クライアントが求める世界観を 「AR/VR」技術を使って ワンストップで提案

東京
株式会社プレミアムアーツ 代表取締役 山路 和紀氏
ライブイベントで、3DCGキャラクターがアーティストとなり、人間のような動きでパフォーマンスをする。テレビ番組の生放送では、3DCGキャラクターが出演タレントと、現実のシーンのように共演する。ほんの少し前までは想像もできなかった光景を実現する企業があります。それが株式会社プレミアムアーツ。現実の世界と3DCGを融合するだけでなく、リアルタイムモーションの技術を駆使して合成された世界をリアルタイムに動かし、さながら現実の時間軸を持った光景であるかのような映像を表出することでエンドユーザーにその体験を提供しています。代表の山路和紀(やまじ かつのり)さんは、どんな経験を通じてAR(拡張現実)・VR(仮想現実)の分野にたどり着き、ビジネスを行っているのか。そしてこれから、どのような事業展開を考えているのか。市場の未来に馳せる思いを、じっくり語っていただきました。

ゲーム業界で培った技術を活かして AR・VRのワンストップソリューションを提案

山路さんは会社設立まで、ゲーム業界で開発に携わっていたそうですね。

はい。1994年にセガ・エンタープライゼスに入社し、ゲームソフトの開発に従事していました。2000年にマイクロソフトへ移籍し、「Xbox」のソフト開発にも関わっています。

その後2003年に独立し、ゲーム開発会社を設立しました。以降は映画やアニメなど、ゲームというプラットフォームだけでなく、CGが使われる分野に幅広く取り組んできました。2015年7月に、「AR」(拡張現実)と「VR」(仮想現実)の分野に特化する企業プレミアムアーツを設立しました。

AR・VRに特化した背景を教えてください。

AR・VRへの注目度はここ数年で大きく高まってきましたが、今に始まったわけではなく、昔からある技術です。またこの分野でのサービスやソリューションは以前からあり、ここ数年の技術の向上や新しいハードの登場により、低コストでの提供が可能になってきました。つまり現実的なサービスとして、価格的にも技術的にも世の中に広く提供できるレベルになってきたのです。

またビジュアルを中心にして表現していく技術なので、「言語に依存しない」という強みもあります。「言語に依存しない」からこそ、国内だけではなくグローバルにソリューションを提供していくのに、テキストが多いコンテンツに比べてハードルが高すぎません。 それも大きな魅力だと考えています。

注目分野であるだけに競合も数多く存在すると思いますが、どのようにして差別化を図っているのですか?

私自身が22年間、ゲームを中心としたコンテンツ制作の業界に身を置いていたので、 クリエイターや協力会社との幅広いネットワークを持っています。さまざまな才能を活用して適材適所でチームを編成し、クライアントにワンストップで提案できることが強みです。

クライアントは、コンテンツについて必ずしも明確なアウトプットイメージを持っているわけではありません。ゲームやアニメを作る場合には監督やクリエイティブの責任者がいて、「こんなものを作りたいからこんなデザインで協力してくれ」といった形で、明確なイメージの元に受発注が行われることが多いです。一方で私たちのクライアントはAR・VRのプロフェショナルではない企業であることが多いため、私たち自身がアウトプットイメージを提案し、ワンストップで作り上げていくことが求められます。実現するための技術提案からデザインの提案、制作まで、ワンストップでソリューション提供できるところが我々の強みです。

目の前の風景にCGを重ねる…… 屋外で活用できる「LiveAR」の技術

技術面では、独自のプラットフォーム「LiveAR」を展開されています。

「LiveAR」の技術を活用し、音楽ライブイベントやデジタルサイネージ、モバイルアプリ、テレビ放送、展示会などのさまざまな場面で、実際にソリューションサービスを展開しています。 「LiveAR」とは「実写動画にリアルタイムでCG映像を合成し、その映像をリアルタイムでアウトプットする」技術です。

リアルなイベントの場でも使えることで、従来のARとは違う世界を実現しているということですね。

はい。モバイルのアプリケーションでキャラクターを動かすということについては、すでにいくつかのソリューションが存在しています。私たちが展開しているのは、より高品質を求められるライブイベントでのARの活用です。大きなスクリーンに表示しても、ちゃんと品質が維持できる。また、さまざまなキャラクターをテクノロジーによって原作に忠実にCGで表現できます。

対象となるクライアントや事業領域が、一気に広がっていくのではないでしょうか?

サービスを提供できる業界としては、ゲームやエンタメから医療まで、いろいろな分野があると思います。取引するクライアントの業種は幅広いですが、取り組む事業そのものは AR・VR、およびそれに関連するサービスソリューションです。

今、世の中は、VRの分野に大きな関心を寄せています。今後数年間は、VR 分野でさまざまなサービスが登場することでしょう。当社の場合はもともと「LiveAR」に取り組んできた経緯もあるので、長い将来を見据え、VRのテクノロジーだけでなく、ARにも重きを置いていくつもりです。5年後、10年後、AR技術も大きく躍進し、ワクワクする様なサービス提供が可能になってくるはずです。VRは室内などの安定した環境で楽しむものですが、ARは現実空間に技術を重ねることができる。その時代が到来すれば、AR技術によってエリアや空間を限定しないソリューション提供ができるはずです。そんな技術力をさらに保有する企業であるよう、努力を続けていこうと思います。

ビジネス領域のARは、 時間をかけて一歩一歩、実現

最近のAR・VR関連市場の盛り上がりについては、どのように感じていますか?

