WEB・モバイル2016.04.20

人と人とを繋げることで起業支援 人脈の交流と地域産業の発信の場に

札幌
株式会社シェアデザイン 代表取締役 齊藤 隆氏
2013年にオープンしたシェアオフィス&コワーキングスペース「ものづくりオフィスSHARE」。 シェアオフィスとしての役割だけでなく、「ものづくり」作家やクリエイターの起業支援、それによって地域の活性化に繋げていきたいという代表取締役の齊藤隆さんにお話を伺いました。

「コワーキングスペース」で見た新しい働き方

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以前はどういったお仕事をされていたのですか?

元々、家具業界に17年間おりました。新卒で道内最大手の家具メーカーに就職し、販売員からスタートして店長となり、東京本部では、商品開発にも携わりました。その当時は、今のような事業を起すなんて、全く想像もしていませんでした。

元々、起業したいというお気持ちはあったのですか?

学生の頃から、起業したいと考えていました。何をやるかというところまでは決まっていませんでしたが、小学校の卒業文集に「将来は社長になる。サラリーマンにはなりたくない。」と書いていて(笑)。 就職活動の時も、社長の最終面談の場で「将来的には起業をしたいと考えているので、会社に入ってもおそらく3年で辞めると思います。それでも良ければ雇ってください」と言いました。今考えたら、とんでもない発言ですよね。

それでも、そちらの企業に入社なさったのですね?

当時の社長が、ちょっと変わった人が好きだったみたいで「それくらの勢いでがんばってくれるなら」と意気込みを買っていただきました。相性が良かったみたいですね。まあ、予想通り3年で仕事が全部わかるはずもなく、会社を辞めるきっかけもないまま走り続けて17年という感じでした。

起業のきっかけは何だったのでしょうか

東京勤務の頃、雑誌で紹介されていた「コワーキングスペース」を見に行ったのがきっかけです。それが何かもよくわからないまま、なんだか楽しそうだとイベントを訪れて、そこで出会った若手起業家の方の働き方にすごく衝撃を受けました。カフェのようなオシャレな空間で、大学を卒業したばかりの若い経営者と50代くらいの大手企業の重役の方が笑いながら打ち合わせをしていました。楽しそうに握手までして、人と人との距離がすごく近いのを感じました。こんな光景は、会社員として働いてきた自分の世界にはありませんでした。当時、私は30代後半。自分はこのままでいいのだろうか。どうしたら、あのふたりのような関係で、こんな風に楽しく仕事ができるのだろうかと考えました。 その時、「コワーキングスペース」を利用すれば、自分も起業してこんな働き方ができるのではないかと思ったのです。

ビジネスには欠かせない“人脈”をつなげる場として

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「ものづくりオフィスSHARE」はどのような場所なのでしょうか?

フリーランスの方や起業を考えている方、起業したばかりの個人事業主の方を中心に「コワーキングスペース」として「シゴトバ」を提供しています。会員制でビジター会員まで含めると1,000人ほどの登録があり、40~50人くらいの方が、お仕事をするため週3回以上定期的に利用されています。

見たところ、個室やデスク周りなど、仕切りが全くないですね

そうですね。「シゴトバ」といっても単純なレンタルスペースではなく、他人と同じ空間で一緒に仕事をすることによって、自宅で一人仕事をするのではなかなか得られない「人脈」や「情報」を繋げていくというのが、「SHARE」の第一義です。今この時代に、フリーランスの方はどこででも仕事ができますし、それが自宅であればお金もかかりません。でも、“人"に対してビジネスを展開していかなければならないのに、“人"のいない空間で一人で仕事をするなんてもったいないと思います。何より、人に会わないことはリスクだと思います。入会される方には、必ずこのお話をさせていただいております。

つまり、「SHARE」は、人と人を繋ぐ空間なのですね

ビジネスを成立させるためには、なんといっても人脈が必要なんです。他の人にはないスキルや技術があるから起業しようと思っているとしても、それを応援してもらったり、口コミをしてもらったり、わからないことを相談するには、人脈がないとできません。私も会社員として17年間働いてきて、さあ起業するぞと思った時に、会社の中の人脈ばかりで、会社から一歩外に出ると、学生時代の友人くらいでした。最初は自分自身が「コワーキングスペース」で修行して、それから起業しようと思っていました。でも、当時、札幌には「コワーキングスペース」がなくて、「コワーキングスペース」がないと起業できないと思い込んでいた私は、大変困りました(笑)。短絡的ですが、それで自分で「SHARE」を始めたのです。

