その他2020.11.12

「ゲッティイメージズ」がサステナブルなビジュアルのガイドラインを発表

東京
ゲッティイメージズ ジャパン株式会社

今年で25周年を迎えた、世界最大級のデジタルコンテンツカンパニーGetty Images。
その日本法人である「ゲッティイメージズ ジャパン株式会社」の代表取締役社長を務める島本久美子による連載企画「Kumi’s EYE」。

今回は、ゲッティイメージズが「Climate Visuals」と共同作成した、サステナブルに関連するビジュアルコミュニケーションの方法をまとめたガイドライン「Visualising Sustainability Guidelines」を紹介していきます。

ゲッティイメージズが行った最新の「Visual GPS」※の調査から、全消費者の10人中8人(81%)が、企業がすべての広告やコミュニケーションにおいて、サステナビリティに配慮していることを求めていることが判明しました。
今回発表されたガイドラインでは、企業や個人がサステナブルに関連したコミュニケーションを取るときに、どのようなビジュアルを使用するべきかを4つのポイントに分けて解説しています。


※「Visual GPS」とは:ゲッティイメージズは、世界的な市場調査会社であるYouGovと提携し、26カ国13言語で1万人以上の消費者と専門家を対象に調査を実施しました。
 「今、求められているビジュアルコンテンツ」を具体的な数字とともに明らかにし、該当コンテンツの制作、提供も行なっています。

 

◆サステナブルへの関心が人々の意識の中に定着

新型コロナウイルスが猛威を振るった2020年7月に実施した最新の調査結果によると、人々のサステナブルへの関心の数値が前年比1.3%増加しています。予測不能な長期的危機に陥ると、一般的には、日常生活とかけ離れた気候変動や環境問題に対する関心は下がる傾向にありますが、今回の調査でサステナブルへの関心が人々の意識の中に定着したことが分かります。


▼調査結果
地球への配慮が足りていないことが将来に大きな影響を与えると考えている(2019年92%、2020年91%)
二酸化炭素排出量を減らす取り組みを行っている(2019年63%、2020年69%)
将来の大気汚染の心配をしている(2019年85%、2020年84%)

 

要因①:新型コロナウイルスによる、環境問題の改善

新型コロナウイルスの影響で世界はロックダウンを余儀なくされました。1日2回までの外出制限など、普段よりも生産活動、消費活動が減ったことから、大気や水質汚染が大幅に改善されました。結果、インドでは約30年振りにヒマラヤ山脈の姿を目視することができ、イタリアのベネツィアでは運河の水質が蘇えることで魚が増えました。また、香港では絶滅危惧種のピンク色のイルカが海に戻ってくる事例も発生しました。このようなニュースが連日流れることで消費者の環境への意識も高まったと予測されます。

1209107323,Pardeep Pandit_Hindustan Times_Getty Images

 

1211704633,Andrea Merola_Bloomberg via Getty Images

 

要因② 「持続可能な開発目標(SDGs)」への興味関心が高まった

2015 年9 月の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の誕生をきっかけに、日本でも地方自治体をはじめ、多くの企業や教育団体がSDGs への取り組みを強化しています。SDGs に配慮した商品やサービスの市場価値が高まり、広告やコミュニケ―ションの中でもSDGs やサステナビリティを意識したビジュアルが多く使われるようになりました。

812913828, Mark J Sullivan_Kyodo News Stills via Getty Images

 

825768798,Colin Anderson Productions pty ltd/Photodisc

 

◆ゲッティイメージズのキーワード検索にも顕著に数値に変化が起きている

実際にゲッティイメージズでも「持続可能性」に関連した画像の検索数が昨年より142%増加しています。

 

▼持続可能性に関連する検索キーワード(一例)※前年比
サステナブル+5800%、ガーデニング+1000%、持続可能+760%、SDGs+476%、気候変動+372%
エコ+346%、環境+330%、エコバッグ+305%、スマートシティ+58%、自然+22%、ペットボトル+20%

 

◆ゲッティイメージズとClimate Visualsがサステナブルのビジュアルの使い方をガイドラインとして発表

年齢、信仰、国籍、政治的立場を問わず、あらゆる人々に気候変動を理解してもらうことを目的に、世界規模で気候変動の研究を行う「Climate Outreach」が2015 年に立ち上げた、気候変動に特化した画像ライブラリ「Climate Visuals」と共同でガイドラインを発表しました。
「Climate Outreach」は、2004 年に英国で、気候変動への市民参加を促進させることを目的に設立された慈善団体COIN(Climate Outreach Information Network)が母体となっています。世界中の国際機関、政府、慈善団体、コミュニティ、学術機関、企業、メディアと協力し、気候変動に関する様々な調査やプロジェクトを実施してきました。気候変動の影響が拡大し続ける実情を世界に正確に伝えることは、課題解決に不可欠であり、写真を通して気候変動を効果的に伝える重要性をVisualising Sustainability Guidelinesを通じて発信していきます。

 

1. ダイバーシティ&インクルージョンを取り入れよう

気候変動は地球上のすべての人に影響を及ぼします。そのため、民族、階級、年齢、性的指向、性別の識別、宗教、文化などを考慮した上で、意図的に多様性のビジュアルを取り入れる必要があります。

