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商社勤務から、ICTの分野へ。経営者として目指すのは「かけがえのない存在」

金沢
株式会社ユニークポジション 代表取締役 本造 雅美氏
“女性が活躍する社会”の実現が日本の大きな課題として掲げられる昨今、ICTの分野で活躍する女性経営者の数も増しています。地元の商社で設計や情報化の業務に携わっていた本造雅美(ほんぞうまさみ)さんはその後、IT業界へ転職後、転職先が事業転換したことから、事業をそのまま譲り受ける形で起業しました。予期していなかったタイミングで新たなスタートを切った本造さんでしたが、経営者としてどのようなロードマップを描いているのでしょうか。

親会社の組織再編で、独立、起業

株式会社ユニークポジションの提供するサービスとその特徴を教えてください。

システム開発、Webサイト制作、Webサイト及びオンラインショップ運営のコンサルティング、スマートフォンアプリ開発のほか、パソコンやサーバー、周辺機器の販売を行っています。Webサイト制作については、お客様の「使いやすさ」や使い始めてからの「保守」に重きをおいた制作を心がけています。システム開発に関しては、会員管理システムやPOSレジのシステム、バーコードやQRコードを利用したイベント受付システム、資産管理システムなどを開発しています。

どのようなきっかけで起業したのですか。

会社を設立したのは、2016年3月です。36歳の時に、システム開発、HP制作、PC販売などの事業を展開する企業に転職しました。10年勤務し、IT業界での実務や経営管理などをひと通り経験することができたと思っていた頃、組織再編があり、いくつかのグループ会社の体制を見直すことになり、社長から事業と顧客をそのまま譲るので独立しないかと提案されました。

起業のチャンスが突然訪れたのですね。

もともと起業の意志はありましたし、それまで自分自身が従事してきた事業とお客様をすべて引き継いで、自分が社長となって会社を運営できる、願ってもいないチャンスでしたので、申し出を受け入れました。社員2名を引き続き雇用し、計3名で株式会社ユニークポジションを設立しました。

ユニークポジションという社名の由来について教えてください。

「自分たちらしさ」、「自分たちの姿勢」を表現する言葉ですが、私自身の個性は出過ぎないようにと考えて名付けました。「ユニーク」という言葉は、同じものがない、単一という意味で、ITの世界でも、ユニークコードやユニークキーなど「他に同じものがない」という意味で使ったりすることもあり、「かけがえのない存在」になっていきたいという想いを込めました。そして、頭文字を取ると「UP」となって縁起も良いので「ユニークポジション」と決めました。

大学院から地元の総合商社へ

ICT分野で仕事をしようとずっと思っていたのですか。

全く考えてもいませんでした。石川県小松市の出身で、地元の高校を卒業後、福井大学工学部建築学科に入学しました。通学できる国立大学を探すと、理系で志望するならば福井大学の建築学科か金沢大学の薬学部という二つに限られました。薬学部には引かれず、消去法で建築学科を志望しました。製図というものに馴染めず、おまけに就職活動にも失敗。誰かが「大学院に行けば2年後にもう一度就職活動ができる」と言ったのを聞いて、「あ!なるほど」と思い大学院を受験、なんとか試験にパスして大学院へ進みました。

大学院修了時の就職活動は上手くいったのでしょうか?

修了時は建築音響の分野で就職活動をしましたが、特殊な業態でかなりの狭き門でしたのでうまくいかなかった時に就職活動担当の先生から、ある会社とアポイントを取ったから訪問するようにと言われました。初めは全く興味がなく、当日そのまま無断欠席してしまおうと思っていたくらいでした。しかし、来年以降その会社に入社したい後輩の道を閉ざしてしまうことがあってはいけないと思い、気持ちを切り替えて面談にだけは行くことにしました。会社は情報システム関連、エネルギー関連など多角的に事業を展開する県内でも有数の総合商社。面接と意識しないまま、面談を重ねていくうちに「次は社長面接です」と言われ、結局、社長面接もパスして入社が決まりました。

PCに関わる案件が集約されるように

入社後どのような仕事を担当しましたか。

入社してからは、図面をたくさん見たほうがよいということで建設系の部署の積算課に配属され、図面から工事に必要なコストを算出していく仕事を半年ほど経験しました。その後、設計をやりたいという希望が通り、設計課に移って、学生時代には馴染めなかった製図の仕事に就きます。実際に実現可能かどうかの計算や調査をしながら、図面を作成していくことは意外にも楽しかったです。学生時代に建築を学んでいたおかげで、3次元と2次元の空間を変換する感覚は身についていたので、仕事にはスムーズに入っていけたと思います。手書きで図面を描いていましたが、4年ほどたった1990年代後半にはWindowsとともにCADソフトが普及してきて、CADソフトへの移行を余儀なくされました。

現在の業種に近づいていくのですね。

会社では、設計課が初めにCADを習得し、図面を描く必要がある現場の人に教えていくという方針になりました。その頃から、仕事がよりPCにシフトしていくようになります。思えば、自宅で母は昔からワープロを打っていましたし、父はゲームなどをしていたので、早くからパソコンが家にありました。母がブラインドタッチをするのに感化されて、中学生のころから私も触っていましたので、PCは私にとって身近なもので取っ掛かりやすく、仕事で導入されても難なく使えるようになりました。「パソコンでわからないことは本造に聞けばなんとかなる」と部内で言われるようになり、PCに関わる案件が自分に集約されるようになっていきます。

PCがさまざまな分野で世の中に広まった時期ですね。

そのうち建設系の部署内にIT推進を専門とする部門を設立することになり、設計から異動することになりました。例えばソフトを使用した見積作成、電子受発注や情報の共有化など、ITを活用して部内の事業の効率化を図っていくことが会社の強みになると判断されたからということでした。部署に配属されたのは私一人。必要だと提案する案件や部内からの要望をまとめて自分で企画立案し、良いと思うものは上司の決裁をもらい、どんどん進めていきました。

1人部署でIT推進を担当、1人で順調に対応していると部下が入ってこず……

活躍されていらしたのに転職を考えるきっかけになったのは?

