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起業するため、新卒で入った銀行を4か月で退職。地域に根差したウェブ制作で夢を広げる。

金沢
株式会社HeartLanguage 代表取締役社長 田中 瑞規 氏
地元の国立大学を卒業し、地元の銀行に就職することは、大企業の数が限られている地方で考えられるもっとも安定した人生のコースの一つ。将来が保証されたいわばエリートといってもいい生きざまです。そんな道を歩みながら、起業の夢をかなえるため、わずか4か月で銀行を退職し、ウェブ制作の会社を起こしたのが、田中瑞規(たなか みずき)さん。堅実な金融の世界から、クリエイティブな事業へとかじを切った田中さんを揺り動かしたものは何だったのでしょうか。

資金もなく、人脈もない。まずは内定を取って就職しよう

ウェブ制作やアプリケーション開発を行う株式会社HeartLanguageを昨年(2016年)1月に立ち上げられました。立ち上げまでの経緯を教えてください。

地元の金沢大学を卒業後、地元の銀行に就職し、4か月後に退職しました。その後、ゴルフショップで販売のアルバイトをしながら資金を蓄え、24歳で起業しました。大学入学前から、起業したいという願望はあったのですが、資金もない。何から始めればいいのかもわからない。事業の具体的な計画もありませんでした。人脈や技術もなかったので、大学を卒業してすぐに起業することは不可能だと考えました。周りでは就職活動が進んでいましたので、とりあえず企業の内定を取って就職しようと思いました。家族にも、起業したいということは伝えていませんでしたし、話をしても理解を得られるとは思わなかったので、まずは地元で、安定している地銀への就職を選びました。

地元の銀行への就職は、大変だったのではありませんか。

大学3年で就職活動が始まっても、経済的な理由から首都圏の企業を積極的に訪問する余裕はありませんでした。就活先が地元企業に限られていましたので、いくつかの金融機関を受けました。学生時代に培ってきた経験から、ほかの学生には負けないという自信もありました。起業したい、経営者になりたいという思いが強く、大学1、2年生の間に、FP(ファイナンシャルプランナー)3級、そして2級を取得しました。学内のビジネスプランコンテストに応募し、受賞もしました。経営に関するノウハウや視点については、同世代の人間よりも圧倒的に知識を重ね、自分のスキルや考えを語ることもできたので、それがほかの学生との違いであり強みだったと思います。

サイバーエージェントでインターンシップを体験し、ⅠTで起業を目指す

学生時代から、ウェブ制作会社を立ち上げるための具体的なビジョンは持っていたのですか。

いいえ。最初はそこまで考えていませんでした。考えるようになったのは、大学3年生の時です。最近「AbemaTV」が話題となっている株式会社サイバーエージェントでインターンシップを体験したことが一番のきっかけです。 ITバブルやドットコムバブルの時代に、成長した企業のエネルギーを受け止めました。私がインターンシップを体験した当時はスマートフォンアプリで再び盛り上がりをみせる予兆を感じ取りました。インターンシップ期間中、アプリの企画を経験させていただき、IT業界は、直感的にアイデアで勝負する世界であり、これなら自分でもできると感じました。技術がなければ、技術を持っている頼れる人間を探せばよい、在庫も抱えなくて済む、初期導入費用も低く、市場成長性も見込める。これは、IT一択しかないと思いました。

地元のIT企業への就職という選択肢はなかったのですか。

将来は、飲食業、不動産業、金融系などへの進出も視野に入れています。そのために、一番大事なことは、ITの技術だけでなく、ビジネスモデルや会社としての運営基盤をつくるためのノウハウだと考えました。金融機関には、しっかりとしたシステムがあるはずだと思いました。その上、就職した銀行では、ちょうど地銀が社内インフラ整備のため本社を移転するタイミングで、IT導入がかなり進み、最初に勤める会社としては興味深いと判断しました。

スキルを得るために地元の銀行への就職を選んだともいえるのでしょうか。

経験を自身のステップアップにつなげるという考え方は、それほど珍しいことではないと思っています。ベンチャー系やスタートアップ企業で働く人にとっては、かなり当たり前の感覚だと思います。現在、一般的に企業も社員が独立することに関しては、それほどマイナスには捉えていない風潮にあるのではないでしょうか。独立したから破門ではなくて、その後も一緒に連携しあって互いに盛り上げていこうという風潮があると感じています。とはいえ、就活の時には「すぐに辞めようと考えています」では通らないので、取り繕いましたが。

新人銀行マンとして「札勘」の練習も

銀行時代はどんな業務をされていたのですか。

入社してから2か月間はずっと研修で、実際に現場の支店に配属されて勤務したのは2か月間でした。金沢市内の支店でいわゆる出納業務、お金の出し入れを担当していました。大きなお金が動く際や、開店前に金庫からお金を出し入れするんです。紙幣の枚数を勘定する「札勘(さつかん)」も練習しました。

新入社員として入社して間もない時期に、辞めるのは勇気が必要では無かったですか?

入社して4か月が過ぎ、この機を逃すと飛び出すタイミングが伸びてしまうと感じて、直属の副支店長に辞表を持っていきました。最初は「とりあえず自分のところで預かっておくので、2、3日考えてみてくれ」と言われました。考えるも何も自分の中で考え抜いた結果でしたので、押し切りました。「考えが甘い」とお叱りもいただきましたが、初めから早期に退職するつもりでいましたので、中途半端に責任や信頼を得てしまった後で、辞めるに辞められなくなることは避けなければならないと思っていました。

説得はされたけれども意志は固く、そのまま辞表を受け入れてもらえたのですか。

相談して数日たっても、意志は変わらなかったので、辞表は支店長へと渡り、支店長と副支店長2名と最終確認のための面接が行われました。最終的に「入社に際して周囲にお世話になったことや、それまでにかかった人材獲得や育成コストについても、しっかりと心に留めて、今後も活躍してほしい」と言っていただき、それは今も常に胸に止めていますし、同じ地域で展開する企業として、何らか地域に還元できればと考えています。

起業し、学生たちと作ったチームは解散、また一人に

その後、すぐに起業されたのですか?

