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“おわら風の盆”の舞台で観光客と住民の交流の場づくりを目指す、旅カフェ「メグリエ」

富山
マーベラスクリエィティブ株式会社
代表取締役
一般社団法人地域デザイン研究所
代表理事
土井 秀紀 氏
ぼんぼりに灯がともり、胡弓の切ない音色と越中おわら節の唄が流れる中、そろいの浴衣に編み笠姿の男女は三日三晩踊りあかすといわれます。毎年、9月1日から3日までの間、富山市八尾(やつお)地区で繰り広げられる「おわら風の盆」。祭り期間中、約2万人が暮らす山合いの同地区に25万人もの見物客が訪れ、大変な賑わいをみせます。祭りが終われば、また静かな暮らしが戻るこの地区で年間通して観光客に足を運んでもらおうと交流の場づくりを目指す旅カフェ「メグリエ」が2017年秋にオープンしました。仕掛け人は、富山県内で婚活イベントや観光まちづくり事業を展開するマーベラスクリエィティブ株式会社、代表取締役土井 秀紀(どい ひでき)さん。新たな事業を生み出す目線の先には何があるのでしょうか。

IT事業から、海外ビジネス、そして婚活へ

越中八尾駅前にオープンするカフェの店先で、スタッフとともに。

地域で観光事業、コミュニティビジネスを進める土井さん自身のこれまでの歩みについて教えてください。

富山市内の高校を卒業した後、海外への憧れから外国語の専門学校に通ったのですが、結局、途中でやめてしまいました。時間が自由に使えたので、むしろ海外へ出掛けるようになったんです。もともとIT分野が得意でしたので、ホームページが広まり出した頃にはウェブ制作に打ち込むようになりました。2000年に入る少し前くらい、いわゆるITバブルの時期です。マイクロソフト社のフロントページというツールを使い、タグやエディタを駆使して作り上げていきました。そのうちに、遠隔操作できる海外の発注先を見つけて、仕事を請け負うようになったのです。

海外へ通ううちに、さらにさまざまな企業の海外ビジネスをサポートするようになりました。 中古車販売業者から新しい輸出先を探して欲しいという依頼があり、ドバイへ渡ってルートを確保したこともありました。このようにして、海外へ遊学したことがだんだんと仕事につながっていったのが、27、8歳の頃ですね。リュックサックを背負って企業の専務クラスの人と一緒に「日本の富山から来ました」と言って営業にまわりました。

国内では、どういったビジネスをされていたのですか?

富山のあるダンスホールの経営が厳しいという相談を持ち掛けられたときには、ライブハウスをやってみようという提案をして、自分が店長になり、売上の何割かをもらう契約をして、婚活イベントを立ち上げました。それが、2000年頃です。「婚活」という言葉も当時はまだない時代。「パーティー」と称して、人を集めて飲み会をしたり、バーベキューを企画したり。ライブハウスの集客のために、独身男女の出逢いの場を作りました。

そのうちに、県から相談を持ち掛けられるようになりました。「少子化対策の一環として、婚活事業を進めたい。ついては、事業を受託して開催してほしい」と言われ、そこで行政の事業の受け皿として、一般社団法人地域デザイン研究所を立ち上げました。

行政から受託する事業には、他にはどんなものがあったのですか?

地域デザイン研究所では、自治体の委託を受けて観光PRや路面電車セントラムを使った食べ歩きクーポンの企画・開発、富山県富岩運河環水(ふがんうんがかんすい)公園の整備に合わせてPR事業、遊覧船クルーズのガイド派遣業務、キッチンカーを集めてのイベント、花火大会の運営など地域の事業に取り組んできました。
また、富山を代表する産業である「薬」を活かした「薬膳料理」の認定も担当するようにもなり、料理の専門家や薬学博士で研究会を構成し、レシピの開発や薬膳料理を提供するお店を認定する事業に取り組んでいます。取り組みの成果もあって、薬膳料理を提供する認定店は、富山市内で50店舗にまで広がりました。

