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マーケティングとクリエイティブの両輪が生み出すデザインで企業の戦略設計に挑む

大阪
株式会社シンキオン・クリエイティブ 代表取締役 川崎 淳 氏
「根拠のないデザインはデザインではない」。株式会社シンキオン・クリエイティブは「デザインの力」にこだわってWebサイトの企画・制作や導入のコンサルティングなどを手がけています。グラフィック的な見た目だけではなく、顧客の戦略設計までを含めてデザインと捉えているのが特徴で、代表取締役の川崎淳さんは「マーケティングとクリエイティブの両輪で走っています」と強調します。「気持ちのいい空間で楽しい体験をして欲しい」という思いで飛び込んだカフェ運営の世界からWeb業界に転身した川崎代表に会社設立までの経緯や、社員のプライベートの充実を考慮した人材育成方法などについて、お話をうかがいました。

イベント運営で味わった充実感が転機

大阪の活性化の起爆剤として期待され2013年に開業した複合商業施設「グランフロント大阪」にオフィスを置かれていますが、ご出身は関西ですか?

1980年に徳島県で生まれて父の仕事の関係で埼玉、長野で暮らした後、5歳から大学に合格するまで京都市の太秦で生活していました。小学校からサッカーをやっており、中学時代は京都府の選抜チームメンバーにも選ばれました。将来の夢はJリーガーでしたが、高校2年のときに限界を感じてやめてしまいました。それから縁があって知り合ったバーテンダーさんの紳士的な姿勢に感動してサービス業に関心を持つようになりましたが、漠然とした憧れのようなもので、大学は、面白そうな学生が集まっているような印象があった慶應義塾大学文学部に進学しました。

どのような大学生活だったのですか?

高校まではサッカーばかりをしていたので、そんなに本を読んでいませんでした。でも大学では周りから「あの作家の表現はいいよね」といった会話が耳に入ってくるのです。それに刺激されて芸術的なものに興味を持つようになり、陶芸サークルに入りました。3年の春になると就職活動を始める友人もいましたが、「やりたいことが見つかっていないのに無理に仕事を決めるのは、ちょっと違うな」という気持ちがあって何もしませんでした。そのまま4年になって転機が訪れたのです。

どのような転機だったのですか?

都内の大学生が企画したアート系のイベントに陶芸作品を出展して欲しいと依頼されたことがきっかけで、自分がイベントを運営する側になったのです。アーティストと来場者の垣根を取り払って食事やお酒を楽しみながら交流を深めてもらう室内型のアートイベントというコンセプトで、チラシやホームページを制作して集客などを担当しました。それまでに経験をしたことがない充実感を覚えて、自分がやりたかったことに気づいたのです。高校生のころにバーテンダーに憧れた思い出とも重なり、お客さんに喜んでいただけるサービス業への関心が高まりました。そんなときに「京都にオープンするカフェを手伝わないか」というお話をいただき、卒業後、お世話になることにしました。

理想とは違った現実

カフェは上手くいったのですか?

卒業して京都に帰って、約1年は地元の有名店で修業をしてから、店のオープンと同時に参加して2年くらいで店長になりました。本来はクリエイティブな人々にが集まる楽しい空間をプロデュースしたかったのに、実際は、客単価の計算など頭の中は数字ばかり……。「これは違うな」と感じるようになっていました、ある日、チラシを作るためにプリントサービスの店に行って刷り上がるのを待っていたらデザイン学校の冊子が目にとまりました。「28歳でデザイナーになれました」といった修了生の体験談が掲載されていたので、翌日には大阪にある、その学校に願書を出しに行きました。クリエイティブに関係する仕事につきたかったのです。

思い切りが速いですね。

26歳でしたからね。年齢的にギリギリだと思いました。最長で2年制でしたが、最短の半年間土曜日曜に通うコースを選びました。カフェも店長だったので、すぐに辞めるわけにはいきませんでしたから働きながらの勉強です。それにグラフィックデザインよりもWebデザインだと思ったので、京都でWeb制作者養成教室にも通いました。好きな受講日を選べるシステムだったので、すき間時間を利用したのです。自分はサッカーで小学校ではキャプテン、中学高校では副キャプテンをつとめ、カフェの店長経験もあったので、Web制作会社でもデザイナーではなく、ディレクターを希望し転職のときは4社を受けましたが、そのうち大阪にあった1社だけが未経験でも採用してくれました。

無職の危機

ついに、Web業界へデビューですね。

はい。その後、入社から半年で30サイトほどの制作に関わったのですが、会社の業績が急激に落ち、クリエイティブにこだわりがあった私の思いとは方向性が違うこともあって、カフェを辞めて転職活動をしたときに不採用になった1社に足を運びました。それが当社の母体となる「シンキオン」でした。代表がパリでファッションとアートを学び、パリコレに参加するような会社で働いた経歴を持ち、デザインなどのクリエイティブへのこだわりの強さを感じていたのです。前は「経験がない」ということで入れなかったのですが、「経験を積んできました」とアピールして入社がかないました。それが2007年です。本社は大阪にあったのですが、京都にある通販会社に常駐することになりました。

