ゲーム2017.05.24

わずかな数値の誤差や、目に見えない矛盾を見つけ出すデバッグ作業 必要なのは想像力と考える感覚

大阪
株式会社ドキドキグルーヴワークス(Doki Doki Groove Works) 大阪支社長 長谷川 大介 氏
今回訪問したのは、主にソーシャルゲームに特化した開発から運営、バランス調整とデバッグ、カスタマーサポートまで一貫したサービスを提供している株式会社ドキドキグルーヴワークスです。2013年に東京で設立し、2016年に大阪に支社を構えました。大阪では2017年5月現在、デバッグ事業を展開しています。
今回お会いした取締役で大阪支社長の長谷川大介さんは、この仕事に一番必要なのは人材であり、大切なのは、目に見えない矛盾を見つけられる感覚だと仰います。その感覚を身につけるためには何が必要なのでしょうか。ドキドキグルーヴワークスが携わる仕事の奥の深さや、将来の展望についてお話を伺ってまいりました。

必要なのは人。東京以外に眠る人材を求めて大阪の地へ

ドキドキグルーヴワークスの初代社長は、“ ファミコン名人 "として有名な高橋名人だということですが、 会社設立のきっかけも含めお聞かせください。

私は以前勤めていた会社にいた頃から、今後ソーシャルゲーム市場はもっと伸びるだろうと思っていました。それは同じ会社にいた、弊社の現社長である村井も同意見で、お互い開発や運営、デバッグというゲームの裏方から、業界を盛り上げたいと考えていました。
そんな私たちと同じ思いで意気投合してくれたのが高橋名人です。高橋名人とは、弊社の取締役でMAGES.(メージス)の代表取締役会長でもある志倉氏の縁で、昔からお付き合いがありました。
そこで「ソーシャルゲームをメインに、サービスを提供する会社を作ろう」という思いの下、設立したのがドキドキグルーヴワークスです。

大阪へはどのような意図で支社を出されたのでしょうか

私たちの仕事は人の力が全てです。 ところが東京だけではだんだん集まりにくくなっていました。競合が増えたり、少子化の影響だったり、要素は色々あると思います。東京以外の場所に眠る人材を求めようと、大阪へ支社を出す話は以前からあり、そこへちょうど大阪でのお仕事の依頼を受けたので、そのタイミングで動きました。

作品を好きになって初めて見えてくることがある

ではその御社の業務内容と強みについて、詳しく教えてください。

ゲームコンテンツの開発と運営、リリース前のデバッグとゲーム全体のバランス調整を行っています。さらにリリース後に週や月単位で実施されるイベントの運営にも携わります。
私たちの仕事はパブリッシャー(メーカー)とのお取引がメインですが、大阪では、パブリッシャーが関東に比べて圧倒的に少なく、ディベロッパー(開発会社)がすごく多いんですね。東京にある企業でも、大阪の開発会社に仕事を依頼しているところは結構あります。
そうした環境の中でも、弊社のように、開発からデバッグまで一貫してサービスを提供できるのは強みであり、数あるディベロッパーやデバッグ会社との差別化にもなると思っています。だから弊社への需要はあると考えています。

御社におけるデバッグとはどのようなものでしょうか。

私たちの仕事は、お客様の大事な資産をお預かりして、きちんとした形で世の中に出すためのお手伝いだと思っています。
デバッグは簡単に思えて、実はとても難しい作業です。キャラクターの体が一部消えたとか、全然走らないとか、そうした目に見えるバグよりも、目に見えない数値がとても大事なんです。
たとえば100のダメージを与える魔法の剣で、95しか与えられなかったらどうでしょう。一撃で敵を倒せるはずが、2回攻撃をしなくてはならない上、その間に自分もダメージを受けてしまいます。これはバグですが、なかなかバグとは気づきません。 でもユーザーが求めているのは、こうした一見バグには見えない、細かな数値設定なんです。なぜならその敵を倒すために、多額の課金をしてレアアイテムを手に入れているのです。お金をつぎ込んだ武器が、データと違うのは信用問題でもあります。コンプリートをしたいユーザーにとって情報収集は当たり前ですし、ネットにもユーザーがアップした攻略情報はあふれています。その期待や要望に応えないといけないのです。

なるほど。もう一点、バランス調整についてもお聞かせください。

たとえば、ある武器の強さを設定したものの、あまりにも強すぎて、これまで課金して作り上げた最強のチームが一撃で全滅したとなると、これはバランスがおかしいということになります。適度にバランスの良いゲームというものが大事なんですね。
適度というのは、お金をかけた人が強くないとダメということです。イベント時に、わざとすごく強いアイテムを出すことがあります。2桁レベルのキャラクターが3桁レベルのキャラクターに敵うようなアイテムなら、課金して強い相手を一撃で倒してみたいと思うでしょう。けれどそれまでキャラクターを強くしてきたユーザーからすれば、面白くありません。このバランスが難しいのです。その場合、3桁レベルのキャラクターがこのアイテムを手に入れると、手持ちのものと掛け合わせて、もっと強大な力を発揮するなどの設定も必要になります。
他にも、原作のあるキャラクターの強さレベルが正しいかどうかも重要です。原作では対戦していなくても、ゲームでは戦うこともあるので、違和感のない設定は大事です。一発で撃沈されるのはおかしいとか、引き分けにもつれ込む状態が続く方が面白いとか、バグの修正以上の世界を追求していくことになります。

非常に奥が深いですね。この難しい業務をこなすコツのようなものはありますか。

そのゲームを好きになることです。入口はたとえ仕事だとしても、興味をもって、想像することがとても大事です。一見バグとはわからない数値の誤差や、目に見えない矛盾も、好きになればわかるんですよ。この先どうなるだろうと、考える感覚があるかどうかは、ものすごく大切です。そのタイトルを好きになって初めて、見えてくることがありますから。

