職種その他2014.03.19

「イヌが好き・世の中の役に立ちたい」という ふたつの思いが大きな原点

東京
ロアジスジャパン株式会社 代表取締役社長(CEO) 岡田雅子氏
トイプードルの「チョコ吉くん」トイプードルの「チョコ吉くん」

今回訪問したロアジスジャパン株式会社は、自由が丘でドッグスパ、トリミング、カフェ、ショップ、ドッグホテル、イベント等を手掛けています。イヌとオーガニックを結びつけた独自の視点で、質の良い商品を提供。お客様の口コミで評判が広がり、皆さんリピーターとなっています。代表取締役社長(CEO)の岡田雅子氏もトイプードルと2匹のダックスフンドの飼い主です。イヌとオーガニックのパイオニアとなった今に至るまでのお話を、トイプードルのチョコ吉くんと一緒のなごやかな雰囲気の中、お伺いしました。

 

イヌに関するビジネスで社会の役に立つ。そのためのブランディングを追求

ロアジス自由が丘

カフェやショップ、ドッグホテル等のある本社。イタリア・ベニスの雰囲気が漂います。

ロアジスジャパンを設立した動機をお教えください。

元々イヌが好きということと、ペット業界は法律が整備されていないことを社会的に問題だと感じ、イヌのために何かできないかと思いました。チョコ吉が保護されていたNPOで、全部のイヌが殺処分されると聞いた時、ものすごく疑問を感じたのも動機のひとつです。

設立まではどのような経緯がありましたか?

通訳や教員の経験があり、社会的なことや教育に関心を持っていたこともあって、10年程前に別の会社を立ち上げ、教育関係の仕事を手掛けていました。 その会社が8年目くらいの経営がなかなか上手くいかない時期に、早稲田大学の大学院で経営の勉強をしたのですが、その中でイヌに関するビジネスを手掛けたいと思うようになったんです。イヌ好きが集まり、学んだことを形にしてみようということになったのが始まりです。 また教育関係の仕事をしている際に、不登校の生徒が私の愛犬と一緒に過ごすとイキイキとしていく様子を目の当たりにしたことも、今のビジネスに繋がっています。

カフェ、ショップ、ドッグスパなど、多彩に手掛けていらっしゃいますが、どの分野からスタートされたのですか?

半年くらいペット市場のリサーチやマーケティングをする中で、「ドッグカフェだけ」「ペット用品の輸入だけ」「ドッグスパだけ」は既にあるので、日本初のものをやらなくては勝てないと思い、輸入業・カフェ経営・ペットスパ経営・小売・卸の5本柱を一気に立ち上げました。ベンチャーとしては一番やらない方がいいケースと言われているんですけどね(笑)。 また「社会的な活動をしたい。そのためには何が必要か」を考えて、ブランディングに重点を置く、いまの形に行き着きました

logo

ロゴマークの中心にある3つのLは「Love for Life with Loasis」の頭文字です。

輸入だけでなく、海外向けの商品も開発されているのですね。

今治タオルブランドと一緒にイヌ用の服などをデザインしたり、山形牛の余った革を使ったリードや首輪、西陣織の余り生地を付けたリード、畳のイヌ用ベッドなどを開発し、まずはアメリカでデビューしました。ですがタオルは日本製よりもヨーロッバ製が好まれ、畳も引っ掻いたら削れ、失敗ばかりでした(笑)。 ただ、西陣織のリードは芸術品のように思われ、富裕層を対象にしているショップのオーナーがオーダーしてくれました。ケビン・コスナーやマライア・キャリー等のスターが利用しているショップなので、うちの商品をイヌに付けている可能性がありますね。

ペット用のオーガニックフードという存在も、今回、初めて知りました。

オーガニックに関心があり、「オーガニック」と「ペット」を掛け合わせ、「グローバル」のエッセンスを入れれば、新しいことができると考えていたところ、日本に代理店がないドイツのオーガニックドッグフードのメーカー「テラプラ」を見つけ、総代理店契約を取ることができました。そこのドッグフードを食べたらうちの18歳の愛犬も調子が良くなったんですよ。

海外に目を向ける事で、新しい展開につながったのですね。

そうですね。海外の展示会で仲間ができ、ヨーロッパやアメリカの人達と一緒に、日本のペット業界ではできない動きをしようと方針が決まりました。日本で作って海外へ、と準備していた矢先に東日本大震災が起こったのです。

どん底からのスタートが、オーガニックへの道を切り開く

震災前後はどのような状況だったのですか?

2011年3月中旬オープン予定でしたが、震災が起こり、日本で作ろうと思っていたものはほとんど終わりにしました。震災の一週間後には、予定していた海外の展示会へなんとか出展しましたが、放射能のことがあり、バイヤーが私たちと距離を置くのです。日本のものは受け入れてくれないと思い、考えを切り替え4月にオープンしましたが、時期が時期だったのでお客様も少なく、大赤字でどん底からのスタートでした。このままではいけないと、海外のオーガニック認定取得に本格的に取り組み始めました。

なぜ、海外のオーガニック認定に注目されたのですか?

