エンターテインメント文化を根付かせ 関西をもっと面白く!もっと魅力的に!

大阪
ACT EDGEエンターテイメント株式会社 代表取締役 佐藤 晃一 氏
「エンターテイメントをもっと身近に。」 をコンセプトに、企業の「プロモーションドラマ」や、個人のターニング ポイントをドラマ化した「エンディングドラマ」の制作をはじめ、ボイスドラマ制作、映画・番組・CM制作を手掛ける芸能事務所「ACT EDGEエンターテイメント株式会社」の佐藤晃一社長。本格的なドラマ制作を手掛ける、関西では珍しい芸能事務所の代表として活躍する一方で、イベント会社「SPEC」の代表も努め、セミナー講師としても呼ばれている、佐藤社長は「人の笑顔を見るのが大好きなんです」と、所属タレントが何かを達成した時の喜ぶ姿や、自身が手がけるイベントに参加した人々の笑顔が仕事の醍醐味と語ります。持ち前のバイタリティーと次々に浮かぶアイデアで新たなエンターテインメントの道を切り拓く佐藤社長に、活動内容などについてお話をうかがいました。

縁を大切にしたから得られたもの

これまでのキャリアについて教えてください。

高校卒業後はイベント会社に就職して、大手自動車メーカーの新商品の走行会など企画・立案から当日の運営に至るまで一貫してやっていました。イベント事業の面白さや達成感を噛みしめていたのですが、そこを会社の事情で辞めることになったんです。その時に、イベントスタッフへのマナー教育等が評価され、NTT西日本グループの会社から誘いを受け、転職しました。メインの人材派遣業の他にグループ会社の創立記念パーティや、社長会のイベントのコーディネートやアテンドもしていました。安定はしていたのですが、やはりイベント事業に特化した仕事がしたいという気持ちが強くなり、退社を希望しました。その後イベント会社に就職したのですが、そこが突然廃業になってしまったんです。

それをきっかけに起業されたんですか?

廃業が決まった時点で大きな案件があり、そのお客様には他の会社に委託し私もサポートする旨をお伝えしたんです。しかし、私個人と仕事がしたいと言ってくださり、それならこの仕事だけは引き受けようということにしました。その際に、屋号が必要になったので、急ぎイベント会社「SPEC」を立ち上げたんです。その案件が終わった後も、イベント全体を見渡して指示するディレクター業を依頼されるなど、他からも仕事が次々と途切れることなく入ってきて、今に至ります。

個人として仕事を頼まれるほど信頼を得られてイベント事業をする中で、芸能事務所も立ち上げられたのはなぜですか?

SPECでイベント事業を展開していると、アーティスト、モデルなど、色々な人に出会うんです。その中で知人の紹介のシンガーソングライターにイベント出演をお願いしたところ、あまりにもパフォーマンスがつたなかったので、所属事務所を通して叱り飛ばしたんです。後日、本人から謝罪と悪かった点を聞きたいから直接会ってほしいと電話がありました。怒られるのがわかっていて来るなんて何てハングリー精神の持ち主なんだろうと思い話をしたところ、それまでレーベル会社のみの所属だったため、CD販売以外の歌とかショーに対して指導が全くなされていなかったようなんです。それで、私の事務所に所属させてほしいと頼まれて引き受けたんです。すると今度はモデルやミュージシャンが応募してきたり、逆に同業者から弊社タレントに出演依頼があったりして、イベントMCをはじめ、テレビ出演やUSJのCMにも出させていただくようになり、どんどん芸能事務所になりかけてきたんです。いずれは芸能事務所も立ち上げなくてはいけないと考えていたところに、ある会社の会長から芸能事務所として法人化して、これから立ち上げる事業を一緒にしないかと声をかけられたのをきっかけに、SPECからタレント育成事業を切り離して、グループ会社として「ACT EDGEエンターテイメント株式会社」を立ち上げ、タレントはすべて移籍させました。

ありそうでなかったドラマ制作

会社のコンセプト「エンターテイメントをもっと身近に。」にはどのような想いがこめられているんですか?

エンターテインメントってそんなに難しい話ではなくて、もっと身近に法人でも個人でも活用できるものだという事を知ってもらいたくてこのコンセプトにしました。法人でいえば、企業広告にVP(Video Package)って結構撮っているのですが、auの三太郎CMが出た辺りから、インパクトがあって続きが気になるというストーリー性を持たせたドラマ仕立てのプロモーションにシフトしてきたんです。ドラマ制作には膨大な予算がかかるというイメージがありますが、弊社は、俳優も所属しているので、VP制作の予算と同じ位にしています。

具体的にはどのような内容のものを提供されているんですか?

法⼈向けとしては、⾃社商品訴求や創業ヒストリーなどをドラマ化する「プロモーションドラマ」で、個⼈向けには本⼈インタビューと⼈⽣のターニング ポイントをドラマ化した「エンディングドラマ」を提供しています。自分の祖父母やその先の先祖がどのような生き方をしてきたのかをテーマにしたテレビ番組の視聴率が高く、ご自身のルーツに関心を持つ人は多いため、祖父母等が生きている内にその方のターニングポイント的なものを再現ドラマ化して残すといことに取り組んでいます。

なぜドラマ制作を目指そうと思われたのですか?

