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デザイン思考で社会にインパクトのあるサービスを開発。赤ちゃんに笑顔を向けられる世の中であるためにできること

東京
OneDot株式会社 CCO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)坪田朋 氏
2017年9月に、坪田朋(つぼたとも)さんがCCO(チーフクリエイティブオフィサー)として参画したOnedot株式会社。大手消費財メーカーであるユニ・チャームとBCG Digital Venturesが共同出資して誕生したスタートアップだ。同社が運営する育児動画メディア『Babily』は、中国で200万ユーザーを獲得している。このサービスを拡充する過程で、日本の体系化された育児情報の価値を改めて再確認できたと坪田さんは語る。

「事業を作るデザイナー」として、デザイン思考でビジネスを創出

坪田さんのご経歴について教えてください。

livedoor、DeNAなどでデザイン戦略室から多くの新規事業立ち上げ後、UI/UXデザイン領域を専門とするデザイン組織の立ち上げを行なってきました。外資系コンサル会社ボストン・コンサルティング・グループのBCG Digital Venturesにてデザイン思考を活かして新規事業開発業務を担う過程でOnedot設立、現在に至ります。役職は「CCO(チーフクリエイティブオフィサー)」。あまり馴染みのない役職かもしれませんが、クリエイティブの側面から課題を解決する役割と考えていただきたいです。

※ デザインに必要な考え方と手法を利用して、ビジネス上の問題を解決する方法

前職のBCG Digital Venturesでは0→1(ゼロイチ)の事業作りがミッションでした。ユニ・チャームから中国市場でのデジタルサービスに注力したいという要望を受けて、2015年の7月から中国と日本を行ったり来たりして、プロトタイプを作ったり各都市で60人程度のユーザーインタビューを実施したりして事業検討を重ねました。日本と中国で出生率を高めていくという目標を定めつつ、私自身は「デザイン思考」の観点から事業プランを練っていきました。

もう少し具体的に言うと、特に中国では一人っ子政策の撤廃でベビー・マタニティ市場が盛り上がっています。これまで育児を担っていた祖父母世代が高齢化していますから2人目3人目の育児はママが自分でやらなきゃいけないという問題が表面化し、急激に育児情報ニーズが増えているということもわかりました。さらに、その育児情報はデジタルネイティブ世代にリーチしきれていないことが明確化でき、デジタル領域での課題解決のための方法が『Babily』として結実したということです。それを実現する組織が、ユニ・チャームとBCG Digital Venturesのジョイントベンチャーとなりました。

中国で、ということでビジネス上苦労されたことは。

そうですね。まず、今回のサービスは「中国ファースト」前提で始まりました。代表の鳥巣(とす)は中国に居を構えてビジネスを進めていますし、私もサービス開始前には3ヶ月ほど中国に滞在しました。

育児動画メディア『Babily』は昨年9月にサービスインしていて、中国では既に200万人を超える会員数も獲得しています。育児という範疇で語りますが、12ヶ月くらいまでの育児のスタイルって、日本も中国もあまり大差はないのですね。育児情報を体系化する場面では、ほぼ同じ考え方で問題ない。が、文化・習慣の違いはもちろんあるので、例えば離乳食動画ではそもそも使う食材が異なるのでそれぞれ撮影が必要になりますし、18ヶ月以上になると、とくに違いが顕著になるので日中それぞれの動画が必要になります。お母さん向けの産後食も同様ですね。ちなみに、中国向けサービスではすでに300本くらいの動画を配信しています。制作本数は1000本を越えています。

もう一つ加えると、中国はほぼ共働き家庭ばかりですから育児を担うのは祖父母あるいはお手伝いさんなんです。核家族化で「ワンオペ」なんて呼称される日本のママの問題とは随分異なっているという点は印象深かったですね。問題の根っこが違っていると感じました。中国の場合だと、包丁を持ったことがないママが随分存在するので、例えば人参のみじん切りをするシーンでも包丁の使い方をクローズアップしなければいけなかった、という事例もありました。

坪田さんはデザイナーとしてのご経歴が長いですよね。

「事業をつくるデザイナー」を自負しています。

前職を退職する際には随分悩みましたが、自分が立ち上げに関わったサービスの成果を出すところまで責任を持ちたいので、Onedotに移りました。もともと「事業を立ち上げる立場になりたい」という気持ちが強くありましたし、自身のキャリアはそのように作ってきたとも思っています。今回のサービス『Babily』も、もともと育児に対しての「不安」を解消できること、「安心」できる情報提供ができることを優先にプランニングしました。社会的にインパクトがある事業だと実感できることも自分にとって大事でした。

