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1万人のフェスを実現できるのは、「小さなしくじり」を積み重ねてきたから

東京
株式会社アフロ&コー CEO/パーティークリエイター アフロマンス氏
照りつける太陽の下、大量の泡にまみれながら踊る人々。「泡フェス」と題されたその光景は地上波のニュース番組などでも紹介され、大きな話題となりました。そのムーブメントの発案者であるアフロマンスさんは、「世の中に、もっとワクワクを。」という理念を追求する会社アフロ&コーのCEOとして、そして第一線のパーティークリエイターとして、誰も味わったことのない体験の場を提供し続けています。アフロマンスさんはどのようにして斬新なアイデアを生み出しているのでしょうか。そして、アフロ&コーという組織が目指す世界とは?

広告代理店時代に学んだ「体験」の重要性

アフロマンスさんは、どのような経験を通じて話題性のあるイベントを次々と作れるようになったのでしょうか?

形のあるものを作って人に見せることが、もともと好きだったんです。小学生の頃は、よくノートに漫画を描いて友だちに見せていました。高校時代は劇の脚本を書いたり、舞台の監督みたいなことをやったり。大学では建築学科に進みました。ただ建築って、形になるまでに長い時間がかかるんですよね。大学時代にDJを始めてからは、「面白いことを思いつけばすぐに実行できる」「お客さんの数や現場の反応といったリアルな反響をすぐに知れる」というイベントの魅力にはまっていきました。

DJとしての活動がパーティークリエイターの入り口だったのですね。

最初は中目黒の、キャパシティが30人くらいしかない店で回していました。来てくれるのは友だちだけで、30人も埋まるかどうかわからないという状態です。でも続けていくうちにお客さんが50人になり、100人になり、「もっと楽しいことができないか」を考えるようになって、クラブではない場所でもイベントを開くようになりました。それが「泡パ」(泡パーティー)につながっていったんです。実際に泡パをやってみると、数千人が集まるイベントになりました。

その頃には社会人になり、会社員として働いていたとうかがいました。

はい。広告会社で、プロモーション全般のプランナーとして働いていました。イベントやSNS、動画、マスと連動した企画など、たいていのジャンルを経験しましたね。大手飲料メーカーや食品メーカー、通信キャリアなどのクライアントを担当していました。そこで学んだのが「体験」の重要性だったんです。

詳しく教えてください。

なんだかんだ言っても、いまだにTVCMなどのマス広告は重要なんですよ。どんなに優れた商品やサービスでも、まずは知られないと意味がないので。とは言えテレビを見ない世代が増えているし、単に知ってもらうだけでは購買につながらないのも事実なので、みんな口コミが重要だと認識しているわけです。ただ、口コミというとSNSでのシェアが重要視されますが、それは全体のごく一部なんですよね。「再生数がすごく伸びているけど、巷ではほとんど誰も知らない動画」みたいな話になってしまう。実際のところはリアルな場で、「あのサービスはよかったよ」と言われて、データ化されない水面下の口コミが世の中で広まっていくことが大切です。それでは、みんなの中にどうやって口コミを広げていくのか。それを考えると、いちばん早いのは「体験」なんです。レストランの口コミにしても、行ってもいない友だちがSNSに「おいしそう」と投稿しているだけでは、なかなか足を運ぶまでにはならないじゃないですか。

確かに、「へぇ、おいしそうだね」で終わってしまいそうです。

実際に食べたという体験に基づいて「おいしかった」と言っている人がいるから、自分も行こうと思うんですよね。そうやって二次的な広がりを作っていくことが必要です。そうしたことをトータルに考え、大きなマーケティング戦略の中で誰がどんな役割を担うのかという方針を示していく仕事の方法を学びました。グラフィックデザイナーやCMプランナー、コピーライターといった個々のクリエイティブは、それぞれの専門家に任せてディレクションしていくという形です。当時の経験が今も生きていますね。

「世の中に四隅を作る」仕事

お話を聞いていると、当時のアフロマンスさんは仕事も趣味もかなり充実していたのではないかと思います。そんな状況の中で、独立へ踏み出したのはなぜですか?

