WEB・モバイル2006.08.20

形で教えず、考えて判断させる そこから応用力が生まれる

東京
株式会社グラスルーツ 代表取締役 小野真由美氏

愛・地球博協会の会期後公式サイトをはじめ、多くのサイト制作で実績を残している会社です。設立は1984年。20年以上の歴史をもっていますが、社長の小野さん曰く「2000年前後が、第2創業期だった」とのこと。事実、それ以降、インターネット分野で会社は大きく伸びている。広報代理店としてスタートし、様々なトライを繰り返し、インターネット制作を手がけて大成功。チャレンジすることの大切さを「実験する楽しさを忘れない会社でありたい」という言葉で表現する、小野さんとグラスルーツの素顔に迫ってみたいと思います。

 
グラスルーツホームページ

グラスルーツホームページ

利益を追求することはわかっていましたが、成長を追及するということに興味がなかった。経営者としては、かなり晩生(おくて)ですね(笑)。

「2000年前後に第2創業」とは、具体的にはどういう意味ですか?

創業20周年の時に発行した記念誌『necco』

創業20周年の時に発行した記念誌『necco』

それまでは、自分の責任が負えない範囲で規模を大きくするのが嫌だった。ひらたく言えば、人を増やしたくないと思っていました。そんな私が、「会社の経営は発展させてなんぼ」「スタッフに高いお給料を出し、みんなが幸せであってこそ、いい会社なんだから、そのためには発展させないわけにいかない」ということに気づいたのが、その頃という意味です。利益を追求することはわかっていましたが、創業して15年も経ってから成長を考え始めるなんて、経営者としては、かなり晩生(おくて)ですね(笑)。

では、それ以降、最大のテーマは「成長」?

そういうことではありません。成長というミッションは意識しますが、それが最初にくる会社にするつもりはありません。みんなの頑張りが、結果として成長につながる会社でありたいと思います。

ネットに挙がっている会社の沿革を見ると、「2001年、はじめてデザイナーを採用」とありますね。制作系の会社で、20年近くデザイナーがいなかったのか!とちょっと驚きもしました。

制作会社だからデザイナーがいなければならないとは思いませんが(笑)。たしかにその頃から忙しくなり、外注のデザイナーさんだけでは賄えなくなってきました。

現在のグラスルーツは、WEB制作会社?

たしかに現況は、売り上げの85%はネット関連です。しかし、WEB専門のつもりはありませんし、そうなるつもりもありません。当社は、あくまで企画制作会社。そういう自覚でやっていきたいですね。

アウトプットがWEBであることは、あくまで結果ということですね。

そうですね。企画し、ご提案したことが、結果的にWEBという形で結実していると考えています。

ということは、WEB以外の分野でもクライアントに提案していくわけですね。

もちろん、オファーが「WEBで」という案件は、WEBに関する企画をたてることになります。しかし私たちの発想は、いつもメディアにしばられないところに置いておきたいし、チャンスがあればWEB以外の企画も会社が伸びた秘訣はどこにあると思いますか?

会社が伸びた秘訣はどこにあると思いますか?

そうねですね。頑張ってきたから(笑)でしょうか。当社は営業担当という者がいませんから、営業が上手で成長したということだけはないと思います。あえて言うなら、私たちが手がけた仕事が、それぞれ次につながっている。どこかで誰かが見てくれていて、それを評価していただいて、次に声がかかる。そういう繰り返しで今に至っているのだと思います。

「ダメでもともと」という文化の会社は強い

御社HPには、「実験する楽しさを忘れない会社でありたい」とありますね。

グラスルーツブログ『グラブロ』

グラスルーツブログ『グラブロ』

チャレンジし続けたいということですね。事実、当社がネット関連の制作を手がけるようになったきっかけは、私が趣味で始めたHPでした。やりながら、「これなら仕事にできるかも」という感触を掴み、何を用意し、何を整備するかのビジョンが見えるようになりました。

「遊びの感覚」みたいなものなのでしょうか。日常の業務以外のところに、いかに刺激やきっかけを見出すかということですね。

とても大切なことだと思います。グラスルーツという会社は、常にそういう余地や余力がある会社でありたいと思います。

社員のみなさんにも、そういう意識を奨励しているんですね。

はい。企画というものは、会議室ではなく、ランチの席のよもやま話の中から出てくるものだと思います。稟議書を動かすような大上段のやり方は、少なくとも当社のやり方ではありません。「うまくいかなかったら、どうしよう」と思わずに、ダメでもともとでやれる会社は強い。誰かが発言し、誰かがそれに乗っていく。そうやって、どんどん社員から企画が生まれてくるのが理想です。

なるほど、その辺が御社の活気の源になっているようですね。

そういうことができる会社なんだという意識は、全社員で共有できています。一制作者として考えると、けっこう羨ましい。いい会社だと思いますよ(笑)。

のびのびした社風が目に浮かびます。

もちろん、のびのびし過ぎて野放しになってはいけない。プロとしての自覚も持った上での、バランスが大切ですね。

形、型で教えてしまうと、応用力が弱くなりますね。ですから、たとえば「企画書の書き方」のような本は絶対に読むなと指導しています。

今年だけでも、社員数が6人増えています。社員教育にも力を注ぐ必要がありそうですね。

取材風景

スタッフをバランスよく育てるために気をつけているのは、「形で教えない」ということです。自分で考えることを重視します。考えて判断させる。そこから応用力が生まれると思う。形、型で教えてしまうと、応用力が弱くなりますね。ですから、たとえば「企画書の書き方」のような本は絶対に読むなと指導しています。形だけで書けたような錯覚に陥るのは、ほんとうに成長を妨げます。

今後のビジョンは?

大きなところで言えば、受託ではない案件に進出したいですね。

自社媒体というような意味ですか?

それも含まれます。現在、ある社員から「自主事業」の企画が上がって来ています。うまくいくかどうかは別として、ぜひ実現させたい。もちろんリスクは自分で背負うわけですら、収益の構想などを慎重にくみ上げる必要があります。

やはり、クライアントのある案件よりも、やりがいありそうですよね。

そうですね。もちろん受託案件も、アプローチを変えればもっと面白くなる。たとえばこちらから発案し、頼まれてもいないのに提案するような、言うなればプロデュース的な活動をしていきたい。そういうことも視野に入れています。

取材日:2006年8月24日

株式会社グラスルーツ

  • 代表取締役:小野真由美
  • 業務内容:
    • インターネット関連コンテンツの制作
    • 会社案内・広報誌・社史・宣伝ツール等、各種企業刊行物の編集・制作
    • プロモーション企画の立案および実施
    • その他各種マーケティング活動に関する企画・立案・実施・制作
  • 設立:1984年11月
  • 資本金:1000万円
  • 所在地:〒107-0062 東京都港区南青山6-11-1 スリーエフ南青山ビル6F
  • TEL:03-5774-5561
  • FAX:03-5774-5562
  • E-mail:grassroots@grassroots.co.jp
  • URL:http://www.grassroots.co.jp/
続きを読む
TOP