アシュラ~しょうがないから全員道連れじゃ!~

 今回は初めて韓国映画をご紹介しようと思います。私は近年の韓国映画が非常に好きでして、特に韓国産ノワールやサスペンスの質の高さには毎度目を見張るものがありますし、このレベルの作品が年に何本も登場する層の厚さに関しても素晴らしいと思います。その中でも、特に私が好きな一本、「アシュラ」(2017)を今回はご紹介します。

 本作は、一言で言うと汚職警官モノです。主人公は警察組織に属していながら、悪徳市長の汚職に手を貸しています。本作の特筆すべき点として、この主人公がとにかく「雑魚」である!という事です。汚職警官モノでここまで頭が悪くて、対応がいちいち場当たり的な主人公は私の知る限りでは初めてではないでしょうか。もうひたすらに小物も小物と言いますか、自分より下の人間には虚勢を張って粗暴に振る舞うのですが、主人公自信がこの映画のパワーバランスの中ではかなり下の方なので、ことあるごとに屈服させられ、長いものに巻かれ心を折られ続けていきます。自分より強い人間に、とりあえず勢いで「ああ!?なんじゃこら!」と噛みついてみるものの、その度に結局は自分の立場が悪くなって「あの...はい...サーセン...」というこの繰り返し。と言いますか、本作は主人公に限らず、ほぼすべての登場人物が、時に人を屈服させ、時に人に屈服させられ心を折られるというサイクルの中に生きています。このサイクルがだんだんとエスカレートして行き、最終的には目も当てられない事態になっていくという「屈服の連鎖」を描いた作品であり、その瞬間のいたたまれなさと言ったら...人の心が折れるその瞬間のいたたまれなさを描いた作品としては間違いなく近年トップクラスだと思います。

 そんな地獄のなかで下の下の雑魚である主人公がせめて出来ることとは何か?それは「全員道連れにすることじゃ!」というのが本作最大のアツアツポイントでしょう。完全どうかしてしまったとしか言いようがない主人公の「地獄へ向かって突っ走り」感とやけっぱち根性が一周どころか二、三周回って恐ろしいまでの爽快感を生んでいます。

 またシンボルとなるアイキャッチなシーンが多い作品でもありまして、一つ目はカーチェイスのシーンです。丁度、主人公がやけくそ根性で全力疾走しだすタイミングに位置するシーンなのですが、驚くほどのハイテンションぶりもさることながら、このシーンどうやって撮影したのか全く分かりません!ものすごい技術力が込められたシーンになっていて文字通り「ぶっ飛ばされ」ます。そして何と言っても、主人公が怒りのあまりガラスのコップを「噛み砕く」という空前絶後のびっくりシーンが本作の白眉と言えるのではないでしょうか。しかも、てっきり噛み砕いて終わりかと思っていたらその後に「ムシャムシャ食べる」という。私も三回目見たときには爆笑しました。

 とにかく韓国産ノワールのレベルの高さを知るのにはぴったりな作品だと思いますし、そのほかにも近年の韓国映画は傑作量産体制で大変熱いので、ぜひご覧になってみてください!

画像:amazonより引用

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                                   クリステ編集部 渡邊正人

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