ユーザーにとって本当に有益で正確な情報、
価値の高いコンテンツを作るために必要なこと

『Babily』事業とは具体的にどんなことをされるんでしょう。

これから、デジタルネイティブな世代がどんどん育児参加することになるわけで、育児する人にとって必要かつ正確な情報をわかりやすく届けるために動画を使った情報を提供しようということです。少し前の世代なら文字情報で共有されていたことでも、広くインターネットで情報提供される世の中になって、誤った情報・不正確な情報もたくさんあります。これを、ワンストップで「安心」「安全」かつ信頼できる正確な情報が簡単に見つかるという価値提供を目指しています。

このサービスの強みとはなんでしょうか。

コンテンツは、事業者側つまり我々で制作して配信します。いわゆるCGM的なユーザー投稿型のコンテンツサービスではありません。繰り返しますが、価値の高い情報提供をするということが最優先です。管理栄養士の方、保育士・保健婦など国家資格を持っている方々の監修の元、動画制作を進め、中国語・日本語での配信をしています。文字情報では伝わりにくいことも、動画では一目瞭然ということも多々ありますよね。なによりもユーザーにとってわかりやすいこと、が大切だと考えています。例えば、赤ちゃんの沐浴(もくよく)は文字情報だけで伝えるのは難しいですが、動画であれば見たそのままで理解されるはず。わかりやすいですよね。

競合サービスとの差別化で大切にされていることは、どういったことですか。

スマホで見ることを前提で考えていますが、まず無音でもきちんと理解できる短い動画であることです。

動画の制作テクニックも、こうした考えのもと随分進化していますので、既存の技術を活かしつつ新しい取り組みを試しながら進めているというところが、面白さでもあります。そもそもビデオカメラで撮影した動画である必要すらなく、正確に伝えられるなら連続した静止画のモーション再生という方法でも良いと考えています。

実際にどのような制作フローになっていますか

「企画」-「監修」-「撮影」-「編集」-「再監修」という流れで、他の動画制作と大きく変わるところはないかと思います。

スマホ動画として、無音でわかるように字幕をつけることがポイントで、撮影前に企画をかなり細かく詰めることをしています。さらに、サービス全体できちんと数字を出していますので、その結果をもとに動画のチューニングをします。離脱のポイントを見て編集をし直したり、ということですね。

「企画」そのものは、実際にご自分が経験されたことをもとにママたちが進めてくれています。内訳はフリーランスの方々含め15人くらいで、日中それぞれのコンテンツ制作を担っています。現在はまだ、ユーザーのコメントから徐々に新しいコンテンツを増やしている最中です。繰り返しますが、ユーザー満足度が高いコンテンツであることが最優先です。

今回の『Babily』事業は、デザイン思考の手法を使って立ち上げていますから、現在も定期的にユーザーインタビューを実施しています。これは今後も行なっていく考えです。

日本の価値を再発見、
体系化された日本の育児情報をアジアへ

子連れ出勤OKのオフィスは、子どもが遊ぶ姿を確認しながら働らくことができる。

個人と会社の両面から、今後の展望について教えてください。

日本向けサービスはまだ始めたばかり。日本の育児環境は良くないと言われつつも情報としては飽和状態。現在はインスタグラム中心ですが、今後さらに発展させてワンストップで育児情報が完結できる世界を目指します。

中国に向けても日本に向けても、動画アプリなど私たちが提供するサービスの活用で育児にかかる時間を短縮するというミッションを掲げています。もちろん、「安心」「安全」「信頼」は絶対です。概ね、今後2年でそうした目標を達成することを目指しています。サービスを進める過程で、日本の育児情報が体系的にまとまって優れていること、かつアジア全域に求められ価値の高いものであることが確認できました。それを活かす形でビジネスをどんどん前進させていきたいですね。

個人的には、スモールスタートアップは初めての経験です。社会に影響を与えられるサービスを開発するにはいい機会かなと思っています。
私は、デザイナーをもっと夢のある仕事にしたいと強く思っています。若いデザイナーたちのためにも、自ら新しい道を切り拓いて、経営にコミットするというポジションがあることを実践して一歩でもデザイン分野の業界を前進させたいです。

最後に。一人の日本人男性として、各国を廻って実感していることもあります。これほど赤ちゃんに冷たい視線を向けるのは日本くらいじゃないかと思うのです。赤ちゃんは社会全体で育てるものだ、という考えが随分薄くなっている印象があります。とても寂しいことです。一方で、育児は大変な作業であることも知っています。私たちの事業は、その育児の時間を減らせるサービスです。そして、ママやパパの育児不安を解消できるサービスです。不安が解消できることで、社会全体が赤ちゃんに笑顔を向けられるように変えていきたいと思うのです。

取材日:2017年12月25日 ライター:野田収一

OneDot株式会社

  • 代表者名:代表取締役社長 鳥巣 知得(とす ちとく)
  • 設立年月日:2017年 2月
  • 資本金:5,000万円
  • 事業内容:動画メディア開発運営
  • 所在地:〒153-0051 東京都目黒区上目黒3-36-29
  • URL:babily.com/
  • 問い合わせ先:info@onedot-inc.com
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