会社と社員が互いに支え合う組織 「みんなで作り上げていく会社」を目指して

大阪
株式会社 デジサイトグラフィックス 代表取締役 木匠 仁也氏
アニメ・ゲーム・遊技機等の3DCGを制作するデジサイトグラフィックス。代表の木匠 仁也(きつい じんや)氏は約20年前、時代を先取り、専門学校の講師も使えない3DCGソフトを独学で習得するところからスタート。4年前に京都に新スタジオを設立。10期目に入った今年は、就業規則の見直しや教育制度の再構築にも力を入れているそうです。老舗の料亭のような佇まいの玄関が印象的な京都スタジオに伺いました。

20年前、3DCGを教えられる人も少なかったころ 専門学校の講師も使えなかったソフトを独学で習得

業務内容についてお聞かせいただけますか?

3DCG(コンピューターグラフィックス)での、CG制作ですね。アニメ、ゲーム、遊技機等のコンテンツ作成をしています。なかでも大きく占めているのは、映像制作です。

創業のきっかけになったのは?

約20年前、10代のころはCGの存在そのものが希少で、ハリウッド映画の一部やNHKスペシャルの特集などに使われていた程度でした。小さいころから宇宙が大好きなので、太陽系を表現したCGを見て「実際に行って撮っているわけじゃないのに、この映像はどうなっているんだろう?」と。それで、学校の美術や物理の先生方に聞いてみたところ「どうやらパソコンを使うらしいぞ」ということがわかったんですね。今では当たり前の事ですが、当時はパソコンすら触れたこともなくCGの存在に衝撃を受けました。将来の夢は藐然(ばくぜん)としていましたが「これだ!」と思いました。専門学校でさえ本格的なものはない時代。マルチメディアコースに入学したものの、3DCGの授業は一週間に1コマ程度。その授業内容もフリーソフトを使った簡易的なものでした。そこで、自分で3DCGソフトを手に入れることにしました。

3DCGのソフトは高かったのでは?

当時は本格的なものは200万円ぐらいしましたので、STRATA(ストラタ)というソフトを買いました。STRATA StudioProは10数万円するのですが、安価版のSTRATA vision3Dは5万円前後と何とか学生でも手が届く範囲でした。それで独学で猛勉強しました。まさに「好きこそものの上手なれ」ですよね。講師にSTRATAを購入した話をしたら「俺にも教えてくれ」と(笑)。それで学校を当てにするのはやめて、自分でひたすら勉強し作品を作って、パソコン向けのゲームを開発する会社に就職しました。社内に3DCGソフトLight Waveが1本あったものの使う人が誰もおらず、同じくそれを独学で覚えCG制作を任され映像を作っていました。通勤の電車内でもマニュアルを読み、会社に行って仕事をするのが楽しくて仕方が無かったのを思い出します。そのうちに専門学校で講師をすることになり講師仲間たちと出会ったのが、独立のきっかけです。法人化してから10期目に入ったところです。

「映像」を完成させることの達成感 ドラクエというメジャータイトルに関わる充実感

遊技機の3DCGを作る面白さはどういったところですか?

ゲームだと任されるのはモーションだけの場合が多くて、それをプログラマーさんが制御します。でも、映像になると完パケ(完全パッケージ)の一歩手前の状態まで作れるんです。音は入っていないものの、映像としては完成した状態まで作れるので達成感が違います。

映像を作るうえで参考にしている趣味や映画などはありますか?

スタッフ全員そうですが、やっぱり単純に映画などの映像作品が好きです。私自身も爆発などのエフェクト制作が多かったため、そういったシーンの多いアクション映画が大好きです。CGを使っている作品としては『トランスフォーマー』や『アベンジャーズ』など。ただ、そういった映画を観にいくと、やはり職業目線で観てしまい純粋に楽しめなくなりますね(笑)。

過去の作品のなかで想い出に残っているものはありますか?

やはり『ドラゴンクエストX』です。メジャータイトルということもあり、他とはまったく違いました。ドラクエ世代のスタッフがたくさんいますので、昔プレイしたものに制作として関われるのはうれしいです。感無量ですよね。イベントムービーといって観ているだけの映像が流れるのですが、その10演出ぐらいの主にエフェクトを担当させていただきました。

どのようなエフェクトですか?

例えば、ドラゴン的なモンスターが火を吹くシーン。火がどんな風に出てきて、それによって背景がどんな風に爆発し燃えるか。そういったものを作り込むことがメインでした。リアルな火や爆発のエフェクトについては、かなり経験があったのですが、ドラクエでは世界観が求められますしアニメ風なんですね。リアルというより、手で描いたようなタッチにして欲しいというご要望があったので、そこは苦労しました。制作時間とクオリティのバランスというのは常に悩まされますが、それが特に顕著な案件でしたね。言い方は悪いかもしれませんが、“ゆったりした案件”をやっていると、なかなか伸びないものですが、厳しい案件をやると、そのなかで結果を出さなければいけないので力がつきました。

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御社の社風の特徴なども教えていただけますか?