それがシンキオン・クリエイティブの設立につながるわけですね。

そうなんですが、それは簡単なことではありませんでした。2年くらいして、その通販会社で私たちが請け負っていた仕事が他社の参入で激減して撤退を余儀なくされる状況になったのです。それが2009年2月ごろ。私がいた部署の仕事がなくって先輩スタッフも会社を去って、会社に居づらいくらいに追い込まれました無職ではまずいと思い。それまで下請けだった通販会社の仕事を引き受けられるようにお願いしました。先方も慣れている私が関わり続けるほうが安心できたこともあって交渉は成立。そのとき、もう他のスタッフはいませんでしたから、それまでは平社員だった私がリーダーになって、もともと一緒に働いていた派遣スタッフ達を呼び戻して仕事を再開し、会社の業績回復にも貢献できました。一方で、いつも納期に追われていて残業が当たり前といったWeb業界にありがちな働き方を変えたいという気持ちが募っていました。それを実現するためには自分がトップに立つ必要があると考えるようになっていましたし、もともと誰かに指示をされて動くより自分で考えて意思決定をしたいタイプです。学生時代から起業は意識していましたので、2011年に当初はシンキオンの専属制作会社としてシンキオン・クリエイティブを設立しました。

ご自身がトップになって心がけたことは?

新しい働き方を模索したいという思いを実現するため現場のスタッフが自分たちで考えて、働きやすさや、やりやすさを追求できる環境づくりです。つまりトップダウンではなくボトムアップの会社にするということです。ですから当初、採用も判断能力の高さを重視して「スキルより人柄」を重視しました。未経験でも、ちゃんと努力できる人間性が判断基準です。ただ、それはボトムアップとは相反する部分があって経験値の低いスタッフと仕事をするのは大変でした。でも私自身、従来の働き方を変えようという思いがあって、現場で仕事をしながら習熟していくOJTだけでなく経験者と新人を2人1組の“にこいち”にして新人がわからないことを相談する相手を明確にしています。

「DESIGN」と「design」を区別

“にこいち”について、もう少し詳しく聞かせてください。

2人1組にして先輩が後輩の仕事の習熟度を的確に把握できると、不足している能力が見えやすですよね。そうしてスキルなどの修正・上達のプロセスを効率的にしようという狙いです。さらに先輩が必要なときに隣りで質問に答えたりフォローしたりできるので、新人に少々難易度の高い仕事も任せられ、先輩側に仕事が集中することも避けられます。そのほかにも、主力メンバーとのミーティングでスタッフそれぞれの能力の度合いや課題などを常に把握して、そのときどきの適材適所で無駄な仕事の進め方をなくそうとしています。そうすることで残業を減らせばプライベートの充実にもつながります。社外でのプライベートな交流は視野を広げることにつながって仕事の面でプラスにもなると考えています。

会社の強みや特徴は?

「デザインの力」へのこだわりですね。当社では、デザインを小文字の「design」と大文字の「DESIGN」とを区別しています。前者は見た目にきれいな絵づくりをする作業で、後者はクライアントの課題を掘り起こして解決策まで考えるコンサルティングまでを含めています。我々はDESIGNの提供を通じて単なるWeb制作だけでなく経営戦略の立案にまで関わりたいと考えています。私は「クライアントの経営に近いところでデザインをする」と宣言していまして、デザインの付加価値を高めるのがマーケティングだと思っています。マーケティングとクリエイティブの両輪で走っているのが当社なのです。「根拠のないデザインはデザインではない」と考えており、マーケティングに必要な定量的なデータをもとにして必要と判断すれば、Web制作だけではなく商品企画などの提案もしています。それが「DESIGN」なのです。

課題はありますか?

2つあります。ひとつは社員の考える力の育成です。採用は「スキルより人柄」だと申し上げましたが、現在は即戦力の経験値の高い人材も求めています。今期で設立から7期目に入ってクライアントから求められるレベルも高くなり、マニュアル通りでは対応できない局面が増えています。ですから、これまで以上に未経験の新人にも、経験値の高いスタッフにも、自分で考える力をつけてもらうことが必要になっています。見積もりをするにしても、マニュアル通りではなくクライアントの現状や将来の動向までも見すえて柔軟に算出して欲しいですし、制作過程では単なる進行管理ではなく、状況に応じた柔軟な変更もできるディレクションをして欲しい。そんな能力の育成方法を常に試行錯誤しています。

もうひとつは、目に見えるデザインの裏側ともいえるサーバーサイドなどのシステム系の強化です。たとえば、ファッションショーへの来場者の動きや志向などをスマホのアプリを通じて分析し情報を提供できるようなサービスも考えています。リアルな人間の動きと、デジタルの世界をつなげる方法を広げたいのです。そのためにデータをどのように処理するのかというシステム系の能力が必須になってきますし、先に申し上げた「経営に近いところでデザインする」という方向性をさらに前面に押し出すためにはそれが不可欠なのです。

取材日:2018年5月10日 ライター:岡崎秀俊

株式会社シンキオン・クリエイティブ

  • 代表者名:代表取締役 川崎淳(かわさき じゅん)
  • 設立年月:2011年7月
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:Web企画制作・運営、ホームページ導入コンサルティング、ブランディングなど
  • 所在地:クリエイティブオフィス)〒 530-0011 大阪市北区大深町3番1号 グランフロント大阪ナレッジキャピタル7階 K701
        東京オフィス)〒 150-0021 東京都渋谷区恵比寿西2-20-8 パーフェクトルーム212
  • URL:http://www.sinkyone.com/
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