関西には芸能事務所が山のようにありますので、事務所を立ち上げるにあたって特徴を出すため、タレント以外のサービスを持たないと生き残れないと考えたんです。多くの芸能事務所の悩みとして育成はするけれど出先がないことが多いので、それなら先に活躍できる場を作ってしまおうと思い、ちょうど企業のPRがドラマ仕立てになっているという時代の流れも受け、弊社もドラマを提供していくことにしました。

最初にまず実績を残そうと、連続12回のドラマを撮りました。また、ドラマコンテンツって映像だけではないと思い、ボイスドラマも制作したんです。ドラマの楽しさを一人でも多くの方に知ってもらおうと本腰を入れ、配役も全国オーディションを行い、ボイスドラマでは皆さんに馴染みのある戦国もので制作しYoutubeを活用し自社ホームページに公開しました。ドラマ制作は「新人育成」「俳優の活動プロフィール」「サンプル」としても活用しています。

本格的ですね。芸能事務所がここまでドラマ制作をするというのは珍しいのではないですか?

関西では弊社だけだと自負しています。サンプルのドラマも中途半端なものは作りたくなかったので、かなりの費用をかけて監督も12本それぞれ別の方にお願いしたのですが、撮り方や考え方、モノの見方、役者の扱い方は人によって全然違うんです。映画向き、舞台向き、テレビ向きと自分なりに分析をするなど、ドラマ制作に関しては無知だったので、現場で色々と学ぶことができました。第11話には広末涼子さんが出演した映画「はなちゃんのみそ汁」の阿久根知昭(あくね ともあき)監督にメガホンを取って頂いたんですが、その時は他の事務所の俳優も見学に来ていましたね(笑)。

他の事務所の方とも交流があるんですか。

私は横の繋がりもとても大切だと思っていて、弊社に出演依頼が来たものでも、所属俳優に該当者がいなければ断るのではなく、他の事務所に必ず声をかけていて、これまでも和歌山や奈良の観光庁の仕事を紹介しました。弊社だけ儲かればいいというのはあんま考えていなくて、周りと組んで総力で仕事を取りに行って、総力で何か一つのことを達成していくというところに持っていきたいんです。ここまで来られたのも周りの人の力もあってのことだと思っていて、あの時のあの出来事があるから、今があるんだと時々振り返るんです。どれも偶然ではなく必然だと思っているし、今自分がやっていることも実は後ろにつながっているのだと思っていて、人とのご縁を大切にしています。

タレントにとって最善の道を考える

所属タレントのスカウトは佐藤社長がされているんですか?

無作為に声をかけてスカウトすることや、他の事務所から引っ張ってくるようなことはしていません。また、養成所機関のある事務所は、そこで受講料をもらって本気で売り出したい人にお金をかけるという収支で運営されている所もあるようですが、弊社は養成所を設けておらず、入所費用はいただくのですが、カメラマンの撮影費用とWebの制作費で消えてしまう程度です。そんなところで儲けようとは思っていなくて、私が直接指導を行う場合、指導料も受け取っていませんし、稽古場も無料で開放しています。シンガーの場合、防音設備の整ったスタジオを自分で借りてもらって、そこに指導にも行きますが、スタジオ代だけ払ってもらっています。要望があれば外部講師にも来てもらうのですが、その受講料も弊社を介さずに直接払ってもらっています。ですので、大勢のタレントを抱える気はなくて、本気で取り組む人たちの育成だけに注力していきたいんです。芸能事務所は通常3年契約が多いのですが、弊社は1年契約です。本人がやる気もなくなり、向いてもいないのに3年間も縛ることはできませんので、まずは1年間で自身を見定めて出来ないようだったら辞めればいいと思っています。弊社のタレントは、今のところほとんどが複数年頑張ってくれています。

収益はどのようにされているのですか?

それ、周りからもよく心配されます(笑)。事務所の収益は、ドラマの販売とタレントのキャスティング料。イベント会社SPECからACT EDGEへイベントMC等の仕事を発注することも多いんです。お客様からは、SPECに仕事を頼めば企画から、タレントやモデルまで一括してお願いできるので、手間がかからずコストも削減できると重宝がられています。利益の配分もタレント対事務所の割合が、7対3なんですね。一般的な事務所だと管理費が入っているので普通逆なんです。でも弊社は本人の7割の中から、自分を売り出すために、何が必要なのか、どのタイミングで何を買ったらいいのか、周りでどんなお金の動きをしているのかなど、実際に自分で管理させているんです。お金の動きもタレントとしては大切な知識なので、「これは自分のお金であって自分のお金ではないから」と言って渡し、使う時は相談をしてもらってアドバイスするようにしています。 いずれ他の事務所に移籍した時に、礼儀とお金の動きなど当たり前のことを知識として持って出て行ってもらいたいんです。そうでないと、弊社にいる意味がないと思っています。

