大衆演劇というカルチャーに息を呑む

金沢
ライター
いんぎらぁと 手仕事のまちから
しお

先日、80代の祖母と母と叔母と3世代で女子(?!)旅をしようと、近場だったのですが加賀の温泉宿へ一泊しました。

そこでは「大衆演劇」が観られるということで、祖母の希望により夕食後にみんなで行ってみたのです。

大衆演劇というものを今まで体験したことがなかったわたしは、完全に梅沢富美男さん(のようなミドルなおじさま)をイメージしながら、ばあちゃんと開演を待ちました。

突如鳴り響いたのはアップテンポのダンスミュージックで、音にあわせて登場してきたのが、そうですね、ゴールデンボンバーの喜矢武さんをイメージしてください。それでいて、もうちょっと白塗りでお化粧濃いめな、髪の毛シルバーとかブルーとかピンクメッシュな若いおにいさん!

目の前で繰り広げるイケメンショータイムに、ドすっぴんで浴衣姿のわたしと母と叔母はただただ唖然。
そして、ばあちゃんは威風堂々と手を叩いておりました。
さすが、昭和のはじめから生きてきた人間の格の違いを感じます。

それから約1時間、若いおにいさんたちの舞いをひたすら鑑賞。
とにかく、はじめましてのわたしはその独特な雰囲気に呑まれ、非常にカルチャーショックを受けました。

わたしが観たのは舞踊ショーという踊りだけのショーだったのですが、日本舞踊をベースとした振りを曲にあわせて演者さんが踊るんですね。
わたしは日本舞踊もトンと勉強不足なのですが、優雅な指の動きだったり、一転、激しい振り付けで舞い踊ったりする感じは見応えがあり、素敵でした。

出てくる演者さんは女形だったり男形だったり、役にあわせて着物を着ているのですが、普段目にする振袖や留袖といった着物とはまた違う、なんとも大胆な絵柄や構図の和装は見ているだけでも本当に楽しめました。

曲もいぶし銀なお声で「男とおんぬぁーー」とくるのではなく、菅田将暉さんの「間違い探し」で踊ったりと、とことん予想外。

そしてなにより、福沢諭吉先生も舞う、舞う。
ご観覧のおばさまや若いお姉さんまで、贔屓の演者さんの胸元へキラキラ光るヘアピンなどで留めたお札が気になって、下世話なわたしはもう踊りが頭に入って参りません!

終演後は劇場の出口で劇団員さんたちがお客さんをひとりひとり、しっかりとお見送り。
「ありがとうございました」と手を握られ、慣れないわたしたちはなんだか狐につままれたような気持ちで、ふわふわと宿泊している部屋へ帰っていったのでした。

大衆演劇も日本の歴史あるカルチャーだとは知っていましたが、逆に知っていたのはそれだけで、なにごとも体感してみなければ分からないものですね。

演者さんもお客さんもエネルギッシュで煌びやかな大衆演劇の世界をほんの少しだけ垣間見て、それでも本当に片足ツッコんでみただけであろうわたしは、日本の伝統芸能の奥深さをひしひしと感じたのでした。

プロフィール
ライター
しお
ブランニュー古都。 ふるくてあたらしいが混在する金沢に生まれ育ち、最近ますますこの街が好きです。 タウン情報サイトの記者などをしながら見つけたもの、感じたことをレポートします。 てんとうむししゃ代表。

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