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「面白い」ものを現場で作り続けるため、アニメーション制作会社を起業。業界に蔓延する人材不足と向き合う。

東京
株式会社EMTスクエアード 代表取締役 宮本 秀晃 氏
年間を通して多くの作品が作られ、映画作品も好調なアニメーション。魅力的な業界である一方、人材不足といった問題も話題になることが多い業界です。そんな中、EMTスクエアードの宮本 秀晃(みやもと ひであき)氏は、2013年にアニメーション制作会社を起業しました。なぜ起業に至ったのか、アニメーション業界の現状、アニメーターに求められるスキルなど、現場のリアルな話をお聞きしました。

現場でアニメーションを作るため

まず会社立ち上げまでのキャリアを教えてください。

私がこの業界に入ったのは今から20年くらい前になるでしょうか。トムス・エンタテインメントというアニメーション制作会社に入ったのがきっかけです。トムスでは主に企画・営業に携わり、最終的には制作現場でプロデューサーをやっておりました。4年前にとあるきっかけから独立し、現在に至っています。

詳しくお聞きしてよろしいでしょうか。

同業の仲間から「独立しない?」と声をかけていただきまして。クリエイターとしてやりたいことがあったのでその話に乗ろうと思いました。トムスは大きくしっかりした組織なので、キャリアを積むと上の役職に就かねばならず、現場に残るのが難しかったのです。自分としては現場を続けたい、という思いがありました。環境は非常に恵まれていたのですが……。自分の中で「こんな仕事がしたい」という思いを実現したかったのです。

社会人になってからずっとアニメーション業界に携わってこられたのでしょうか。

実はアニメーション会社に入る前、大学卒業後2年くらいフリーターをやっていました。その後、まず会計事務所で働いた後、一度きりの人生ですし、好きなことをやっていきたいなと思ってアニメーション会社に転職したんです。会計事務所はまったく水が合わなかったんです(笑)。

自分が面白いと思うものを信じて作っていく

現在の業務内容について教えてください。

EMTスクエアードはアニメーションの制作会社です。我々は現場のスタッフと向き合い、作品を作っていく制作業務を担当しています。監督を集め、主要スタッフを集め作品を作っていくという流れです。

手がけている作品の方向性やコンセプトなどをお聞かせください。

ちょっと変わったものを作りたいなと思います。あとは自分が楽しいと思えるものですね。あんまり真面目なのは好みではないので(笑)。 各社色があると思いますが、弊社は「楽しい」ものがメインかな。今のトレンドはどちらかと言うとリアル志向ですが、でも自分たちがやるなら純粋に「女の子の可愛い」とか、「面白くて楽しい」世界がいいかなと。

今のトレンドはリアル志向ということですが、今現在のトレンドを把握しつつも、あえて外していかれると。

トレンドに関しては意識していないですね。意識すると偏った情報になってしまうので。フラットに考えるようにしています。次にくるジャンルもわからないですし。逆に言うと、自分が面白いものをやっていくしかないかなと。当てにいくためにアニメーションを作っているわけではないので。当てに行ったところで外しますし(苦笑) 。 もちろん当たるだろうと予測して実際に当たるものもあります。しかしそればかりではないのが現状です。

今はSNSもあって、視聴者が作品をどう受け取ってどう発信するかわからないですよね。

そうですね。自分が面白いと思うものを信じるしかないかなと思います。実際に大ヒット作品を作った人たちも、ここまでヒットするとは思っていないと思います。それは自分が面白いと思うものを信じて、作ってきた結果だと思うのです。もちろん視聴者がこうしたら面白いと思ってくれる、という気持ちを踏まえた上でですが。

自分がいいと思ったものが手ごたえとして返ってきた時というのはどうですか?

それは嬉しいです。外したらすごく落ち込みますが(笑)。それを楽しみにやっているようなものです。その喜びをスタッフと共有し合えればと思っています。

アニメーション業界の人材不足をどう解消していくか

今のアニメーション業界についてお聞きしてもよろしいでしょうか。

人材不足は深刻です。アニメーターも制作進行も足りません。今は各社ともにスタッフを囲っているというか、人材の奪い合いになってしまっていて。人材不足は各社共通の悩みだと思います その分を海外に頼っているのですがそれも限界があります。

スタッフの確保は作品単体で行われるものなのでしょうか?