慣れ合いにならならないギリギリのラインで、親しみやすいコミュニケーションを図る

御社では人材が重要ということですが、力を入れて対応していることはありますか。

スタッフ教育です。弊社ではアルバイトの採用も含めて全員に、筆記試験を受けてもらっています。一般常識と間違い探し、ゲーム業界の知識ですね。間違い探しはセンスと、性質を見ています。時間内で終わらないとわかりつつ一問一問を丁寧に解くのか、とりあえず解答欄を埋めるのか、仕事への取組み傾向を見極めます。客先へ出向もあるので、もちろん対人コミュニケーションは一番大切です。
入社後は、お客様の大事な作品を扱うにあたり守秘義務について半日かけてとことん教えます。その後研修用ゲームで2.5日間デバック実習をします。その結果で、リーダーに誰を部下にするか選んでもらうのです。

能力を見極めた上で、その人にあった上司の元、教育をしていくのですね。アルバイトから社員になることもできるのでしょうか。

これからはどんどん人を採用して、私と同じ感覚の仲間を増やしていきたいです。アルバイトとして弊社に来る人は、開発運営業務もあると見込んで、社員になるのを目指している場合が多いです。
初めはデバッグのアルバイトで入社し、頑張って勉強して運営や開発の社員になるスタッフもいます。中には、やはり開発は厳しいと、デバッグ業務へ戻りたいという人もいますが、そうしたケースも臨機応変に対応します。経験がなくてもまずは挑戦してみて、というスタイルで起用する流れがあると、スタッフ全体の目指すところが高くなるんですよ。デバッグを担当していても、いつか自分でゲームを作るという目標が現実的に持てますよね。

大阪支社でスタッフに仕事をしてもらう上で、特に意識していることや、難しい点はありますか。

スタッフのモチベーション維持はすごく難しいです。やはり所詮アルバイトと思っている人も中には入るので、たとえば、銀行に行くという理由で、平気で遅刻できてしまう。それを強く注意すると辞めてしまう。一般論が全て通用するわけでないので、いつも同じテンションで仕事に向き合ってもらうためにはどうすればいいか、常日頃考えています。
そうした背景も含め、スタッフとの交流は意識的に取るようにしています。特に大阪の人はコミュニケーションを重視していると感じます。社員とアルバイトという線引きは絶対NGですが、距離感は考えています。
私が踏み入らないところは、アシスタントがフォローして、知っておくべきことは把握するようにしています。普段から慣れ合いにならないギリギリのラインでコミュニケーションを図ることが大事ですね。

良いスタッフがいれば、自然に仕事は取れる

将来的にはどんなビジョンをお持ちですか?

大阪に来た当初は、デバッグを中心に仕事をお請けするつもりだったのですが、半年たった今は少し考えが変わりました。
大阪には開発からデバッグやサポートまでできる会社はそうありません。そこで弊社が東京本社で積み重ねたソーシャルゲームにおける、開発と運営のノウハウを生かし、すでにあるデバッグ専門の大手企業とも違う部分で勝負するつもりです。
近々東京から運営のスタッフも来て、「開発」「運営」「デバッグ」を一貫したサービスとして始めようと考えています。これを皮切りに、将来的には100人以上の規模の支社にしていくつもりです。ライバル会社から「めんどうくさいのが来た」と思われるように、一日も早くなりたいですね。

そのために必要な要素は何だと思いますか?

やはり人ですね。 この業界はまだまだ伸びるというのは、今でも感じていて、それに対応できるだけのスタッフは育ってきています。だからきっと成功します。
良いスタッフがいると、勝てるんですよ、絶対。ここのスタッフが成長すれば、私が営業なんかしなくても、自然に仕事は取れると思っています。

御社が求める良いスタッフとはどんな人でしょう?

何でも俯瞰してものが見られ、目標を持っている人です。プロのデバッグになりたい、リーダーをやりたい、プランナーになりたいという意気込みのある人がいいですね。若い会社なのでポストはどんどん与えられます。そうして入った人はやはり未経験の方でも伸びますし、3年後には課長という人もいます。
それから、報告ができること。また業務においては作品を見たときに、バグがありそうな場所を感じ取れる人です。例えば、この開発会社が作った作品はココが危ないとか、このエンジンを使っているならこのあたりを警戒したほうがいいとか、経験則でわかるようになれば、もう一人前です。このスタッフがお客様に対応すれば「“ドキドキ"さんは違うね!」と信頼してもらえるでしょう。
だから今は、日々起こる様々な事例に対応していく毎日が勉強で、進歩だと思っています。

取材日: 2017年5月1日 ライター: 東野敦子

  • 企業名:株式会社ドキドキグルーヴワークス(Doki Doki Groove Works)
  • 代表者名:代表取締役名人 高橋利幸(たかはし としゆき)、代表取締役社長 村井清次(むらい せいじ)
  • 設立:2013年12月
  • 事業内容:デジタルコンテンツ企画・開発、リリース直前のチェック、リリース後の運営・サポート
  • 所在地:本社 〒169-0051 東京都新宿区西早稲田2-21-12 フェアウインド6F
        大阪支社 〒531-0072 大阪府大阪市北区豊崎3-1-22 淀川6番館 13F
        横浜・川崎支社 〒210-0005 神奈川県川崎市川崎区東田町9-6 加瀬ビル101 6F
  • URL:http://dokidoki.co.jp/index.html
  • お問い合わせ先:03-6205-6231
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