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クリエイターはもっと果敢に戦略やマーケティングへ挑むべき

東京
株式会社デファクトコミュニケーションズ 代表取締役社長 高橋 大樹 氏
企業のブランディングやマーケティング戦略に、クリエイティブの力はどこまで寄与できるのか。デファクトコミュニケーションズはそんなテーマに真正面から挑み、事業を拡大し続けています。代表取締役の高橋大樹(たかはし ひろき)さんは新聞記者としてキャリアをスタートし、楽天でウェブマーケティング、アクセンチュアでコンサルティングを経験した異色のキャリアの持ち主。「ライターができること」「ライターだからこそ提供できる価値」を追求してきた、生粋の物書きでもあります。クリエイターはどのように企業と向き合っていくべきか、そのヒントを伺いました。

ウイークポイントを克服するため、ウェブやコンサルティングの領域へ

起業に至るまでの高橋さんのキャリアを教えてください。

私は金融に特化した新聞の記者としてキャリアをスタートしました。もともと金融分野が好きだったというわけではないんですが、この領域なら汎用性の高いテーマを扱えると思ったんです。書き手として何かの専門領域に特化してしまうことは、自分の可能性を狭めることにつながるのではないかと考えていました。金融を扱う新聞記者はビジネス全般に深く関わるので、幅広い知識や経験が得られるだろう、と。

一方で、私が記者をしていた2006年頃というのは、媒体が紙からウェブへとどんどん移行していた時期でした。そうした業界構造の変化に加えてリーマンショックがあり、結局その会社は倒産してしまったんですよね。

ビジネスや経営というテーマを追いかけながら、同時にその厳しさも痛感したわけですね。

はい。その後はフリーのライターとして、投資関連の書籍をいくつか出すことができました。本を出したことで仕事の依頼がたくさん来るようになり、1人では受けきれない状況になって。それで編集プロダクションのような機能を持った会社を作り、新聞記者時代に一緒に働いていた仲間にもライターとして協力してもらうようになったんです。

自分の会社の経営と同時並行で、楽天でウェブマーケティングを経験したり、アクセンチュアでコンサルティングに携わったりと、さまざまな経験をしました。

記者としてのキャリアを生かして編集プロダクションを経営するというのは、ある意味では盤石な状況だったと思います。そんな中で、あえて異なる業界での仕事にも挑戦したのは、なぜなのでしょうか?

私がやりたい業界としては、「金融」という軸を決めていました。でも、紙媒体しかできないのはウイークポイントだと思っていたんです。以前にもそのリスクを肌で感じていましたし……。それで起業しながら、ウェブに関わる仕事も経験しました。

アクセンチュアでは経営コンサルティングの観点から、アウトプットの一部としてのコンテンツマーケティングを提案していました。そのノウハウが、デファクトコミュニケーションズの事業の原型となっています。コンテンツ制作の実務だけにとどまらず、ブランディングやマーケティングを上流から手掛けています。

コンテンツ制作だけに携わっていると、どうしても経営としては利益率を落としてしまう。クライアントとともに上流戦略から描くことで、「企業にレビューされる側」ではなく、「企業をレビューする側」に立つことができるんです。

経験豊富なライターが抱える「デジタルアレルギー」

確かにライターという職種は、常に「企業にレビューされる側」にいるような気がします。

そうですね。書き手の人たちのことを思うと、「ボトムの仕事ばかりで疲弊してしまう」という現状は変えなければいけないと感じます。

例えば本を出版し、それなりに売れたとしても、印税は良くても10パーセントくらいですよ。「書き手は生産者なのに、なぜ10パーセントしかもらえないんだろう?」と思いませんか? ある意味では、生産者が搾取されるような構造なんです。

最近ではウェブを主戦場にするライターも増えていますが、同じような構造になっているのかもしれませんね。

ビジネスサイドで考えると、ブランディングやマーケティングの質を向上させるためにクリエイティブという重要な要素があるわけです。その中にライティングという仕事が含まれている。

しかし「コンテンツマーケティング」といった言葉が流行り、ライティングの大量生産が必要になると、企業によっては「クオリティは二の次でもいいから、とりあえず記事を書いてくれ」と依頼するところも出てきました。こうした仕事は、クリエイターを疲弊させることにつながります。それはそうですよね。「何のために書いているか」のゴールも見えないわけですから。

私はこうした状況を変えていきたいと思っています。一つひとつのコンテンツを作る目的を経営視点、戦略視点から仕切っていくことで、クリエイティブの本来的な価値を伝えています。

先ほど、「新聞記者時代の仲間にもライターとして協力してもらっている」というお話がありましたよね。力のある書き手をちゃんと起用することも、クリエイティブの本来的な価値を伝えることにつながっているのでしょうか?

