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格好良くありたい。クリエイターである前に会社の顔である自覚を促す美学の重要性

東京
株式会社ディオメディア 代表取締役 小原 充 氏
制作部本部長 川人 憲治郎 氏
『ちおちゃんの通学路』(TVアニメ)、『艦隊これくしょん -艦これ-』(劇場版、TVシリーズ)など話題の作品を制作しているディオメディアは設立からまだ十数年の若い会社ながら、急成長している注目のアニメ制作プロダクションです。『会社は人』と語る代表、小原さんはアニメーター出身。現場を知るクリエイターが、何を思って会社を作ったのか。そして、アニメ制作という現場から、何を見ているのか。
思い描いた世界へと近づいていくディオメディアの軌跡を、代表取締役の小原さんと制作部本部長の川人さんに伺いました。

会社の軸になるディオメディアの美学

思い描いている会社の企業像は?

小原さん:「ワンマン企業」とは真逆の企業ですね。
なんでもトップダウンで決める企業には限界があると思っているんです。
会社にまつわる「お仕事」については、ボトムアップですべての物事を決められる企業が理想です。
上司に言われたのでこうしました。ではなく、こうすることが最善だと話し合って決めて、上司に掛け合うという形です。
自分たちで決めて、自分たちの決めたことを実行することのほうがよっぽど責任感を持って仕事ができる環境にあると思うんです。
命令はどこまでいっても命令じゃないですか、それを実行する子たちにはなんの責任感もなく仕事をされることのほうが恐怖です。

僕はこういったインタビューでも作品については、あまり語りません。
作品は現場のスタッフのものであって、僕のものではないと思っています。
作品のために頑張った人が、作品において脚光を浴びるべきだと。
それがプロとしての責任感につながると思ってます。

形にこだわってこそプロという美学とは?

小原さん:まず「プロのクリエーター」というのは、僕の中で「かっこいい」ものなんです。
だから「プロ」は例えば、服装一つにしても友人の結婚式にジャージで参加したり、仕事をパジャマでしているような人であってほしくない。という思いがあります。
高いか安いかが重要なのではなくその時の、そのシチュエーションに合わせて、自分なりの「こだわり」をもっていることが「かっこいい」につながると思っています。
どれだけ頑張って仕事したって、上下スウェットで24時間365日仕事してる人間になりたいか、という話です。
仕事についても、「仕事の仕方」にこだわりを持って欲しい。
それが僕のいう「形にこだわる」ということです。
制作も含めて、アニメーション制作にかかわる人間はすべて「プロのクリエーター」です。
なので、まずいい絵を描くということ、スケジュールにもこだわること、大人として、プロのクリエーターとして常に「かっこよく」あろうとする、努力のできる人間であってほしいという願いみたいなものです。
それが、プロという美学だと思います。

作りたかったのは『普通』の会社

会社設立時にはもうその美学はあったのですか?

小原さん:ちょっと生意気かもしれませんが、フリーのアニメーターだった時にも僕なりの美学はありました。
でもそれは「僕なりの美学」であって、あくまで考え方を伝えるための手段です。
さっき言ったこととちょっと矛盾するかもしれませんが、個人が個人なりの美学をもって仕事をすることが大事だと思っています。

会社を作る上で重要だった点はなんでしょう。

小原さん:一番重要だったのは「ゼロから人を育てて、その育てた人間と一緒にアニメを作りたい」ということでした。

僕はアニメーターなので、その僕が「人を育てる」というと絵のことがまずイメージされると思います。
でも本当にそれだけかなと。
制作会社には当たり前ですが、制作部があって、作画部があって、仕上げ、撮影がある会社もあります。
僕も若い時にいろいろな部署の人に様々なことを教わりました。
自分の作業の後にこれだけ大勢の方の作業があるんだということも学びました、自分の仕事だけしていればいいというわけではありませんでしたね。
そう考えたときにやっぱりトータルで制作を学ばなければ、人は育てられないと思いました。
人を育てるために、最初から制作プロダクションという形で考えていました。

そして実際に会社を設立したんですね。

小原さん:会社設立にあたり、いろいろ考えていたころ、当時作品に携わっていたアシスタントプロデューサーが会社を辞めて、起業したという話を聞きました。
彼とは仲が良かったので、会社の設立についての詳しい話を聞いたりしてました。
そういった交流の中で、一緒に会社をやることになりました。
それが「スタジオバルセロナ」です。
彼が制作を担当し、僕がクリエイティブ担当という形になりました。
人材は基本すべて新卒採用、教育はゼロからのスタートです。
彩色部に関しては、経験がなかったので他の会社に頭を下げて教えてもらったりしていました。

  その後、彼が体調を崩し業界を離れることになり、そのタイミングで一度会社的にリセットしようと考えました。
それでも僕についてきて来るというスタッフと一緒に新しく、会社を登記し、立ち上げました。
制作プロデューサーのいないところから再スタートしました。
それが「ディオメディア」です。

会社として生き残っていくために必要な仕事や人材

どのように人材や仕事を集めたのでしょうか

小原さん:当時知り合いのメーカープロデューサーに仕事の相談をしたところ、「小原さんがプロデューサーをやるなら」と条件付きで、お仕事の企画を持ってきてくれました。
プロデューサーなんてやったことのない僕に、「全部教えるから、一緒にやろう」と押してくれたことが、とても嬉しくて、有難かったです。
その作品が「侵略!イカ娘」でした。
同時期に「荒川アンダー ザ ブリッジ」では、以前所属していたシャフトの久保田社長からも同様にラインプロデューサーとして、参加させていただきました。
その時の経験を活かし「侵略!イカ娘」では本格的に制作部のセクションで働くことになっていきます。
ありがたいことにそこそこ当たって、その後、イカ娘のグッズを出さないかという話にもなりました。

