WEB・モバイル2015.12.16

設立以来、求め続けている始まるまでのワクワクした気持ち

札幌
株式会社デービス 代表取締役 佐野公康氏
「よりよい広告づくりとよりよいコミュニケーションをみんなのために」という理念を掲げ、北海道のクリエイティブ業界を牽引してきた株式会社DEVIS(デービス)。デザインの力で将来を見据え、未来を築こうと、「Design is vision」という言葉から名付けました。代表取締役・佐野公康(さの きみやす)氏に、会社のこれまでと今後の展望についてお話を伺いました。

クリエイティブエージェンシーの走りとして22歳で独立

DEVIS設立以前のご経歴をお話いただけますか。

20歳の時に、地元、北海道で、50人規模の大手デザイン会社に就職しました。そこは道内でも流通業界大手の広告を扱っていて、いろいろと勉強させていただきました。それはまさに、広告バブル真只中の頃で、私が配属された部署は「花の第一制作」と言われていました。広告費は今の倍以上、海外ロケも行っていました。とにかく仕事はたくさんありましたね。

デザインの勉強をしながら、そこには、どれくらいいらしたのですか?

その会社では、2年ほど働きました。でも、寝ないで働いても給料が全然上がらなくて……。当時、大手代理店との仕事を任されていましたが、仕事が出来るようになるに従って、クライアントの声が直接聞こえなくなっている事に気がつきました。間に代理店の営業やディレクターが入ることで、クライアントからの要望がきちんと伝わらず、自分としても納得のいくものを上げられなくなって、次第にジレンマを感じるようになっていきました。

それが、独立のきっかけに繋がったのでしょうか?

そうですね。納得のいく仕事をするには、クライアントと直接話をするのが1番だと考えました。自分自身、仕事もそこそこ出来ていると思っていたので(今、思えば大きな勘違い!)、引き留められるのを承知で社長に「辞めます」と言ったら、あっさりOKが出て(笑)。22歳でデザイナーとして独立しました。その後、24歳になった1987年に法人化しました。

当時、制作がクライアントと直接やり取りをするという仕事の仕方は珍しかったのでは?

制作がクライアントと直接仕事をして、媒体は代理店にお任せしていたので、今考えると、クリエイティブエージェンシーの走りだったのでしょうね。気が付けば、来年で30年を迎えます。 今のクライアントも、古くからお付き合いさせていただいているところが多く、直接やり取りをするというスタンスを続けてきたことが、競合する他社が次々と廃業していったここ10年の北海道で、長生きできた秘訣でしょうか。

営業と制作両者の意識改革のために分社化

1512_davis_01

現在、制作と営業は別会社になっているとお聞きしましたが。

はい、制作は9名、営業は5名おりますが、3年前に営業を株式会社デービス・アクトという名前で分社化しました。事業規模が大きくなると、営業の仕事も制作の仕事も増えてきて、そのうち社内で、制作が営業に甘え始めました。営業が持ってきたクライアントの声が直接届かない仕事に対して、制作は疑問を抱かなくなっていました。私が若い頃に感じたジレンマが当たり前に起きるようになっていました。

そうなると、どういった弊害が起きますか?

当然、クライアントの満足度も変わってきます。クリエイティブの部分で、物足りなさを感じるようになります。逆に、営業側も社内に制作があると、社内でこなそうとしがちです。これは営業が制作に甘えてしまうパターン。制作は、それが1,000円の仕事だろうと10万円の仕事だろうと、全力を尽くします。いつでも100パーセントでのぞむことが悪いという事ではなく、制作は本意をクライアントに伝える事が無く、営業はただ単にサービスの一環としてしまう、結果として収益の低下となってしまいます。そこで制作も営業も互いに利益を生む為に分社化に踏み切りました。この時は判断に迷いましたが、営業と制作を分けることで、制作の意識を向上させ、営業の利益も出すという点で、結果的には良い方向に向かいましたね。

現在も改革中でいらっしゃいますか。

この2年はそうですね。フタを開けてみると、長年働いている制作スタッフが、媒体費はもちろん、印刷費や制作の金額を知らなかったり、マネジメントが出来なかったり、クライアントの気持ちを読むことが出来ないということが分かってきて……。それは、マズいと、ようやく少しずつ改善されてきたところです。制作スタッフは今、1人ひとりがディレクターとして頑張っていますよ。

スタッフの独立を後押しし、退社後も協力関係が続く

30年の間には、独立した方もいらっしゃいますか?

うちは、いつ独立しても良いですし、いつ会社を継いでも良いんです。社内にいて力を発揮して次の社長になるタイプと、制作を続けたいというタイプがいますが、今までのスタッフには後者のタイプが多かったですね。彼らにはいつも、クライアントを持たせて独立させています。

その方たちは、ライバル関係にはならないのですか?