将来性のあるタレントは、事務所としては留めておきたいものではないのですか。

弊社は関西の芸能事務所で、全国に売って出ることができるかというと、今のところその予定はないんですね。だから、東京の大手事務所に出張に行くたびに「うちのタレントで引っ張れる子がいたらお願いします」と積極的に提案しているんですが、大概は「変わっているね」って不思議がられています(笑)。タレントは売れたい訳ですから、ここで縛って足かせになるなんて、そんな馬鹿な話はないと思っています。もし他の事務所から預からせてほしいという声がかかり、条件が整って本人が希望すれば、すぐに移籍させます。でもレールが外れるとか本人のためにならない話ならキチンと断ります。以前、東京の事務所から移籍の話をいただいたのですが、蓋を開けてみると、養成所に入り直してほしいという条件だったんです。それなら必要ないと断りました。

仕事をする上での醍醐味って何ですか?

私がずっとイベント事業をやってきたのは、人の笑顔が好きだからなのです。人との繋がりや、イベント等を創り上げたその先に人の笑顔があることなんですね。これは芸能事務所でも一緒なんです。何も出来なかったタレントが仕事をこなせるようになって喜んでいる姿や、前に所属していたアーティストが目指していたステージでワンマンライブを成功させ、その子が涙を流しながら「やっとここにこれました」って喜んでいる姿を見ると、この仕事をやってきて本当に良かったなって思えるし、そういう誰かの願いを叶えていけるというのが私らの仕事の誉れだと思っているんです。今後事業を続ける中で、生まれてくる対価をそういったことに投資したいとも考えているんです。

具体的にはどのような所への投資ですか?

高い志を持っているタレントがいる中で、相当な努力をしてもどうしても壁にぶつかる時が誰にでもあるんです。そういった時にその子のステップアップになるのであれば投資してあげたいんです。その余力を持つというのが私の目標としているところです。現在ACT EDGEとして協賛しているところがありますが、その決め手になったのが、本気で取り組んでいる姿です。あるバンドは、自力で2年にわたり大掛かりなライブをやっていて、協賛を募るのに1年がかりで、あちこちの企業に頭を下げて、本当に一生懸命やっているんです。そういう姿を見ていると応援したくなりますよね。将来的に余剰が出るようになれば、こういう所に使ってあげたいんです。今はとにかく弊社が抱えているタレントの体制を整えてあげたいので、弊社を登龍門としてすり抜けていき、そこから関東圏に上ってどんどん上を目指していってもらえる存在になってほしいんです。正直ほとんどの人がドロップアウトしてしまう厳しい世界ですけれど、しがみついて続けている人が少しづつでも上を向いていけるよう全力でサポートしていきたいです。

産学連携でエンターテインメントを制作して

代表取締役 佐藤晃一

今後の展望について教えてください。

戦国もののボイスドラマの再生回数がそこそこあったので、その続きの舞台化を考えていて、ボイスドラマと舞台の連動を試してみたいんです。舞台化することでWebの閲覧数が上がるのか、Webドラマを見たことで舞台の観客数に影響が出るのかを確かめてみたいんです。
また、マーケティングに失敗して3年以内に閉店に追い込まれる飲食店が多いことを受け、エンターテインメントを広告として利用してもらえるよう取り組んでいます。パイロット的にホテル内のハンバーグ店で毎月最終土曜日にミュージシャンによるイベントを実施したんです。その結果、お店は他店との差異化によるプロモーションとミュージシャンのファンによる新規客の獲得が見込め、ミュージシャンは自身が呼んだお客さんの飲食代の中から少しギャラを頂戴出来るのと物販が可能、そしてお店にいらっしゃるお客様にフライヤーを渡すことにより新規ファンの獲得につながり、お客さんは飲食料金だけでエンターテインメントを楽しむことができるという試みだったのですが、実際にお店の売り上げが上がったんですよ。当日だけでなく、それをきっかけに来店した新規客が他の日もランチ等で利用するようになったんです。ここで実績を上げたことにより、その発展版として、産学連携でエンターテインメントコンテンツ型レストランを増やす計画が上がっているんです。これからミュージシャンをはじめ、マジシャン、パフォーマーや落語家などに出演していただき拡大していく予定です。そうなればタレントの新たな出先もどんどん増えていきますから、今後も弊社のコンセプト「エンターテイメントを身近に。」の活動に注力していきます。

取材日:2018年10月2日 ライター:川原珠美

ACT EDGEエンターテイメント株式会社

  • 代表者名:代表取締役 佐藤晃一
  • 設立年月:2014年8月
  • 事業内容:事務所事業・モデル・タレント・アーティスト キャスティング・育成 イベント企画・制作・運営管理・音響・照明・ステージ演出・広告企画・制作・コンサルティング
  • 所在地:〒540-0005 大阪市中央区上町1-1-24 上町テックビル3F
  • URL:http://act-edge.com/
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