職種その他2019.03.20

Pay It Forwardの精神で、人と人をつなぎ、新しい市場を生み出す

福岡
株式会社千年市場 取締役社長 熊井 啓人 氏
1992年、福岡で創業した株式会社千年市場(せんねんしじょう)。3人で紙媒体をメインにスタートしたプロダクションは、時代の流れに対応しながら27年の歳月を経て、福岡と東京に拠点を置く20人の会社へと成長しました。2代目社長の熊井啓人氏に、ご自身のキャリアから社長として大切にしていること、会社の強み、生き残りをかけた戦略まで伺いました。

人やモノが出会う「市場」を生み出し続ける

熊井さんは2代目社長とのことですが、まずは会社のことを教えてください。

弊社の創業者であり現会長の伊東秀基は、コピーライターです。1992年にデザイナーとカメラマンの3人で、プロダクションとして千年市場を立ち上げたそうです。創業の精神は「そこに『伝えたい』がある限り」。企業活動とは「誰かに何かを伝える」ことであり、「市場」は人やモノが出会う場所。市場には売買だけでなく、ワクワクする出会いや仕掛けがある。私たちは広告やイベントなどコミュニケーションメディアの企画・制作を通じて、過去から未来へ、千年以上も続くであろう市場を生み出していこうという思いが込められています。

なるほど。熊井さんご自身はどんなキャリアを歩んでこられたのでしょうか。

私は北九州市の出身で、高校の地理と歴史の教員になりたくて、長崎の大学へ進学しました。教育実習までしたのですが、やはり広告の仕事をしたいと思うように。もともと文章を書いたり絵を描いたりすることが好きだったんです。当時は缶コーヒーBOSS(サントリー)の広告が話題になるなど、ちょっとした広告ブーム。CMクリエイターに憧れて、広告会社に就職しました。でも、そこが1年で会社をたたんでしまい、次に入社したのが弊社、千年市場でした。2000年のことです。
学生情報誌「Campus九州」の営業兼ディレクターという立場で、お客様やクリエイターとやり取りをして、とても面白い仕事だとのめり込みました。それから教育関係のパンフレットやチラシなども担当し、社内の人はもちろん、お客様に教えてもらうことが多くて、ありがたい環境でした。
入社の翌年には、東京オフィス立ち上げにあたり、私が一人で行くことに。最初は知り合いがいなくて辛かったけれど、お客様が順調に増えていったのは幸運でした。3年で福岡に戻り、それから2013年に社長になりました。

30代半ばで社長になられたのですね。なぜ選ばれたのでしょう。

うーん、この仕事が好きで楽しく働いていましたし、上司や社長にも臆せず意見を言うタイプだったからかもしれません。

一つ一つの仕事を真面目にやれば次につながる

現在の事業内容について教えてください。

私たちは人と人、人と企業、企業と企業のコミュニケーション創造集団で、営業・ディレクター、プランナー、デザイナー、カメラマンなど20名が在籍しています。具体的にはパンフレットやWebサイト、販促ツール等の企画・制作や、メディア広告・Web広告等の運用、V.IやC.I等のデザイン設計やPV等のブランディング支援を行っています。
クライアントの業種は多岐にわたりますが、主に3つの柱があります。大学・短大・専門学校・高校などの教育関係、マンションや戸建分譲などの不動産関係、保育園・幼稚園と企業をつなぐ子育て支援事業です。ほかにも人材会社や食品関係、農産水産関係、葬祭関係、行政関係など、多彩なお客様と仕事をさせていいただいています。

創業から27年続いているのは素晴らしいですね。御社の強みはどこにあるのでしょうか。

とにかく一つ一つの仕事を大事に丁寧にやっているところでしょうか。私が言うのもなんですが、みんな仕事に対して誠実で大真面目なんです。お客様に無理難題を言われると、たまには愚痴が出ることもありますが、それでもどうにかして要望に応えようとする。そんな姿勢があるからこそ、10年以上にわたってお付き合いが続いているお客様もたくさんいます。

広告の仕事をされていて、どんなところに面白さを感じますか。

2つあります。一つは、お客さんへのプレゼンテーションです。私たちが考え抜いた案を出すときは、ものすごくワクワクします。もう一つは、やはり結果が出ることです。私たちのプロモーションによって、「こんなに反響があったよ」とお客さんに喜んでもらえることがうれしいです。

