WEB・モバイル2019.04.17

脱!画一的なWebサイト 見て終わるものではなく、見た後に心を動かす、 そんな良質なコンテンツを提供し続ける

大阪
株式会社フォーティファイヴ 代表取締役 木下 由紀彦 氏
最近ではパソコンだけではなくタブレットやスマホで見ることも多くなり、ますます画一的になりがちなwebサイト。そんな中でも「上質な読み物」の編集・制作にこだわり続けるのは株式会社フォーティファイヴ。印刷物の企画・編集も手掛けている強みを活かし、ビジュアルだけのインパクトに頼らず、それぞれのWebサイトの個性を活かしストーリー性を持たせたアナログ的な「編集」を大切にされています。
「コンテンツで『動きたくなる』をつくる。」を経営理念に掲げる代表取締役社長の木下由紀彦氏は、学生時代はパントマイムのパフォーマーを目指していた表現者。穏やかな口調の中にも良質な表現へのこだわりが伝わってきます。そんな木下社長に、制作物に求められるもの、設立10周年を迎えるにあたり今後の展望等についてお話をうかがいました。

観られる側から観る側への転身

これまでのキャリアについて教えてください。

もともとは、大学の時にパントマイムの活動をしていたんです。その時に京阪神エルマガジン社の販売部で書店をまわるアルバイトをしていました。大学卒業後にパントマイムを極めたいとアメリカに渡ったのですが、言葉の壁などにより半年で打ちひしがれて、出直そうと帰国した時に、京阪神エルマガジン社で今度は編集部の募集があると声をかけてもらい、たまたま演劇分野の担当になったんです。雑誌編集は未経験だったのですが先輩に指導を受けながら、舞台や芝居、著名な劇作家・脚本家への取材等を行い、誌面を作っていました。

観られる側を目指しながら観る側のお仕事をされていたんですね

正直、最初は「なんでこちら側にいるのだろう?」と思いながら仕事をしていました。でも当時は雑誌が売れる時代でしたから、とにかく忙しくて目の前の仕事を懸命にこなすうちに雑誌編集の仕事が面白くなり、自分のやりたかったことよりも大きな比重を占めるようになっていったんです。5~6年くらい演劇担当を経た後に、女性誌「SAVVY」編集部へ異動になり、ファッションやコスメ、グルメなどを取り扱い、企画・構成からライティングなど編集全般に携わっていました。入社して10年ほど経った頃から広告への関心が高くなったことから退社し、取材で知り合った某テーマパークのオーナーから直々に、テレビやラジオCM、広告全般をまかせていただく仕事に就きました。そして3年が過ぎた頃に、広告や女性誌の編集をしていた実績が買われて、大手派遣会社の方から女性向けWebサイトを立ち上げるので、その編集長になってほしいとお声がけをいただいたんです。

数々の実績が更なる実績を呼ぶ

当時はWeb媒体自体珍しかったのではないですか?

そうですね。でも、いずれは現在のようなWebの中で情報発信が行われる時代になるだろうと思っていましたので、二つ返事で快諾しました。そして、その女性サイトを軸にしたビジネスは、2000年6月に4人でスタートしたのですが、その頃から社会全体がネットを中心とした方向に進んでいるように思いました。もともとは広告で女性サイトを運営しようというビジネスモデルだったのですが、いろいろな企業から「うちのWebサイトをプロデュースしてほしい」というお話をいただくことが多くなり、「自社の女性向けWeb媒体の運営」と「企業のWebサイトを制作する」という、2本の柱で事業を展開するようになりました。あれよあれよという間に、4人が50人を超えるまでに社員も増えていきました。

時代の流れに乗り短期間で業績が急激に伸びた感じですね

でも、自社の女性向けWebサイトを獲得した広告で運営していこうとすると、波がありました。もう一つの企業サイト制作は大手化粧品会社やショッピングサイトなど幅広い業種に対応していたので、どんどん受注が入ってきて、会社がそっちのほうにウェイトを置くようになっていったのです。そこで「もっとコンテンツに寄ったものを作ろうと」2009年に退社し起業することにしました。

具体的に「作りたいもの」とは、どういったものだったのですか?

ちょうどその時にWebと紙媒体の経験が10年ずつになっていたこともあり、両方出来ることが自分の一つの強みになると思っていました。Webサイトの制作にしても、「格好良いホームページを作りました」ではなく、その中に掲載されている企画や記事の内容を大切にする制作会社って当時は少なかったように感じたので、コンテンツ制作を事業の中心に据えて起業しました。「作るものはデジタルだけれども感性はアナログをめざしたい」と、社名にはアナログレコードの45回転という意味で「フォーティファイヴ」にしました。

良質なコンテンツとは?

現在の事業内容について教えてください。

仕事の比率でいうと、紙媒体の制作が3割、Webの制作が7割になります。どちらも大切にしているのは、会社の理念である「コンテンツで『動きたくなる』をつくる。」です。紙媒体は定期案件が多く、兵庫県に本社を構える大手自動車ディーラーの会報誌では、企業色を極力抑えて、たとえば、”外国人が好きな兵庫”といった切り口や、ページ数が少ない中で編集のテーマやストーリー性を重視したフリーペーパーを編集しています。また、大手電鉄会社が各駅に設置している沿線情報のフリーペーパーも毎月編集しており、どこかへ出かけたくなるように取材重視の臨場感のある内容にしています。また最近では、初の取り組みになりますが、大手繊維会社の社内報の編集もさせていただいております。

Web制作はどのようなものがありますか?