ディオメディアはキャラクターグッズも展開していますよね。

小原さん:会社を設立するにあたって、「人を育てる」ということを基本に考えているものですから、当然、会社スタッフを正社員として雇用したかったんです。
なので、単純に当時は制作費だけでは、社員の福利厚生までは手が回らなかったんです。
アニメーション制作は支払いタイミングによっては、厳しい状況もあります。
色々模索していたころに、メーカーから『侵略!イカ娘』のグッズを作らないかと奨められました。
どうせやるならどこかに委託してやるのではなく、自分たちでイチから始めたいという思いになっていきました。
社員のアニメーターの中にグッズ制作に興味のある人間もいたので、その人間と本格的に話し合いを進めていきました。
当然彼はアニメーターなので、二足の草鞋を履くことになるわけです。
でも僕はやるなら本気でやらないと意味がない、今後も続けていきたいと思っているわけですから、彼と一緒に物販事業部を立ち上げ、彼にその部署を任せたいと思ったんです。
彼も、アニメーターとしての自分のスキルが商品デザインに活かせるということで前向きに考えてくれてディオメディア物販事業部ができました。

これが、アズメーカーという会社の前身です。

会社の要は人。人をゼロから育てるのが楽しい

教育や学びがディオメディアの強みということでしょうか

小原さん:僕自身もたくさんの人にいろんな事を教えてもらってきました。
成長というのとは少し違うかもしれませんが、変化をしていくためには人の影響や教育は重要です。
また、ディオメディアの強みにはジョブチェンジがあることも挙げられます。
制作会社では珍しく、先の物販事業部のことや、本人が希望すれば他部署へのチェンジに寛容です。
アニメーターが総務になったりすることも可能です。
ただそれはシステムの問題で、生え抜きを育てること自体が強みの本質だと思います。
それがチームワークの強さにつながっています。

クリエイターが働く上で大切にしていることは?

小原さん:商業アニメーションは一人では作れません。
リレーのような作業なんです。
例えば「アニメーターが原画を描く」というのはアニメーション制作においてはあくまで工程の一つです。
次のセクションの人の作業のためにバトンをつなげていく作業です。
各セクションの人間が自分の仕事に責任とプライドを持ってこなし、バトンを渡してくことで、各部署のクリエーター同士が高めあっていける環境が大事だと思います。

人を教育する会社を作ろうとしたということですが

小原さん:業界に入りたての新人の頃、僕が挨拶をしても、返してくれない人がいました。
当時僕はこの人がそういう人なんだと思っていました。 
もちろん個人作業の多い現場ですから、そういうシャイなひともいるのだろうと。
でも違ったんです。
業界全体の雰囲気としてそういった挨拶みたいな当たり前のことをきちんと教育する土台がなかった。
わざわざ教育するまでもない、常識だと思われるかもしれませんが、その当たり前がなかったんです。
僕が会社を作るときにはそういった常識の部分を大事にしたかった。
だって、挨拶なんてキャリアも、実力も関係ない、当たり前のことなんですから。
どれだけクリエイティブ面で素晴らしい業界になっても、そういう「当たり前」のことができない業界では悲しいじゃないですか。
それをするだけで、その面では業界で一番になれる、そう思ったんです。

ディオメディアが見ている未来のカタチ

企業の成長には人の教育が不可欠ということですが

小原さん:企業の成長にはいろいろな方法があると思いますが、ことアニメーションに関しては、多額の予算がほぼ全額人件費に費やされています。
それだけ多くの人が関わっている仕事です。
故に、個々の技術を向上させることが最も重要であり、映像のクオリティに直結することになります。
それが弊社の場合、企業の成長にとって一番重要なことであり、教育はイコールだと思ってます。    

デジタル作画などの将来についてどう考えていますか

川人さん:うちとしては推進してはやってはいません。全く入れていないわけではなく、直しなどはデジタルを活用していますが、一からタブレットで描いたりというようなことはしていません。
演出さんが対応できるのかということも考えて、まだいいのではないかと思います。セルからデジタルになった時もみなさんRETASを使うようになりましたが、その時のようにソフトがある程度業界で絞られてから、後乗りという形でもいいと思っています。

小原さん:デジタル化については、現在の専門学校や若いアニメーターを中心にデジタル化が進んでいて、この先近い将来完全にデジタル化すると思います。
でもデジタル化していくことでもっと大きな変化があると思うんです。
現状のデジタル作業は、従来の作業工程の中で作画作業をデジタルしている。ということですが、根本的な作業工程自体が変わってくると思うんです。
そういったアニメの作り方自体を変えるような試みであれば積極的に行っていきたいと思ってます。

10年後のディオメディアはどのようになっていると思いますか

小原さん:10年後のこととなると、さすがにこの業界は人の出入りや昨今は別業種への転職も多いので、一概には言えませんが、現在最前線でやっている人間がキャリアを積んでいますし、新人の子たちもメインスタッフで頑張れるようになっていると思います。
その子たちがきちんとそのまた下の世代の子たちを育て、さらにボトムアップしていける会社になっていたら、とても素敵だと思います。
その時には僕は社長じゃないかもしれませんけどね(笑)

取材日:取材日:2019年1月17日 ライター:久世薫

株式会社ディオメディア

  • 代表者名:代表取締役 小原充
  • 設立年月:2007年11月
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:アニメーションの企画・制作/キャラクター商品の企画・製作・販売
  • 所在地:〒177-0051 東京都練馬区関町北2-25-13
  • URL:http://www.diomedea.co.jp
  • お問い合わせ先:03-5927-5044
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