グラフィック2005.07.01

「いただけるものならなんでも」 では、埒があかないと気づいた

Vol.3
イラストレーター ラジカル鈴木(Radical Suzuki)氏
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あれこれ説明するより、作品を見てもらった方が早いね――ラジカル鈴木さんも、そういうタイプのクリエイター。イラストレーターというよりもむしろ、あのキャラクターの生みの親と紹介した方がさらに早いのかもしれない。映画好きの方の間では、イラスト付の映画評論での方が有名かな。「3歳で絵描きを志した」というラジカルさんの素顔(の一端)に迫るインタビュー。どうぞお楽しみください。

なんと新婚ホヤホヤのラジカルさんでした。

近況を教えてください。

結婚しました。(一同ビックリ!)

おめでとうございます!

いや~、どうも。最近籍を入れたばかりです。式は9月くらいに予定してます。(照れまくり)

(*引っ越したばかりということで、新しい住所を教えていただいていた編集部。しかし、結婚による転居とは、誰一人察することができなかったため、取材の冒頭はちょっとしたパニック状態であった……)

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なるほど、この、妙に小奇麗な部屋の様子は、身を固め、健全な生活をしている証なのですね?(*以前の自宅兼仕事場は、雑然・騒然・混沌・殺伐としていることで有名だった。今は伝説に)

そういうことになりますかね。確かに独身時代は部屋はヒッチャカメッチャカだし、生活もグチャグチャでしたね。

何が一番変わりましたか?

毎日規則正しく食事をとる、なんてことでしょうか。

奥さんと一緒に?

そ、そういうことですね。はい。

ご馳走様です。で、足もとをすくうようですが(笑)、妙に健全な生活に、作家としての鋭さがスポイルされたりするのは怖くないですか?

始めたばかりなので、この生活が自分にどう影響しているのかはまだわからないです。でも、おっしゃるようなことはわかりますし、気をつけたいと思います。こぢんまりとまとまるのはイヤですからね。

まずは個性の確立。自己発見ね。

では、本題の質問に入っていきます。ラジカルさんにとって、イラストレーターは仕事?生き方?

生業(なりわい)であり、生き方でもありますね。

専門学校を卒業してデザイン会社に就職してますけど、半年くらいでフリーランスになってますよね?ペンネーム通りのラジカルさを感じるのですが。

う~ん、とにかく当時は辞めるということしか頭に浮かばなかったですね。あまり深くは考えていなかった。

成功の確信みないなものはあった?

いや~ない、ない、ないです。ただ、闇雲に辞めただけです(笑)。無我夢中。

でも、デザイン事務所でお給料をもらうより、ひとり立ちしてイラストを描くことを選んだわけですよね?

もともと、小さな頃から絵ばっかり描いていて、こっちの方向しかないということは明快にありましたから。3歳の頃から。漠然とだけど、絵描きになると思ってました。小学校の時には、作文で「絵描きになる」って書いてました。

で、フリーランスになってかなり苦労されるわけですよね。

もちろん(笑)。ぽっと会社を辞めた駆け出しに、いきなり仕事なんてないですからね。いろんなところに営業に歩いて、「いただけるならなんでも」というスタンスでやっていた時期が8年くらい続きました。

いわゆる、「食えるように」なったのは、今の作風が固まってから?

そうですね。

1996年に、一念発起して、作家としての道を切り拓いた。

「いただけるものならなんでも」では、埒があかないと気づいた。だからあの年は、出品できるコンペにはすべて参加しました。“ラジカル”というペンネームには、自分のなかにある積極的な面を出そうという気持ちが込められているんです。そこから先が拓けました。

コンペでの入賞打率は5割を超えたとか。

頑張ったら、結果がついてきたということですね。今でも、海外のコンペには機会があれば出品しています。

たとえば、「ラジカルさんのようになるには?」という質問があったら、どう答えます?

まずは個性の確立。自分はコレだ、というモノが見つからないうちはいくらあがいてもダメです。それは無理に作り上げたりするものではないから、なかなか難しいかもしれませんけれども、言わばそれは自分の内面をじっくり見つめる作業です。自己発見ね。そしてそれが確立したら、認知されるためにはなんでもする。認知されるまではガムシャラに頑張って、チャンスがきたら、ガっと掴む。若いうちは失うものはないのだから、1年や2年捨てたつもりでガムシャラにやってもいいんじゃないですか。

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やりたいことをやらないと、自分が活きない。

以前から題材は人が中心?

はい。

理由は?

他のモノに興味がない(笑)。

今後も、それは続いていく?

たぶん(笑)、たぶんです。無意識の部分が大きいので、どうなっていくのかは、実はよくわからないんです。

興味のあることしかやらない。やりたいことしか、やらない(笑)?

結果的にそういうことですね。たぶん、そうじゃないといろんな意味で良くないと思います。自分にとっても、周りにとっても。やりたいことをやらないと、自分が活きない。目標を立てて行動することを否定はしませんが、少なくとも僕には、インスピレーションに従って行動することが合ってます。

作風は、しばらく変わらない?新しい作風を模索したりはしない?

基本的に、深くは考えてません(笑)。ただ、新しい作風については、思いついた時に描いたりはしています。このジーンズのイラストなんかはそうですね。コレはすべて手描きです。コンピュータに向かってばかりいると、時々、こういうものを描きたくなるんですね。

こういう作風から、新しい方向性が出てくるのかもしれない?

