千遍一律なルールという思い込みの罠 ~連載「組版夜話」第1話~

連載「組版夜話」第1話
組版者
MAEDA, Toshiaki
前田 年昭

私は、活版―電算写植―DTPと、長く組版の仕事をしてきた。単位も、倍、号、ミリ(mm)、ポイント(pt.)、ミル(mil)、U、級(Q)、歯(H)など……、やっと覚えたら次の業態へ移るという按排で、働く仲間もやめていった。

悔しかった。どんなに技術が変わろうとも、人は道具に使われるのではなく道具を使いこなす側だ。「組版」の根元を勉強しようと決心して雑誌『WindowsDTP PRESS』vol.8(技術評論社、2000年8月)に「組版の哲学を考える」を書いてから20年経つ。この連載でも、機械の操作法や「これが正解」という教義を示すのではなく、実際の現場仕事で学んだことを、具体例とともに書いていきたい。

第1回は、行頭に来る小書きの仮名(ぁ、ぃ、ぅ、ぇ、ぉ、ゃ、ゅ、ょ、っ)や音引き(ー)について考える。「避けるべき禁則対象文字」と耳にしたことがあるかと思う。これらの文字は独り立ちの度合いが弱く、読みも直前の文字に従う。ゆえに1行の字詰を調整してでも直前文字と離さないというのが一般的な考え方だ(図1参照)。

しかし、ルールは千遍一律ではない。たとえば、新聞の場合、ふつう調整しない(図2参照)。

新聞は1行10~12字で行末と行頭は近く、字詰の短さに助けられて読者の目が自然に補うから、ベタ組の格子の維持が優先される。ここでは調整しないほうがむしろ読みやすいのだ。

このように、禁則処理といっても対象文字は一律に決められない。孤立を防ぐという目的と、字詰の長さなど様々な条件によりルールは変化する。組版の技は読みやすさという気づかいである。それが組版の面倒なところであり、面白さでもある。 《つづく》

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図1 黒島伝治『瀬戸内海のスケッチ』サウダージ・ブックス、2013年10月、181頁……「っ」は行頭禁則として処理され、直前行を1字減らして追い出し調整されている。

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図2 『毎日新聞』2020年7月10日付朝刊、棋聖戦の記事……行頭「っ」は許容としてそのままである。

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プロフィール
組版者
前田 年昭

1954年、大阪生まれ。新聞好きの少年だったが、中国の文化大革命での壁新聞の力に感銘を受け、以来、活版―電算写植―DTPと組版一筋に歩んできた。

1992-1993 みえ吉友の会世話人、1996-1998 日本語の文字と組版を考える会世話人、1996-1999 日本規格協会電子文書処理システム標準化調査研究委員会WG2委員。現在、神戸芸術工科大学で組版講義を担当。

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