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STORY風雲会社伝

建築CGパースでの実績を強みに、VRで別世界と新しい経験を生み出すクリエイティブカンパニー

広島
株式会社ビーライズ 代表取締役 波多間 俊之 氏
VR業界がにぎわいを見せています。「VR元年」と呼ばれた2016年から2年が過ぎ、VR技術は当初注目されていたエンターテインメントのみならず、今では企業内研修から医療、介護の分野にまで拡大しています。またたく間に存在感を放ったVRはもはや、ものづくりにおける主力選手ともいえるでしょう。
さかのぼること3年前の2015年。まだ実例が少なかったビジネスシーンでのVR活用に、いち早く着目した企業があります。株式会社ビーライズ。顧客と共に手さぐりで、危険な足場作業を研修するVRソフトを開発したことで、同社は大きく前進します。「やりたいことを、その都度見つけて没頭することで、自然にビジネスチャンスと出会ってきた」と話す代表の波多間 俊之(はだま としゆき)さん。
新しい開発に取り組む時、必要となる目線とは?新プロジェクトに挑み続けるクリエイターの心がまえを、波多間さんにうかがいました。

東京ゲームショウ初出展

VRライドマシン用コンテンツを初披露

2018年に「東京ゲームショウ2018」に初出展されました。業界紙面を沸かせましたね。

ありがたいことに多くの反響をいただきました。
広島市立大学とは2017年から、VRの共同研究を進めてきました。その中でも広島市立大学が開発したVRライドマシン「Lumbus(ランバス)」はバランスボールと2本軸だけを融合させた簡易構造で揺動角度20度を実現しました。微妙な角度での揺れを最大限に体感できる新しいモーションプラットフォームです。

広島市立大学とは、どういったご縁で連携することになったのですか?

僕は広島市立大学の出身ではないのですが、過去の展示を通じて知り合った広島市立大学情報科学研究科の脇田 航(わきた わたる)先生とVRについてとても話が盛り上がりました。未来のVRや本来のあり方、こんなVRは面白いかなどについて意見が合うのです。

市立大のシステム「VR歩行装置」も東京ゲームショウでお披露目されました。

VR空間内での移動は実際の移動と違うので「VR酔いの原因」とも言われます。
そんな従来の問題点を改善し、歩行による重心の変化や大腿部の動きを計測してVR内での自然な歩行感覚を提示できるようにした新しいシステムです。

VR体感に欠かせない新型ヘッドマウントディスプレイも、初披露でしたね。

StarVR社は視野角の広いHMDを作っている企業で注目されていました。そのStarVR社と今夏、パートナーシップを結んだのです。そうした経緯から、東京ゲームショウのビーライズブースでStarVR社の新製品をお披露目しました。日本初ということもあり、多くの反響がありました。広島市立大学との共同研究の中身同様、まだ日本にないものですから。弊社にとって今年は「広島市立大初ベンチャーを立ち上げた」ことと「StarVR社とのパートナーシップ締結」が、大きな出来事でした。

鯉の滝登りのように、どんどん上って行く感じですね。

僕が最初に立ち上げたビーライズの社名にもそんな想いが入っています。
「Be rise」お客さまと一緒に上昇したいという気持ちですね。

やりたいことをその都度見つけて、ハマっては、突き進む

VR体感に欠かせない新型のヘッドマウントディスプレイ

VRコンテンツの開発者として独立されるまでの道のりを教えてください。

具体的に「あれがしたい」「これがしたい」というのがあって、人生を歩んできたわけじゃないんです。何がしたいかなんて、はっきり決めてはいなかった。「やりたいこと」をその都度、見つけてきて、没頭するものに出会えたという感じなんです。最初から「よしVRやるぞ」とか「これからはITだ」とか、そういう意気込みはなく、案外、行き当たりばったりです(笑)。 学生時代に初めてパソコンを触ったんです。「パソコンは面白い。これを仕事にしよう」と、卒業後はCG制作ができる企業に就職しました。

新卒で入社されたのは、どんな企業でしたか。

地元広島市の会社に就職しました。
そこでLightWave(3DCG制作のためのソフトウェア)を使って CG制作をしていました。14年間、勤務しました。

長く務められていたのですね。

はい。僕は自分が夢中になれるものを見つけたら、それをもうずーっと、やっていたいタイプです。だから「転職したい」と考えたこともなかったし、さらに「独立したい」なんて、思ってもいなかったです(笑)。

それなのになぜ、独立を?

それはもう、「やりたいこと」が見つかったからです。今、やっている仕事が、そうです。退職するときは「独立して、これをやろう」と決めて、退職しました。

「やりたいこと」を発見したきっかけは何だったのですか?

何気ない日常がきっかけです。2011年くらいだったかな、仕事仲間との雑談中に「波多間さん、こういうの面白いですよ」とスマホを見せられたんです。そこにあったのが360°のパノラマ画像でした。

転機は仕事仲間との何気ない会話から
スマートフォンで見た360°のパノラマ画像が 人生を変えた

スマートフォンの何に魅かれましたか?

