ミッション25 「住んでみたい街へ行って来い」

ミッション25
電通第5CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター / コピーライター
Akira Kadota
門田 陽

いつ頃からでしょうか。引越しシーズンの前になると住宅メーカーや大手不動産会社が必ず発表する「住みたい街ランキング」。今年もニュースやワイドショーで盛んに取り上げられていました。そのときはただボーッとテレビを眺めながら関係ない話だなくらいにしか思いませんでしたが、このミッションのために見直すと行ったことはもちろん読み方すらわからない街もあってとても新鮮でした。

さて今回のミッションでは株式会社LIFULLがこの2月に発表した中から「首都圏版借りて住みたい街ランキング」のトップ10を勝手に使用しました。一般的には住みたい物件の必須条件としては生活利便施設の充実や通勤通学などの都合、そして余暇を過ごすにも便利な所が人気なのが当たり前だったそうですが、コロナの影響で2021年のランキングは激変。感染リスクのより低いエリアが急伸。テレワークの実施で通勤の必要があまりない人たちは家賃相場が安い郊外での生活を望むようになってその結果4年連続首位の池袋はいきなり5位にランクダウン。利便性最優先の暮らしも大変化中です。

ランキングにはもうひとつ「買って住みたい街」もありますが今回そちらは無視です、ごめんなさい。それはひとえに僕がシングルライフのベテラン(言い換えれば単なる長年のやもめ暮らし)なので、その特徴を最大限に活かした探検にしました。僕の趣味や性格に偏りがあるのでどこまで参考になるかわかりませんが、クリエイティブ探検隊ならではの視点でこの春上京や転居を考えられているみなさんの何かのヒントになればいいなと思っています。

【探検内容とチェックポイント10項目】
せっかく人気の「住みたい街」です。どうせ住むなら駅近物件に限ります。そこでこの探検では駅から徒歩5分以内に絞ってそれぞれの街を徹底的に歩いてみました。不動産業界では徒歩1分は80mだそうです。それに従い駅から400m以内で次の10項目をチェックしたのです。内容が満たされていれば〇、そぐわなければ×というシンプルな表記にしました。※また、家賃相場やスーパーマーケット、銀行ATM,病院、交番の有無などの重要事項は不動産屋さんですぐにわかるので省いています。

①徒歩5分圏内にセブンイレブン、ローソン、ファミリーマートが各々最低1店舗はあること。いきなりのわがままですが、全部ほしいです。そして申し訳ないですがニューデイズやデイリーヤマザキやミニストップは外しました。大手3つは各々PVも充実している他にもセブンにはチケットぴあ、ローソンにはローチケ、ファミマはイープラスの専用機が設置されているのです。落語や演劇やスポーツ観戦のチケット購入に欠かせないのがこの大手3つのコンビニなのです。

②徒歩5分圏内に図書館があること。大きな本屋さんがあればさらによいですが、図書館の存在は街の文化度を上げますし、自ずと治安の良さにも貢献していると考えます。

③徒歩5分圏内にファミレスがあること。僕は地元贔屓なのでできればロイホ(福岡発祥)がうれしいですが、これに関しては贅沢は言いません。ブランドは問いません。

④徒歩5分圏内に携帯ショップがあること。最近はどの店もほぼ予約制ですが、機種変や不具合や料金見直しなど年に一度や二度はお世話になるので近いに越したことはないです。

⑤徒歩5分圏内に銭湯があること。故立川談志師匠の名言に「銭湯は裏切らない」というのがありますが、僕も全く同意です。

⑥徒歩5分圏内にマッサージ店があること。住めば都と言いますが現代社会はどこで暮らしてもストレスはついてまわりますので体をほぐす場所は必須です。今回の数字には整骨院は省いています。

⑦徒歩5分圏内にベンチのある公園があること。散歩の途中でひと息ついて公園で文庫本を読んだりするのはお嫌いですか?何にしても暮らしに公園は欠かせません。

⑧徒歩5分圏内にレンタサイクル(シェアバイク)があること。最近の僕の足はもっぱら赤いシェア自転車。自分の足がエンジンです。

⑨徒歩5分圏内に「僕だけの細道」があること。行きつけの場所というか、たとえば野良猫に会える路地。あまり人には教えたくないとっておきの「自分道」がある街っていいですよね!

