なのは、自分がそれを美しいと思うかどうかでしょうね。

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『都市、風、命のダンス』は、ダンサーとのコラボレーションの連作。たぶん、ライフワーク的な取り組みになるのでしょうね。

そうですね。これから先、形はちょっとずつ変わっていくのかもしれませんけど。撮影するたびに新しく感じることがあるし、新しく思うこともあるので、むしろ同じように撮り続けていくのは無理なのかも。どんどん進化していくんだと思います。

どんなきっかけで撮り始めたの?

人間が生きている「いま」を撮りたいと思った。「いま」を生きている人のエネルギーは100年前も美しかったはずだし、きっと100年後にだって美しい。人の持っている、そういうエネルギーは言葉で表現することもできるのだろうけど、写真にするなら「踊る」という身体表現がいいんじゃないかと考えました。

これは、被写体はいわゆるダンサーに限定しているの?

撮り始めたころは「ダンスの踊れる人」を探してお願いしていたんだけど、レンズの前で踊るのは初めてという俳優さんに参加してもらっても、素晴らしい写真になった。踊るということより、私と被写体が向き合うということの方が大事だと、今は思っています。お年寄りや子供も撮ってみたいですね。

踊ってもらうの?

踊ってくれてもいいし、身体で気持ちを表現してくれるなら、なんでもいいかも。ジャンプだけとかね。そんな風に着想が広がるのは、たぶん、ダンスという行為がとても原始的だからなんでしょうね。

被写体はいろいろだけど、撮影場所は全部東京ですね。

そう、「東京」も大切なキーワードです。変化の激しい東京という街を舞台に、美しい写真を撮るのももうひとつのテーマ。

美しく撮る、美しく表現するは、亀山さんにとっての大切なキーワード?

そうだと思います。

大切なのは美しいもの?それとも美しく撮ること?

一番大切なのは、自分がそれを美しいと思うかどうかでしょうね。たとえば、人間のどろどろした部分にだって美しいものを感じるかもしれない。そう感じたら、撮ると思います。

撮影というより、セッション――― 私には、このやり方しかない。大変だけど幸せ。

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18歳で突然カメラと出会って、撮り始めた。師匠とか、サークル活動とか、そういうのはまったくなしでここまで来た?

そうですね。大学にはカメラを勉強するコースもあったし、コースには友だちもいたけど自分が行こうとは思わなかった。とにかく撮るのが楽しくて、それ以外何も考えていなかった(笑)。

プロになる気はなかったの?計画立ててやるなら、誰かのアシスタントになる道もあったはずだけど。

20代後半になって、アシスタントやスタジオマンを経験しておくのも手だったなとは思いましたけど(笑)。大学在学中は、漠然とはそういう選択肢があることは知っていても、それより作品集を作るのが忙しくて。そいうことをしたほうがいいのかどうかを、考える暇もなかったという感じです。ただ、プロになりたいとは強く思ってました。今は、結局これが自分なりの歩み方だったと納得しています。するしかないですよね(笑)。

写真という素敵な表現手段が仕事になったことについては?

そうですね。仕事になりましたね。人生の仕事って感じかな。

撮影のスタイルも、かなり身体を張っていると感じる。撮影というより、セッション。ほんとに被写体と真剣勝負してますもんね。

私には、このやり方しかないですからね。大変だけど、幸せ。

仕事は、順調ですか?

この1、2年は順調と言えると思います。雑誌や広告の仕事がいただけるようになったし、写真を通していろんな人に出会い、いろんなお話が膨らんでいっています。

うん、お話ししていても、そういうグルーブ感のようなものが伝わってきます。「膨らんだ」関係で、面白いお話あります?

まだ、ぜんぜん私の妄想の中の話なんですけど、将来、『都市、風、命のダンス』をテーマにパフォーマンスイベントをやりたいなと思っている。作品としての写真を展示して、その前でダンサーのパフォーマンスをライブで。

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実現すると、楽しそうですね。じゃあ最後に、この記事を読んでいる若手クリエイターたちにエールをお願いします。

私は、ある時、どんな学問も、数学であれ、経済であれ、文学であれ、結局のところ、自分の中に起こった感情なり、思考なり、精神なりを、より的確に、しかも美しく人に伝えるためにあるんだと気づきました。そして、どんな職業であっても、それを通して自分の精神を美しく人に伝えるのに意味があるんだとわかった。私が写真という表現手段と出会ったのは、そういうことなんだと思っています。それはクリエイターに限らず、どんな職業を目指すのであれ、どんな勉強をするのであれ、何を伝えたいかと考え、それはどうしたら美しく伝わるかと考えることで道が続いていく。私はそう思います。

取材日:2008年2月27日

Profile of 亀山ののこ

亀山ののこ氏

1976年生まれ。和光大学文学部卒業。18歳でカメラに出会い、写真を撮り始める。大学在学中も自己流で写真を撮り続け、卒業後にフリーカメラマンとして活動を開始。師匠なし、アシスタント経験なし。2007年から、ライフワークである『都市、風、命のダンス』を撮り始める。2007年4月、モデル/芥川舞子を5年間取り続けたフォトエッセイ『The Springtime of Life』(ポイズン・エディターズ刊)を発表。徐々に、静かに注目され始めているフォトグラファーである。

(NONOKO BLOG) http://blog.nonoko-foto.com/

 
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