そうはいっても、人間関係を築くことはなかなか難しいですよね

私も子どもの頃は苦手でした。それが今、こうやって人と人を繋げる仕事をしているのは、自分にないものを求めて、逆にそれを意識をしてきた結果かなと思います。ここに来る方は同じように、人間関係を築くことが得意ではない方が多いようです。新しい会員の方には、私の方からイベントや勉強会、または大人の部活動に参加しませんか?と、しつこく声をかけています。

「大人の部活動」とは、楽しそうですね。

はい、参加してくださった皆さんは「楽しかった!」と言ってくださいます。今ある部活動は、写真部、ボードゲーム部、電子クラフト部、スマフォト部、文房具部です。大人になって趣味を通じたコミュニティに参加することから無縁になっていませんか?でも、大人になっても本当は同じ趣味を持ったもの同士仲良くすれば楽しいはずなんです。興味のある人は一度参加して欲しいと思いますね。ただ同じ時間を一緒に過ごすだけで新しい人間関係が生まれたり、お互いに刺激を受けて新しい考え方が生まれたり、コラボレーションできたりと、楽しむことをきっかけに人脈が増えていきます。今では大人の部活動で知り合った者同士で新しい事業をスタートするという事例も生まれていますよ。

ものづくり事業の支援を通して 札幌の地域産業を応援したい

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施設名に「ものづくり」とかかげている理由は?

元々家具業界での経験が長かったので、そこで得た知識を活かせないかと思ったのが最初です。また、これからデジタル工作機械を使った「ものづくり」ブームが来るという新しい流れを取り入れたところもあります。 東京に、ものづくりをする人たちが集まるカフェがあるのですが、時間制でお客さんが使えるレーザーカッターがお店のど真ん中に置いてあって、一般のお客さんが工作機械を使いながらお茶を飲めるようになっています。そういうことをここでもやりたいと思って、「SHARE」にも最初は真ん中に3Dプリンターやレーザーカッターを置きました。3Dプリンターは、当時北海道で一般公開しているところは、ここだけでずいぶん宣伝にもなりました。

会員の方は、「何系」のクリエイターが多いのでしょうか?

最初はIT系とクラフト系が半々で、男女比は7対3くらいでしたが、現在はクラフト系7割、女性7割という感じで、女性のクラフト作家さんが多いです。 東京で「ものづくり」というと下町の工場をイメージしませんか?素材は鉄。では札幌だとどうでしょう。札幌では、現在、第二次産業の工場が少なくなって、自然素材の木や皮などのクラフト手芸を想像される方が多いのです。「ものづくり」って言葉にすると定義は広いですが、地域の産業のことを指しているのではないかというふうに思います。

クラフト作家さんの教室なども開催していますよね

クラフトを事業にしたいという方が多く集まっているので、自然とその方たちをサポートしていきたいと考えるようになりました。「SHARE」の会員になると「SHARE」のスペースを使って無料でレッスン教室を開催することができるという仕組みがあります。クラフト作家さんを育てて、生徒さんを増やし事業として成り立つようにサポートすることで、将来的には製造業としてのクラフトの需要を高め、地域の産業を活性化させたいと考えています。

「コワーキングスペース」として創業支援まで明言しているところは珍しいですね

クラフト作家さんも含めて趣味から入って創業する方も多いのですが、ビジネスとしてやるからには利益が出ないと続けられません。作家さんやフリーランスの方にむけて、ビジネスの基礎を学ぶためのビジネススクールや勉強会も開催しています。事業として成立させるための考え方や宣伝の仕方、商品の値段の付け方まで、知っているのと知らないのでは全く違います。「SHARE」としても、起業の支援をすることによって地域に仕事を生み出すことにつながればと思っています。

取材日:2016年4月8日 ライター:小山佐知子

株式会社シェアデザイン

  • 代表者名:代表取締役 齊藤 隆(さいとう たかし)
  • 設立年月:2013年1月
  • 事業内容:シェアスペース開発・運営、起業家育成事業、WEBサービス開発、イベント企画・運営他
  • 所在地:北海道札幌市中央区北2条東1丁目3−3サンマウンテンビル3階 ものづくりオフィスSHARE
  • URL:http://sharedesign.biz/
  • お問い合わせ先:上記HPの「お問い合わせ」より
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