グラフィック2005.12.20

独自の視点と企画力で 消費者に支持されるメディアを企画したい

東京
株式会社アイコニック 代表取締役 三浦俊也氏
 
世界に冠たる自動車産業を持つ国、日本。ならば自動車文化も世界に誇れるもの――でありたいが、残念ながらそうではない。ということが出発点になっている会社。そこに事業の可能性を見出したクルマ好きたちが結集した企画屋集団。それが株式会社アイコニックだ。自動車文化の、自動車メディアの、そして自動車産業そのものの未来に問題提起と企画提案を続ける動機と方法論を、代表取締役/三浦俊也さんが語ってくれた。

このままでは、 自動車メディアも自動車産業も衰退するだけだ。

アイコニックは、編集プロダクションですか?

編集責任者の依田新さん(写真右) 三浦さんと二人三脚でアイコニックを支えている

編集責任者の依田新さん(写真右)
三浦さんと二人三脚でアイコニックを支えている

現状はそう理解してもらってけっこうです。輸入車を中心とした自動車総合情報誌『CarSensor EDGE』の企画編集、そのほか自動車専門誌や『MENSCLUB』など一般誌の自動車特集などがレギュラーの制作案件。私を含めスタッフ全員が、クルマ好きを自認している企画製作者集団です。

将来的にはどんなビジョンをお持ちですか?

まずは、現在取り組んでいる紙媒体の企画編集で地歩を固め、次にはWEBや動画系などに進出します。近い将来には自分たちの独自媒体を立ち上げたいですし、最終的にはグリップしたユーザーへのマーケティング業務をおこない、嗜好調査に基づく商品やメディアの開発、直接販売などに事業を拡大していくつもりです。

遠大な計画ですね。

一般の方の目には自動車産業は好況のように見えていると思う。事実クルマは売れています。ただ、自動車雑誌の売上は年々落ちている。これまでのやり方では、もう産業としての自動車メディアは存続できないでしょう。そして自動車メディアが衰退した後には、自動車産業そのものの衰退も待っていると思う。私たちはただのクルマ好きではなく、そういう先行きへの不安を共有した者たちの集まりでもあるのです。

ただの編集プロダクションではないですね。

作ることよりも企画そのものに軸足を置いた編集プロダクションと理解してもらっていいと思います。

再生の鍵は、 日本に真の自動車ジャーナリズムを成立させること。

なぜ自動車メディアは衰退しているのでしょう?

たとえば現在の“クルマ好き”は、クルマは確かに好きだけど週末に自分でオイル交換なんてしない。事実、私だって、ほとんど自分で洗車はしませんが、それでもクルマ好きの自覚はある。さらには、現在のクルマ好きは、クルマ以外にも様々な興味を持っている。そんなターゲットに向けて、「憧れのポルシェを手に入れるには」なんていう旧態依然の切り口、語り口の記事を作ってもだめなんです。要は、実現したい夢や理想があって、その中にクルマがあるように見せてあげないと。その上で、本を買ってもらうためには資料性とか、アトラクティブななにかがないとだめ。立ち見で終わってしまいます。

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その危機から脱する方法論は?

そういう状況を生み出した最大の要因は、日本に真の自動車ジャーナリズムがないことです。みなさんが自動車ジャーナリズムだと思い込んできたものは、実は、メーカーの広報代行業でしかなかった。記者は、メーカーのリリース情報を機械的に発信するだけで、真に消費者が知りたい情報を提供できなくなってしまった。だからまずは、既存の自動車産業の構造に取り込まれていない若い発信者をたばねて、独自の視点と企画力で消費者に支持されるメディアを企画したいと思っています。

真の自動車ジャーナリズムの確立が自動車メディアを蘇らせ、果ては自動車産業の隆盛にもつながるということですか?