「独立しよう」という意志がそこまで強かったわけではないんです。ただ、企画しているイベントの規模がどんどん大きくなっていって、自分の時間の使い方をどう振り分けるかという問題にもぶつかるようになりました。泡パなどの成功もあって、「これだけで食べていけるな」という感触を持てるようになったのも同時期です。とは言え、DJやイベントはあくまでも趣味であって、ずっとやり続けることではないとも考えていましたね。

どのような心境の変化があったのでしょう?

続けていくうちにいろいろな反応が寄せられるようになって、イベントに来たお客さんから「救われた」という声をもらうようになったんです。「家庭の事情が複雑で嫌になっていたけど、イベントに参加して救われました」、とか。意識していたわけではないんですが、自分の気づかないところでも価値をもたらしているんだと思うようになりました。そんな頃にテレビを見ていて、「いけす」の話題を目にしたんですよ。

「いけす」ですか?

いけすの中に魚を泳がせると、角の四隅の、水の流れが緩やかになっているところでサボる個体が出てくるらしいんですね。でも養殖業者としては、たくさん泳いで運動し、おいしい魚に育ってもらいたい。そこで四隅を丸くし、水の流れを一定にした人がいたそうです。すると、中の魚が全部死んでしまった。いけすの四隅って、必要ないもののように見えて、実はとても重要な場所なんですよ。音楽やエンターテインメント、イベントにも、そうした側面があるんじゃないかと思いました。僕がやっているのは「世の中に四隅を作る」仕事なんじゃないかと。それで自分のやっていることに意味を見出すことができて、これ一本で生きていこうという決意ができたんです。

1人ではなく、会社組織でやっていこうと考えた理由は?

これは学生の頃から思っていることなんですが、劇にしてもイベントにしても、1人では形にできないんですよね。だから僕はすぐに人を頼るんです。「こんなことを考えているんだけど、一緒にやらない?」と。1人でやれることには限界がありますよ。それぞれの人が役割を持って、協力していく組織が必要です。「こんなことをやりたい!」と提案する人も必要だし、「チームを作ろう」という人も必要だし、「じゃあ俺は必要なお金を集めるよ」という人も必要だし、「現場のみんなをまとめるよ」という人も必要だし……。そうやってチームができていくわけですよね。僕の場合は、「言い出しっぺ」の役割を担っている。それをサポートしてくれる人たちに集まってもらっているという感じです。

現在の会社のみなさんは、アフロマンスさんにはできないことを担っているということですね。

まさに。僕よりも現場を仕切れる人もいれば、細かい調整ができる人もいる。そうしたことを担ってくれる人がいるおかげで成り立っています。僕はその代わりに、この会社が向かっていく方向を明確にして発信し続けなければいけないと思っています。

「しくじりCEO」は懲りない人たちばかり

最初からイベントに多くの人が集まっていたわけではないとのことでしたが、現在のように多方面へ事業が広がるようになるまで続けてこられたのは、どうしてだと思いますか?

僕の場合は、感覚として「ちょっと鈍い」ところがあるのかもしれません(笑)。もちろんいつも真剣に考えてやっているんですけど、何か問題が起きても、ポジティブに考えて次に生かせるというか。

楽観的、ということでしょうか?

楽観的なのか悲観的なのかという線引きは難しいですね。僕は企画を考えるときに、最終的には勢いで決めるんですが、その過程ではとてもこまかく考えるんです。「これで本当に楽しんでもらえるのか」「うまくいくのか」と。石橋を叩いて渡るように、慎重に考え抜きます。その上で、全力でやった後の失敗はしょうがない部分もあるので、そこはもう楽観的にとらえるという感じです。全力で準備をして、当日に雨に見舞われたとしても、それはもうしょうがないですから。

失敗をきっかけに「もうやめよう」と思うことはありませんでしたか?

ありませんでした。懲りないんですよ(笑)。失敗を失敗ととらえるかどうかもその人次第だと思っています。前に一度、「しくじりCEO」というイベントに呼ばれたことがあるんです。スタートアップの社長が集まり、経営者としてのしくじりをプレゼンするイベントです。その中で他社の方とも一致したのが「しくじりと失敗は違うよね」ということで。

しくじりと失敗は違う?