めぐり逢い、交流する場としての旅カフェ「メグリエ」

オープンに向けて準備が進むカフェのカウンターで。

八尾地区に「メグリエ」をオープンしたきっかけを教えてください。

実は、もともと八尾地区に特段の思いがあったわけではないのです。たまたま、知人が駅前の町家でコミュニティカフェを営業していましたが、この春、閉店するという話を聞き、物件を目にして、何かできるのではないか、何か仕掛けたら面白いんじゃないかと思いました。ただし、八尾は普段は静かな町で交流人口も少なく、普通にカフェを開いても経営は厳しいだろうと考えました。

そこで、これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、八尾にはなかった観光案内所を開設することで、地区の最大の課題、年間を通しての観光誘客策を図ると同時に、カフェを併設することによって民間企業としての収益確保も実現できると考えました。

観光客にとっては、新たな楽しみが増えますね。「メグリエ」はどんな場所にしていきたいとお考えですか。

「メグリエ」という名前は、日本語の「めぐり逢う」と英語で「交流」を意味する“exchance"の造語です。まずは地元の人に利用していただき、次に県外の人と交流できる場所にしようというのが「メグリエ」のコンセプトです。八尾駅前には観光案内所がないので、「メグリエ」に観光案内所としての機能を持たせ、パンフレットを置くだけでなく、地元の人と観光客が話をしながら地酒を試飲したり、ホタルイカなど地元の食材なんかを味わえる。そんな場所にしたいと思っています。

さらに、八尾地区では紙漉(す)きやそば打ちなどの体験できますし、富山の工芸品である和ろうそくの絵付けやガラスでつくる箸置きづくりなどを「メグリエ」で体験できないかと検討しています。 食の分野では、ます寿司の食べ比べや地酒の利き酒会など、観光客に楽しんでもらえるよう検討しています。

課題である年間通しての観光誘客に挑戦

3日間、夜通し続けられる「おわら風の盆」。25万人もの見物客が詰めかける。

八尾といえば「おわら風の盆」。小説やドラマ、歌謡曲の題材にも取り上げられるほど魅力的な伝統芸能ですが、年間通しての観光誘客には、課題があるそうですが。

この地区の観光誘客は、従来「おわら風の盆」頼みでした。一昨年、北陸新幹線が開業したことやインバウンド効果により、富山県の観光入込数の比重は団体客から個人客へと移行しています。団体旅行者は決められた行程を回りますが、個人客は地元の人との触れ合いや体験型観光を求めています。今回、「メグリエ」に観光案内所を併設することで、体験プログラムなどの情報を提供し、観光客を引きつける場所にしたいと考えています。

観光案内所にカフェを併設するのは県内で初の試みということで、行政の支援が得られたそうですね。

公益財団法人富山県新世紀産業機構が公募していた「とやま中小企業チャレンジファンド事業」にビジター対応ビジネス支援事業として採択され、計画を進めているところです。採択決定から、急ピッチで内装工事を進めて、多くの観光客が訪れる「おわら風の盆」には仮オープンし、2017年9月29日に正式オープンする予定です。

この先はどのような事業展開を考えていますか。

ひとつは古民家再生に興味があるので、この「メグリエ」がモデルケースになればと思っています。空き店舗、空きスペース活用をはじめ、交流できる場所をたくさん作ることができたら、おもしろいなと思っています。それと、僕はいろんなところへ行くと、飲み屋回りをしているんですよ。一つのまちで一人で5軒くらいはしごします。そうしているうちに、自分のところにベースとなる飲み屋があってもいいかなと思うようになりました。この先はこの場所を人が集まり、観光客、地元の人、外国人、若者、お年寄り、みんなが交流できる「飲み屋」にしてもいいかなと思っています。そんなことを話していたら、なんだかお酒が飲みたくなってきました(笑)。

取材日:2017年8月18日 ライター:加茂谷慎治

マーベラスクリエィティブ株式会社

  • 代表者名: 代表取締役 土井 秀紀(どい ひでき)
  • 設立年月: 2013年3月
  • 資本金: 100万円
  • 事業内容: 広告制作・イベント企画・観光コンテンツの企画制作
  • 所在地: 〒930-0906 富山市金泉寺248-1(本社)
         〒939-2376 富山市八尾町福島581(メグリエ)
  • お問い合わせ先 TEL) 070-5630-6082 E-MAIL) doi@cdlabo.jp
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