そうですね。紙の世界でずっとやっていた人には、デジタルへシフトしていく業界に対するアレルギーのようなものがあると思うんです。僕は今35歳ですが、もっと上の世代の書き手にはアレルギーが明確にあります。「自分の築き上げてきた知見やスキルをSEOライティングだけに使いたくない」とか、「紙媒体などの有力メディアで仕事をしてきた経験を事業会社などのマーケティングに転用することはしたくない」とか。

事業会社のマーケティングやSEOライティングがすべて悪いというわけではないのですが……。モノを売るという行為に書き手が直接関わることへの忌避感があるのかな。「リード」や「ナーチャリング」といった、ワケのわからない言葉が飛び交う世界への嫌悪感も(笑)。

そして、かつての紙媒体の仕事に比べて、単価が圧倒的に安いという現実がありますよね。

単価の問題は切実ですよね……。

でも、業務の流れをきちんと設計すれば、単価の問題はクリアできるんですよ。

例えば私は今、紙の仕事はやっていません。戻しが多く、コミュニケーションコストがかさむので、実単価が低くなってしまうんです。デジタルの場合はディレクションを明確に行えば、1回で完結できることがほとんどです。経験のある書き手にこそ向いている世界だと思います。

「高品質なライティング」というブランドは絶対に外さない

デファクトコミュニケーションズでは、金融や経営コンサルティング、各種メディアなど、高い専門性を求めるクライアントとの取引実績が豊富だと伺いました。こうしたクライアントの期待に応えるため、どのような工夫を行っているのでしょうか?

例えば医療系のコンテンツ制作でいうと、ディレクターがディレクション内容をまとめ、ライターが書き、必要に応じて専門医師の監修を入れています。さらに編集・校正の専門スタッフが原稿を精査します。編集・校正レイヤーの機能だけを依頼されるケースもありますね。

コピペチェックやファクトチェック、「てにをは」「トンマナ」などの校正業務についてはある程度定量化できますが、編集業務にはより高い視点が必要となる場合もあります。コンテンツが想定するターゲットに対して、原稿の構成要素やロジック、文体、内容の粒度の調整、噛み砕きの加減などを調整する。このあたりは専門的・属人的な力が必要なので、定量化できる仕事とは切り分けて、しっかり時間をかけています。

書き手を選ぶ際に気をつけていることはありますか?

新聞記者出身の人はどんなテーマでも一定以上のレベルで書けるのですが、システムや薬事などについては、ベースとして専門的な知識が必要となる場合もあります。そんなときはコンサルティング業界出身の人に執筆を依頼することもあります。

ただし、彼らには「素晴らしい文章を書く」ことへのモチベーションがありません。本業ではないので、当然といえば当然ですよね。そこは私たちも割り切っていて、リライト専門のライターを別にアサインすることもあります。

一方では、昨年話題になったキュレーションメディアに象徴されるように、コンテンツマーケティングにプロの書き手が関わらないことで多くの問題が起きています。

クラウドソーシングで募集したライター希望者に必要な文中キーワードや原稿の構成を指示し、できあがった記事を編集者や校正担当がうまくまとめて商品にする。これが本質的な意味でのライターの仕事と言えるかどうかは別として、企業にそうしたニーズがあるのは事実ですね。ただ、そうした仕事はブランディングやマーケティングの中の一プロセスに過ぎません。

私がやりたいこと、やっていることは、こうした仕事とは対極にあると思っています。事業会社に対してちゃんとコンサルティングをし、経営の数字やゴールも理解した上で、必要な施策に対してプロのクリエイターをディレクションする。そのためには「高品質なライティング」が欠かせないので、このブランドは絶対に外しません。

企業は「ライターの編集力」を求めている

現在はコンテンツ制作代行の枠を超えて、「DC3 for sales」という新たなパッケージを提案されていますね。具体的には、どのようなソリューションを提供しているのでしょうか?

