グラフィック2013.06.17

ひとに役立つ ひとのよい広告が作りたい

大阪
イーブン有限会社 河上伸男氏

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広告の仕事制作所イーブンは、中之島・大川を見下ろす眺めのいいオフィス。社内にはしきりがほとんどない。その見晴らしのいい場所で作られるのは「ひとのよい広告」。広告代理店でのコピーライターからCD(クリエイティブディレクター)のキャリアを経て広告制作会社を設立した河上伸男氏。イーブンの仕事ぶり、広告について話を伺ってみました。

広告を見る人はひとり だから、つくる側もひとりに向き合った広告づくりを

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イーブンでは名刺に肩書きや職種がないそうですね。

ぼくが代理店で勤めていた経験から学んだことです。代理店はマーケティング、ディレクター、営業と分業化されていたんですね。コピーの人はコピーだけ、デザインの人はデザインだけ、デザイナーはラフにクルクルと2~3行のラインを書いて「コピーはここにこれくらいのボリュームで埋めてください」と。コピーの中身はあまり読んでいない(苦笑)。 そのようなことをたびたび経験して思ったのですが、ひとりの人に向き合った広告を作っていないのではないかって。広告と言うのはひとりで見るじゃないですか。地下鉄の中吊りにしても、駅のポスターにしても、新聞もひとりで読むでしょう?でも、作る側は寄ってたかって、しかも分業化して作ってるわけですよね。 ひとりの人に向き合って作ってない。やっぱり一対一で向き合わないとその生活者のための広告は作れない、と思うのです。

だから、あえて肩書きをなくそうと?

言い方は悪いけどみんなの逃げ場をなくしてしまおうと(笑)。肩書きがないとクライアントは担当者を制作の人間として見るんですね。だから、コピーもデザインも、その担当者にすべて話すわけですね。するとデザイナーはコピーライターに、コピーライターはデザイナーにクライアントの要望を伝えないといけない。そういう作業をしてるとだんだんひとりの人に向かう、全体を見た仕事ができるようになっていくんです。私も代表取締役の肩書きはありません。あの人デザイナーですか?コピーライターですか?ってよく聞かれるんですが、うちではクリエイターですと答えてます。だから担当者になんでも言ってくださいと対応しています。

クライアントも代理店も生活者も対等の立場で

ダイレクト系折り込みチラシ

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「じょうずな広告制作会社であるまえに ひとのよい広告制作会社でありたい」とHPで書かれていますが・・・。

これも代理店で経験したのですが、つくる人は消費者の方を向いた広告と言いますが、それは建前で実際はクライアントの方を向いているんですね。そしてクライアントも生活者の方を向いてると言うけれど、自社の商品しか見ていないことが多いですね。例えばビールだとしたらビールしか見てない。他社のビールもあれば、酒類はビール以外にもある。生活者はビール以外のモノも飲むわけですから、そこへも目を向けないと。

でも、現実は生活者に向いた広告が作れられていない?

「イーブン」と言う社名にしたのは、広告を作る人と見る人は対等である。また、クライアントや代理店とも対等の立場で仕事がしたいと言う考えからです。先ほど言ったように、「ビールだけでなく日本酒や焼酎もありますよ」と言える関係でないと、生活者に向いた効果的な広告は作れないと思っています。それともうひとつ…「いい文章を書くよ」って隠れた意味合いがあるのですが(笑)。

バブル以降、素人が広告もどきを作るようになった

web作品・テレビ放送局のweb magazine ホンテーレ(毎週発行)

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「広告の仕事制作所」と言うショルダーフレーズに、職人気質を感じますね。

この業界に入って一番好きだったコピーライターが土屋耕一さん、そしてもうひとりは仲畑貴志さん。土屋さんは「土屋耕一の仕事場」、中畑さんは「中畑広告制作所」と言う会社名。その両方からいただいて、広告の仕事制作所と言うショルダーフレーズをつけました。 お二方とも職人気質で、ぼくはそんな方に憧れます。

広告業界の変遷をどのように思われますか?

Macが導入されて広告業界は転機を迎えたと思います。さらにインターネットの普及があり、広告業界にもたらした影響はすごくあると思います。 うちでもグラフィックデザインが要求される仕事が減り、Webの仕事が増えました。あと、ダイレクト系。通販やオンラインショップです。 バブル以降、素人さんがこの業界にたくさん入ってきました。広告代理店もそうだし、クライアントの担当、宣伝部も。Macと言う便利な道具が出てきて、素人でも作れるようになったんですね。 見よう見まねでコピーっぽいものを書いたり、デザインもどきを作ったり。

メンズ化粧品中吊り

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見た目はキレイだけれど、広告理論から言うとメチャクチャな?

そうですね。ただ、イチイチ広告理論と言ってるヒマもない。従来ブラックボックスで見えない部分があったのが、全部あかされてしまった。なんでもありの世界になってきたと思います。 でもね、ダイレクト系はある意味、本来広告がやらなければならなかった仕事に近いと思います。商品の良さを確実にお客さんに理解してもらい、そのうえで購入したい!と言うキモチまで起こさせる。それって広告の原点だと思います。 そしてダイレクト系はレスポンスが速い。結果がモロに出てくるシビアな世界ですよね。

コミュニケーションによって鍛えられた広告が生活者に届く

web作品・作品募集サイト

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広告づくりにコミュニケーション能力はかなり大切ですよね?

この業種は、コミュニケーション力が鍛えられますね。どうやったらうまく伝わるか、どうすれば早く伝わるか、それをずーっとやってる仕事です。カンプやプレゼンもコミュニケーション。 何度もハネられながら、やっとくぐり抜ける、くぐり抜けることで鍛えられる。そして残ることができた表現が生活者に届く、生活者を動かすような表現が育っていくわけです。 出してスーッと通ってしまう表現は、ポンと叩かれるとヘナヘナとなるようなアイデアレベルであることが案外多いと思います。 よくターゲットと言われますが、ぼくはその商品のファンづくりだと思います。いかにその商品の良さを伝えるのか、そしてファンになってもらうかが広告の役目だと思います。 ひとに役立つ広告を作りたいと思っています。

インターネットの普及はコミュニケーション能力に影響してますか?

確かに、インターネットの普及で直話(じかばなし)が少なくなったのは事実ですね。でも、普段のちょっとした場面でもコミュニケーションってあるわけですよ。 例えばコンビニでお釣りを間違われたとか、街を歩いていて人とぶつかったとか、そのとき、どのように対応して会話するのか、それがその人にとってのコミュニケーションキャリアだと思います。 そのキャリアを豊かに持ってる人がコミュニケーション力が高いのだと思いますね。 いわゆるいろんな修羅場を越えてきた人。僕なんかも叱られたり、けなされたりたくさんありますよ。

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それに対応してきたことは仕事にも活かされているわけですね?

そうですね。人を掌握していく力は、コミュニケーション能力によるものが大きいと思います。Webの時代に直話(じかばなし)がうまくできる人はチャンスですね。広告と言うのは人と人とのやりとりのためにあるものだから。 コミュニケーション力を高めるには、自分の生活のひとつひとつを大切にすることですね。

広告の仕事制作所 イーブン有限会社

  • 代表:河上伸男
  • 設立:1987年3月3日
  • 資本金:500万円
  • 事業内容:グラフィック&web広告の企画と制作
  • 所在地:大阪市中央区北浜東6番6号アクアタワー6F
  • TEL:06-6966-0808
  • FAX:06-6966-0809
  • URL:http://www.even-ne.com

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