特に印象に残っているエピソードがあれば、聞かせてください。

どの仕事にも思い入れがあるのですが、東京オフィスで出会ったお客様のことは強く印象に残っています。その企業には何度提案に行ってもなかなか受け入れてもらえず、ある日、言われたんです。「前年の2倍頑張って、どうにか前年並み。3倍やらないと右肩上がりにはならないんだよ」と。クリエイティブの提案なら、前年のものをリニューアルするくらいではダメ、ということですね。その言葉をずっと心に刻んでいて、社長という立場になってみると、前年レベルを保つことがいかに難しいか実感しています。2倍なら時間をかければできるかもしれないけれど、3倍となると仕組みを変えたり工夫したり、新たに人を巻き込んだりしなければできない。重要な気付きをお客様に与えていただき、私はまわりの人たちに恵まれてきたなと感謝しています。

人や企業をつなぐことで新しい市場を作っていく

会社の展望について教えてください。

弊社はこれまで紙の媒体をメインにしてきたのですが、時代の流れに伴って単価が落ち、一方でウェブや映像などの依頼が増えています。また、人や企業が直接つながりやすくなった分、広告代理店不要論も出てきています。そんな時代だからこそ、私たちは広告会社としての価値をしっかり持っておかなければいけないと気を引き締めているところです。
最近は、お客様の困りごとを丸ごと解決できればと考えています。例えば、「今年はパンフレットの予算が足りない」と言われれば、別のどの部分に予算をかけているのかをお聞きして、そちらのコストダウンの方法までご提案することもあります。また、私やスタッフのネットワークを生かして、人や企業をおつなぎすることも多くなりました。
従来の仕事のやり方では、どうしてもプレゼン方式で他社と仕事の取り合いになってしまいます。そうではなくて、人や企業をつなぎ合わせることで、新しい仕事や市場を生み出していきたい。積極的に仕掛けていくつもりです。

人や企業とのネットワークはどのように作っているのですか。

社長になってから、経営者の集まりに参加しています。しばらくは営業の延長みたいな気持ちがあったのですが、それではうまくいかないと気付きました。損得を抜きにして、まずは自分が人の役に立とうと一生懸命に動くことで、相手から信用されて頼りにしてもらえるようになってきました。そうすれば人と人をさらにつなぐことができるようになり、ご縁のありがたさを感じています。
私が社長に就任してから、創業精神は大切にしつつ、新たな言葉を掲げました。それは「Pay It Forward」、つまり恩送りですね。自分が何かしてもらった人にお返しをするだけでなく、こちらが先に人のお役に立つ、人から人へ幸せを渡すという精神をスタッフ全員で共有しています。

「素直さ」と「相手への興味」を大切にしてほしい

熊井さんは社長として、スタッフとどう接しているのでしょう。

一人ひとりの状況や思いをできるだけ把握するように心がけています。以前は週1回、全員でミーティングをしていましたが、それではみんなが報告するだけで時間がかかり終わってしまう。そこで今は週に1回、個別に面談をしています。仕事で困っていることがあればアドバイスをしたり、励ましたりしています。
一人ひとりと話すことで、結果だけでなくプロセスがよく見えるようになりました。もし会社の経営が厳しくなっても、プロセスを見ていれば、すぐに人を減らそうという発想にはなりません。しっかり一人ひとりを向き合うことで、その先にいらっしゃるお客様にも向き合っているつもりです。

一緒に働くスタッフにはどんなことを求めますか。

一番は、素直さです。誰にでも自分の好き嫌いや価値観があるけれど、いったんそれを外して、お客様の話や立場を素直に受け入れて社会を見渡してみることで、見えてくるものがいろいろあると思うからです。
それから、お客様のことをもっと知りたいと思う人が望ましいですね。相手に興味を持って質問したり調べたりすることで、お客さん自身すらまだ気付いていないような良いところを見つけて、引き出し、伝えていきたいと考えているからです。ないものねだりではなく、良いこと探しが弊社の基本なのです。

取材日:2019年1月29日 ライター:佐々木 恵美

株式会社千年市場

  • 代表者名:取締役社長 熊井啓人
  • 設立年月:1992年5月
  • 事業内容:総合広告代理業
  • 所在地:〒810-0022 福岡市中央区薬院4-3-5 セレス薬院ビル3F
  • 電話:092-533-8733
  • URL:https://www.sennenshijo.com/

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