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究極の地域映画『笠置ROCK!』が異例の全国ロードショーへ!成功の鍵は「ヒアリング」

京都
株式会社シネマズギックス 代表取締役 馬杉雅喜 氏
映画・ミュージックビデオ・CM・ドキュメンタリーなどを手がけるシネマズギックスは京都に本社を構える映像制作会社です。美しい映像と普遍的なテーマが多くの人の心をつかみ、国内外で高い評価を得ています。2016年に制作した映画『笠置ROCK!』が町おこし映画としては異例の全国ロードショーへと展開。「自分が作りたいという願望より、ニーズに応えることを大切にしている」と話すのは、代表取締役兼映画監督の馬杉雅喜(ますぎまさよし)さんです。今回、馬杉さんが起業に至った経緯から将来のビジョンまでお聞きしました。

東日本大震災のドキュメンタリー制作が起業のきっかけ

会社設立に至るまでの経緯を教えてください。

幼い頃から人を喜ばせることが好きで、将来は人の心を動かす仕事がしたいと思っていました。中学2年生の時に見た映画『ショーシャンクの空に』に感動して、映画こそまさにそれだと思い、映画監督を目指すことを決心しました。その後、高校、専門学校を経て、東映京都撮影所に就職し、特機部※1にて3年間、映像制作の基礎を学びました。退社後、CGを勉強しながらフリーランスとして映像制作に関わる中、当時、お世話になっていた方から東日本大震災後の東北でドキュメンタリーを作らないかというお話をいただき、その窓口として、株式会社が必要となり、シネマズギックスを立ち上げました。 ※1 テレビ・映画の撮影に使う、移動撮影用のレール・台車・クレーン・大型送風機・撒水機などの機材を操作する係。
震災と向き合う福島県の中学生を追ったドキュメンタリー『STAND UP』についての記事はコチラ!→http://www.shortshorts.org/2012/ja/news/detail/index.php?id=1358307388

撮影されたドキュメンタリーの内容について教えてください。

文科省からの委託事業で、被災した中学生のその後を追うというものでした。中学生という多感な時期を撮影するわけですから、本人たちとしっかり話し合い、おたがい信頼できる関係を作った上で撮影に挑みました。撮影に協力してくれたのは生徒会長を務めていたリーダーシップのある子どもだったこともあり、地元に対する考えかたなどリアルな思いをしっかり表現してくれ、非常に見応えがある作品になったと自負しています。そのドキュメンタリーは今も、福島県の中学校の道徳教材として使用されており、先生たちからは「良い授業ができる」と喜びの声をいただいています。

ヒアリングしたニーズを映像に落とし込む

学生とコミュニケーションを重ねたことが結果に結びついたのですね。

弊社ではどの作品でも顧客へのヒアリングを徹底しています。顧客がやりたいことをただやるのではなく、ヒアリングしたことをもとに、ターゲットや落とし所を提案させていただき、お互いに納得する作品を作ります。

それはまさにコンサルタントの仕事ですね。

そうですね。弊社は「無敵経営」という経営方針をとっており、コンペは参加せず、プレゼンや相見積もりもいっさいしません。仕事はすべて、今までにつながった方からいただいたものです。僕自身、仕事を発注いただけることがモチベーションにつながるので、発注していただけるように顧客のニーズに沿った映像を作ることを大切にしています。

競合他社にはない御社の強みを教えてください。

ドラマを作れる会社であるということです。映像作品において、CMやバラエティーを作るのと、ドラマを作るのとでは作り方が根本からやり方が違います。最近では一眼レフとかスマホできれいな映像を撮影できますが、ただきれいな映像や格好の良い映像をつなぐだけなら、粗さが少しでも見えると、見ている側の感情が途切れてしまうんです。そうならないように、起承転結の流れを捉えつつ、カメラワークや音声にまでこだわることが大切です。弊社ではそれができます。東映京都撮影所でドラマ制作の1から10までを勉強させていただいたことが財産となっています。

映画『笠置ROCK!』は意外なヒアリングから生まれた

御社の作品としては、2016年にメジャーデビューを果たしたココロオークション(http://cocoroauction.com/)の三部構成になっているプロモーションビデオ(以下、PV)が有名ですが、それらはどのようにして生まれましたか?

過去に弊社が制作したPVを見て、ココロオークション側から連絡をいただきました。そのPVというのがドラマ仕立てになっており、自分たちも近しいものを作りたいという話でした。その後、顧客のターゲットや長期・短期ビジョンをヒヤリングし、10代の普遍的なの恋愛ドラマを描くことにしました。三部構成にしようと思ったのは、1作目の時にYouTubeの反応がとてもよくて、続編が見たいという声をたくさんいただいたからです。販売戦略としても、音楽ファンだけでなく、映像からファンになってくれる人も獲得できるようCDにはDVDを特典として、DVDにはCDを特典として、それぞれの販路で販売できるように考えました。実は、1作目のPVには未公開の20分版があるんです。いずれショートフィルムとして公開したいと思っています。

御社制作の映画『笠置ROCK!』(https://www.kasagirock.com)は町おこし映画として、異例の全国ロードショーに展開しました。制作のきっかけについて教えてください。

地方創生加速化交付金を使った事業として、京都相楽郡にある笠置町から町をPRするCMを作りたいとオファーをいただきました。ココロオークションのPVを笠置町で撮影したご縁もあり、お引き受けしました。しかし、笠置町を調べれば調べるほど、過疎化などさまざまな問題点が見えてきて、ただCMを作るだけでは一過性のものに過ぎないと考え、笠置町自体の改革が必要だと思い、人口が日本で2番目に少ないことを逆手にとって町民全員で映画を作るという企画を出し、町議会で通していただきました。テーマは「町の人が自分の町に誇りを取り戻す」です。実際、動き出したのが2016年の9月のことです。

『笠置ROCK!』とタイトルを一見すると音楽のロックかなと思うのですが、実はボルタリングが題材なのですね。ボルタリングを選んだ理由はなんでしょう?