スマホの「機能」ですね。スマホ機能を使えば、いろんなCGの表現が、ものすごく多彩になるということが分かったんです。それまでずっとCGを作ってきたから、好きではあるのですが。
CGって、制作段階では画面の中で3Dなんですよね。奥行きもあるし、角度も変えられる。でも、作ったものを出力する時、印刷物になる時、あるいはTVCMなどの映像になる時、結局2Dにしかならないわけですよ。
静止画も奥行き感は当然あるんですけど、それを反対側から見ることも当然できないし、ムービーになって「やっぱり向こう側から見てみたい」と思っても、見ることはできない。上から見たくとも見ることはできないじゃないですか。そこには「インタラクティブ性」というものが、ない。まぁその「インタラクティブ性」という特性は、実績を重ねながらのちのち気づいていくのですが。
スマホになって初めて360°のパノラマ画像を見たんですよね。スマホの中にはジャイロ(コンパス)と加速度センサーが入っていますから、360°のパノラマ画像を、上を見れば空が見えますし、下に向ければ地面が見えます。後ろを向ければ、後ろが見えます。それを初めて見たとき、現実じゃない、バーチャルな空間を、身体で感じたんです。
当時はまだVRという認識もなかった。だから「これが噂のVRか!」というような、ずっと探し続けたものに出会った感じはなく「こんなの見たことない!」っていう新鮮な驚きでした。同時にARも体験。カメラ画像越しにマーカーを認識すると、そこに何かが現れるというのをその時に初めて見ました。

スマホで新発見したことを、今までやっていた建築パースに取り入れようと?

取り入れようというより、どちらかというと「これ使ったら何か面白いことができるんじゃないかな」という想いですね。建築パースも好きでしたが、スマホの機能とは全く別のものなので。

「何か面白いことができるんじゃないかな」と、2012年11月に会社を設立されました。建築パースは実務で14年のキャリアをお持ちですが、VRに関しては初チャレンジ。それでもスタート時から、VRを主軸に?

はい。だから立ち上げてしばらくは、弊社の技術責任者となる林 健司(はやし けんじ)と一緒に情報を探りながら開発技術をマスターしました。ソフトはUnity。最近ではゲームエンジンとしてよく使用されていますね。

自ら営業を?

ひたすら足で動くしかないですよね。前職での経験から、つてもありましたし、何となくですが業界のこともわかってはいました。「広告代理店に行けば、仕事につながるだろう」と。その時点で提示できるサンプルを「見てください」と持って周ったんです。とにかくVR開発がしたかったので、営業することを苦労とは思わなかったし、嫌ではなかったです。

別の空間を想像すること 好きなことが 強みになった

そのハマる力、突進力はすごいですね。「建築パース」「デザイン」「VR」の他に、ハマってきたものは?

子どもの頃はテレビゲームばかり、やっていました。ゲームは好きでしたね。もうひとつ、歴史も好きでした。空間と時間軸のあいだに僕の好きな要素がつまっているのかもしれませんね。
映画も大好きでした。ハマる映画には、だいたいCGが使われていましたね。
なんかこう、別の空間を想像するのが、好きだったのかもしれないですね。
空間というか、空想というか。
僕にあるかどうかはわからないですが、空想力は大切ですね。
自分で何か空想して、目標に向かって何かやるということがないと。
誰かにやってもらうのが前提だとか、そういうことではないと思うので。

目標を持つことも、空想力のひとつだと?

そうですね。目標という意識ですら、ないですけど。

意識ですらないままに、着実に前に進んでいますよね。これまでで心に残ったプロジェクトは何ですか?

やっぱりVRが初めて仕事になった時。それはうれしかったですね。とにかくいろんな人に僕たちの技術を見てもらいたくて、広島産業会館で開催された「ひろしまIT総合展2015」に出展したんです。そのときはもう、プロジェクションマッピングからI padで動くアプリ、VRまで、ウチでできることを全部出しました。

出展後の反響は?

「こんなの見たことない」という驚きの声ですね。「VR元年」と呼ばれた2016年の1年前のことですから。当時はデバイスやヘッドマウントディスプレイも、製品版ができていなくて、開発者版をなんとか頑張っていち早く買い、それがアメリカから届くのを、身を乗り出しながら待っていました。県外からの来場者はほとんどいませんでしたが、逆に言うと広島の企業さんにはじっくりと、僕たちがやっていることを見てもらえました。そこで電気設備工事を主事業とする大手企業から声をかけていただいたんです。

その企業からオーダーをいただいたのは、どのようなシステムでしたか?