企業のブランディングやマーケティングを支援するため、「方向性の確認」「戦略設計」「コンテンツ制作」「運用」「効果測定」「最適化」というステップで提案しています。

例えばメーカー企業であれば、「良いものを作る」ことがコア事業であり、その前提となる理念があります。その思いをしっかり汲み取って反映させたマーケティング戦略や営業ツール制作を、すべて請け負いたいと考えています。

「デジタルマーケティング代行」といった切り口で見られることもあるのですが、やりたいことはもっと広範囲の、ブランディング全般に関わることです。IRで何を伝えるか、CSRで何を語るかというところまで設計したいと思っています。そうすることで、企業のすべてのアウトプットが一気通貫していて、トンマナも同じで、誰が見ても共通のブランドをイメージできる状態になります。

一連のコンサルティングの中で、書き手の力はどのように生かされていくのでしょう?

ライターという仕事の本質は、物事を取捨選択して抽象化する「編集」のスキルにあると思うんです。たくさんの情報を限られた文字数に収め、魅力的に伝えるスキル。これは、事業会社が「やりたくてもできない」ことの一つです。

例えば、拡大期の企業では事業が無造作に広がり、何十ものサービスが立ち上がっているようなことがあります。コーポレートサイトを見ると、もう何が何だか分からなくなっているという。中にいる人はそれを客観的に見て編集することができません。ライターはこうした状態を見ると、自然に「もっと分かりやすくまとめたい」と思う生き物だと思うんですよね。この特質はもっともっと生かせると思います。

記事を書いたり、インタビューしたりすることだけがライターの仕事ではないと。

はい。デファクトコミュニケーションズでは某大手会計コンサルティング会社をクライアントに持っています。ここでの仕事の一つが、「コンサルタントの膨大な知見をもとに、セミナーで語る際のパワーポイント資料を簡潔にまとめる」というもの。これもライターの仕事なんですよ。「ワードファイルで納品するものだけがライターの仕事」と思う必要はないと思います。

大切なのは「言葉や文章に対して圧倒的な誇りを持っている」ということです。私は事業会社の担当者の方とやり取りをする際に、その会社の資料や原稿に「目の前で赤入れをする」ことがよくあります。これ、一種のパフォーマンスなんですよ。言葉や文章に対しての誇りを知ってもらうことで、先方の社内での意識が変わっていくんです。これもライターだからこそできることですね。

高橋さんのお話を聞いていると、ライターという仕事の可能性がどんどん広がっていくように思います。「まだまだできることがあるんだな」と。

ライターに限らず、クリエイターはもっと果敢に「企業戦略」や「マーケティング」の分野へ絡んでいくべきだと思いますよ。書くのが好きだから、という理由だけでライターをやっているのはもったいない。異なる分野に挑戦することで、自分自身のスキルも編集していくことができます。

私自身、いつも自戒を込めて思っていることなんですが、クリエイターを名乗るとそれだけで「ビジネスのことが分かっていない」というイメージを持たれがちです。クリエイターという言葉が、悪い意味で「職人の殻に閉じこもっている人」をイメージさせることがある。そんな印象を変えていくためにも、ビジネス分野で活躍するクリエイターを増やしていきたいと考えています。

取材日:2017年8月22日 ライター:多田慎介

株式会社デファクトコミュニケーションズ

  • 代表者名:代表取締役社長 高橋 大樹(たかはし ひろき)
  • 設立年月:2011年11月
  • 資本金:500万円
  • 事業内容:コンテンツ制作を通じた企業ブランディング・マーケティング支援および関連する市場調査・研究全般
  • 所在地:東京都新宿区若松町31-8-705
  • URL:http://defacto-com.net/
  • お問い合わせ先:上記コーポレートサイト内「お問い合わせはこちら」より
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