WEB・モバイル2017.02.15

生きるための起業から、社会に貢献できる組織へ 転職市場の流動性を促し、働く機会の平等を目指す

大阪
株式会社ダトラ 代表取締役社長 草深 悠介さん
今回訪問した株式会社ダトラはWebメディアの運用、開発を行う会社です。他社との業務提携やWebの広告代理店業務と並行して、自社メディアの運用を行っています。とくに40歳以上をターゲットにした求人サイトに力を入れ、現在新たなシステムを開発中です。
今年(2017年)2月で4年目を迎えるまだ若い会社ながら黒字続きで、会社としての信用も得られるようになってきました。順調に成長してきた背景には、代表の草深 悠介(くさふか ゆうすけ)さんによる、ブレのない方針があります。その根底は、非常にシンプルで、とても潔い考え方でした。今後の方向性や力を入れたい事業への想いも含め、詳しいお話を伺ってまいりました。

社名「ダトラ」は取締役3人のインスピレーションの結集

社名の「ダトラ」には、どのような由来があるのでしょうか?

とにかく短い名前にしたかったんです。以前勤めていた会社の社名が13文字もあり、領収書に記入する際も時間がかかったので、3文字で短いものが良いと思いました。

数時間は一生懸命考えたんですが、結局思いつかなくて。取締役の3人で、それぞれ好きなカタカナを一文字ずつ出したのです。私が「ト」で他の2人が「ダ」と「ラ」でした。けれど「ラダト」は発音しづらく、「トラダ」では寅田さんみたいに聞こえるので、「ダトラ」に落ち着きました。なにより登記簿の登録もなく、ドメインも取得できました。だからある意味、3人のインスピレーションが集まった、ベストな命名だったと思います。

マネジメントの経験があったからこそ、“飯を食う"ために起業を選択できた。

会社設立のきっかけを教えていただけますか?

「これをやりたい」という明確なビジョンはありませんでした。「飯を食う」ために、ちょうど同じように起業を考えていた仲間と始めただけです。働き方も含めて自分の生き方というのは、人によってそれぞれ、どんな生活がしたい、どこに行きたいなど様々です。そうした選択肢の一つとして転職と起業どちらかと考えた時、自分には起業があっていると思ったのです。

起業があっていると感じられたのは、なぜですか?

これまで、ウェディング雑誌の営業を7年勤め、その後、転職したIT企業でアライアンス提携の営業を半年間担当、別部門の事業責任者を任され、数か月後に役員になりました。もし営業のキャリアだけだったら転職を選んだでしょうね。けれど事業責任者として1つの事業部会社全体をマネジメントする中で、人材さえいれば自分でも会社を経営できると思いました。

マネジメントに携わった経験が、起業する要因になっているのですね?

そうですね。単純に「できる」か「できない」かと考えた時、事業責任者という立場を経験できたのは大きかったです。実際にマネジメントに携わり、その中身が分かったからこそ、それらを1つ1つ分解して考えることができました。もちろん統合すると、難易度の高い業務になるのですが、やり方さえきちんと考えれば、起業は可能だと思ったのです。

自社メディア『From40』の運用で、40~50代の転職市場の流動性を促す

40代以上を対象にした求人サイト『From40』

ではその御社の事業内容を教えてください

大きく分けて3種類あります。 1つ目が自社メディアの運用と開発です。現在運用しているのは求人サイトで40代以上を対象にした『From40』と介護・福祉専門の『カイゴジン』の2つです。
2つ目がアライアンス、事業提携です。別の会社のビジネスでありながら、サイトの運用や集客の部分をアウトソースで弊社が運営するという形の事業です。売上に応じて手数料をいただく契約をとっています。Web上の営業代理店と考えてもらえればわかりやすいです。
3つ目はコンテンツの制作や広告運用などWebコンサルティングを含めた広告代理店業で、クライアントに対応しています。

一番力を入れている分野はどれですか?

売上的に一番高いのは3つ目の広告代理店業ですが、成長させていきたいのは1つ目の自社メディアです。むしろそちらへの投資のために、2つ目のアライアンス事業と3つ目の広告代理店業で稼いでいるという構造ですね。
特に求人サイト『From40』は運営しているなかで、社会的にとても意味のある事業だと気づきました。そこでより重点的に力を入れていこうと思ったのです。

社会的に意味のある事業とは具体的にどのような部分で感じられたのですか?

中高年の転職市場はかなり流動性が低いのです。なぜなら、過少に評価されてしまうためです。40歳を超えたからと言って、急に能力が下がるわけではありません。今の求人サイトに登録されている内の半数以上が35歳以上の方々です。にもかかわらず、転職はしにくいという状況になっています。
今後社会は高齢化となり、労働人口の平均年齢も高くなります。だからこそ転職市場の流動性をもっと上げる仕組みを作ることは、サービスとして価値があり、社会のためにもなると思いました。
高齢者の定義が75歳に引き上げられ、65歳になってもまだ働かなければならない現実のなかで、キャリアで言えば40代はまだ折り返し地点ですからね。

40代以上の人材を「マネジメントしにくい」のではなく、 「マネジメントできない」ことが問題

40代以上の転職市場の流動性を上げようとする中で、難しいのはどんな点ですか?

難しさは、企業と人材、両方にあると思います。人材側で難しいのは年齢を重ねるごとにこだわりが増えたり、新しいことへの挑戦が難しくなる傾向があります。
企業側では活用方法がわからないとか、マネジメントしにくいといった理由がありますが、ただ多少の偏見が入っていると思うのです。個人的な意見を言えば40代の方のほうが正直マネジメントしやすいと思います。

どうして、そう思われるのですが?