人間は、絶対にしくじる生き物なんですよ。そしてしくじりとは、挑戦の裏返しでもあります。自分が絶対にできることをやっている限りはしくじらないはずですよね。身の丈を超えることをやろうとするから、しくじりが発生するわけです。これは本来ポジティブな出来事で、しくじったときに「これは失敗だ」と思うか、「次につながる糧だ」と思えるかが分かれ目になるように思います。他のしくじりCEOも懲りない人たちばかりでした。「今回は大赤字だったけど、この経験は次につながるな」と考えているんです。

そうやって再び挑戦へと向かっていくわけですね。

はい。適切なしくじりを、段階を経て経験していくことも大切ですよね。若い人と話していると、みんないきなり「大きなこと」をやろうとしている気がします。いきなり「1万人のフェスを開きたい」とか。そのために1億円の借金をして、失敗して9,000万円の負債を抱えてしまうと、下手をするとその人は再起不能になってしまうかもしれません。今、数億円の事業をやっている人だって、そこに至るまでには小さなしくじりをたくさん経験しているんですよ。僕もそうです。数百人規模のイベントをやって、30万円の赤字を自分の貯金から払っていた時期がありました。そうやって、適切なタイミングで適切なしくじりを重ねていくことが、良いステップアップにつながるんじゃないかな。でも大きなイベントをやっている人や事業を見ると、その瞬間しか見えないんですよね。「スティーブ・ジョブズはすごい」と思うかもしれないけど、突如として大企業のアップルが生まれたわけではなくて、ガレージみたいなところから始まっているわけですから。その間にジョブズは、人に裏切られたり、会社を追放されたりしている。そんな過程があってこそ、人としても組織としても大きくなれたんだと思います。

アイデアを人に伝え、小さくてもいいからやってみる

アフロマンスさんのように自分のやりたいことと正面から向き合い、小さなしくじりを恐れずに挑戦していきたいとは思うものの、つい目の前の仕事や数字に追われてしまうという人も多いのではないでしょうか。

数字って、わかりやすいんですよ。今回のようなインタビュー記事を作るときもそうだと思います。自分が興味を持っている人に話を聞きにいきたいと考えるけど、「それがちゃんとPVにつながるのだろうか」と考えてしまう。そんなことって、世の中にたくさんありますよね。でも、見えない部分も大切だと思うんです。口コミもそう。「ツイッターを検索しても口コミが見つからなかった」のではなく、本当はツイッターをやっていない人たちの間で口コミが広がっているのかもしれない。表には出てこないけど、熱量を持っているものというのは確実に存在します。それは定量ではなく定性の部分。自分の感性やフィーリングを鍛えて、気づけるようにしないといけません。

そうした感性やフィーリングを身につけるには、何が必要なのでしょうか?

そうですね……。これは先ほどの「しくじり」の話と共通しますが、いきなり面白クリエイターが一瞬で誕生することはないと思っています。大人気YouTuberだって、いちばん最初に投稿している動画は案外面白くなかったりすることもありますよね(笑)。試行錯誤の結果としてたどり着くものなんじゃないかな。もちろん、発想法と呼ばれているものは世の中にたくさんあります。異なるアイデアをつなぎ合わせてみるとか。でもそうしたものは、たいてい結果論なんです。すでに世の中に存在しているものを見て、やり方論を話しているに過ぎないんですね。例えば体を鍛えたいと思ったときに、「こんなものを食べたほうがいい」「こんなトレーニングをしたほうがいい」といった情報はたくさん手に入ります。でも結局、マッチョになるためには何が必要かというと、毎日トレーニングを続けることですよね。アイデアマンになるために必要なこともそれと同じで、自分を鍛え続けるしかないと思います。

「いきなりは難しい」ということは承知の上で、自分を鍛えるための有効なトレーニング法があればぜひ教えてほしいです。

強いて言うなら「人と話すこと」ではないでしょうか。考えついたアイデアを話してみて、面白そうだと思ってもらえるかどうか。人に話して伝えられないことはプレスリリースにもまとめられません。話して伝わらないものは、ツイートしても伝わらないですよ。人に話すことで、協力者もどんどん生まれてくるんですよね。「そのアイデア、手伝わせてよ」と言ってもらえたり、「面白い人がいるよ」と紹介してもらったり。