ならないですね。みんな協力してやっていますよ。退職後もみんな会社に出入りしていますし、仲が良いと思いますね。今、一番頼もしいのは、結婚退職したスタッフです。在宅ワークが出来るので、弊社から仕事を発注しています。時には、向こうから仕事を持って来てくれることもありますよ。

お仕事の依頼は、基本的には紹介が多いのでしょうか。

ほとんどが紹介で、新しいクライアントは、年に1、2件ペースで増えています。ホームページを見て、こんな風に作りたいといって依頼される方も多いですね。偉そうに聞こえるかもしれませんが、基本的に、コンペにはほとんど参加していません。なぜなら、クライアントとは信頼関係が必要ですし、対等でなければ良いものは作れないと考えているからです。良いものは良い、違うものは違うと伝えないと、お互いに納得のいくものは仕上がりませんよね。強気だと言われますが、だからこそそれが、制作スタッフ1人ひとりのプレッシャーにもなりますし、良い作品を作ろうというモチベーションにも繋がります。

御社が得意とする強いジャンルはありますか?

強いかどうかは分かりませんが、多いのは学校関係です。道内の高校、専門学校、大学の学校案内やHPの作成です。うちのクライアントは全部、道内です。以前は東京の仕事も受けていたのですが、相手と顔を合わせて話をすることが大切で、年に1回しか会わないと、そこからの発展性もなく、自然と関係は薄れていきます。1番大事なのは生きたマーケティングです。札幌で何十年も仕事をしていると、地元だからこそ分かる感覚が強みになっていると思います。

会社の宝はスタッフ スタッフを育てることが次の仕事に繋がる

1512_davis_03

社長自身、30年続けてこられた理由は、どこにあると考えますか?

なんでしょうねぇ。会社はグラフィックとwebが中心ですが、私自身は、過去には、ドーナツ店や職業訓練スクールを作ったことも、専門学校の講師としてデザインを教えたこともあります。 考えてみると、自分の中に常に、「何か作りたい、やりたい」という気持ちがあるのだと思います。だから、いろんなことに挑戦したいと思いますし、それを考えている時が1番楽しいです。物事が始まってから、完成するまでのワクワク感が好きで、それを求めて日々過ごしているのだと思います。 だからですかね、毎年同じものを作るのが嫌いで、クライアントにも常に違うものを提案したいのですよ。そうやって何か変化を加えた方が、自分もクライアントもワクワクしますからね。

社長が制作をされることもあるのですか?

私自身は、今は営業とディレクションが中心で、制作はしていません。良し悪しのジャッジは出来ますが、具体的にどうやって作りこんでいくのかという皮膚感覚が無くなってきているのです。これはやはり、日々やっていないとなかなか難しいですよね。技術もどんどん向上していますし、自分がやっても遅いだけですから、それは制作スタッフに任せています。

会社を運営する上で大切にしていることを教えてください。

大切なのは、スタッフですね。スタッフがいなかったら何もできませんし、いくら最新のパソコンを買っても、急に仕事のスピードやクオリティが上がるわけではありません。スタッフを育てることに日々注力しています。そしてもう1つ、働きやすい環境づくりにも気を配っています。例えば、弊社では、1人ひとりに特注サイズの机を用意していますが、ある社員は、「モニターの大きさと同じで、机の大きさもすごく重要だ」と言ってくれました(笑)。 誰かが独立した時に、「良い会社に居たね」と言われるような会社づくりを心掛けているつもりです。のびのび仕事ができれば、自然と次の仕事に繋がっていくと思いますし、制作以外のストレスは一切与えたくないと思っています。そのせいか、最近は周りから「良いデザインをする会社だね」というお声をいただくことが多くなりました。

優秀なスタッフが揃う中、新規採用するスタッフに求めることは何ですか?

やはり人間性ですかね。「真面目なこと。うそをつかないこと。素直なこと。」特に、この3点を重視しています。面接の時にデッサンを必ず見せてもらっていますが、手描きのデッサンから、その人の性格や今の状態が分かるのです。これが結構当たるんですよ(笑)。今は専門学校でもデッサンはあまり学びませんし、便利なソフトもありますが、やはりデザイナーには基本的なデッサン力は必要だと思いますので、この世界を目指す人には、きちんと勉強してきて欲しいですね。 加えて大切なのは、コミュニケーションです。私たちはクライアントとコミュニケーションをとらずには、相手の作りたいものが見えませんし、作ったものに対して、相手がどう思っているのか、汲み取ることができないのです。もちろん最初から上手に出来るとは思いませんが、苦手ならなおさら、少しずつでも訓練して、コミュニケーション力を高めていく努力が必要だと思います。

今後の展望を教えてください。

やってみたいネタはたくさんあります。どれもウェブ絡みですが、いろんな方の話を聞いて思いつくことはあります。ただし、まだそれが自分の中できちんと形になっていないし、リスクもある。だから今は考えているだけです。始まるまでのワクワクを感じられる、一番楽しい時ですね(笑)。

取材日:2015年12月7日 ライター:八幡智子

株式会社デービス

  • 代表取締役:佐野 公康(さの きみやす)
  • 設立年月:1987年5月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:企画、プランニング、クリエイティブ&デザイン、web、メディア、店舗プロデュース
  • 所在地:北海道札幌市中央区南1条西8丁目10-3第28桂和ビル5F
  • URL:http://devis.co.jp
  • お問い合わせ先:上記HPの「お問い合わせ」より
続きを読む
TOP