インバウンドに特化したサポート事業を通じて、地域を活性化させたい

京都
株式会社アドリンク 代表取締役社長 上治 太紀 氏
大学2回生の時に最初の事業を立ち上げた上治太紀(うえじ たいき)さん。「地域を活性化させたい」という思いを胸に、ルーズリーフ広告、フリーペーパー、「トラベルパッド」とさまざまな事業を経て、現在はインバウンド対応の総合サポート事業を手がけています。学生起業家としてメディアに取り上げられることもあった上治さんですが、自らが立ち上げた会社を心底嫌いになった時期も。現在に至るまでの紆余曲折や今後の展望についてお話を伺いました。

滋賀から京都に拠点を移し、観光に特化した事業にチャレンジ

現在の事業に至るまでの経緯についてお聞かせください。

元々、観光に携わりたいという思いがあったうえ、滋賀の隣りに国内でも有数の観光都市・京都があるので、当時のメンバーと京都で何かやってみようという話になりました。京都といえば観光だろうと、メンバーが実際に京都観光をしていて困った経験から、トイレの場所を掲載した観光マップを作ろうということになりました。2ヶ月に1回、1年間ほど発行しました。
当時はタブレットが出始めたタイミングで、タブレットにマップなどの観光情報をたくさん入れてレンタルしたら便利なのではと考え、滋賀から京都に拠点を移して「トラベルパッド」というサービスを始めました。これがいわゆるインバウンド観光に関係したサービスの最初になります。メインは、外国人が観光で困った時にコールセンターを通じてサポートするサービスです。タブレットからコールセンターに電話をつなぐと、外国語を話せるスタッフとビデオ通話できるシステムです。これを1年契約で京都駅で貸し出しました。
外国語を話せるスタッフが少しずつ増えていき、翻訳や通訳を手伝ってほしいと言われるようになりました。そこで、法人向けの通訳サービスをしていこうということになり、今のような企業の外国語サポート事業になりました。

では、現在の事業内容についてお聞かせください。

インバウンド対応の総合サポート事業です。基本的には、企業様、自治体のインバウンド対応を通訳・翻訳、多言語のWeb制作、コンテンツ制作などを利用してサポートしています。これから外国人を集客していきたい、現在外国人対応に困っているという方のインバウンド対応に関する悩み事をお聞きして、それに対してソリューションを提供していくような形です。
例えば、京都市の時代祭の有料観覧席のチケットの海外向けのプロモーションを担当させていただいたことがありました。せっかくの京都コンテンツですし、外国人向けのチケット購入のプラットフォームを提案をして、時代祭専用のチケット購入サイトを作りました。受付も通訳を置くとスムーズですし、パンフレットを置くとお祭りの意味もわかりやすく、満足度も大変高かったです。
他には、2年前から京都大丸さんで館内の通訳や翻訳の対応をスムーズにするための外国語対応の専用カウンターを運用しています。クライアントが今抱えている悩みを聞いて、こちらが提案できることを試行錯誤して、最終的に今のような形になりました。
クライアントは、行政ような大きなところばかりではなくて、例えば、小さな茶道体験の教室をされているクライアントのWebサイトの立ち上げに携わりました。立ち上げ当初でお客様が少なかった時からWebサイトからの外国人集客をお手伝いさせて頂いて、今では多くの外国人が訪れる体験教室になっています。

インバウンドに特化したビジネスをされているところってあまりないのではないですか?

通訳、翻訳、制作までワンストップでできたり、総合的にインバウンド対応をしてくれるところってあまりないと思います。うちの外国語スタッフがよく発見するのはすごくいいデザインのサイトを作っているのに、翻訳が間違っているとか。それは、翻訳と制作が別々にあるという体制だから起こることです。その点、弊社は社内で全部できるところが強みです。

初めての帰省で目の当たりにした地元の衰退が、起業のきっかけに

上治さんは学生の頃に起業されたそうですが、最初に事業を立ち上げられたきっかけについてお聞かせください。

在籍していた立命館大学の滋賀県にある草津キャンパスにアントレプレナー教育の推進をしていた授業があり、面白そうだと思って受けてみました。最初から起業しようと考えていたわけではなく、普通に就職という道しか考えていなかったので、こういう道もあるのかと思い、それが一つのきっかけになりました。また、私自身が兵庫県北部の田舎出身で、大学に進学して実家に帰省するという経験をした時に、初めて地元を客観的に見ることができて、こんなに元気がない町だったかなと、産業や観光の衰退を目の当たりにして、何かできることはないかと思いました。以上の2つが大きなきっかけです。

※起業家精神を育む教育のこと

最初の事業では「ルーズリーフ広告」をされていたということですが、広告に特化されたのは何か理由があったのでしょうか?