私が注目しているのは、コンピューターが三次元の空間を処理してインタラクションを提供する技術が、加速度的にどんどん進化してきていることです。家庭用ゲーム機のハードもここ20年で大幅に進化しましたが、それが今ではスマホでも、同等の表現が可能になっています。今のスマホはプレイステーション3程度の能力がありますが、あと10年経ったら、同じ表現力を驚くような小さいハードで実現しているかもしれません。そしてそれを見るデバイスがますます小さくなったり、持ち運びが簡単になったりしていくはずです。「眼鏡のフレームにコンピューターを収める」ことも可能になるでしょう。

そのフェーズになったとき、どんな形でコンピューターを使って、どんな風にユーザーに合わせてオリジナルのグラフィックスを見せてあげられるのか。ワクワクします。さらには昨今のクラウド技術や、IBMの「ワトソン」に代表されるような人工知能の技術も相まって高まっていくでしょう。異なる国の人が会話するときに、翻訳された言葉が自動的に相手に伝わるような時代がやって来ます。コミュニケーションも含めて、私たちの生活は大きく変化していくはずです。

コンシューマー領域では、かつてSF作品で創作されていたような近未来のイメージが、まさに実現しようとしているのですね。ビジネス領域でも、ARの活用は一気に広まっていくとお考えですか?

テクノロジーを一般社会のビジネス分野で広げていくには、まだまだ時間が必要ではないかと思っています。エンタメ領域であれば、ある種の「体験」としてすぐに活用できるでしょう。また工場内や会社内といった閉じられた空間であれば、オペレーション改善や社内研修で使えるかもしれません。しかし、企業ごと、産業ごとにカスタマイズしていく必要がありますし、それぞれの分野で社会・風土・文化を進化させながらでないと対応が難しい部分もあります。エンタメ以外の領域で、ビジネスとして活用していくには、汎用的に活用できる技術の進歩も必要ですし、もう少し時間がかかるでしょう。

エンドユーザーが求めていることにこそ 正解がある

これからは、先行する技術に対して人間の価値観を追いつかせることが課題になりますね。

そうですね。我々のモノづくりは我々自身の欲求を満たすためのものではなく、ビジネスとして考えることを起点に、技術が価値ある商品開発につながるかどうかを慎重に検討しなければいけません。なぜなら技術を誇っていてもそれが価値ある商品にならなければ、商品そのものが社会に存在し、求められ、さらにより良い商品開発につながっていくというサイクルを生み出すことができません。自分たちが好きなモノを作る、どこよりも高い技術を求めるということは決して否定しませんが、プレミアムアーツとしては、日々躍進するグローバルレベルでの技術の進歩に伴って勉強することを怠らず、世の中に求められ、価値あるサービスを提供する会社でありたいと思っています。

クライアントの意向を大切にする、同時にクリエイティブでグローバルレベルでの先進技術も追いかける……。それを常に心がけています。そして社内スタッフには、「エンドユーザーが求めていることにこそ正解があるんだ」ということを常に話しています。

それが、結果的にはARの社会適合を加速させていくということでしょうか?

求められていないものを押し付けるのではなく、エンドユーザーが求めるニーズに合わせて答えを出していけば、需要も増え、さらにARの技術が求められるシーンが増えていく。そういうサイクルでのAR技術の社会適合を増進することに貢献する会社になりたいと考えます。

AR・VRに対するニーズをキャッチし、 市場を開拓していく集団へ

ありがとうございます。最後に、プレミアムアーツでともに働く仲間に対しての思いもぜひお聞かせください。どんなことを求め、どんなことを実現していきたいですか?

当社はまだまだ歴史の浅い会社で、少人数でやっています。新しい分野に対して気負いなく、スッと入り込んで、いつの間にか自分のものにしている、そしてそれを生かして新しい商品開発をリーディングしている。職種にかかわらず、そんなキャラクターと能力を求めています。

世の中が求めるサービスと、AR・VR に求められる技術力をうまく融合し、クライアントの要望を聞きながら、世の中に忘れられない商品展開をしていく。ポジティブなビジネスを展開しながら、さらに新しい技術や表現力を身につけていく。そんなエンジニアやデザイナーが集う組織として、今後も成長していきたいと考えています。

取材日: 2016年7月7日 ライター: 多田慎介

株式会社プレミアムアーツ

株式会社プレミアムアーツ
  • 代表者名 : 代表取締役 山路 和紀(やまじ かつのり)
  • 設立年月 : 2015年7月
  • 事業内容 : 1.AR開発とARコンテンツ企画・提案・運営事業 2.3Dコンテンツ、ビジネスアプリ企画開発事業 3.千鳥エンジン開発とライセンス事業 4.各種ゲーム向け2Dグラフィック制作・ 3D関連制作事業 5.2Dアニメ企画制作・3D映像制作事業
  • 所在地 : 東京都港区麻布台1-7-3 神谷町スクエアビル5F
  • URL : http://www.premiumartsinc.com/
  • お問い合わせ先 : 上記HP内の「CONTACT」より

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