弊社にも40代のスタッフがいますが、話が早くて、めちゃくちゃやりやすい。やはりキャリアが全然違います。技術的なことだけでなく、効率的な仕事の進め方や、人との接し方なども含めいろいろとわかっていますからね。一概に、若いからいいというわけではないのです。
会社という組織の中に上下関係があり、指示される人と指示する人が居る。形としてはそれだけのことを徹底できない組織に問題があると思うのです。「マネジメントしにくい」のではなく「マネジメントできない」ことが問題ですよね。

能力を正しく発揮するべきで、 働く機会は平等であるべき

御社には「働くお母さん」が多いと伺いました。何か理由があるのでしょうか?

“女性に活躍の場を" と特に考えているわけではなく、結果的に「働くお母さん」が多くなっているだけです。社員にもいますし、時短勤務している人もいます。もちろんフルタイムで働ける方の存在はとても助かります。それでも彼女たちを雇用するのは、彼女たちの能力が高いからです。
私は能力が高い人はそれだけ自由だと思っています。だから子供に熱が出れば帰ってあげたらいいと思いますし、体調がすぐれないから自宅で仕事をするというなら、それも会社のルールの中で自由です。重要なのは期日までに仕事を納品してくれることで、そのために能力を発揮してほしいだけです。

なるほど。つまり重要なのは能力で、年齢ではないということですね。

人は能力を正しく発揮するべきだと思うのです。そのために働く機会は平等であるべきだと思うのです。要するに能力があるから採用するのであって、その人がどこの国の出身であるかとか、性別や年齢とか、セクシャルマイノリティであるとか、どうでもいい、なんでもいいんですよ。とにかく仕事ができればいいんです。
だから40代以上の求人サイト『From40』も意義深いなと思っています。おっしゃる通り年齢は関係ないんです。

ただ40代と言えば、これまで生きてきたなかで、癖や仕事のやり方にもこだわりがあると思うのですが、どのようなマネジメントを心がけていますか?

結果でしか評価しないこと、マネジメントしないということです。
重要なのは、その人に何ができて、その能力に対して依頼した仕事を納期までに仕上げられるかどうかです。あとはできるかできないかだけで、ダメなら給料に反映され、クリアできるならもっとレベルの高いことを任せて、結果を給料に反映させます。
何度もいうように、年齢は関係ない。家庭の事情や個々の背景も絡みません。やるかやらないか、できるかできないか。そこには個人に対する偏見やノイズがないので、そういう意味では働きやすいと思います。

能力以外は一切関係ないとおっしゃられますが、実際には、難しいのではないでしょうか。

能力以外については、シャットアウトしなければいけない、と思います。
そもそも本質的な企業と従業員の関係は、できることに対して給料を支払うというものですよね。会社同士も成果に対しての報酬を支払います。それだけのことで、他の要素は必要ない。従業員同士も、若さや見た目で評価されるなら不満も出るでしょうが、結果で評価されるなら文句はつけられません。
年長者にはプライドもキャリアも、自分なりのやり方もあるでしょう。けれど、それを考慮するからマネジメントしにくいだけで、結果でしか判断しないと明言してその通り対応すれば、誰も言い訳できません。

社会的な意味のある組織を目指し 会社理念を見直す

今後どのような方向性や、展開を考えていますか?

ちょうど設立から3年たち、従業員も増え、会社としての信用も得られるようになり、これから会社を大きくしていきたいと考えています。
初めは“飯を食う"ために始めたとしても、そこから脱皮する時期だと思っています。会社として存在する以上は社会に貢献が必要で、それを明文化するために、ここでもう一度、会社理念を見直そうとしています。

今御社のサイトに書かれている「楽しいことだけをする会社」という理念から、次のステップを目指すということですね。具体的にはどのようなことをお考えですか?10年後、20年後のビジョンなどあれば教えてください。

今のところ10年後、20年後のビジョンはないですね。3年後ぐらいまでしか考えていません。それくらいが私にはちょうど良い感じなので。(笑)
新しい理念としては、先ほど話した「働く機会の平等」も行動指針として盛り込む予定です。 次のステップとしては、今後40代以上の求人サイト『From40』に力を入れることで、社会的に貢献できると考えています。
具体的には『From40』の月商を10倍くらいにしたいと考えていて、そのための新しいサービスを開発中です。求職者の情報をデータベース化し、派遣会社がアクセスできる仕組みを作ります。そのためのリソースが必要になるので、会社を大きくしていかなければなりません。

次の目標を一緒に目指すスタッフにどんな能力や人材を求めますか?

弊社は小規模ながら、Webサービスを運用できるメンバーがそろっています。彼らがいるおかげで、外注に任せるより経費が抑えられ、意思疎通も早くできるのです。人件費はかかりますが、やはり信頼して仕事を任せられる人材を束ねて運営することが、弊社の強みであり、私がしたかったことなので、今後もこの体制で進めます。
その中で個々に能力を発揮してくれさえすれば、私はその結果を評価します。こうした方針に納得して関わってくれる方を求めます。

取材日: 2017年1月10日 ライター: 東野敦子

株式会社ダトラ

  • 代表者名:代表取締役社長 草深 悠介(くさふか ゆうすけ)
  • 設立年月:2014年2月
  • 資 本 金:800万円 (2015年1月1日現在)
  • 事業内容:WEBサービス企画・開発・運営
  • 所 在 地:〒541-0056 大阪市中央区久太郎町2-5-28 久太郎町恒和ビル7階
  • U R L:http://www.datora.jp/
  • お問い合わせ先:TEL) 06-4963-2493 FAX) 06-4963-2494 E-mail) info@datora.jp
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