そうです。そのためまずは何百人というスタッフを集めるところから始まります。人集めが基本なので、まずはどのように人材を確保するか悩みますね。クリエイターをひとりで集めるのは限界がありますので、そういう時に相談できる会社があると助かります。アニメーターや制作進行は特殊な業種だからこそ普通の求人では集めづらくて……。なのでフェローズさんにはとても感謝しています。

そんな中でも御社は若いスタッフが多いとお聞きましたが。

ベテランもいますよ。若いスタッフだけではだめですし、ベテランだけでもだめですね。バランスが大切です。経験がある方は経験があるなりにアドバイスできますし、若い人は「こんな作品を作りたい!」と野心を持っていて、経験あるスタッフのアドバイスを聞いて貪欲に技術を吸収しています。なので両者が対立することはないかなと。アニメーションは技術職なので、年齢に関係なく技術を持っている方が尊敬される世界です。そもそも人材不足が深刻な業界なので、ベテランと若手で区別するのではなく、まずはどうやって新人を確保するのかが重要なのです。

人材育成について、御社の取り組みを教えてください。

アニメーターについては先輩と新人が1対2で教わりながらできる環境を整えています。その中から才能のある人を見つけて、その人のモチベーションを維持していくこと、それが重要なので、アニメーターを社内でしっかりと育てていきたいと思います。新人をいかにして確保し、育てていくか。これが課題だと思います。

クリエイターもコミュニケーション能力が大切

一緒に働くスタッフに対して、会社としてどのようなことを求めてますか?

一般常識、コミュニケーション能力ですね。どの業種でも、職場の悩みは人間関係の場合が多いと思うんです。何かをやってもらうにしても、単純に「やって」と言うだけではだめで、コミュニケーションの取り方が大切だと思います。「どうやってほしいのか」「なぜやってほしいのか」「やってもらうことでどうなるのか」をちゃんと言葉にしないと伝わりません。

なんとなく、クリエイティブとコミュニケーション能力は両立が難しいと思うのですが。それに、アニメーターといえばまず絵がうまくなければと考えてしまいます。

そんなことはありません。業界に残っている人はちゃんと話せる人ですよ。いくら才能があっても伝える力がない人は現場に残りません。アニメーターにも求められることは2つあると思います。まずコミュニケーションが取れること、それから熱意があること。逆にこの2つがあれば大丈夫です。技術的なところは後から身に着けさせることはできるのです。コミュニケーション能力と熱意はこれまで生きてきた中での経験がモノを言うので。こればっかりは教えるものではないですしね。

アニメーション業界に入りたいけど技術がなくて、と思うのは杞憂であると。

そんな心配はいらないです。現在も新人を取ることが多いですし。あとは現状にあわせてどこまで柔軟にできるかですね。でもまずは入りたいという気持ちがあればいいと思います。経験はどこかで身につけなければならないですから、まずは飛び込むことが大切で、そこで尻込みしていたらもったいない。経験がないからといって諦めるくらいだったらこの業界は難しいですね。今はアニメーターになるきっかけもいろいろありますから、調べればいくらでも道はあるかと思います。それこそフェローズさんに登録するのでもいいですしね。

アニメーション業界で必要とされる会社になっていくこと

御社の今後についてお聞かせください。

まずは必要とされる会社になりたいと思います。野心というものがあるとすれば、やっぱり作品を見た多くの人に「面白い」と言わせたいですね。「面白い」にもいろいろあると思うのですが、私が面白いと思うのは明るく楽しいエンターテインメント性に富んだものです。弊社の作品を観た多くの方に笑っていただけたら嬉しいですね。会社としてやるべきことはありますが、やはりここに集約されるのではないでしょうか。

それから、人材を確保し社内で全部作れるようにしたいです。社内で育てたスタッフがキーになってものを作っていくという感じにはしたいと思います。また、昨今はCGが増えているので、今後はCGのスタッフをどうやって集めていくのかというのが課題です。自社制作のアニメーション映画も作りたいとは思っていますが、それは、今やっていることの延長線上にあると思っています。

一最後に一言お願いします。

アニメーション業界がつまらないと思ったこと、この業界を辞めてやると思ったことは一度もありません。大変はありますが、だからこそ飽きることもないのかな。アニメーション制作の現場は一度として同じことがなく、答えがあるわけでもない。それが醍醐味ではないかな。

私自身は別の業界に行きたいかと問われたらノーですね。アニメーションは主食ではないんですよ。なくても生きていける、だからこそ価値があるんです。人生には主食だけじゃなくておやつがある方が潤うんです。それがアニメーションの持つ魅力だと思います

取材日:2017年9月28日 ライター:みかめゆきよみ

株式会社EMTスクエアード

  • 代表者名:代表取締役 宮本 秀晃
  • 設立年月:2013年7月
  • 事業内容:アニメーションの企画制作
  • 所在地:東京都杉並区善福寺1-1-1 善福寺ビル
  • URL:http://emt2.co.jp/
  • TEL:03-5303-9250
  • FAX:03-5303-9251
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