アットホームです。俗にいうアットホームとは少し意味合いが違うかもしれません。会社の方針にも繋がるのですが、せっかく私たちの会社に入社していただいた以上は、定年までいてほしいと考えています。今年は10期目にあたるので就業規則などを根本的に見直しました。徹夜や土日出勤も多かったのですが、今は一切できない形にしています。定時を守れなさそうなら出社時間を早め ることを推奨しています。そうすることで、決められた時間までにすべきことがクリアになります。既婚者が少なく単身者が多いので、仕事のみで毎日が過ぎて行かないように、プライベートを充実させて欲しいという想いもあります。 この業界は、今は若い人が中心。スタッフが50~60代ばかりという会社は現時点では存在しないと思います。うちは平均年齢31歳ぐらいなので若干低めですが、後10~20年経つと、50代のデザイナーが大量に増えてきますよね。そうなると恐らく、体力的な部分も含め色々と成り立たないのではないかと。そこまで見据えて社内の教育制度も再構築しています。

具体的にはどういったことでしょうか

デザイナーとして生きていくのか、管理職として生きていくのか、またはその両方なのかという選択と、どれをとっても収入などに大きく差のつかないシステムにしました。一般的には管理職の方が立場や収入が上であり、生き残るためには昇進を……というイメージですが、それぞれの技量、スキルに併せて管理職には役職手当てを、デザイナーには技能手当てをつけます。デザイナーはカリキュラムを習得することでステップアップしていく仕組み。それによって将来の選択肢の幅を広げ、何らかの形で高みを目指すことで定年まで勤め上げられる会社に出来たらなと。闇雲(やみくも)に人数だけを増やしていくとそのあたりのバランスも崩れていくので、トータルのスタッフ数やその内訳なども含めて将来のビジョンとしています。以前にいた会社は、古い人間が単純に上がっていくスタイルで、管理職が上司風を吹かせていました。それが反面教師となり、弊社では上下の垣根をなくしました。上下関係という言葉自体がない社風です。イベントも多いです。規模は小さいながらも退職金制度もあり、リフレッシュ休暇なども設定しています。

ほんの1秒の映像さえも制作の参考に 映像への好奇心があればデザイナーは伸びる

採用するのであればどういう人材を求めますか?

スキル勝負の世界なので、やはり作品重視ではあります。他には、コミュニケーション能力と向上心は重要です。入社したてはモチベーションがぐっとあがり、その後、ほぼ水平になっていってしまうパターンが多い。そのなかで、休みであっても独自に勉強をするようなモチベーションの高さが続く社員がいますが、そういう人は伸び幅が違います。先ほどのデザイナー向けステップアップのカリキュラムを設定したのも、向上心を後押しするためのものでもあります。最終ステップを目指すことによって、会社全体にとっても個人にとってもいい影響があるのではと目論んでいます。

伸びやすい人の特徴はありますか?

やはりいろいろな映像を見てどれぐらい吸収できているかですね。CMひとつとっても、今のカメラワークよかったなとか、今のタイミングの取り方がいいなということがあればメモをして、何度も見直しては自分のものとして吸収していくのです。例えば、ライトの当て方をあえて逆光にしてシルエットにするのがかっこいいから、今作っている案件でも同じようにやってみようとか。良いものを見るとモチベーションもアップするので、迷ったときはいろいろと他の作品を見て刺激を受けるようにしています。

みんなのための会社、会社のためのみんな 互いに支え合う組織になれば

他社との違いについて教えてください

社内での研究など、会社全体の向上心ということになってくるかと思います。同じ値段でよりよいものを短時間で作ることを目指しています。

今後はどういった展望を考えておられますか?

昨今、業界的に遊技機は縮小傾向にあります。この先CG業界がどうなっていくのか先行きは不透明。大手の遊戯機メーカーさんが倒産していますし、時代の変化を感じます。将来的には、まったく畑違いのところも開発していきたいと考えています。例えば、建築分野やテレビ関係です。新規参入するのであれば目新しさやプラスアルファがなければと思いますので、考慮しつつ新しい分野に拡げていけたらと思います。

座右の名があれば教えていただけませんか?

言葉はあまりないのですが、「みんなで作り上げていく会社」を目指しています。フリーの時代からベースにあるのは「ひとりだけじゃ何もできない」ということ。ことあるごとに、周囲の人に支えられてきましたので。景気のいいときだけ使って悪くなると解雇などという従業員の使い捨ては問題外です。みんなのための会社であり、会社のためのみんなであればいいなと。会社と社員みんなが互いに支え合う組織、というところにこだわっています。

取材日:2015年8月26日 ライター:藤嶋ひじり

株式会社 デジサイトグラフィックス

  • 代表者名:木匠 仁也(きつい じんや)
  • 設立年月:2006年7月
  • 資本金:5,000,000円
  • 事業内容:映像系、ゲーム系、コンシューマー系全般にわたりCG制作及び企画
  • 所在地:千葉本社(千葉スタジオ) 千葉県八千代市勝田台北1-12-8 神谷ビル3F 京都スタジオ 京都府京都市南区四ツ塚町78 マリネットA-ワン 202
  • URL:http://www.digisite-g.com/
  • お問い合わせ先:info_dg@digisite-g.com

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