企業がメディアを持って情報発信するというオウンドメディアのコンテンツ開発に力を入れています。大手派遣会社のオウンドメディアでは働いている人なら誰もが関心のありそうなテーマや使えるネタ記事を掲載し、閲覧者が友達にLINEやSNS等で拡散していくことでき、検索率や閲覧数を上げて、「みんなから認められているサイト」として、Webサイト自体にパワーをつけるということを行っています。

閲覧者の目に留まりやすくなるという事ですね。

そうです。今は企業のトップページから情報を得る人って限りがあるので、クライアントとどういった記事が読まれているか、検索に引っかかりやすい記事は何か、という内容の打ち合わせをして掲載内容を決めています。紙媒体であれば、いずれは内容が時間とともに古くなってしまいますが、Webの場合はブラッシュアップできたり、サイト内の掲載記事数を増やせば増やすほど、資産として活用できると考えています。

SEO(検索エンジン最適化)対策で抑えているポイント等ありますか?

テーマやタイトル、キーワードなど、いわゆるSEOの重要な点はいろいろありますが要は、ありがたい情報、おもしろいテーマ、使える記事といった、雑誌を買うときのような心理とSEOは同じではないかと最近思っています。重要なルールは踏まえつつも、買いたくなるようなコンテンツをいかに作るか、そして繰り返し読んでもらえるかが一番大事なことと考えています。

仕事はどのような流れで入ってくるのですか?

一つのお仕事が、もう一つの仕事を呼んできたり、また別の一つが2つになったり、紹介いただいたりして増えてきました。Webサイトからお問い合わせいただいたり、コンペに参加させていただいたりすることもありますが、何らかのつながりからお仕事になることがやはり多いですね。また紙をWeb化したり、Webから冊子を作ったり、といった案件では、企画、編集、撮影、ライティング、グラフィックデザイン、Webデザイン、コーディングなどをワンストップでできますので、一緒にまとめてご依頼いただくことも最近は増えてきています。

多岐にわたり業務をこなされていますが、スタッフはどれくらいいるのですか?

東京と大阪で12名になります。Webディレクターと紙媒体の編集のディレクションをするものとデザイナーがおりまして、ライティングは社内でやることもありますが、撮影やイラスト制作などはすべて外注しています。弊社が成り立っているのは、ライターや撮影、またデザイナーなど、本当に優秀な人たちとやらせていただいているからです。少数精鋭といえる社内スタッフですが、それ以上に素晴らしい外部スタッフとの関わりがとても大きいです。

今後はどのような人材を求められていますか?

感覚として新しいものを持っている人ですね。今後出てくる新しいメディアに対して、弊社の理念「コンテンツで『動きたくなる』を作る。」を大切に「こうしたほうが面白い」と、色んなアイデアを持って率先して進めてくれる人がいいですね。スキルは入ってきてから身につけてもらえればいいと思っていますので、未知の分野にアンテナを張っている人とお仕事がしたいです。

コンテンツに求めるもの、それは “ときめき”

大切にされていることは何ですか?

媒体を通して「行ってみたい」「始めてみたい」「もっと知りたい」「これいいな」と“ときめき”を感じてもらい、実際に、おでかけやライフスタイル、ショッピング、転職など行動に結びつけることができるようなものを提供することがミッションと考えています。

10年目を迎えられるにあたり、今後の展望を教えてください。

弊社が得意としているのは、雑誌にあるような企画やページのストーリー性です。つまりページをめくるときのわくわく感をつくること。しかし、最近はInstagramやFacebookといったSNSの感覚的なものの制作オファーが多くなってきています。コンテンツ制作という意味では同じようなものに見えますが、ストーリー性と感覚性は大きく違うと感じています。でも、そのどちらにも大いに興味をもっていますので、コンテンツ制作会社として両方と向き合っていきたいと考えています。次の10年を考えると、さらに感覚性は進化するでしょうし、さらに違ったサービスも生まれてくると思います。そういった新しいメディアにおいても、「行ってみたい」「はじめてみたい」と思わせるコンテンツは必要だと思いますので、そこに応えていきたいと思っています。

取材日:2019年3月7日 ライター:川原 珠美

株式会社フォーティファイヴ

  • 代表者名:代表取締役 木下 由紀彦
  • 設立年月:2009年7月
  • 資本金:1000万円
  • 事業内容:出版物の企画・編集、Web制作全般、コンテンツの企画立案・制作、オウンドメディアの編集・運営、SNSの企画・運営・管理、メールマガジンなどの発行・出版、ショッピングサイトサービス全般 上記に附帯関連する一切の事業
  • 所在地:本社 〒530‐0005 大阪府大阪市北区中之島4丁目3-25 フジヒサFJ中之島ビル10F
  •     東京オフィス 〒101-0052 東京都千代田区神田小川町1-9-9 Linden haus601
  • URL:http://www.0450.jp/
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