地域の人々と積極的に交流しながら動画制作や自社製品開発、イベント事業に取り組む

金沢
株式会社 ヨシタデザインプランニング
mamoru yoshita
代表取締役 葭田 護

石川県金沢市で、企業ブランドのデザインコンサルティング、ウェブ制作などのインターネット事業を展開する『ヨシタデザインプランニング』。地元の伝統工芸を取り入れた自社商品の企画・販売など新規事業にも取り組む中、アートをテーマにした子どものワークショップや、社会人対象の学びの場『土曜デザイン事務所』を開催しています。ビジネスと並行してこれら社会貢献事業を続けるのはなぜか。会社経営の根本にある葭田さんのお考えと、新しい技術やアイデアを積極的に活用する事業展開について伺いました。

大好きな「絵を描くこと」から始まり、デザイン会社を設立

デザインの道を選ばれたきっかけは何ですか。

中学生くらいのときから絵を描くのが好きで、美術系の大学に進みたいと思っていました。高校では美大受験のための絵を一生懸命描いていたことを覚えています。入学したのは地元の金沢美術工芸大学で、商業デザインの方へ進みました。就職では広告代理店志望だったのですが、東京の広告手代理店には入れず、地元企業のデザイン部門や広報部などで頑張ってみようと思い、金沢で就職しました。

 

どのようなお仕事を経験されて独立に至りましたか。

最初に入社したホテルやマンションのデベロッパーでは、自社広告やマンションの宣伝を担当し、3年程後に移ったマーケティングの会社では、全国各地のまちづくりのマスタープランを作る仕事などを経験しました。その後1995年に独立。27歳のときでした。いずれは会社として活動していきたいと考えていましたが、一人で始めたので、とりあえず自分ができることは何でもやろうといった感じで、イラストやパース、まちづくり構想図、景観図などいろいろな仕事をやりました。この頃は手描きでしたから、一人黙々と手を動かしていましたね。そうこうするうちに、もう少し規模が大きい仕事も取りたいと思い始め、法人化しました。

 

企業ブランドデザインからデザイン経営へ

新たな手法を模索しながら、自社製品も開発中

どのような事業を中心に活動されてこられましたか。

手がけたかったことの一つはCI(コーポレートアイデンティティ)の仕事です。会社のロゴマークやシンボルマークの制作と、それらを活用したさまざまな物のデザインですね。当時、CIとかVI(ビジュアルアイデンティティ)を取り入れる企業が増えており、この分野に注力したいと思っていました。現在もこのような会社のブランド作りの仕事が基本となっています。

企業のブランド作りについて新たな取り組みや方針はありますか。

最近力を入れたいと考えているのが「デザイン経営」です。格好いいデザインのものを作るというのではなく、企業が創出するあらゆるものやシーンにデザイン生かす手法を、デザイナーが経営トップと一緒に考えるということです。店舗イメージやコミュケーションのやり方、ウェブなど会社のツールになるようなデザインを経営者の方と一緒に考え、デザインが経営の強みになるような取り組みをやっていきたいと思っています。北陸の会社はそれほど大規模ではないことから、社長さんがかなりの決裁権を持っているので、その理解が得られればスムーズに経営とつなげていけるのではないかと思っています。

ブランド作りに加え、近年はやはりウェブ制作のお仕事も多いですか?

多いですね。最近では、企業サイトの他に、学会のサイトや企業のシステム関係のお話もいただいています。ウエブショップの運営も行っていますし、非常に増えてきています。

 

ウェブ制作において御社独自の強みはお持ちですか。

現在、動画に力を入れており、プロモーションムービーを組み入れることが多くなりました。ドローンも活用しています。動画については、SNS広告やウェブ広告の配信とイベントを一貫して行うこともできます。ウェブで重要なのは使いやすい、更新しやすいことだと思っています。ウェブ制作の仕事は立ち上げて終了というパターンが多いのですが、実際はその後の保守が面倒なのです。当社では、そこをあえてしっかりサポートしていきたいと思っています。難しいのは、保守料をどうするかという点なのですが、パートナーとして5年、10年お付き合いさせていただく可能性もありますから、長期に渡って一緒に保守を続けていけるモデルを作りたいと思っています。

新たに進めておられる事業はありますか。

自社製品を数多く出していきたいと思っておりまして、いくつか計画が進んでいます。その一つが、防水機能を備えた屋外型のプロジェクターです。広告やインスタ映えするような画像を景観に映写して、その様子をネットで配信できるような装置を作り、近々販売とリースで出す予定です。また、ソーシャルアプリも計画しています。

 

地元の伝統工芸を生かした商品が誕生

 

お客様は地元の企業が中心ですか?

現在は北陸3県に及んでいます。一部東京の取引先もありますが、やはり多いのは地元のお客様です。日頃感じていることですが、仕事をする上で金沢はとてもよい環境です。保守的な土地柄ですけど、時間の流れが割とのんびりしていて、それがいいかなと(笑)。東京に行くと、馬車馬のように働いてキャリアを積んで、或いは稼いで、みたいなことになることが多いですけど、ここではそういう空気はあまり感じないですね。東京や名古屋の人にはうらやましいといわれます。僕も出張でいろいろなところへ行きますが、金沢は住みやすい上に東京へ行きやすくなったので、バランスがとれたまちだと思っています。