笠置町にはキジ鍋やユルギアメなどいくつかの名産があるのですが、映画としてはどれもインパクトが弱いと感じました。困り果てながら町を歩いていると、岩場に向かう数人の若者を見かけたんです。その岩場というのは笠置町では危険な場所としてあまり人が寄り付かない場所だったので、不思議に思い、若者たちに声をかけてみると、その岩場でボルダリングができると言うんです。帰って、ボルダリングについて調べてみると2020年の東京オリンピックの新種目になるスポーツだということを知り、「これだ!」と思い、ボルダリングを映画の題材に決めました。“音楽のロック”と“岩のロック”を掛けたのは、笠置町をつないでくれたココロオークションに本作の音楽をすべてお願いしようと決めていたので、ココロオークションのロックサウンドをもじる形で命名しました。

公開後の反応はいかがでしたか?

2017年の3月に笠置町で町民向けに試写会を行った後、ドイツのハンブルグ日本映画祭への参加や、イオンシネマ高の原での上映で週間動員数1位獲得が話題となり、スポーツ庁がスポーツで地域活性を促すモデル事業に選んでいただいたり、東京で鈴木大地長官と対談イベントまでさせていただきました。その影響で、東京のMOVIX、そして、イオンシネマでの全国順次ロードショーが決まりました。これも、すべて笠置町の町民が本作を愛して、宣伝など応援していただいたからだと思っています。

“幼い頃から人を喜ばせることが好き”だったいう馬杉監督が見たかった喜ぶ顔がたくさん見られたわけですね。

そうですね。僕自身も初めて劇場用の映画を撮らせていただいて、自分自身としては未熟な部分もあるのですが、町の人に受け入れていただけたことはうれしかったです。弊社としても自信につながりました。

世界一の映画監督を目指して

日本の映像制作業界の現状をどう思われますか?

世界の中で、日本はガラパゴス化しているように思います。理由は他言語に対応できていないことが挙げられるでしょう。京都で映像制作会社をやっていると、海外からもオファーをいただくのですが、他言語対応ができるスタッフや役者を集めることは困難を極めます。特に、映画制作だと2~3ヶ月ほどの拘束が必要になるので、質のいい人材を確保することが難しくなります。そういった問題を解決したいと思い、2015年に200名超からなるクリエイター集団「京都映造派」を作りました。同じ年に神戸で行われたデジタルメディア・デジタルコンテンツの祭典「シーグラフアジア2015」に出展し、所属している5社それぞれの魅力を発信しました。今後も海外からのさまざまなニーズに応えていければと思っています。

御社の今後のビジョンについて聞かせてください。

「グリーンマン」と呼ばれる駐車監視員を題材にした、非常に短い数分のショートドラマを制作したいと考えています。「駐禁を切る」というある意味、人に嫌がれる仕事を担う人をいつか題材にしたいと考えています。Webでの公開を主としながら、プロダクトプレイスメント※2での広告収入を考えています。今後はこのようなドラマ制作を軸に自社でゼロから作品を生み出す事業を中心に行っていきたいと思っています。また、映画監督という夢を持ったときから「世界一の映画監督になる」ことを目指してやっているので、その一歩としてまずはアジア諸国との合作映画を制作したいと考えています。

※2 映画やドラマにおいて、広告主の製品を使用したり、広告主名やロゴを映し出すことによって、製品の宣伝効果を高める方法。

それでは最後に、若きクリエイターたちにアドバイスをお願いします。

今後、映像業界だけでなく、あらゆる業界が今までの常識では通用しなくなります。先輩など年上の方の話を聞く機会はあると思いますが、すべての判断は自分の物差しで測るべきだと思います。つまり、やりたいことをやればいい。メジャーじゃなくてもチャンスをつかめる時代なので、ぜひ頑張って欲しいです。

取材日:2018年1月18日 ライター:7omoya

株式会社シネマズギックス

  • 代表者:代表取締役 馬杉雅喜
  • 設立年月:2012年6月
  • 資本金:400万円
  • 事業内容:広告・販売促進・イベントなどの企画立案及び制作、映像メディアに関わるあらゆる制作業務(例)映画、ドキュメンタリー、プロモーションビデオ、ミュージックビデオ、企業や団体の広告・宣伝映像、イベント・舞台撮影、プロジェクションマッピング、デジタルサイネージ、ロケコーディネイトなど
  • 所在地:〒604-0856 京都市中京区両替町通二条上る北小路町104-4
  • URL:http://www.cinemasgix.com
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