退社する2005年まで、1人だけの部署で部内約70名の社員、100台のPCを1人で管理していました。1人で順調に対応していると自分の部署にはいつまでも部下が入ってこないことに気づきます。「このままずっと勤め上げるのか?」と疑問に思い、自分の将来を考え、転職を決意しました。ただ、1級建築士の資格取得を目指し、資格を取るまでは会社を辞めないと決めました。結果、4年かかりましたが、資格を取った翌年に退社しました。

転職するには大きな決断も必要だったのでは?

当時は女性が管理職に就くこともまれでしたので、そこで残りの20年の人生も同じことをやっているのかなと疑問に思いました。それまでは、社内向けの仕事が多く、直接お客様の要望を聞いて、役に立つものを提供することができるのではないかと考え、転職の道を選びました。

建築とITどちらの道を選択していくのですか

建築業界とIT業界を比べた時に、より長い歴史がある建築の分野はある程度成熟してしまっているのに対し、IT業界は急成長の真っ只中でした。先に乗るならばITで、建築は後で乗りかえがきくと判断しました。即独立するということも考えましたが、お客様もいない状態で、いきなり営業・制作・デザインすべてを自分で担当することは現実的ではなかったので、修行だと思い就職活動を行いました。

起業を志すようになったのはいつ頃でしたか。

最初に就職した会社で建設系の部署にいた時に、会社の利益の使い道を決める人間になりたいと思うようになったのがきっかけです。事業に投資するのか、株主や社員に還元するのか、留保するのか、地域に貢献していくのか。自分が正しいと信じる方向に、使い道を決められる立場に立ちたい、それには社長になる必要があると考えました。在籍していた会社は、大きな企業で、福利厚生も含め社員に手厚い会社でしたが、だからこそ、末端にいては企業活動を実感することができず、自分が社長にならなければ、自分が正しいと思うことを自分で決断できない、とも思えたのかもしれません。

「ここで働けてよかった」と思ってもらえる会社に

会社として大切にされていることはありますか?

社員が幸せであること、例えば社員が自分の会社について周りの人に話をする時に「うちの会社はいいよ」とか、仕事を探している人に対して「うちにおいでよ」と言ってもらえるような会社でありたいと思っています。社員が満足だと思えるということは、それに関わるお客様や取引先との関係性が円満であるからこそだと思うので、漠然とした指標ですが社員に「ここで働けてよかったよね」と思ってもらえる会社づくりを心がけるようにしています。

社員にはどのようなことを求めていますか?

嘘はつかないこと、自分本意でなくお客様に望まれるものをつくっていくことを心がけてほしいと思います。お客様がどんなものを求めているのかを、理解する姿勢を常に忘れず、製作側の都合をお客様に押し付けないよう、仕事をしてほしいと思っています。

女性経営者として意識されていることはありますか?

「女性であるから」ということはそこまで意識していません。ただ、将来は石川県のIT業界で成功している女性経営者として紹介されるような立場になりたいと思っています。もちろん今の規模では話になりませんが、もっと発言権を持って、活躍できる可能性を持った女性たちを引っ張り上げられるよう刺激を与えていきたいです。

今後の事業の展望について教えてください。

美術館関係とのつながりが強く、その方面で何かしらお役に立てることを探していければと考えています。AIやIoTが今後加速して進歩、普及するといわれますが、技術革新の追求よりも、人が触れる画面や端末などのインターフェイスの分野に的を絞り、使いやすいソフトを提供できるようしたいと考えています。仕組みはベーシックでも、利用する人にやさしいものをつくり続けていきたいです。

※ IoT Internet of Thingsの略で、家電や車など身の周りのあらゆるモノがインターネットにつながり、相互に制御していく仕組みのこと。

最後に、起業を目指している人たちにメッセージをいただけますか?

社長の決定はすなわち会社の決定になります。つまり社長は絶えず自分で決断していく立場にあるので、自分で決めることを躊躇すれば、逃してしまうチャンスも多いと思います。他人の助言に耳を傾けることも必要ですが、助言に乗るのを決めるのも自分自身だということをしっかり認識しておくことが大切です。自分がした決断ならば、後悔でなく反省できると思います。誰に聞いても答えは出してくれません。「自分で決めること」それが社長にしかできない会社での一番の仕事であると思います。

取材日:2018年3月14日 ライター:桑原 太郎

株式会社ユニークポジション

  • 代表者名:代表取締役 本造 雅美
  • 設立年月:2016年3月
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:システム開発、Webサイト制作、Webサイト及びオンラインショップの運営のコンサルティング、スマートフォンアプリ開発、パソコン/サーバー及び周辺機器の販売
  • 所在地:石川県金沢市鞍月三丁目86番地
  • URL:http://www.uniposi.jp
  • お問い合わせ先:TEL)076-255-6124
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