電気技術者の安全教育用VRシステムでした。
足場で作業をする電気技術者が、落下事故を疑似体験できる安全教育用のシステムです。

その開発にはやはり、空間知識が必要になりますね。

そうなんですよね。その企業さんも安全教育には苦労されていて。
広島市内に安全教育施設があるが「そこでできることは限られている」と相談を受けました。
実際に電気を浴びるわけにもいかないし、高いところから「お前落ちてみろ」なんて、できないじゃないですか。研修はマストだが、ただ研修を実施しても効果は出ないし、費用はかかるばかり。
そこで「バーチャルだったら、こんなことができるんじゃないか」と提案されたのです。
この安全教育用VRシステムをオーダーいただいたことで「なるほど。VRはこういうことにも使えるんだ」と、こちらも知ることができました。

VRは映像ではなく、経験です

株式会社ビーライズ

今後の展望について教えてください。

現在進行中でもありますが、全産業や一般の方も含めた分野で弊社のVR技術を展開できればと思っています。僕はVRって、テレビやビデオのような主張する「発信側」、それを見て受け止める「受信側」という定められた関係内では、おさまり切らないものだと思うんです。いわゆる映像の延長線上には存在しないものだと。VRには、技術者がつくった別世界に、一時的に利用者が行くことができ、その空間で日常とは違う経験ができるという特性がある。オーダーされる課題やシチュエーションごとに、技術者は多様な空間と経験をつくり出すことができるはずです。つくり出された「別世界」は良いことにも使えるが、悪いことにも使える。体験者に影響を与えられるインパクトの強いものなので、もっと世の中の役に立つことができるだろうなと、思っているんですね。

エンターテインメントでの活用がクローズアップされがちです。

そうなんですよね。ほんと、VRは単なる「映像」じゃないので。

そう考えると、ますます楽しくなりますね。さてこれから一緒に働く仲間には、どんなことを希望されますか。

進む方向性は同じであってほしいと願います。特に僕は「目標」を作らないタイプなので。

目標は持たなくていいんですか?  目標に向かって頑張るのが美徳のような風潮ではありますが。

目標がないと頑張れない、頑張らない人は、正直魅力的には感じません。
それよりも「ハマることは何か」「好きなことは何か」 を重視しますね。
何かに尖っていたら、それでいいです。中身が尖ってさえいれば。
ハマることができる人間は強いと思うんですよ。好きだったら自然と情報を集めて吸収するじゃないですか。そのインプットと蓄積された力を出すアウトプットのバランスは重要視します。 表面上の格好や性格などは全然気にしません。

そんなにニュートラルで大丈夫なんですか。

これがね、あんまり大丈夫じゃないんですが。

決めつけはしない。あくまでもニュートラルに。

クリエイターを目指している方へメッセージがあれば。

クリエイターは自分の好きなものを見つけたら、それに突き進んだ方がいいですね。
あまりニュースとか、いろんなものを見て、「これが流行っているから、これをやった方がこの先いいんじゃないか」とか、そういう情報に惑わされずに、自分が好きなものを突き詰めていった方が絶対いいです。
僕もいろんな新聞を読んだり、ニュースを見たりしますが、情報だけが大量に入り込んでくると、どうしても考えが一度ブレてしまうことがあるんですよ。「今から世の中こうなっていくんじゃないか」とか「この情報があるから、こっちへ行った方がいいんじゃないか」と迷ってしまう。だからニュースをあえて見ないようにすることもあります。
技術的な情報は別ですよ。今主流となっているソフトとか、言語とか。それはどんどん情報を集めるようにしています。
惑わされてはいけないのは自分が選択する職種に関してですね。「今から2Dのイラストレーターは食えなくなる」みたいな情報があったとしたら「ちょっとやめとこうか」と思っちゃうじゃないですか。そうではなく、ハマれるものを見つけてハマってみた方がいいです。

そこに戻りますね。一貫してますね。

ハマれるものを見つけた人は幸せです。ただ見つけられたとしても、世の中に必要とされてなければ仕事にならないですが。

世の中に必要とされているものをキャッチするのも、ご自身の勘ですか?

そこは勘とはちょっと違いますね。突き進んでいるといつか、何かに出会えるきっかけが生まれると思うんです。さきほどの展示会の話に戻りますが「こういうのやりたくて、人に見てもらいたい」と思って出展したら、訪れた人から仕事と同時に解決のヒントまでいただけた。突き進み続けると目立ちますから、何かしらの声がかかる。そんなものです。

純朴に、誠実に、素直に向き合えば、周りが一目置いてくれて声をかけてくれる?

そういうことです。僕自身は、目標という意識がない。だからハマれることを、これからも探していくだけです。

取材日:2018年11月1日 ライター:信永 真知子

株式会社ビーライズ

  • 代表者名:代表取締役 波多間 俊之
  • 設立年月:2012年11月
  • 資本金:400万円
  • 事業内容:VR・ARコンテンツ制作事業・イベント用インタラクティブコンテンツ制作事業・3DCGビジュアル制作事業・3DCGアニメーション制作事業・Webサイト制作事業・アプリケーション開発事業
  • 所在地:
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