ヨーロッパではチェルノブイリの事故後にオーガニックが注目され始めたので、日本もこれからもっと注目されるようになると思いました。ペット用となると障壁はありますが、だからこそ、やる意味があると考えたんです。そこで海外のオーガニック認定を取得しているメーカーの日本での総代理店のライセンスをどんどん取りました。ライセンスを取るのは大変だと言われますが、欧米の人達はベンチャー企業に対する理解があるので、逆に応援してくれました。

オーガニック認定のドッグフード

欧米で厳しい認定基準を受けたオーガニック認定のドッグフード。

ホームページの「命を大切に」という言葉が印象に残りました。「オーガニック」から一歩踏み込んだメッセージですね。

有機栽培は農薬を使わないので、土地や地球環境だけでなく、人にも良いことです。農薬は、働いている人やそれを食べた人に影響がありますし、その人でなく、子供に影響があるかもしれません。もちろん、周囲の動物にも。 例えば、カフェで出しているアメリカの「BIRDS&BEANS」のコーヒーは、3年以上農薬を使わない土地で、鳥がフンで運んだ種が自然と育った木から作られた野生のコーヒーです。このコーヒーを作っているのは全米の野鳥協会の役員の会社で、その人は鳥が好きなんです。オーガニックでもコーヒーなら気軽に楽しんでもらえると思い、直接コンタクトを取って会いに行きました。

ブランドのポリシーを守るためには、常に原点に立ち返ることが大切

大手オンラインショップを撤退されて、信頼できるオンライン正規取扱店だけで販売されているのですね。

ペット関連の大手企業を何社も廻りましたが、ことごとく「ドッグフードなんて山ほどあって、こんなに高いものは売れない」「オーガニックなんて誰も分からない」「絶対失敗する」と言われ落ち込み、家の倉庫代わりの四畳半の和室にはたくさんの在庫を抱えて不安でした。そこでオンラインショップで売ろうと思いましたが、卸も手掛けている手前、卸先のお店が困ってしまいます。そこで卸先にオンラインショップの利用を認めたところ、次第に価格競争になっていってしまいました。 「命を大切に」「自然に生きてゆくこと」を目指している商品ですから、ただ売れればいいということではありません。これは意図する方向ではないと、一件一件撤退をお願いしました。すごく怒られ、暴言も吐かれました。でも、取引停止を怒るくらいだから、うちの商品はいいものなんだと逆に自信が持てましたね。 こうして撤退をお願いしたショップもありますが、今もオーガニック系やホリスティク系のショップでは取り扱いがあります。それは考え方が同じだからです。今、数100社ありますが、中には個人経営で、売り上げは多くありませんが熱意に共感できるショッブもあります。おかげさまで「ペットのオーガニックと言えばロアジス」と認知されてきました。ですがお客様志向に寄り過ぎて、ポリシーがちょっとぶれてきていると感じています。

その対策は何かお考えですか?

4月を目処に、組織や人材、ホームページ、カフェのメニュー等のリニューアルを進めています。また、自分の会社が何を目指しているのか、毎日見ていて、ポリシーをぶらさないように踏みとどまっています。 会社内部の組織づくりとしては、何にでも関心のある人を求めています。トリマーで入った人が貿易も担当するなど、本当に幅広い業務に携わってもらえるんですよ。いろいろな人が関わることで、会社は自然に大きくなっていくと思います。

人とイヌが当たり前のようにいられる場所。だから、「ドッグカフェ」ではなく「ナチュラルカフェ」

社名の「ロアジス」はどういった由来で付けられたのですか?

「ロアジス」はフランス語で「オアシス」という意味です。若い頃、パリでカフェに行った時、おじいさんが角砂糖をどんどん下に落とすので、変だなと思ったら、大きなシェパードがいたんですね。静か過ぎて全然気が付きませんでした。ほかにもマルチーズを抱えたおばあさんがいたり、普通にイヌとカフェがマッチしていました。それを見た時に、いいなと思ったんですね。イヌを飼っていない人も含めて、家や学校・会社の他に、もうひとつの心やすらぐ「居場所」になれるといいなと思いました。ですからカフェも「ドッグカフェ」ではなく「ナチュラルカフェ」なんです。

店内

人もイヌもやすらげるカフェ。パリで見た理想のスタイルを実現しています。

今後、どのような会社にしたいとお考えですか?

100年続く会社にしたいとみんなに言っています。社長が私でなくなっても、「ロアジスが言っている・ロアジスがやっている」ことだから信頼されるブランドを作りたいと思っています。「自然にやさしい」「命を大切に」「安心・安全」というイメージが結びつく会社にしていきたいですね。 展示会で「ロアジスだから」と来てくださる方も増えています。だからこそ、もっと頑張らなくてはいけない、この会社を潰してはいけないと思います。 そのためには「人」が大切ですね。スタッフにもより有意義に過ごせる働き方を提案したいですし、その人が伸びれば会社も伸びる、という関係を築きたいと思っています。よりスタッフが力を発揮できる場所にしていきたいです。

取材日:2014年2月20日

ロアジスジャパン株式会社

  • 代表取締役社長(CEO):岡田雅子(おかだ まさこ)
  • 設立年月:2010年7月
  • 資本金:210万円
  • 事業内容: 輸入業・カフェ経営・ペットスパ経営・小売・卸
  • 所在地: 東京都目黒区自由が丘 2-8-2
  • URL:http://www.loasisjapan.com
  • お問い合わせ先:上記HPの「お問い合わせ」より
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