映像の新しい可能性を 考えていたときに出会ったのが 企業のプロモーション映像

東京
株式会社揚羽プロダクション 代表取締役 湊剛宏氏
 
【得意分野は企業プロモーション映像】 揚羽(あげは)プロダクション――時代劇のエンドロールが似合いそうな古めかしい社名だが、実のところ2001年設立。制作分野は企業プロモーション映像である。若干36歳の代表取締役社長/湊剛宏さんのひきいる、若い会社。そして、毎年業績を伸ばしている会社である。いわゆるVPと呼ばれる世界は、同じ映像業界の人でも知らない人は知らない。当事者も「まあ、露出度低いから知らない人は知らないだろう」と呑気なところがあるので、ますますもって業界内で不理解の波にさらされる。揚羽プロダクションは、そんなVP界でかなり異彩を放っている。そして、経営者が面白い。湊さんの面白い話を通して、なんとなく知る機会も少なかったVP、企業PR映像制作の魅力の一端でもお伝えできればと思います。

企業プロモーションの分野は面白いです。仕事もたくさんあります。ですが、ちゃんとクライアントが満足できるものを作れる会社が少ないんです。私たちはそれができる。揚羽プロダクション(以下、揚羽)が業績を伸ばしている構図はとてもシンプルです

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ビジネスに精通している制作プロダクションなんですね?

そうです。現在のメンバーは、プロデューサーが私を含めて5名。ディレクターが4名。PMが2名。プロデューサーは、常にマーケティングの3Cの観点でクライアントの課題を把握し、解決策を企画として提示する。ディレクターはそれをどう表現するかに全力で取り組む。両者ともビジネスに精通していないとできません。そんなスタッフをガンガン増やしていくつもりです。

クライアントとの折衝力を主眼に置くと、営業畑の出身者がプロデューサーの適任者ということになりますか?

現在は、そうなってますね。でも、今後はディレクターが企画力と折衝力をつけた形でプロデューサーになるケースも増えるでしょう。なにより大切なのは、揚羽の仕事の仕方を理解して共感してくれること。それさえあれば、どんな分野の出身者でもやっていけると思います。

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予定通りの転進計画

湊さんは元・株式会社リクルートのバリバリの営業マン。そこから映像制作の世界に身を転じ、ドキュメンタリー制作の株式会社オフィスボウに入社。ディレクター、プロデューサーとして2年の経験を積んで独立した。

映像の世界に転進した理由?それが最初からの目標だったからです。小学生でCMプランナーに憧れ、高校生で新聞記者に憧れ、大学入試時点でドキュメンタリー作家か戦場カメラマンになることを決意していました。もちろん、大学を卒業してすぐに入るという選択肢もあったしギリギリまでその可能性もあったのですが、修行のために他の世界を経験してみようと思った。それで入社したリクルートの7年目に、『もうそろそろだな』ということでドキュメンタリーの世界に入りました。

2年で独立というのは、かなり速いですね。

会社の方針にさからって、危ない取材の企画ばかり立てていたら、『もうキミ、プロデューサーとして独立したら』と言われた(笑)。『確かにそうだなあ』と、心当たりもかなりあったので(笑)、円満に退社することになりました。

で、なぜ、今、目の前にいるのはドキュメンタリープロデューサーの湊さんではないのでしょう?

正直、テレビの世界に限界を感じていたことは確かです。主要局6局に対し、数100社の制作プロダクション がひしめく世界。そこには、必然的にヒエラルキーが存在する。建設業界とも似ていますよね。 その世界にいる以上は、強い会社を作ることは難しい。 今後のマーケットを見据えて、映像の新しい可能性を考えていたときに出会ったのが、企業のプロモーション映像です。 特に採用プロモーションの分野は、人を魅力的に描くことが採用の成否に直結するため、今まで培ってきたドキュメンタリーの技術を活かすことができる。 また、意思を持っているクライアントと直接取引をすることで、イニシアチブもとれ、あまりよく分かってない人に振り回されることもありません。 それが始まりでした。

それだけでは、答えになってませんよね。『これはいける』と確信した瞬間から、私の、もうひとつの側面、商売っ気が顔をもたげたのです(笑)。

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採用活動用の企業プロモーション映像とは、どんなものなのですか?

学生にクライアント企業の魅力を伝える映像。その手法のひとつとしてのビジネスドキュメンタリーが揚羽の得意分野です。クライアントの意に添った形で、学生たちの興味を引き、共感を引き出し、モチベーションを喚起する。その映像をツールに、企業がより良い人材を獲得することが目的です。

コスト意識を持たなければ淘汰される

もうおわかりと思うが、湊さんは既存の方法論や慣習を乗り越えて映像制作をビジネスとして成功させようと考えている。

私の眼に写る映像業界の最大の問題点は、コスト意識の希薄さだと思います。無駄が多い。現場で無駄なことをすると、そのコストはどこにしわ寄せられるか?それはクライアントさんだろう?クライアントさんはそのコストをどこに反映させる?それは商品にだろう?それを買うのは誰だ、私たちだろう?――揚羽に入ると、私のこの訓示を受けるところから修行が始まります(笑)

たとえば、今後、日本語を必要としない映像制作の発注は、韓国、香港、台湾に出ていく。センスが良くてコストも低いのですから、そうなるのは必然だと思います。大手のネット事業者たちはそれにあてはまるニーズを確かに持っていて、すでに確実に海外に目を向け始めているんです。海の向こうに仕事をさらわれないために、コスト意識と折衝力はなくてはならないものなんです

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会社としての次のステップは?

採用プロモーションの世界に地歩は築けたと思っています。で、次に着目しているのはIR(企業の証券市場対策活動)とイベント・展示会です。特にIRは、ストリーミングが定着すれば爆発的にニーズが増えると見込んでいます。見渡してみると、IR用映像ってどれもこれもトップインタビューばかり。つまらない。私たちが参入する余地はいくらでもあると思います

さらに次のステップとして、インターネットの世界で自社メディアを持つ構想も、それに必要な資金作りの構想とともに温めているそうだ。これまでの映像制作プロダクションの経営者とは、ちょっと違う。それが湊さんへの率直な感想だ。こういう人物やこういう会社が生まれることが、日本の映像業界を複合的に進化させる原動力になることだけは確かなのだと思う。

株式会社揚羽プロダクション

  • 代表取締役:湊剛宏
  • 業務内容
    1. 映像企画制作
    2. WEB企画制作
    3. パンフレット・リーフレット企画制作
  • 設立:2001年8月7日
  • 資本金:10,000,000円
  • 所在地:〒104-0061 東京都中央区銀座5-14-6 豊川ビル別館5F
  • TEL:03-6544-5633
  • FAX:03-3544-5631
  • URL:http://www.ageha.tv/
  • E-mail:info@ageha.tv
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