地域を活性化するには何をすればよいかと考え、当時は学生の単純な発想で、PR力をもっと高めれば観光客も来るのではということで、広告関係のことをやりたいと思うようになりました。
同じ大学の友人と二人で立ち上げ、3ヶ月後に合同会社として設立しました。ただ、友人も私も経営学部で文系、特別なスキルもありませんでした。そこで、2007年くらいに、大学生にアプローチするマーケティングサービスの一つで東京でルーズリーフ広告が流行ったということがあり、これを関西でやってみようと思いました。ルーズリーフ広告というのは、下段に広告を掲載したルーズリーフ数枚をまとめて袋に入れ、学生に無料配布するものです。
当時は、学生が立ち上げてやっているということで、大学職員の方も応援してくれました。学校公認のサークルのような形で「アドリンク」という団体を登録し、キャンパス内の一室を借りてそこを拠点として活動していました。大学構内で、広告を設置できるというメリットと、手配りでそのキャンパスの学生に直接アプローチできて効果が高いのではないかと思いました。あとは、ポケットティッシュなら10人に1人受け取ってもらえるかどうかだと思いますが、これだと1時間1人で配って150部くらいは受け取ってもらえました。

実際のところ、効果は感じられましたか?

1社だけ今も継続していただいてることを考えると、それなりに効果はあるのかなと思います。このルーズリーフを使って授業を受けている学生もたくさんいたので、それを見た時はやはり嬉しかったです。
ただ、2ヶ月に1回の発行でしたが、お金もなかったので作るのが大変でした。掲載の店舗は、コネクションが全くなかったので、学生というのを前面に出して飛び込みで営業しました。一時期、京都の大学などに設置の交渉に行って30箇所まで広めましたが、なかなか利益にはつながらず、今から考えるとビジネスとして難しかったと思います。

収益がなかなか上がらず苦戦 何度もやめようと思ったことも

京都駅に設置したスマートシティ観光実証実験のバーチャルコンシェルジュ

学生の時に起業されたことに関して、よかった点と大変だった点を教えてください。

学生ということで注目していただいたのは、すごくありがたかったです。トラベルパッドのリリースなど節目節目でメディアにも取り上げていただきました。色んな方に応援してもらい、助けてもらえたのは、学生だったからというのはあると思います。
大変だったのは、収益を上げるまでに時間がかかってしまったことです。売り上げが立ち始めたのはここ2〜3年の話で、そこに至るまでは、アドバイスをもらってもなかなかうまくいかず、ゴールの見えない迷路でした。日中はこの仕事、夜中はアルバイトをしていて、その時が精神的にも体力的にもいちばんつらかったです。辞めようと思ったことも何回あるかわからないですが、せっかく立ち上げて色んな人も関わっていますし、逃げられないと思いました。

お仕事をされる上でやりがいを感じられるのはどんな時でしょうか?

大きな仕事は期間が長く、内容も難しいものが多いのですが、それが決まった時と完成してうまくいった時はやりがいを感じます。例えば、京都府の府域観光促進プロジェクトに参画したとき。京都駅に府域観光をアピールするサイネージを設置して、デザイン、翻訳、システム管理などサービスの重要な部分に携わらせていただきました。期間も半年くらいと長く大変でしたが、やりがいはありました。
しんどい期間が長かったので、スタッフが集まった写真を改めて見たりすると、人が増えたなぁ、色んなことをしてきたなぁと思います。それが頑張れる糧になっています。

「地域の活性化」の実現に向けて、今後も精力的に取り組んでいきたい

アドリンク外国語スタッフの集合写真

今後の展望についてお聞かせください。

会社は多くの方の期待に応えられるよう大きくしていきたいと思っています。今は京都のお客様がほとんどですが、今年から他府県にもアプローチしています。最初に立ち上げたきっかけとして、「地域を活性化させる」という理念を掲げてやっているので、全国の自治体や地域を活気づけられるようなサービスをいろんな地域で展開していきたいと思っています。京都で色々と実績を積ませていただいたので、その経験を生かしていきたいです。

一緒に働くスタッフに対して、会社としてどのようなことを求めますか?

面接段階で外国語が一定のレベル以上必要なのはもちろんですが、採用したいと思えるのは自分の芯をしっかり持ちつつも、会社になじんで、自分から考えることができて、周りのことも考えられる人です。それは「協調性」や「コミュニケーション力」があるということになるのかなと思います。

取材日:2017年6月13日 ライター:垣貫由衣

株式会社アドリンク

  • 代表者名:代表取締役社長 上治 太紀(うえじ たいき)
  • 設立年月:2012年1月
  • 資本金:1,150,000円
  • 事業内容:インバウンド対応総合サポート事業、通訳サポート事業、オウンドメディア制作サポート、動画制作事業、翻訳事業、Web制作事業、通訳翻訳アプリTriPeer
  • 所在地:〒600-8413 京都市下京区烏丸通仏光寺下ル大政所町680-1 第八長谷ビル3F share KARASUMA SOHO+ 308
  • URL:https://addd-link.co.jp
  • お問い合わせ先:TEL)075-251-0577
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