そうですね。可能性はあります。どこでどうなるかわからない。

「どこでどうなるかわからない」というのが、ラジカルさんらしいやり方なんですね。

それが一番面白いやり方です。自分でも驚きが無いと、ただの作業になっちゃうから。

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プロの映画評論家になるくらいなら、自分で作りますよ。

映画評論やコラムとイラストも書いてますよね?

今はもう3誌になっちゃって、大変なことになってます(笑)。最初は「タダで映画が観られる」って大喜びだったんだけど、最近は「書くために観る」ことの大変さが骨身に染みてきてます(笑)。

女優にこだわった連載(『ラジカル鈴木のアクトレスにふぉーりん・らぶ』)、面白いですね。

女優は永遠のテーマです(笑))。長年観てきていると、その人の変遷が面白かったりします。

具体的には誰の変遷が面白かったですか?

まずダイアン・レイン。ほぼ同世代で、いろいろと浮き沈みのあったヒトです。現在は再び評価されていて、自分のことのように嬉しいです(笑)。あとは、ジェニファー・コネリー。デビューの時から見守ってます。まさかオスカー(『ビューティフル・マインド』で助演女優賞受賞)を獲るほどになるとは・・・、って感無量です(笑)。

ラジカルさんにとって、映画館関連の仕事の意味は?

いや、これは仕事ではないです。あくまで趣味の延長。映画評論は余技としてやっているから楽しいんで、プロの評論家になりたいとは思いません。そこまで徹底して仕事にするくらいなら、映画作りをしますよ。

ラジカルさんが映画を撮るとしたら、主演はダイアン・レイン?

う~ん、クリスィーナ・リッチかな。今、一番好きなんで。

じゃあ、作風も『バッファロー66』みたいな感じ?

どんぴしゃですね。やるなら、ああいう実験的&アバンギャルドなことをやりたい。まあ、夢ですけど。今は映画の周辺にいられればいいんです。

それが楽しいんですね?

そういうことです。

「女子高生ウォッチ」の近況は?(ラジカルさんは、女子高生を観察するために渋谷に拠点を置いているのである。もちろんイラストの参考にするため?!)

最近は昔ほどではないですが、やってますよ。前からですけれど、女子高生とは限らずギャル、OL、女性全般をウォッチしてますヨ!

そういう“ウォッチ”を通して醸成されたものが、作品に定着しているんですか?

どうでしょう・・・、そういう部分もあるかもしれません。すべては神様のお導きのままに。ってところです(笑)。

Profile of ラジカル鈴木

profile_003 1966年11月7日、埼玉県生まれ。'90年頃からMachintoshでの創作を始める。1994年、ラジカル鈴木としての活動開始。時代性と普遍性を共有した魅力的なキャラクターイラストレーションを制作。常にモチーフは人物。女性的感性と躍動感を大切にしている。広告・書籍・雑誌・キャラクターデザイン等、自在に活動中。近年はさらなるオリジナリティ溢れる世界をWebやケータイコンテンツでも展開中
【主な仕事】1997~2000年
読売新聞主催「大顔展」宣伝ヴィジユアル
東京展東京国立科学博物館99年開催
名古屋展名古屋市科学館00年開催
札幌展札幌メディアドーム00年開催
福岡展福岡市博物館00年開催
http://www.kahaku.go.jp/special/past/kao-ten/
'97年 第三舞台 『コーマ・エンジェル』 キャラクターデザイン
 
【書籍装画】
講談社 末永直海著 『うかれ桜』装画
マガジンハウス 香山リカ著 『インターネット・マザー』装画
文芸春秋 林真理子著 『世紀末思い出し笑い』装画
文芸春秋 群よう子著 『挑む女』装画
講談社 山田詠美著 『熱血ポンちゃんは2度ベルを鳴らす』装画
新潮社 小沢章友著 『心配しないでね』装画
祥伝社 清水義範著 『やっとかめ探偵団』装画
光文社 森綾著 『大阪の女はえらい』装画
講談社 岸本葉子著 『恋もいいけど本も好き』装画
講談社 島村麻里著 『アジアンリゾートに快楽中毒』装画と挿画
 
【雑誌表紙・エディトリアル】
パルコ出版 御教訓カレンダー98年版
'97~'98年ベネッセコーポレーション 通信英語講座月刊MEWS
'98~'99年世界文化社 月刊心理ゲームズ
'99~毎日コミュニケーションズ PCfan BEST
 
【受賞歴】
'96~'98年第8回グラフィックアート3.3m2(ひとつぼ)展入選
ザ・チョイス広告コンペ最優秀賞
第1回インターネット・グラフィックデザイン・コンペティション奨励賞
'99年クリエイティビティ年鑑29入選(U.S.A.)
'00年第79回ニューヨークアートディレクターズクラブ賞(U.S.A.)銅賞受賞
第11回ショーモン国際ポスターフェスティバル(フランス)入選
HKDA"DESIGN 2000" Show(香港)金賞受賞
第14回ユネスコ国際ポスター展(フランス)入選
第13回ラハティ国際ポスター展 01年入選(フィンランド)
'01年第80回ニューヨークアートディレクターズクラブ賞(U.S.A.)銅賞受賞
JAGDA年鑑 01入選(日本)
第15回ユーモアと風刺・国際ビエンナーレ ガブロボ 01入選(ブルガリア)
クリエイティビティ年鑑31金賞(U.S.A.)
graphisme出品・フランソワ・ミッテラン国立図書館において(フランス)
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