7月末に退社し、8月からフリーターになり、翌年1月に法人化しますが、食べていけず、そこから4か月くらいはアルバイトを続けました。通算して約1年間はアルバイトをして食いつなぎました。法人化した当初は、アプリを制作しようと考えましたが、資金もなく、学生に一緒にやろうと話を持ちかけ、学生と活動しました。社員は自分一人、学生たちは報酬もなく、インターンのような形でしたので、チーム自体あまりうまく進まず、結局、チームを解散し、3か月くらいでまた一人になってしまいました。

そこから1年半、現在、スタッフが増えたのは?

そんな時に、幼なじみから偶然連絡がありました。中学校卒業以来、久々の再開でしたが、彼もウェブ制作会社を退社したばかりで、自分が起業したことを聞きつけ、連絡してきたのでした。そこで意気投合して一緒に組むことになりました。自分が経営、企画、営業をして、彼がエンジニアとして制作するという会社らしい形態ができ上りました。それが昨年の6月のことです。そこからアルバイトの学生たちも社員として加わっていきました。現在、自転車操業ではありますが、きちんと社員に給料も支払えています。創業1年目、社員は自分ひとりで、ほとんど仕事もない状態、売上はほぼゼロで、もちろん赤字でした。2期目の今期は12月決算で収支もプラス収支になる見通しです。今は、利益を出すというよりも、次のサービスを開発するための、余裕と時間が必要だと考えています。

メール設定やネットの使い方まで、アフターフォローに注力

制作を担当した金沢大学のサイト

ウェブ制作会社は多数ありますが、御社の特徴を教えてください。

金沢市や金沢大学が主催するビジネスプランコンテストで賞をいただいたことから、市や大学などいろいろなところに顔を出させていただき、製造業をはじめ、税理士事務所、造園会社など幅広い分野の企業から仕事を受注しています。SEO対策やマーケティングなど、制作後にどうやってアクセスを増やすかという、アフターフォローに力を入れています。 また、メール設定やインターネットの使い方など初歩的な質問から相談にのりますし、そうしたやり取りから新たな仕事につながっていくケースもありました。もちろん自分たちも楽しんでやっていますから、地域に根付いたウェブ制作会社になっていければと思っています。

今後の展開はどのように考えていますか。

拠点を金沢と東京の2か所にしようと動いています。東京で人材を獲得すると同時に、受注も開拓し、情報や技術、リソースを金沢に送り込むことができればと考えています。そのためにも、ウェブ制作事業をより活性化させ、新たにVR事業も育てていきたいという構想を描いています。社員からは色々なアイデアが出てくるので、その中からも魅力的なサービスを発信していきたいと思っています。

IT、ウェブ以外の分野で考えている方向はあるのですか。

金沢に生まれ、金沢大学出身の起業家ということから、もっと地元、金沢で起業家が増えてほしいと考えています。大学の卒論でも、どうすれば起業家が増えるのかというテーマを扱いました。エンジェル投資家とまではいかないとしても、ベンチャーキャピタルのようなものを立ち上げて、投資を募り、学生が生み出す魅力的なアイデアをブラッシュアップさせて、事業として実現し、投資家に還元するような事業ができればおもしろいと考えています。

思いは言葉にしなければ伝わらない。「本心で生きる」という意味で「HeartLanguage」と名付ける

制作を担当した泉鏡花フェスティバル2017のサイト

これから起業しようと思っている後輩に向けてメッセージを送るとしたら、何を伝えたいですか。

まずは、「やめたほうがいいよ」と伝えるかな。というのは、起業には相当な覚悟が必要ですし、起業してもそこから事業として成功させている人はほんのひと握りです。苦労もなく、親の援助で起業したような人はうまくいかないと思っています。コンテストで賞をもらい、チームでアプリを作ってもうまくいかず、また一人ぼっち。残っていたのは、「起業をして会社を大きくしたい」という思い、それだけでした。信念と熱意だけを頼りに進んできました。順調にいっていると見られているとすれば、それは成功したということだと思います。いざ振り返って過去を振り返ればそんなことはないのですが。

最後に、社名の由来について教えてください

ハートは心、ランゲージは言語。自分が思い描く通りに事業を進め、発信したい。思いは言葉にしなければ伝わらないですし、覚悟を定めていくためにも、「本心で生きる」という意味で、HeartLanguage(ハートランゲージ)と名付けました。しかもドメインが空いていました。社員が増えた今となっては少し気恥ずかしいところもありますが、名前のおかげで思いが形になりつつあると思っています。

取材日: 2017年11月16日 ライター:加茂谷慎治

 

株式会社HeartLanguage(ハートランゲージ)

  • 代表者名:代表取締役社長 田中 瑞規
  • 設立年月:設立年月:2016年1月
  • 資本金:50万円
  • 事業内容:ウェブサイト・広告制作、ウエブメディア運営、VRアプリケーション開発
  • 所在地:〒920-0855 石川県金沢市武蔵町14-31 ITビジネスプラザ武蔵 4F
  • URL:https://heart-language.jp
  • お問い合わせ先:TEL)050-3692-0121、MAIL)contact@heart-language.jp

 

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