⑩そして10個目は、都内のターミナル駅・地下鉄主要駅まですぐに出られる場所であることです。これに関してはコロナの成り行き次第ですが永遠にステイホームなわけはないし、おさまったときはまた外に出る生活に戻るでしょうし、その願いも込めています。

【では、早速結果発表】
第1位 本厚木
①コンビニ:〇(セブン3、ローソン4、ファミマ1)
②図書館:×
③ファミレス:〇(2店)
④携帯ショップ:〇(7店)
⑤銭湯:〇(仲の湯)
⑥マッサージ店:〇(9店)
⑦ベンチのある公園:〇(6園)
⑧レンタサイクル:〇(5箇所)
⑨気になった道:駅の脇に秘密っぽい路地がありました(※写真①)。
⑩新宿まで小田急線快速急行で50分
※余談:「ほんあつぎ」なんですね。「もとあつぎ」と思っていました。隣の海老名市にはJRの厚木駅があって地元の人たちはそちらは「うそあつぎ」と呼んでいるようです。 都心までの距離を考えると遠さは否めないので今年ならではの第1位な気がしました。


写真①

第2位 大宮
①コンビニ:〇(セブン4、ローソン3、ファミマ4)
②図書館:〇(さいたま市立桜木図書館)
③ファミレス:〇(6店)
④携帯ショップ:〇(9店)
⑤銭湯:〇(日進湯)
⑥マッサージ店:〇(36店)
⑦ベンチのある公園:〇(1園)
⑧レンタサイクル:〇(3箇所)
⑨気になった道:徒歩3分の場所に千鳥足が似合う道を見つけました(※写真②)。
⑩池袋までJR湘南新宿ラインで24分
余談:新幹線だと上野まで19分。なかなか大きな地方都市です。昼飲みをやっている店がとても多い気がしました(※写真③)。


写真②
写真③

第3位 葛西
①コンビニ:〇(セブン7、ローソン2、ファミマ1)
②図書館:×
③ファミレス:〇(2店)
④携帯ショップ:〇(7店)
⑤銭湯:〇(仲の湯) ⑥マッサージ店:〇(9店)
⑦ベンチのある公園:〇(6園)
⑧レンタサイクル:〇(5箇所)
⑨気になった道:駅の高架下は少し薄暗くて 夜は足早になります(※写真④)。
⑩銀座まで地下鉄乗り換えで23分
 余談:水族館のイメージが強い街ですが、駅前はコンパクトに各業種入り乱れていました。駅徒歩15秒にある風俗っぽいビルが意外と目立ってそびえていました(※写真⑤)


写真④

写真⑤

第4位 八王子
①コンビニ:〇(セブン7、ローソン2、ファミマ6)
②図書館:〇(八王子市生涯学習センター図書館)
③ファミレス:〇(7店)
④携帯ショップ:〇(10店)
⑤銭湯:〇(稲荷湯)
⑥マッサージ店:〇(21店)
⑦ベンチのある公園:〇(5園)
⑧レンタサイクル:〇(1箇所)
⑨気になった道:ホーロー看板に人はなぜ魅きつけられるのだろう(※写真⑥)。
⑩新宿までJR中央線快速で45分
余談:都心で雪が降ると必ずテレビ中継される八王子駅前。都会の玄関口と言うよりは脱出口。23区とは明らかに空気が違うオリジナルな街です。


写真⑥

第5位 池袋
①コンビニ:〇(セブン28、ローソン10、 ファミマ26)
②図書館:×(徒歩8分に豊島区立中央図書館)
③ファミレス:〇(8店)
④携帯ショップ:〇(30店)
⑤銭湯:〇(平和湯)
⑥マッサージ店:〇(150店)
⑦ベンチのある公園:〇(5園)
⑧レンタサイクル:×
⑨気になった道:池袋演芸場は地下にあってヤバいアジトみたいで好きです(※写真⑦)。
⑩池袋まで0分
余談:今回唯一、僕が頻繁に通う街。多くの人の池袋のイメージは東口(※写真⑧)か西口(※写真⑨)でしょうが、僕のオススメはズバリ北口!ここは日本語よりも異国の言葉が頻繁に飛び交い昼間から怪しい人たちを生で目撃できる貴重な場所です。それにしてもマッサージ店の数、多過ぎです。みんなちゃんと許可を取っているのでしょうか。


写真⑦

写真⑧

写真⑨

第6位 千葉
①コンビニ:〇(セブン5、ローソン3、ファミマ5)
②図書館:×(徒歩8分で千葉市中央図書館)
③ファミレス:〇(3店)
④携帯ショップ:〇(4店)
⑤銭湯:×
⑥マッサージ店:〇(17店)
⑦ベンチのある公園:〇(3園)
⑧レンタサイクル:〇(13箇所)
⑨気になった道:この落花生オブジェの道は駅に隣接しているのだけど、なぜか人通りが少なかったです(※写真⑩)。
⑩秋葉原までJR中央総武線で45分
余談:わざわざ東京に出なくても駅周辺で事足りる街です。そもそも目指すのは東京ではなくパリなのかもしれません。駅の真ん前にはこんなモニュメントがありました(※写真⑪)