事業の中には地元に密着した内容のものもありますか。

実は、地元にあるものとのコラボレーション的な取り組みもいろいろ考えておりまして、もうじき販売を開始するのが、九谷焼の絵柄を転写した紙皿です。女性スタッフの発案で作ることにした商品で、能美市のオープンデータから古典的な江戸時代の絵柄を使わせていただきました。九谷焼の宣伝にもなりますね。落としても割れる心配がなく、アウトドアでの食事や、カジュアルなパーティーのときに使っていただけたらと思っています。直径18センチメートルの皿を6枚セットで販売する予定で、外国人観光客が絵葉書替わりにお土産として買って帰るのにもちょうどよいかもしれません。シャレといいますか、ちょっとした遊び心ですね。

 

子どもの頃の経験から生まれた教育事業

 

お聞きしていると楽しみながらお仕事をされている感じですね。

学生時代からやりたかったことが、楽しいコマーシャルを作ることでした。独立した頃、佐藤可士和さんがグラフィックデザインを手がけたホンダ「ステップワゴン」 のCM「こどもといいしょにどこいこう」というのが流れていて、宣伝だけども家族の理想像が描かれていて、見る人をハッピーにする。僕も、物を売るだけじゃなくて、皆がハッピーになれるようなものやりたいと思っていました。それは今も同じです。

子ども対象のワークショップを開かれているのも、そのようなお気持ちからですか。

そうですね。このワークショップも独立したときからやりたかったことです。きっかけは小学1年生のときに遡ります。担任の先生が50歳くらいの女の先生で、ものすごく褒め上手だった。例えばテストに付けてくれる丸が五重丸どころか、なるとみたいな何重もの丸を書いてくれた。それがものすごくうれしくて、学校へ行くのが楽しくてしょうがなかった。あまりにもその先生が好きだったので、お母さんと呼んでいました(笑)。そのうれしい気持ちがずっと今まで残っているので、「ものを作って褒めてもらったという経験がその子の一生の糧になる」と思って続けているのだと思います。

ワークショップにはどのようなプログラムがありますか。

最近開いたのはダンボールで時計を作るワークショップで、ダンボールを文字盤にして、ペイントやコラージュで想い想いのデザインに仕上げてもらいました。作品は金沢市内のカフェと公共施設で展示し、おじいちゃんおばあちゃんが見に来られたりして喜んでいただきました。プログラムは、ある程度形が決まっているものと、自分の好きなものをつくる2パターンで考えています。そして、失敗しても、変わったものができても、とにかく褒めちぎるということを心がけています。楽しくてたまらず熱中して、「もっとやっていたい」と言って帰らなくなる子もいます(笑)。家族の方も非常に喜んでくださって、人気のプログラムは早々に定員いっぱいになってしまうこともあります。

ワークショップのビジネス展開もお考えですか。

この事業については2つの方向性がありまして、社会貢献的事業として続けていく一方で、「アートキャンプ」という体験プログラムを実施しようと思っています。親御さんから料金をいただき、料理やダンス、工作、アート体験などのプログラムを2日間で組み、収益化することを考えています。それから企業さんに対して、「会社のイメージづくりの一環として、子どもを巻き込んだイベントを開きませんか」と持ち掛けることも検討しています。会社とはいえ、硬いことばかりやっていても駄目だと思うので、子育て世代に楽しんでいただくという切り口で広げていきたいと思っています。

社会人向けの講座も開いておられますね。

ええ、『土曜デザイン事務所』と銘打って、デザインをテーマに建築とか工作とか、さまざまなジャンルと切り口で、いろいろな方を講師に招いて開催しています。講師はボランティアで、参加も無料。大人のフリースクールというか、学校や会社では聞けない、普通の講習でも聞けないようなことを知識として提供できる場があればいいなと思い3年位続けています。不定期で開いて20回を超えました。僕自身も勉強したいですし、毎回いろんな方がいらっしゃって新たな出会いもあるので、楽しみながら続けています。なんだか儲からないことばかりやってますね。当社のことをイベント会社だと思っている方もおられるんですよ(笑)。

 

新しい技術を活用しながら人々の記憶に残る仕事を目指す

 

今後の展望をお聞かせください。

力を入れていきたいのは動画の制作ですが、その中で人の記憶に残るような伝え方をして行きたいと思っています。マスコミュニケーションではなく、一人ひとりの思い出になるような仕事がしたいですね。そこに置いてある、東山が写った観光ポスターは、独立した27歳のときに金沢市からいただいた仕事で制作したもので、僕としてはメジャーな仕事ができ、非常にうれしかった記憶があります。お金をかけずにやろうと、撮影の照明は自動車のヘッドライト、モデルは市役所職員の女の子です。加賀友禅を立体的に見せるために、当時発売されたばかりの3Dソフトで何日もかけて加工しました。その頃の東山は観光客なんてほとんどいなかったですね。今はすごいことになってますけど(笑)。時代の変化を感じる20年前のポスターですが、そのときの苦労を忘れないように、初心忘るべからずと思って置いています。今は、何でもパソコンでできる反面、人の記憶に刻まれるような熱のある作品は生まれにくくなったと思います。時間の問題などやむを得ない部分もありますが、一生懸命仕事に打ち込む姿勢と気持ちは持ち続けたい。その上で全国のお客様から当社を選んでいただけるよう新しい技術は積極的に導入し、スキルを磨いていきたいと思います。

取材日:2019年3月28日  ライター:井上靖恵

プロフィール
株式会社 ヨシタデザインプランニング
代表取締役 葭田 護
会社名:株式会社 ヨシタデザインプランニング 代表者名:代表取締役 葭田 護(よした まもる) 設立年月日:1997年7月(創業 1995年7月) 資本金:10,000,000円 事業内容:企業デザインコンサルティング、ウェブデザイン、システム開発、子どもアートスクール等教育事業 所在地:〒920-0058 石川県金沢市示野中町2-64 URL:https://yoshita-design.com/ お問い合わせ先:TEL.076-232-5442

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