1157094279,Carlina Teteris

 

478546095,Tara Moore

 

2.アップデートされたビジュアルで視野を広げよう

溶けていく氷山や産業用の煙突など、おなじみのイメージは、気候変動を表すシンボルとして繰り返し露出され、その価値を失っています。古典的なシンボルに加えて、「循環型経済」、「再利用可能」、「エネルギー効率」などの新しい持続可能な概念を示すビジュアルを使って、視野を広げることが必要になってきます。

1192884103,Maskot

 

590590695,Mike Harrington

 

3.前向きな未来のためにポジティブなビジュアルを使おう

環境問題と言われて何が頭に浮かびますか?森林伐採や大気・水質汚染、などの暗いイメージは、多くの消費者はネガティブな印象を抱かせます。持続可能性の実現に向けた前向きな取り組みを表現する際には、そこに携わっている個人やコミュニティ、企業の姿勢や成果をポジティブな側面として見せていく必要があります。

1173704991,Marc Dufresne

 

135538155,Jose Luis Pelaez Inc

 

4. 自分事化できるシーンをビジュアルで訴求しよう

金属製ストローやマイボトル、エコバックなど、日常生活で使うサステナブルなモノをビジュアルに入れることに加え、これからの時代は、できるだけシーンが想像できるビジュアルを訴求することが必要です。実際に消費者自身が「環境問題解決に寄与している」と感じられるビジュアルを使うことで、消費者がアクションを起こすきっかけを作ることができます。

1202789163,aldomurillo

 

1214359540,Thomas Barwick

 

◆トレンド分析(ゲッティイメージズ クリエイティブチームシニアコンテンツエディター 遠藤由理)

・近年の日本における、サステナビリティに関するビジュアルコミュニケーションの傾向やトレンドについて

近年サステナビリティは、私たちの日常生活においてより身近なものになってきており、世代・性別・地域を超えて、環境に配慮した生活を送るための努力が重要視されてきています。最新のVisual GPSの調査によると、72%の日本の消費者が、『企業は広告やコミュニケーションのすべてにおいて環境に配慮すべきだ』と考えている事が明らかになりました。
世界的な広告やビジュアルコミュニケーションにおいては、“努力”にフォーカスしたビジュアルが求められています。1つ目は日常生活を持続可能なものに変えようとする“個人やコミュニティの努力”。そして、2つ目は、気候変動の主な原因を見直す“企業の努力”です。
日本の広告やビジュアルコミュニケーションにおいては、企業が環境保護のために、リデュース・リユース・リサイクル活動に取り組む姿など、環境や気候変動に関する大局的なビジュアルが取り上げられるようになってきています。

 

・ガイドラインの活用方法

インフルエンサーやコミュニティ、個人事業主がソーシャルメディアを通じて情報発信をすることが当たり前となった時代において、食品・衣料・日用品など、日常生活の中で消費活動を促すコミュニケーションにおいても、サステナビリティに配慮したビジュアルが求められています。先日、日本政府が、「2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロにする」という、政策目標を表明したように、持続可能で公平な社会の構築に向け、サステナビリティは私たち消費者の生活に密接しています。コロナ禍においても、サステナビリティなライフスタイルを送ろうという消費者の意識は高く、個人から発信される情報やビジュアルが消費行動のきっかけとなっています。
本ガイドラインでは、身近な努力から企業の努力まで、新生活様式におけるサステナビリティに関する幅広いビジュアルと共に、そのビジュアルを効果的に使うためのガイドラインを紹介しています。個人やコミュニティ、企業の皆さまが、消費者の心に響くビジュアルコミュニケーションを作るために役立てて欲しいと思います。

 

◆Kumi’s Opinion

■海外と日本のサステナビリティに対する意識の違いをどのように感じているか

“もったいない”という言葉が海外でも知られているように、日本ではもともと過剰な消費を行わないことが美徳とされていて、文化的にサステナビリティという考え方と相性が良いのです。しかし戦後の高度成長期を通じて、いつのまにかサステナビリティのフォロワーになってしまいました。環境を気にしつつも、利便性を優先させてしまう現在の日本の消費者の意識は、調査結果からも見て取れます。私が以前生活していたイギリスは、かつてはリサイクル率が低い国でしたが、現在は、個人、地域コミュニティ、企業など各レベルで環境問題への取り組みが、相互に影響し合いながら拡大してきているように思えます。例えば2017年にBBCで放送された海洋ドキュメンタリー番組「ブルー・プラネット2」の影響もあり、その後プラスチック問題への関心が一気に広まりました。多くの企業がプラスチックフリーの取り組みを拡大している他、ロンドン動物学協会はペットボトルが不要な環境を目指し、路上におしゃれな給水ステーション*を 設置してみたり、政府も2042年末までに不要なプラスチック廃棄物をゼロにする計画を発表しています。日本でも市民レベル、 企業レベルでの意識は確実に高まってきているのを感じます。不便を受け入れて環境負荷を減らすのではなく、環境負荷を減らすための行い=スマートというイメージが定着すれば加速度的に変わるはずです。サステナビリティを主要なテーマのひとつにあげる東京オリンピックがそのきっかけになるのではないかと期待しています。

 

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