そう考えています。私たちの、究極の願いはいたってシンプル。クルマがたくさん売れて、クルマに関わっているあらゆる人が幸せになること。供給側はビジネスで成功し、需要側は好きなクルマを所有して楽しい生活を送る。“そんな時代”を作っていきたい。

みんながもっと自由にクルマを 選んで買えるようにするにはどうしたらいいか。

“そんな時代”とは、もっと言えばどんな時代か?

みんなが好きなクルマに乗れる時代。たとえば、だんなさんと奥さんが1台ずつ好きなクルマを所有できたら素敵じゃないですか。もしクルマがもっと気軽に買えるものなら、通勤用のクルマ、遊び用のクルマ、その中でもテニスに行くときはテニス用のワゴンがあるなんてことも可能でしょう?ただの夢想ではなく、自動車産業はもう、そういう新しいニーズを生み出さないと発展しないところにまで飽和していると思うんです。価格、維持費、いろいろありますが、私たちは、メーカーと消費者の間に立って、みんながもっと自由にクルマを選んで買えるように考えていきたい。

具体的には、どういう方法論でそれを実現するのですか?

簡単です。消費者がなにを求めているかを正確にとらえ、彼らが求めている情報と商品を供給すればいい。この世界は、それができていないんですね。たとえばメーカーが持っているマーケティング情報。あれは、マーケティングという数字ではあるけれど、消費者の心の中を正確につかんでいるものではない。“欲しい”という気持ちが、数字になった瞬間に死んでしまっている。私はそう考えています。

“欲しい”気持ちを知るにはどうしたらいい?

三浦さんは、常に“現場”に足を運ぶ

三浦さんは、常に“現場”に足を運ぶ

唯一の方法は、現場に足を運ぶことです。自動車販売店の店頭ですね。そこには、消費者の欲望も、売り手の工夫も、ありとあらゆることが生きた情報として存在している。いや、リアルはそこにしかないんです。私は、週の半分以上はどこかの販売店さんにおじゃまして、その様子を探っています。人が抱く“欲しい”がマーケットを形成している。その“欲しい”のたった今の形をキャッチして、社会に知らせる。メーカーにフィードバックする。そこを担うのがメディアであるべきだと思うんです。

メディアが変われば消費行動にも変化が生まれる。そして、自動車文化も豊かになっていくということですね。

取材風景

クルマの雑誌が男の雑誌の代名詞だった時代は、はるか昔。今や、クルマ好きは、秋葉原のオタクくんたちよりひどい扱いを受けている。「クルマが好きだ」なんて口にしようものなら、奇妙な生き物扱いです(笑)。絶滅危惧種なんです。その責任の一端は、クルマ雑誌が社会に価値観を提示できなくなったことにある。製品広報はしてるけど、社会になにも提案できていない。男の子たちに夢を与えられなくなっている。カッコイイ形やスピード感でドキドキさせてない。まず、そこからなんとかしていかなければならないですね。

三浦さんは、「犯人は高級外車を乗り回し~」というニュース報道の常套句が大嫌いなのだそうだ。悪いことは許せないが、欲しいものを手に入れることは罪ではない――好きな自動車を手に入れて楽しむことが当たり前の社会であってほしい、そう願う三浦さんにとって、こうした常套句の背景にある先入観は、まったく相容れない感覚なのだ。堅調に見える自動車産業の陰で、クルマ好きやクルマの雑誌は着実に数を減らしている。うっかりしていると気づかない深刻なことって、やっぱり確実にあるのだとつくづく思い知らされた。

株式会社 アイコニック

  • 代表取締役:三浦俊也
  • 業務内容:自動車関連雑誌の企画設計、編集記事の企画制作、自動車関連ブランドの販売促進計画の立案等
  • 設立:2005年2月1日
  • 資本金:2,000万円
  • 所在地:〒108-0072 東京都港区白金3-7-18 アポロホールルナハウス408
  • TEL:03-3440-5239
  • FAX:03-3440-5239
  • 代表E-mail:iconic@iconic-inc.co.jp
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