写真⑩

写真⑪

第7位 蕨
①コンビニ:〇(セブン4、ローソン2、ファミマ2)
②図書館:×
③ファミレス:〇(3店)
④携帯ショップ:〇(6店)
⑤銭湯:〇(亀の湯)
⑥マッサージ店:〇(18店)
⑦ベンチのある公園:〇(4園)
⑧レンタサイクル:〇(1箇所)
⑨気になった道:駅から徒歩4分。電信柱が多過ぎませんか(※写真⑫)。
⑩上野までJR京浜東北線で22分
余談:「わらび」と読むのですね。難儀な漢字です。正直ここはなぜそんなに人気なんだろう?僕はわりと嵌りそうな気がしましたが。何というか街が昭和っぽいのです。いや、ほんとにいい意味で(この言葉を付け足すことでウソっぽく感じる不思議)。


写真⑫

第8位 三鷹
①コンビニ:〇(セブン4、ローソン2、ファミマ2)
②図書館:〇(三鷹駅前図書館)
③ファミレス:〇(2店)
④携帯ショップ:〇(4店)
⑤銭湯:〇(アサヒトレンド21、春の湯)
⑥マッサージ店:〇(21店)
⑦ベンチのある公園:(3園)
⑧レンタサイクル:×
⑨気になった道:徒歩2分の場所に早咲きの花が咲いていました(※写真⑬)
⑩新宿までJR中央線で16分
余談:ザ・雑多。そのひとことに尽きます。


写真⑬

第9位 柏
①コンビニ:〇(セブン4、ローソン3、ファミマ6)
②図書館:×(徒歩10分で柏市立図書館)
③ファミレス:〇(4店)
④携帯ショップ:〇(11店)
⑤銭湯:× ⑥マッサージ店:〇(47店)
⑦ベンチのある公園:×
⑧レンタサイクル:〇(1箇所)
⑨気になった道:駅徒歩3分。ここには誰が座るのだろう(※写真⑭)。
⑩秋葉原までJR常磐線+つくばエクスプレスで30分
余談:名前のイメージからなのか、どことなく街に漂うのんびり感。駅の玄関口にあるヴィトンでさえも敷居が気持ち低く見えました(※写真⑮)。


写真⑭

写真⑮

第10位 川崎
①コンビニ:〇(セブン7、ローソン4、ファミマ5)
②図書館:〇(川崎市立川崎図書館)
③ファミレス:〇(6店)
④携帯ショップ:〇(15店)
⑤銭湯:×(徒歩10分で政之湯)
⑥マッサージ店:〇(84店)
⑦ベンチのある公園:〇(6園)
⑧レンタサイクル:〇(2箇所)
⑨気になった道:駅徒歩5分。行きつけの店がすぐにできそうな予感のする道でした(※写真⑯)。
⑩品川までJR東海道線で9分
余談:昔々の西武の広告にもあったけど、「事件」という言葉がしっくりくる街です。それとJRの東海道線って本数は少ないけど便利だなぁ、と驚きました。早いです。


写真⑯

【探検を終えて】 人気の10の街を駅の半径400mだけですがとことん歩きました。くたびれました。流石にトップ10だけにいずれの項目もコンプリートされた街が多かったです。それにしてもどの街もマッサージ店は溢れていますね。人間はきっと全員疲れているのでしょう。ところで今回、駅徒歩5分圏内を東西南北隈なくまわりながら写真を撮りまくりました。そして探検終了後にその数300点以上の写真(※写真⑰)を見直している最中にある共通点を発見しました。それは、この10駅には構内または駅前に像やオブジェやアートなど目印になるものが必ずあります。どれも「なにコレ?」的なものばかりですが、地元では親しまれているようです。因みに僕が長年住んでいる街(新富町)はランキング100位圏外ですが駅の周辺に像的なものは見当たりません。最後にその写真を眺めながら今回の探検は終了です。


写真⑰

結論!住みたい街ランキングトップ10に入るためには駅前にシンボルを作れ!!
(※写真⑱本厚木、※写真⑲大宮、※写真⑳ 葛西、※写真㉑八王子、※写真㉒池袋、※写真㉓千葉、※写真㉔蕨、※写真㉕三鷹、※写真㉖柏、※写真㉗川崎)


写真⑱

写真⑲

写真⑳

写真㉑

写真㉒

写真㉓

写真㉔

写真㉕

写真㉖

写真㉗

※なお、各数値はスマホの地図やデータを頼りに実際に足と目で見てまわりましたが、コロナ禍で休業のところもあり、また正確に駅から400m以内を測ってはいないので誤差があることはご了承ください。

プロフィール
電通第5CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター / コピーライター
門田 陽
電通第5CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター/コピーライター 1963年福岡市生まれ。 福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州を経て現在に至る。 TCC新人賞、TCC審査委委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。 趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。

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