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荒野の千鳥足~酒は飲んでも飲まれるな!~

 私はお酒が(特にビールが)好きなのですが、お酒好きの皆様の胃がキリキリする様な映画をご紹介したいと思います。その名も「荒野の千鳥足」と言われる1971年のオーストラリア映画です。監督は「ランボー」のテッド・コッチェフ。主人公のゲイリーは武者修行的に地方に飛ばされた新人教師。彼はクリスマス休暇を利用し恋人が住む大都会、シドニーに帰ろうとするのですが、彼が住む町はオーストラリアの砂漠地帯のど真ん中のど田舎なのでシドニーへの直行便はないのです。そこで、乗り継ぎのために同じような田舎町、ヤバに一泊することにしました。駅に降り立って町を歩いてみると、真昼間にも関わらずパブは腹がでっぷりと飛び出したおじさんたちで溢れ帰っていました。そんなこんなしているうちに、街の住人と交流してみたゲイリー。とにかくよそ者に親切な町のおじさんたち。しかし、彼らはゲイリーにひたすらビールを勧め、飲ませ続けるではありませんか!「とりあえず飲もう!話はそれからだ!」てな具合に、永遠に飲まされ続ける!杯が乾こうものなら、すぐさまもう一杯!よそ者のゲイリーは断ることも出来ず、ひたすらにビールを飲み続けることになってしまいました。

 とにかく画面にでっぷりとビール太りしたおじさんたちが大量に現れ、猛暑の中(オーストラリアのクリスマスは真夏)タンクトップ一丁で脂汗をかきながら、常にビールを飲み続ける映画です。酒場にも家にもハエが飛び交っており、その画面の質感はじっとりとしていて、とにかく不快指数が高い。さらに町の人間がアルコールでハイになっていくにつれ、ゲイリーもまた同じ深みにはまっていってしまうという非常に恐ろしいお話なのです。

 本作は悪名高い作品として知られています。なぜなら、「泥酔した町の男たち+ゲイリーがカンガルーを遊び半分に撃ち殺す」という現在の動物愛護の観点から考えると、とんでもないシーンがあるからです。しかも、撃たれたカンガルーの映像は全て本物だと言われています(70年代から80年代序盤にかけてのオーストラリアの映画業界ではこのようなめちゃくちゃな映画製作が平気で行われていました)。71年当時も抗議殺到であったと言われており、マーティン・スコセッシをして「すさまじく不快な作品」言わしめた所以はここにあります。

 また本作は多くの人が一度は経験したことがあると思われる、「飲んで、帰って、次の日起きたら、昨日の振る舞いを思い出し、心底自分に失望する」という現象の究極形を見せてくれる映画だと思います。酔っぱらった挙句、人間として底辺とも言える行いをしてしまったゲイリー。そして、ヤバの人々は全てひっくるめて「良かれと思ってやっている」ホスピタリティ精神であるため、見てる我々もここに迷い込んだゲイリーがすべて悪いように感じられる。と言うところが本作の面白さであると思います。観るたびに「お酒と上手に付き合える大人になりたいものだ」と考えさせられる秀作でございます。

画像:amazonより引用

https://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_noss?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&url=search-alias%3Daps&field-keywords=%E8%8D%92%E9%87%8E%E3%81%AE%E5%8D%83%E9%B3%A5%E8%B6%B3

                                     クリステ編集部 渡邊正人

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