自然とフォロワーが増えていくわけですね。

はい。その上で、「小さくてもいいからまずはやってみる」ということが大事なんだと思います。やれる範囲でいいから始めてみる。そうするとフィードバックが得られます。1万人じゃなくても、500人でも、めちゃくちゃ面白いフェスができるかもしれない。でもやってみないことには何も分かりません。行動しなければ、「1万人集めるフェスを10年考え続けたけど、結局何もしなかった」ということになってしまいかねません。だからまずは行動して、ときにはしくじりもちゃんと経験して、人の反応を探っていくということがいちばん大切だと思います。

アフロマンスを100人作る

ありがとうございます。今後、アフロ&コーの組織はどんどん大きくなっていくと思いますが、どんな人と一緒に働きたいと考えていますか?

これまでは社名の通り、僕のフォロワーになってくれた人たちが集まる会社として組織を作ってきました。今後は逆に「僕にダメ出しをしてくれる人」がほしいです。例えばSNSに「こんなことをやろうと思います!」と書くと、「素晴らしい」「さすが」みたいなコメントがたくさん来ます。でもたまに、僕がやろうとしていることに、フラットな目で見て水を差してくれる人もいるんですよ。そんな風に、違った視点から「適切なクソリプ」を出してくれる人って本当に貴重な存在なんです。そんな人がうちの会社にジョインしてくれると、もっと加速していけるような気がしますね。

※ facebookやTwitterなどのリプライにおいて、「つまらないツイートを相手に送りつけること」。

共感してくれる人が集まるだけでなく、冷静に提案してくれる人も欠かせないということですね。

はい。適切な、愛のあるクソリプを出してくれる人は、何かを提案してくれているということですよね。僕と全然違う分野に特化していて、互いに「この人はすごいな」と思えるような誰かにジョインしてもらえたらいいな……。数字にめちゃくちゃ強い人とか、マーケティングに精通している人とか。僕がやっていることを科学的に分析してくれると、ものすごく大きな力になると思います。

会社としては今後、どのような展望を描いていますか?

「新しい体験を提供していく」というベースは変わりません。ただその方法は、より多様化していくと思います。最近ではイベントだけでなく、「場所や空間そのもの」をプロデュースする活動も始めています。「365日イベントを続けるには?」「日本全国どこでも再現性を持たせられるようにするには?」といった、これまでにない視点を入れることにも力を入れています。

あとは、「クリエイターを育てる」ことにも力を注ぎたいですね。「パーティークリエイター」を育成する「パーティーアカデミー」を本格的に稼働させたいと考えています。簡単に言うとアフロマンスを100人作るという取り組みですね。そんな状態になれば、今よりも絶対に面白い場所が増えていくじゃないですか。そのためにノウハウを出していけば、僕自身も今よりさらに楽しめると思っています。一つの会社にこだわっていく必要はないかもしれないし、これまでのやり方に縛られる必要もありません。

これは、市場そのものを広げていくことにもつながると思います。泡パでは、これまでクラブには足を運ばなかった人たちを呼び込むことができました。世の中全体に、そんな変化を生み出していけたらいいな、と思っています。

取材日:2018年9月11日 ライター:多田慎介

株式会社アフロ&コー

  • 代表者名:CEO アフロマンス
  • 設立年月:2014年6月
  • 資本金:1,000,000円
  • 事業内容:1.イベントの企画、実施 2.人材のマネージメント、派遣業 3.グラフィックデザインの製作 4.広告、宣伝に関する企画並びに制作 5.WEB、アプリ等の企画並びに制作 6.アパレル製品の企画、制作、販売 7.飲食業 8.映像の企画、制作 9.出版業 10.講演の企画、運営
  • 所在地:〒150−0036 東京都渋谷区南平台町15-1 ライオンズマンション南平台1107
  • URL:http://afroand.co/
  • 問い合わせ先:上記コーポレートサイト内「CONTACT」より
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